2008年 09月 14日

ブッツァーティ、あと1篇

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~9月13日より続く

 「偉大なる幻影」の次にある短篇「スカラ座の恐怖」、これは
まあよかった。ブルジョワジーの秘かな恐怖を寓話的に描く。
 ブッツァーティ、もしかして短篇の方が向いているのだろうか?
代表作も読んでいないで軽々に言っちゃいけないけれど。

 もうシーズンも終わりかけのミラノ、スカラ座で前衛的な
オペラが初演されることになり、スノッブな有閑階級が集合する。
 街には過激派による市役所襲撃の噂が底流のように流れ、オペラ
終演後のスカラ座内にも伝わり、貴族やブルジョワジーたちは
恐怖感から館内に立てこもる。周章狼狽し、あらわになる彼らの
本性が風刺的に描かれる。

 この一夜の描写までは、足止めを喰った老ピアニストの視点を
中心に書かれているのだが、家に残っている息子を案ずるあまり、
ついに彼がスカラ座からひとり外に出るシーンからは、映画で
言えば「引き」で描かれる。

 スカラ座内に残る人々の眼に、よろけて道路に倒れ、動かない
老ピアニストの姿が映る。いよいよ噂は本当であったらしい。
彼らは運命を甘受すべく待ち構える。

 ところが夜が明けそめ、いつものようにやって来た道路掃除夫が
倒れている老ピアニストを見つけて起してくれ、彼は帰宅する。

 この場面はスカラ座内からは目撃されていない。その代り、
黒い天使のような花売りの老婆が静かに現れ、社交界の花形で
ある、若くうつくしい貴族の夫人に<純白の、くちなしの花を
一輪差し出>す場面で、物語は終わる。

9月15日に続く~
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by byogakudo | 2008-09-14 13:05 | 読書ノート | Comments(0)


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