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猫額洞の日々

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2008年 01月 20日

ナイオ・マーシュ「道化の死」読了


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 「傑作と、だめなのと」2冊、お師匠さんが貸して下さる。傑作から
読むに決まってる。ナイオ・マーシュ、すごい。名前がきれいな作家
としか知らなかったが。

 余談だけれど、ナイオ・マーシュとシーリア・フレムリンが、
二大美名(?)ミステリ作家だと考える。どちらも読んでなかったが、
これで片方は知った。シーリア・フレムリンは、小さな黄色い薔薇の
感じがあるし、ナイオ・マーシュと聞くとすっきり優しいが、綴りを
見たら印象が変わった。 Ngaio Marsh。Nの次の無音のgがくせものか。

 「道化の死」(国書刊行会 世界探偵小説全集41 07初帯)は
シアトリカルな民俗学ミステリ。但し最初に注意書きがある。

<わずかでも民俗学の知識がある方なら、<五人息子衆の
 ダンス>が数種類のダンスと無言劇の要素とを、とうてい
 ありえないほど大量に織りまぜた、まったくの想像の産物で
 あることにはっきり気づくだろう。>

  第七章でのアレン警視と、このダンスのヴァイオリン担当である
オターリー医師との白熱する民俗学問答!
< 「・・・どれくらい日常的なフレーズが民俗音楽劇から由来して
 いるか考えたことがあるかね? ホビーホースにまたがる! 
 悪ふざけ(ホースプレイ)!・・・このパブの名前<緑の男亭>だって、
 <道化>、ロビン・フッド、ジャック・イン・ザ・グリーンの変形に
 由来している」(p161-162)に始まり、

< 「・・・しかし常に、どんなに衰退してばらばらになっても、
 死という中心な(注:ママ)観念と、<父>であり<手引き者>であり
 <呪医>であり<身代わり>であり<王>でもある<道化>の復活という
 観念は、生き残っている。・・・そして最高の形が__」
  「待ってください__ひょっとして__『リア王』?」(p162-163)

 ひとつの単語(名前)から次々に名前が発生し、ついには
フィクショナルな世界(ここでは「リア王」)が真打ち登場と言わん
ばかりに顔を出すこの場面で、ソレルス「女たち」の続きを読んで
いるような錯覚に陥ったのは、まだソレルス効果が続いているから
だろうか?

 演劇と探偵小説のミクスチュア。人工美の極地といってもよい傑作だ。
昨夜から読んでいる「だめな」日本SFとの落差があり過ぎる。こっちは
冒頭からあくびしながら読んでいた・・・。

by byogakudo | 2008-01-20 13:10 | 読書ノート | Comments(0)


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