猫額洞の日々

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2008年 09月 15日

ブッツァーティ「偉大なる幻影」読了

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~9月14日より続く

 三番目の短篇「戦艦"死(トード)"」も読了。しかし、これは
なんの寓意? 牽強付会ならお手のもの、である筈が、何にも
思いつかない。

 ここでも、厳重に警戒された軍事上の秘密の施設が出てくる。
第二次大戦末、瀕死のドイツで建造された超弩級戦艦はドイツ
降伏後に、ただ何ものかに対して闘うこと事態を目的として、
基地を出発する。
 向かう敵とは「死」そのものであろうか? そうとも思えるが
しかし、二重のルポルタージュ風語り口のせいだろうか、なんだか
遠い。

 この三作を読んだ限りでは、ブッツァーティはわたしには、やや
縁遠いようである。スピードフリーク頭が読むには緊密度が弱い。

 「偉大なる幻影」は構成がゆるく感じられる。
 「スカラ座の恐怖」はいちばん好きだが、前衛オペラの題名が
「無辜なる者の虐殺」と、聖なる赤児の恐怖の一夜を象徴する。
無垢とは言いがたいブルジョワや貴族たちとのコントラストが
鮮やかなのに、
< 客の群れはほかのことに気を取られていた。「無辜なる者」
 ではないもうひとつの別の「虐殺」のことが心配になりはじめた
 のだった。>(p144上段)とある。
<「無辜なる者」ではない>と、わざわざ言わなくても、ここまで
さんざん支配階級の腐敗が書かれている。冗漫ではないだろうか。

 書かれた時期が戦後すぐくらいだから、そこらが間の合わなさの
理由かもしれない。

   (ディーノ・ブッツァーティ HPB 68初)
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by byogakudo | 2008-09-15 13:19 | 読書ノート | Comments(0)


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