2009年 03月 23日

グレアム・グリーン「ブライトン・ロック」読了

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 一度デートしかけただけの男が殺され__警察発表では自然死であるが
__彼の仇を討ってやろうとする私娼は、徹底して現世的である。生きて
いるだけで愉しいと思う質だ。

 彼女は正・不正を厳しく問うが、社会的レヴェルでの正・不正だ。彼女が
追いつめる、骨がらみカトリックの少年少女たちが確信する善悪の問題、
天国と地獄のリアルな存在は、彼女が決して理解し得ない範疇にある。

 少年は地獄に惹かれ、少女は天国を信じるが、それ故に少女は悪の問題、
地獄の存在を彼と同じように認識する。彼らは形と影のように、鏡写しの
カップルである。彼と結婚を誓ったからには、彼女は彼の罪と同じものを
自分にも望む。
 ウォー「ブライヅヘッドふたたび」のジュリアだったかが結局、離婚を
とどまるのも、彼女のカトリック性故にだった、と思い出す。グリーン
「情事の終わり」も勿論そうだった。

   (早川書房 グレアム・グリーン選集第6巻 59初 函欠)
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by byogakudo | 2009-03-23 13:26 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by hiromi suzuki at 2009-03-24 01:03 x
お世話になっております。

『ブライトン・ロック』、ずいぶん昔に読んで内容はうろおぼえになってました。ガルシア・マルケスがノーベル文学賞を受賞したときに、「おなじ“G.G”ならグレアム・グリーンのほうが先だ」と発言したのはどなただったか。ふたたび本棚からひっぱりだしてみようと思います。

ところで以前ブライトンへの旅で、ブライトン・ロック(ビーチにころがる美しい石)を夢中になってひろっていたら、ガラの悪いおにいさんが「窃盗罪になるぞ」(たぶんそんなこと。ただでさえヒヤリング苦手なのにコックニー訛りで)とニヤニヤと通りがかって、ケバケバしい情婦らしき女性が「あんた、日本人をからかうのはやめなよ」(たぶんそんなこと)としなだれかかってました。

海岸沿いではブライトン・ロック(金太郎飴みたいなキャンディ)が、土産物屋の店先で賑やかにかつモノ哀しくケミカルな色彩をはなってました。
Commented by byogakudo at 2009-03-24 14:20
ブライトンというと、映画「さらば青春の光」でしたっけ、スティングが出て
いたのでしか知りませんが、「ブライトン・ロック」が書かれた1938年から
戦後の60年代になっても、イギリスの社会構造は、あまり変っていない
印象を受けました。

ブライトンの石もキャンディもご存知なのがうらやましい。
本の中でのブライトン・ロック・キャンディは、生まれてしまったら
死ぬまで生き続けて行かなければならない、人間の宿命を残酷に
象徴しているのでしょうか?

行ったことはないけれど、ブライトンやコニー・アイランドのような
行楽地のはかなさ、悲哀は、いいなあと思います。今の熱海も
その意味で好きです。と言うと、熱海の方に叱られるでしょうか。


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