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猫額洞の日々

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2008年 09月 13日

「文壇アイドル論」読了、ブッツァーティへ

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 写真は昨日の隅田川。

 まず今週の新着欄をどうぞ。
 新着欄

 昨日の地下鉄内で斎藤美奈子「文壇アイドル論」(文春文庫 06初)
読了。ナンシー関はもういないが、斎藤美奈子は健在だ。

 80年代という、バブル経済前後期に文化的アイドルとなった人々
__村上春樹・俵万智・吉本ばなな・林真理子・上野千鶴子・立花隆・
村上龍・田中康夫、が取り上げられ、社会情勢とからめて縦横に
論じられる。しかし、引きこもっていないと自分が保てない、憂鬱で
不幸な時代だった。あれからバブルの反動を引きずって、人々は
生きている。

 昨夜は「偉大なる幻影」(ディーノ・ブッツァーティ HPB 68初函)の
表題作だけ読み終える。あんまり成功しているとは思えない・・・。

 国家機密に属する施設に参加を促された電子工学教授が、まず登場。
どんな施設なのか、内容を知らされないまま、彼は妻とともに赴任する
のだが、2段組み41頁を費やして、やっと研究所の秘密が明らかになる。

 長過ぎやしないか。直前の彼らの歓迎パーティ・シーンでも、仕事の
話になろうとすると「止めましょうよ」と口を挟むなんて、無駄な
サスペンスだと思う。それまでも話のテンポがあまりに遅いので、
これはカフカ的不条理小説で、主人公が謎の施設でさらに謎に包まれる
話かと思っていた。

 そうではなくて、フランケンシュタインもの。後半68頁は怪物の
目覚めと死の物語である。巨大な施設そのものが一種の人体で、
彼/彼女は言葉なしに(!)思考することが可能であり、しかも人間的な
感覚や感情も備えている。

 ヒトによる人間の創造であるから、神を恐れないのか等、いちおう
そんな議論の場面もあるが、ペース配分として、こちらにもっと
力が注がれるべきであろう。言語抜きの思考の部分なぞ、もっと
展開するべきだろう。

 「フランケンシュタイン」が、人体を模したロボットではなく、
谷間や絶壁に建設されたサイロや塔・砲台・アンテナの群れである、
という設定は面白いが。

 あとに続く短篇「スカラ座の恐怖」「戦艦"死(トード)"」も
読んでみよう。

9月14日に続く〜

by byogakudo | 2008-09-13 14:01 | 読書ノート | Comments(0)


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