2008年 01月 27日

小林信彦「ちはやふる奥の細道」読了

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 1968年8月3日 朝日新聞夕刊に載ったイギリス演劇紹介記事
__<誤解は創造の始まり>と見出しがついた__に触発されるも
多忙にまぎれて忘れ、76年のブローティガン「ソンブレロ落下す
__ある日本小説」出版時にふたたび構想を得るも、誤解された
日本像をいかに描くかの糸口が見つからない。

 80年初夏に読んだ、二重構造をもつノーマン・スピンラッドの
SF「鉄の夢」が小説化の踏切台になり、架空の著者の作品を小林
信彦が翻訳した体裁のW.C.フラナガンものが書かれた、という
前史をもつ「ちはやふる奥の細道」(新潮文庫 88初)である。

 作者の意思__みえみえの実験小説にはしたくない__が
貫かれた傑作に、へたな感想文なぞ要らない。読んで愉しんで
味わってくださる方が、もっと増えればいいな。

 映画「珍道中」シリーズを見たことがないので、「モロッコへの
道」の節でうたえるように作られた戯れ歌のおかしさが、十全に
味わえないとか、無知の悲しみを嘆きながらも、一晩で読み終える。

 佐渡の銀山での爆発シーン(p233)
< 次の瞬間、芭蕉の身体は壁に叩きつけられた。視界のすべてが
 オレンジ色に染められ、音はきこえなかった。
     (3行省略)
  ひとしきり、岩が崩れる音がつづき、途絶えた。あちこちで
 悲鳴がきこえ、芭蕉は鼓膜が破れたのではないとわかった。>
こういった忙中閑ありなとぼけ方も素敵。

 その後シェクリイの短編集を読みかけたが、短編はあんまり
面白がれない。アイディアだけで、それ以上展開してくれない。
 今夜は「ヨット船上の殺人」(C.P.スノウ 弘文堂新社67新装初)
の予定。
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by byogakudo | 2008-01-27 14:09 | 読書ノート | Comments(0)


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