猫額洞の日々

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2008年 06月 26日

「メグレと優雅な泥棒」読了

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 司法制度改革のおかげで、足で捜査する古いタイプの警官たちが
仕事がやり難くなった頃が背景にある。事件捜査の重要度を決めるのは
検事局であり、メグレたち・現場の警察官はその手脚であることを
要請され、というより強制されるようになる。
 銀行ギャング等、経済に直結する大事件に専念することが求められ、
同時期に起きたひとひとりが殺された事件なぞ、くず扱いされる。

 じつはこの殺人事件は、大金持ちの犯罪につながるのだが、上流
社会を揺るがすスキャンダルには蓋をする体制が、公表を許さない
であろうことは明らかだ。
 それでもメグレたちは真相をつかむ。犯人不詳のままで終わらせ
られるから、使ったタクシー代は、自腹を切るしかなくなるが。

 けれども、問題提起小説にならないところがシムノンだ。オルガ
という街娼が魅力的。下町娘気質が可愛いらしい。ほがらかで
おしゃべり、いたずらっぽく、やんちゃで観察眼が鋭い。自分の界隈に
ついて知らないことはない。メグレが殺人事件の犯人に目星をつけたのも
彼女の目のおかげだし、腸詰めのおいしい料理屋も教えてもらう。

 殺された男は前科持ちの泥棒であるが、メグレたちと同じような
古いタイプの犯罪者だ。単独で行動し、自分のルールをもっている。
 対するに、銀行を襲ったギャングたちは、近代化されシステム化
された犯罪組織に属する。
 取り締る側も犯罪者側も、新旧交代の時期である。
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by byogakudo | 2008-06-26 13:46 | 読書ノート | Comments(0)


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