猫額洞の日々

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2008年 06月 11日

小林力「父子目付勝手成敗」読了

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 昨夜、小林力(こばやし・りき)氏第二作「父子目付勝手成敗
(おやこめつけ かってせいばい)」(学研M文庫 08年6月24日初帯)
を読み終えた。

 全体の印象は「ノッてる!」
 第一作「旋風喜平次捕物捌き(つむじきへいじ とりものさばき)」
(学研M文庫 07年10月初帯)に比して、よりふっきれた感じが強い。
 江戸・深川を舞台にした父と息子のアクションコメディ・シリーズの
幕開けにふさわしい軽快さである(9月にシリーズ第2弾が出る予定)。

 父は「平家蟹」とあだ名される容貌魁偉な大男・53歳。
 24歳の息子はやや小柄で穏やか、「観音さま」とあだ名されるのは
顔つきからよりも
<まんまるな眼が境内の鳩ポッポみたいだから、という説の方が
 本当のようだ。>(p11)。
 妻であり母である女性は20年前に奇禍で死去、引退した徒目付と
跡を継いだ息子との男所帯で、ふたりとも武術に長けている。

 父が早く引退したのも役所の理不尽さ__侍の身勝手をナアナアで
すませようとする体質__に嫌気がさしてであるが、大人しく隠居できず
「ひとり天誅組」と化して、悪をひそかに成敗し始めた。
 こっそり、息子に迷惑をかけないように世直ししていたが、第4話では、
遂に息子も助太刀に至る。シリーズ第2作では、ふたり揃っての活躍が
見られるにちがいない。

 第1作にも窺われたヒューマーはさらに軽みをおび、父・軍兵衛
なじみの小料理屋「粋月」と贔屓の若い女将・加世についての描写だが、
< 別に料理も酒も、それほどうまいというわけでもないのに、
 軍兵衛はここが大いに気に入っている。
  二十六、七(と軍兵衛は思っている)[注 ボールドは引用者]の加世が
 酌をしてくれるのが、われながら嬉しいのかも知れぬ。>(p16)といった
塩梅。

 ネーミング・センスも素敵で、「岡っ引き長次」なんて、いかにも
江戸前で有能そうだ。

 互いにあまり口をきかず、それでも内心は相手を思いやっている、
表面は殺風景な父子関係が徐々に融和してくる、そのプロセスも
読んでいて気持がいい。

 江戸時代の話ではあるが、小林力氏はじつはハリウッド的「父と息子の
物語」を描こうとしているのではないだろうか。
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by byogakudo | 2008-06-11 13:51 | 読書ノート | Comments(0)


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