猫額洞の日々

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2009年 01月 19日

井上友一郎「銀座の空の下」読了

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 銀座と銘打っているが、東京物語の一種として読んだ。

 この短篇集に出て来る人々は、仕事場は銀座だが、
1950年代当時の省線(国電、今のJR)や郊外電車を
使って、職場に向かう。戦前の荷風の時代なら、銀座の
女給・お君さんなぞ、市ヶ谷住まいであったけれど、戦後の
この本での酒場女たちは、阿佐ヶ谷、三軒茶屋、日吉等から
通っている。

 マダム・クラスであっても、五反田駅に近い<ゴタゴタした
商店街の横町に>(p101)ある、六畳間のアパートに住む。
 二十室ほどの二階建てアパートの二階、ドアは内開きだが、
三和土の先には<紺木綿の目隠しカーテン>(p102)が
ぶら下がり、明らかに畳敷きである。
 この章「落葉樹」のヒロインが住むのが、西荻窪。アパートでは
なく、退職官吏の家に間借りしている。

 また、この頃のタクシー運転手は、車は自前であったようで、
「空車」に出て来るタクシー・ドライヴァは、1938年製のおんぼろ
ダッヂを、何とか49年製のビュイックか50年のモーリスに買い替え
られないかと願う。客がやっぱり新車のタクシーを呼び止めるからだ。

 彼が女給たちを送って行くルートを読むのが面白かった。
<[略]伊勢丹のある四ツ角で、左へ切らずに、まつすぐ駅正面へ
行かねばならぬ。そして、ガードを淀橋浄水場の側に抜けて、青梅街道
を都電のレール沿ひに進むのが阿佐ヶ谷への近道である。>(p33)
__といった塩梅。
   (鱒書房 コバルト新書 55初)
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by byogakudo | 2009-01-19 14:10 | 読書ノート | Comments(0)


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