猫額洞の日々

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2008年 03月 31日

若桑みどり「マニエリスム芸術論」読了

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 連夜「蛇状人体」や「螺旋系構成」・「稲妻型深奥構図」に
まみれて読み終える。面白かった!

 論文形式を久しく読んでいなかったので取っつきが悪かった
けれど、パルミジャニーノ(第二章 四「歪んだ鏡」)辺りから
わくわくしながら読んで行ける。

 そうか、マニエリストはみんな「ミケランジェロの子どもたち」
なのか。ダ・ヴィンチに比べてミケランジェロというのは、彫刻が
苦手なのもあってピンと来なかったが、マニエリストたちの描く
痙攣し引きつり、相反する方向に引き裂かれたような人体の動きは、
ミケランジェロ彫刻の二次元化であり、画集でしか見ていないが
つるっとした体温を感じさせない皮膚の描き方など、彫刻がベース
とあれば理解できる。

 ミケランジェロやマニエリストたちが何故、15世紀までの
直立した人体や安定した構図が描けなくなったのかも、歴史状況と
絡めて解説される。ルターの宗教改革が起き、カトリック的な、
神が統べる確固たる世界像に歪みが生じた時代が16世紀であり、
やがて王権と神権とが分離した絶対王政国家に至る、狭間の時代だ。

 近代的自意識が発生する時代でもある。神は存在するけれども
神の下での安住はもはや不可能となったとき、ある者は神に
なり代わって技術をもって自然に働きかけ、世界を変容させようと
願う、錬金術の時代でもある。

 時代の揺れとひとの精神の動揺とを現す、視点がフォーカスしない
絵画や彫刻作品が写真図版で示され、説得力のある説明だが、文庫版は
ここがネック。他の画集で見たことがある作品ならいいが、初めて
見る作品では細部が判らず、苦しい。

 けれども記述の流れにいつしか身を任せ、思いをあちこちに
馳せながら、スリリングな読書を終える。イコノロジーは面白い。
フォンテーヌブロー派のイコノロジー本は、何を読めばいいだろう?

   (ちくま学芸文庫 94初)
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by byogakudo | 2008-03-31 13:12 | 読書ノート | Comments(0)


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