2008年 03月 20日

「地獄 英国怪談中篇傑作集」読了

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 ウォルター・デ・ラ・メア「シートンのおばさん」、メイ・
シンクレア「水晶の瑕」、アルジャノン・ブラックウッド
「地獄」が収められている。

 デ・ラ・メアは、平井呈一訳ではどうも朦朧体過ぎて
よくわからない、という声に応えての新訳である。そう
言われれば、平井訳より輪郭がくっきりしているような
気もするが、比較再読していないから、何とも言えない。

 「水晶の瑕」は、この中のベスト! キリスト教における
献身の姿を理解させてくれた2冊目の本である(1冊目は
もちろん「O嬢の物語」)。

 他者のために祈る一方法ではあるが、自我を透明にして
始元的な力に身を委ねる様子は、イギリスお得意の(?)
心霊主義も入っていて、身につまされる。原初の力が善なる
ものだけで出来ている訳はなく、ヒロインは悪霊にも開かれた
状態に自分を置くのだから、かなり危険な行為であるが、
彼女は愛をさらりと実践する。うつくしい。

 ブラックウッドは丹念に一歩ずつ、何か起りそうで起きない
じれったい恐怖感を描く。巧いなあ。体力派ホラーの真反対
だから怪談好きとしては、これが読めてとても嬉しい。

 三作揃ってすばらしい、素敵なアンソロジーだった。お師匠
さんに感謝。
   (南條竹則他訳 メディアファクトリー 08初帯)
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by byogakudo | 2008-03-20 15:10 | 読書ノート | Comments(0)


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