気がついたら読む本がない。まだHPに載せていなかった袋から
矢田津世子「神楽坂・茶粥の記」(講談社文芸文庫 02初)を取出し、
持ち帰る。
ふーん、こんな小説を書くひとだったか。名前しか知らなかった。
日本近代文学痴なので__他にも知らないことばっかり__、
何かで「茶粥の記」の話は知っていたが読むのは初めて。
本で得た食べ物の知識を、満員電車の中で想像力を働かせ、さらに
美味なるものへと飛翔させる能力をもつ夫が死んで、残された妻と
姑がいなかに戻るのがメインストーリーだった。
てっきり夫の不思議な美味展開能力がメインと思っていたが、
女たちの物語だった。
あたまの中で美食を創造する夫は、実際のごちそうを食べると
覿面におなかをこわす体質という設定。できればこの方面から
書いてもらいたかったが、それは作者の問題意識ではなかったのが、
他の作品を読んでみてわかる。ちょっと残念。
女たちの居場所がほぼ家庭内にしかなかった頃、家父長制の
日本があった頃の女たちが感じていることを、声高でなく語る
作家、だろうか。