2008年 03月 03日

E.C.ベントレイ「トレント自身の事件」半分強

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 予告通り、それじゃまずいでしょと、子どもだましな解決を
されそうな空気が漂って来たが、古い探偵小説味読に、そんな
ものは求めない。(あっ、新しくっても、そうだ!)

 まず驚いたのは、会話に用いるかぎ括弧(「 」)が全部
二重かぎ括弧(『 』)になっていること。かぎ括弧は表現の
引用__たとえばp24の「バイロン風」など__に使われて
いた。この本に限ってのことなのか、そこらは判らない。

 エピグラフにギリシア語(だと思う)の「オデッセイ」の
一節が掲げられている。ヘレンがネペンデを盛るシーンだ。
 本文中でも同じ箇所を、トレントがギリシア語で暗唱し、
親しくなったフランス人新聞記者はプロヴァンス語で暗唱する
のだが、律儀なことに訳文も三種類あり、エピグラフのが
いちばんおかしい。終わり近くを引用する。エンディングの
表現がすごい。

<それを飲み干すものは、終日頬に涙を流す
 まじく、また眼前に父母が死ぬとも、或は
 面前で人が彼の兄弟や子供に劔を突き差さ 
 うとも、結構看てゐられる。>

 同箇所をトレントが暗唱したときの翻訳は
<・・・平然たり。』>(p210)と終わり、プロヴァンス語
での朗唱は
<・・・涙を零すことが出来ないであらう。』>(p227)

 総ルビであるが、ルビが時々、当該漢字からずれているのも
愛嬌があって好きだ。また下町風発音ルビも発見。
<__フエアマンを、生命(いのち)がけの研究(けんきう)から
 引放(しきはな)してしまつたのも、ランドルフの仕業(しわざ)
 だつたのである。>(p175)
 もう一カ所あった筈だが、付箋を入れ忘れて見つからない。
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by byogakudo | 2008-03-03 13:33 | 読書ノート | Comments(0)


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