猫額洞の日々

byogakudo.exblog.jp
ブログトップ
2008年 06月 15日

シムノン「メグレの打明け話」読了

e0030187_15412478.jpg








 Sがシオドア・スタージョン「海を失った男」(河出文庫 08初帯)を
読み終えているが、アンリ・ピエール・ロシェからいきなり移るのも
なんだし__なんだというの?__間に「メグレの打明け話 メグレ
警視シリーズ23」( ジュルジュ・シムノン 河出書房新社 78初帯)を
読もう。これだって、つながりがいいとは言えないが。

 メグレ夫妻と月に一度、交互に自宅で夕食を共にしている友人・
パルドン夫妻(パルドン氏は町医者)宅の晩餐風景から始まる。
 デザートはメグレの垂涎置く能わざるライス・プディング。
メグレはおかわり(!)しながら
<このプディングは子供の頃を思い出させてくれるし、四十年来、
 これほどおいしいプディングを食べたことがないと言った。>
(p5)
 ライス・プディング・・・。好き嫌いの少ないわたしがメゲた、
唯一のフランス(?)料理だ。おはぎや粽が食べられて何故ライス・
プディングがだめなのか、あらためて考えてみると不思議だけれど。

 最終章は今度はメグレ宅で、メグレ夫人お得意の鶏の赤ワイン
煮込みが供される。
 コニャックかアルマニャックか、手近にあるお酒を最後に入れて
作るパルドン夫人が、メグレ夫人にしっとりした味わいのコツを
訊ねる。
 メグレ夫人は、出来上がる寸前に<アルザスのりんぼく酒>(p213)
を入れるのが秘訣と答えるが、「りんぼく酒」ってなんだろう? 

 こんなときにこそある「メグレ警視は何を食べるか? フランスの
家庭の味100の作り方」(ロベール・J・クールティーヌ 文化出版局
79初帯)を見てみる。(当店HP 09aにありますと、これは宣伝)
 家禽料理の中にある「鶏の赤ワイン煮」(p106~107)が該当するが、
あら、ここでは<マールブランデーをふり入れ>ている。<アルザスの
りんぼく酒>は一般的ではない、ということかしら?

 家庭料理の話にサンドウィッチされ和らげられているが、メイン
プロットは、メグレが語る未解決に終わった事件の話だ。いやむしろ、
司法機構の一端でしかない無力さを嘆く話、である。

 パルドン氏も、死にかけている患者を食事中でも気にしている。
メグレ警視は容疑者が犯人であるとは信じきれないのに、逮捕して
しまったら事件は彼の手を離れ、裁判所のものになる。容疑者は死刑を
執行され、人々の記憶からも忘れられ、ひとり、メグレ氏だけが
考え続けている。
 食事(生)のさなかの死の物語だ。
[PR]

by byogakudo | 2008-06-15 14:01 | 読書ノート | Comments(0)


<< スタージョンは読み出したけれど      「突然 炎のごとく」読了/「ど... >>