猫額洞の日々

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2008年 04月 01日

アーサ・モリスン「緑のダイヤ」を読み始める

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 函欠、背上端ハガレ、両見返しにセロファンテープ跡、
地少シミ、本文頁良、という状態なので、それでも剥き出しは
可哀想だからグラシン紙で覆い、背にタイトル文字を手書きし、
OPPに入れて外のワゴンに出した。
 「表はともかく、店内にはこの手の本もあります」の意も
込めて。

 でも誰も振り返らない。お師匠さんにワゴンをお見せすると、
 「君はこれを外に出すのか」と、やや非難の眼差しであった。
 「面白いんだよ」のお言葉を信じ、昨夜持ち帰った。

 長篇かと思っていたら、中篇+短篇2の三作入っている。他の
二作は、リチャード・デーヴィス「霧の夜」とマルセル・ベルジェ
「ある殺人者の日記」。二人とも知らない。
 アーサ・モリスンは、解説によればマーティン・ヒューイットの
作者だそうで、これは読んだ筈だが覚えていない。

 「緑のダイヤ」はいきなりインドのラージャの宝物の話から
始まり、「月長石」になるかと思えば、怪奇風味の少ない
「怪奇クラブ」的展開を見せる。

 主人公が、預かった12本のトーケー葡萄酒の大瓶に隠されて
いたのは緑のダイヤに違いないと判断する根拠が弱いけれど、
それはさておき、古風な冒険小説風で感じがいい。
 冒険の途中に出てくる脇役たちも、プラクティカル・ジョーク
好きの絵描きや、夜、提灯を(?)手に庭の蝸牛を捕るのが趣味の
競売場・番頭なぞ、好みである。

 ふと近頃の日本の怪奇小説があまり愉しめないのは、民俗学
ベースが多すぎるからではないかと思いつく。古代の真っ暗闇
じゃなくて、19世紀末から20世紀初めころの薄暗がりの夜が、
わたしにとっては快適な怪談世界なのだろう。

   (世界第ロマン全集四巻 創元社 56初)
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by byogakudo | 2008-04-01 13:52 | 読書ノート | Comments(0)


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