2009年 02月 10日

しつこいが、「いただく」を再考する

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 TVでレストランや料理屋の紹介があると、決まって
ナレーションの結びは、「○○がおいしくいただけます」
である。その度に違和感を覚える。誰に対して「いただく」
と言っているのだろう?
 視聴者にお知らせしているなら、「召し上がれます」
でしょう?

 敬語がおぼつかなくなった場合、敬語表現の主体は誰かと
考えれば、たいてい、見当がつく。「いただく」のは「わたし」
だから、謙譲語である。「召し上がる」のは「あなた」だから、
尊敬語。いつの間にか「いただく」は、丁寧語になってしまった
のだろうか。

 先だって読んだ「飯沢匡の社会望遠鏡」(講談社 78初帯)の
『敬語は愛情』編に「頂く」への違和感が記されていたから、
もう異議を唱えるには遅すぎるかもしれない。

<[略]自宅で自分の調理したものを食べる時に「頂く」とは
いわない。[略]言語の法則である「衆寡(しゅうか)敵せず」で、
このごろはもう平気で「頂く」といってるようだ。 
 しかし言語は原義にさかのぼって考えれば誤らずに済むもので、
[略]富士山が「雪を頂く」といえば頭に雪を冠(かぶ)ることである
のでも判るとおり「頂く」というのは自分の頭より高く持ち上げること
である。[略]その食物に対して敬意を表していることで、これは
賜り物[略]であることを現している。
[略]
 しかし、テレビの料理の先生の大部分は「こうして召し上がりますと」
というべきところを「こうして頂きますと」と表現している。
 [略]
 ひところテレビにむやみと顔を出した、熊本弁まる出しの某女史などが
日本語乱しの張本人といってよかろう。むやみと名詞の上に「お」の字を
つけたりしたのもこの人であるが、何かというとこの人は、自分の育ちの
よさを誇ったからよけいに噴飯したものであった。>(p136)

 そうか、TVの「いただけます」は、レストランのシェフ(!)や料理屋の
御主人に対しての尊敬語用法なのか。客は「いただかせて、いただく」
立場なのね。
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by byogakudo | 2009-02-10 16:48 | 雑録 | Comments(0)


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