2009年 03月 24日
click to enlarge. 「ブライトン・ロック」は丸谷才一訳、「拳銃売ります」(早川書房 グレアム・ グリーン選集第5巻 59初 函欠)は加島祥造訳である。印象がかなり違う。 加島訳で引っかかるのは、やくざ口調の会話だ。頼まれて人殺しをするのは、 たしかにやくざのやる行為ではあるし、不幸な生い立ちで絶望しきった若い男の 口調を表すには、これしかなかったかも知れない。けれども、どうも安直な印象 である。 日活アクションに出て来る、記号化されたチンピラじゃあるまいし、作品全体の トーンやタッチを思うと、やくざ口調が、妙に浮いてはしゃいでいる感じだ。 それに、現実の会話を忠実に文字化したとしても、音声言語のもつニュアンスは 活字からは伝わらない、ということを加島祥造は、どう考えていたのかしら。 どちらかと言えば丸谷才一訳のトーンが好ましいが、丸谷訳にも疑問がある。 1950年代~60年代の翻訳なので訳注が丁寧であるが、登場人物が本から 引用する場合の注が、 <ただし若干の言いちがえをさせている。>(p101) <ただし若干の言い違えがある。>(p203) <ただし若干の言い違いをさせてある。>(p229)と、結ばれる。 ついでに本来の文も、訳してもらいたくなりませんか。何だか気をもたせる 書きっぷりで、原文で読めない読者としては、やきもきする。
by byogakudo
| 2009-03-24 13:52
| 読書ノート
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