2005年 09月 18日

「シルトの岸辺」訂正

~09月15日の続き

 [9月15日にヒロインが最後から2番目の章で演説する云々と書いたが、最後から
3番目の章の間違いです。]

 演説は やはり最終章へのクレッシェンドだった。長い自足と倦怠の日々に倦んだ
個人が、ある日、自殺を選ぶように、国家も自らの破滅を願う日に至る。
 いずれ衰亡すると解っていて、その日がなかなか来ない。その日を待ちかねて、
むしろ我が手で終りを引き寄せようと決意する。__この場面を描くには、精緻な
描写を淡々と連ねて行く、それまでの手法では不可能だろう。だから いきなりの
クロースアップ手法が使われる訳だが、この原型は、第5章 訪問 に描写される
ヒロイン・ヴァネッサの館にかかるロンゴーネ作の肖像画にある。(ちくま文庫版p155-p158)

 祖国の裏切り者である ヴァネッサの先祖=ピエロ・アルドブランディの肖像は、
まさに裏切りの戦闘場面を描いたもので、背景となる戦場は精密に等距離の遠望と
して描かれ、アルドブランディ自身は無関心に正面を(見る者を)向き、篭手を
はめた手で、かつての祖国・オルセンナを象徴する赤い薔薇を揉みつぶしている。

 しかし クレッシェンドでしかも ぽつんと終わる「シルトの岸辺」の読後感は、
とてもアクチュアルな問題を想起させる。
 原作の出版が51年だが、20世紀は 地球の終末を齎す世界戦争の時代であり、
21世紀もそれを受け継いでいる・・・。読み手によって様々な読みが可能であろう。


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by byogakudo | 2005-09-18 16:56 | 読書ノート | Comments(0)


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