お師匠さんからお借りしているもう1冊、エリザベス・ボウエン
「エヴァ・トラウト」(国書刊行会 08初帯)をおとといから読んでいる。
短篇は何か読んでいるが、ヘンリ−・ジェイムズとか、あの一派かな
という印象だ。すなわち、単刀直入の真反対。
大金持ちの跡継ぎにして孤児、ヒロインのエヴァが寄宿先で風邪で
寝ている。ひとりぼっちの室内の描写を引用(p66~67)。
<[略]室内では、ラーキンズ荘が夕暮れの陰影を取り仕切っていた。
空っぽの家を制圧した静けさが感じられた。見たり聞いたり、考えたり
わかったりすることで、その静けさを乱す者は一人もいなかった。
キッチンだけが、ピタピタという音に耳を取られており、洗い場の
蛇口からしたたる水が上向きに置かれたプラスティックのボウルに
落ちて音を立てていた。居間だけが、いけたばかりの火が中で
ゆっくりと燃え始めているのを知っていた。[略]>
日本語が無生物を主語にしない言語であることが、逆によく解る。
一度こんな書き方で書いてみようかな。書いている本人が混乱しそうだが。