猫額洞の日々

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2008年 09月 18日

小林力「深川の隠居 父子目付勝手成敗」読了

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 当ブログでご紹介するのも、これで3冊目。「父子目付勝手成敗
(おやこめつけ かってせいばい)」シリーズ第二作「深川の隠居」
(小林力 学研M文庫 08初帯)を昨夜、読了。

 昨日、小林力氏がいらっしゃった。
 「新作だよ。もう(新刊)書店に出てる。(シリーズ)第三作も
じき出る予定で忙しいの」

 まずは、シリーズ化おめでとうございます。驚異の新人・
時代小説家としてますますのご活躍を!(彼の簡単なバイオ
グラフィーや、他の作品については当ブログ右下の検索欄に
「小林力」と打ち込んで下さい。)

 前作との読後感の違いは、小説世界としての落ちつきぶり
であろうか。前回以上に、登場人物それぞれが居場所を確実にし、
のびのびと軽口を交えながら動いている。
 軽快にストーリーを展開しながら、父と息子、周囲の人々との
和気あいあいとした交流の様子が愉しく描かれる。
 父子が私的にたずさわる事件はわりと殺伐としているので、
このコントラストは大事だ。

 連作第一篇「礫打(つぶてう)ち」は、いきなり、息子である
若い当主が朝っぱらから、小名木川で水切りする場面で始まる。
 父子そろって武術に長け、鍛錬を怠らないふたりであるが、
それにしても何故、石投げなのか。これが何かの役に立つのだろうか
と思っていると、ちゃんと後で技として使われる。

 この石投げのシーンは第四章でさらに詳述される。夜の河岸で
若い目付は汗だくになりながら、十間さきの空き瓶に小石を当てる
稽古や、板きれの真ん中に円を描き、そこに命中させる訓練に励む。
 おお、これは西部劇で裏庭の柵に瓶を並べ、ピストルの練習を
する場面の換骨奪胎ではないか! 作者が長年のミステリファン
であることが窺われ、うれしくなるシーンだ。

 父は相変わらず苦虫をかみつぶしたような表面を崩さず、息子は
大人しく父に従うと見せて陰でそっと助太刀する。日本的な情愛の
交換である。
 登場人物それぞれが出しゃばらず、さり気ない表現で思いを伝える
江戸前活劇を愉しんだ。
 次の作品も期待しています!
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by byogakudo | 2008-09-18 13:50 | 読書ノート | Comments(0)


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