猫額洞の日々

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2008年 08月 26日

祐光正「浅草色つき不良少年団」読了

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 昨日、店にディックを忘れてしまったので、2篇だけ読んでいた
祐光正「浅草色つき不良少年団」(文藝春秋 07初帯)の残りを読む。

 欠点の多い作家だけれど、戦前の浅草への思い入れの強さは
認めるべきだろう。それしか今のところ評価できないんじゃないかと、
こっそり思う。

 久保田眞二・名の漫画家として活躍後、小説家に転じ、これが
デビュー作だそうである。タイトル作品が第44回オール讀物推理小説
新人賞を受賞。この文体の肌理の粗さと、ミステリとしての泥臭さで
受賞? 他の応募作はじゃあ、どうだったんだと聞きたくなるが、
たぶん、浅草への思いの強さを審査員は評価したのだろう。

 綺堂の読物と同じく聞き語り形式で、戦前の浅草の街や、不良少年
たちの出遭った事件が語られる。
 漫画家であったこの物語の書き手が、神名火譲二(かんなび・じょうじ)
老人から話を聞き始めたのが、昭和の終わり頃、今から20年以上前という
設定であるがしかし、たとえば第三話「瓶詰少女」から、当時の神名火
譲二青年の台詞を引用する。

< 「無月村を追い出された連中が、あのアトリエ村に、ヒルトップ
 陸木という新たな共同体を造ったということなのか。[以下略]>
(p154)

 「共同体」は、1930年代の浅草の不良少年団・団長であった神名火
青年が、その当時、使う言葉だろうか。聞き語りだから、地の文に
用いられていても違和感がある。まして直接法の会話中に出てくると
困惑する。

 どの短篇もミステリ仕立てだが、ほとんどが機械的トリックを
使った探偵小説で、これはもしかして敢えて古風さを狙ったのか。
 だとしても推理の鮮やかさではなく、泥臭さしか感じられない。

 最後の第五作「二つの墓」で関東大震災によって孤児となり、
神名火青年(まだ少年だったが)の指揮下に入った少年たちが
全員登場し、
< この物語は始まったばかりである。>(p309)と結ばれる。
 シリーズ化するなら、ミステリではなく浅草情話の線を目指した
方が、作者の体質に合うのではないかしら。

 資料を一所懸命集めて、戦前の浅草を脳裏に描いて書いたのは
よくわかった。文庫で読めるものは全部、文庫版で読んでいる
ところが泣かせるが、都筑道夫「東京夢幻図絵」が懐かしくなる
のは、どうしようもない。今年49歳の作者に、無理な相談をして
いるのだろうか。

 遅ればせの、もしくは早まった今週の新着欄です。よろしく。
 新着欄
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by byogakudo | 2008-08-26 14:33 | 読書ノート | Comments(0)


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