2009年 02月 11日

アドルフォ・ビオイ=カサーレス「モレルの発明」読了

e0030187_15482097.jpg









click to enlarge.


 ジャンルを問わず、フェティッシュな感触をもつものに
惹きつけられる。

 コレクター/アーティストの森秀貴氏が、20世紀初頭の
ものであろう、自転車につけて携行するライトを見せて
下さった。かつてはアルコールを燃料にしていたのか、
不思議ななつかしさを感じさせる金属のライトだ。
 両脇の緑色のガラス窓もうつくしく、一見して、
 「ネモ船長みたい!」と思う。ノーチラス号の乗組員が
使う、潜水服やヘルメットのイメージが浮かんでくる。

 「モレルの発明」は「ユリイカ」の中島らも特集の対談で
言及されていて、読まなくっちゃと思った本であるが、
フェティッシュな作風だ。

 無人島に隠れ潜む政治犯の手記をまとめた体裁である。
無人島とばかり思い込んでいたのに、ある日、リゾート客が
やって来る。男は隠れながらも、その中のひとりの女性に
恋して、大胆にも彼らの視線の届く範囲に出没するように
なるが、彼らは誰も男を眼中に留めない。

 じつは彼らは超立体映像中の人々であった、というSF的
展開を見せる。なんという話を考え出したのだろう。
 一行中のモレルが発明した、永遠の午後を留める映画の
中の人々は、いわば不死性を獲得した替わりに個体としての
死を迎え、男も彼女と過ごすために映像中の一員となることを
選ぶ。
 「うる星やつら ビューティフルドリーマー」みたいな
永遠の午後である。あんなにリリカルではなく、「ロビンソン・
クルーソー」を読んだときに感じた、妙に客観的で遠近感のない
タッチが印象的だった。変な魅力とヒューマーのある本だ。

   (水声社 08年新装初帯)
[PR]

by byogakudo | 2009-02-11 15:50 | 読書ノート | Comments(0)


<< ハーラン・エリスン「世界の中心...      しつこいが、「いただく」を再考する >>