猫額洞の日々

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2008年 11月 01日

ヴァン・ヴォークト「原子の帝国」読了

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 わあ、「ハリーの災難」日和だ! 陽射しと枯葉を吹き散らす風が、
テクニカラーの視界を出現させる土曜日。
 まず、今週の新着欄をよろしく。
 新着欄

 中篇二つが入っている「原子の帝国」(ヴァン・ヴォークト 創元推理文庫SF
66初)、Sが1作だけ読んでいたのを奪取して昨夜、読了。

 なぜ長篇に書き直さなかったのだろう、ちょっともったいない。特に
「原子の帝国」に関して、そう思う。宇宙時代のお家騒動ものを中篇に
してしまうと、詰め込み過ぎが目立つ。

 にも拘らず、やっぱりヴォークトは面白い。わくわくしながら、宇宙時代の
メディチ家に生まれたミュータントの冒険を読む。原子力を利用して
銀河戦争をしているのに、宇宙船で送り込むのが馬や槍・剣・弓を携えた
兵士である。首都が襲われ、軍隊を召集するのに伝書鳩が使われる。
 すでに一度、地球は滅びたようで、原子力を使って宇宙船や武器を作る
ことはできても、誰も原理を知らない。原子力利用に当たるのは、四柱の神
__ウラニウム、プルトニウム、ラジウム、エックス__を祀る神殿の聖職者
たちである。

 苛められて育った主人公のミュータントが、知力で暗殺の危機を免れ、
遂には帝国の支配者どころか、太陽系護民官になる教養小説でもあるが、
エンディングの彼のつぶやきが素敵だ。
 原子力エネルギーの理論を得た主人公は、
<[略]「これは・・・人間が宇宙を操っているということだろうか、それとも、
 宇宙が人間を操っているのだろうか」>(p191)と、一足飛びにディックの
世界へと通じる素晴しさである。

 第二篇「見えざる攻防」は、弱視であったヴォークトの体験も生かされて
いるのだろうか? 交通事故で出現した第三の目のトレーニングを通じて、
異次元の地球に行ってしまった男の冒険譚。不死者は出てくるは、人々は
夜になると吸血鬼衝動に駆られるは、これももう少し長い方が効果的だった。
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by byogakudo | 2008-11-01 14:05 | 読書ノート | Comments(0)


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