猫額洞の日々

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2008年 06月 03日

ディック「死の迷宮」読了

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 わたしの知る雄性生物は目下、不調なヒトやネコばっかり。
雄はやっぱり雌より弱いのか。はかない気分になる。

 そんな気分が続いていたので、さすがのディックの長篇にも
なかなか集中できなかった。本の中でも本から目を離しても、
妄想と猜疑の世界に取り巻かれているような感触である。
(ブログを書き終えたら猫を病院に連れて行かなくっちゃ__
という訳で今日は臨時休業しています。)

 地球が廃墟化し、人類が宇宙に散らばって生活する時代の
物語だ。ある植民地に移動勤務を申請した人たち14人が、
なぜか次々に殺されて行く。各人が猜疑心や妄想に悩まされる
描写がとてもディック的な世界であるが、ここでも妙な神学が
出て来る。

 後年の「ヴァリス」なぞよりシンプルではあるが、「ゴッド」の
上に更に存在する「スーパー・ゴッド」に、すべてを腐敗させる
「フォーム・デストロイヤー」、人間のかたちを取る「ウォーカー・
オン・アース」といった塩梅。三位一体説のアレンジだが、この
神学世界の中で14人が死と再生を繰り返す。

 終盤のトゥイストも決まっている。けれども14人の中でただひとり、
機械の神みたいな存在に連れ去られ、死と再生の物語からも外れて
ゆくのは、どう解釈すればよいだろう。登場人物中いちばん、作者・
ディックの自己投影像的キャラクターである。

   (フィリップ・K・ディック サンリオSF文庫 79初帯)
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by byogakudo | 2008-06-03 14:14 | 読書ノート | Comments(0)


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