猫額洞の日々

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2008年 05月 08日

(3)「荷風と東京 『断腸亭日乗』私註」半分弱

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~5月7日より続く

 政治的な事柄についてあれこれ言うのはお洒落じゃない、という
風潮がある。斜に構えて、床屋政談する輩や投票所に並ぶ人々を
馬鹿にするのが、知的な態度であると思われている。
 偏見かも知れないけれど、わたしはそう感じる。

 荷風もまた政治的な出来事に関しては語らないひとだと
信じられている。大逆事件以来、コミットしないことにした、と。

 それでは、荷風の友人である左団次一行が(旧)ソ連に公演に赴く
際の荷風の態度はというと__

< 昭和三年六月二十六日の「日乗」は長いので全文を引用するのは
 控えるが、そこには、左団次一座のソ連興行を経済的に支援した
 松竹([略])に対し、「無頼漢の一団」や「暴力団」がしばしば
 恫喝を加えている事実を明らかにしている。[以下略]
  「この事につきて警視庁をはじめ錦町警察署及新聞社等の
  様子を見るに、暴力団の巨魁とは隠然連絡あり、新聞紙は
  黙然として何等の言論をもなさず、警察署は徒に刑事を派遣して
  無用の質問をなすのみにして、悪人に対しては一向取締をなす
  べき様子もなしと云、名を忠君愛国に借りて略奪を専業となす
  結社今の世には甚多し、而して巨魁[此間約十二字抹消]を目して
  憂国の志士となすもの亦世間に尠からず、今の世は実に乱世と
  云ふべし」>(p184)

 かっこいいから世間から降りているのではなく、怒りがあるから
降りている。「ムード」で隠者きどりをしている訳ではない、国家と
いう暴力装置に対抗する姿勢が明らかである。

5月10日に続く~
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by byogakudo | 2008-05-08 14:05 | 読書ノート | Comments(0)


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