2009年 03月 01日

小林力「いかさま奉行 父子目付勝手成敗3」読了

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 時代小説作家としてデビューされて早二年近く、小林力氏の
「父子目付勝手成敗」シリーズも、第三作(通算4冊目)を迎えた。
 題して、「いかさま奉行」(学研M文庫 09初帯)である。

 明るいアクション時代劇の基調は崩れないが、今回は江戸情緒が
香る。特に第一話『鎌鼬』にそれが濃い。

 妻を亡くし、息子に目付職を譲って引退した主人公・海津軍兵衛は、
お正月も馴染みの小料理屋で過ごしている。そこへ事件の話が
持込まれる発端の章、というより舞台風に第一幕と言いたい、この
幕切れがいい。
< 遠くから、太神楽(だいかぐら)か猿回しの太鼓(たいこ)の音が
 かすかに流れてくるだけ。
  正月四日の夜は、なんとなく町も急に広くなったように、しんと
 している。>(p9)__きれいだ。

 第三章、ではなく第三幕の切りも、
< 格子戸(こうしど)があいたとき、冷たい夜気と一緒に、まだきょう
 一日の稼ぎが足らぬのか、万歳(まんざい)のお囃子(はやし)が
 かすかに聞こえた。>(p19)

そして第一話のエンディング(第八幕)。
< 遠くを初午(はつうま)前の太鼓売りが、にぎやかに囃(はや)し
 ながら通っていく。>(p54)

 第一話は岡本綺堂へのオマージュ、ではないかと感じた。
 軍兵衛の勝手成敗のやり方からの連想である。悪徳商人や
悪い御用聞きに対しては髷切り、大本の悪侍に対しては、
雪だるまのようになって待ち構え、切り捨てる。

 前者は「歩兵の髪切り」(という題名だったか不確か)、後者は
「妖婆」の雪の中で切腹している侍の姿が思い出される。
 江戸情緒もむべなるかな、と思ったのだが、どうでしょう。
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by byogakudo | 2009-03-01 14:50 | 読書ノート | Comments(0)


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