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2017年 02月 06日 ( 1 )


2017年 02月 06日

松岡和子 訳『シェイクスピア全集8 テンペスト』読了

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 写真は2月4日(土)の神田須田町界隈で。週末のあの辺は、
観光地になっていた。スケソウダラの配給を待つみたいに、
おそば屋さんに列を作る人々...。

 やっと『テンペスト』読了。噂に違わず、かっこいい!
 たしかにジョン・ファウルズ『コレクター』の二人は、
キャリバンとミランダだ。

キャリバン 確かに言葉は教えてくれた。お陰さまで
 悪態のつき方は覚えたよ。疫病でくたばりやがれ、
 俺に言葉を教えた罰だ!>(p41『第一幕 第二場』)

__『コレクター』に於ける階級差の問題が浮かび上がる。

 しかし、ウィリアム・ワイラー『コレクター』は、配役ミス
とも言えそうな...いや、それは映画版『サイコ』にアンソニー・
パーキンスを当てないで、ロバート・ブロックの描写通りの
ルックスの役者を配するみたいな間違いを犯すことか。
 悪役が主役であっても、観客が感情移入できるルックスで
ないと、誰も見てくれない。
 だから、テレンス・スタンプを選んだのは分るけれど、ただ、
公開当時にあの映画を見た日本の若い女は(ほぼ)全員、テレンス・
スタンプだったら誘拐されたい、ずっと二人きりで暮らしたい、と
望んだ。みんな、彼をキャリバンではなくプリンス・チャーミング
と了解したのだった。これは、ストーリーに影響を及ぼす配役ミス
ではないかしら?

 ミラノ大公であったプロスペローが策略に遭って追放されたとき、
ただひとり秘かに味方したナポリ王の老顧問官、ゴンザーローの
語る理想国家論は、モンテーニュに基づいていると脚注がある。

ゴンザーロー その国では、万事この世とは逆さまに
 事を運びとう存じます。まず一切の商取引は
 認めません。役人の肩書きもなし。 
 学問は教えず、富も貧困も
 労役も皆無。契約、相続、
 境界線、地所、田畑の耕作、ぶどう畑もなし。
 金属、穀物、酒、油の使用を禁じ、
 職業もなくし、男はみんな遊んで暮らす、みんなです。
 女も同様ですが、ひたすら純粋無垢。
 君主もなくし__>(p63『第二幕 第一場』)

__"俺たちはけっして働かないだろう"というルフランが
時々差し挟まれる鈴木創士氏の詩『帝国は滅ぶ』は、この
理想国家が割れた鏡に映った像だろうか。

 プロスペローは高潔な被害者ではあるけれど同時に、
植民地主義者の側面もやはり在ると感じる。不粋なこと
言っちゃうが。
 プロスペローとミランダは、先住民であるキャリバンを
搾取してきた事実がある。プロスペローの魔法は肉体労働
には使えなかったから、仕方なかったのかもしれないが。
 また、プロスペローとミランダには、父が娘に抱く近親姦的
イマージュも、やはり感じる。

 細かい疑問点はいくつも出てくるけれど、台詞のかっこよさは、
もうなんとしよう。

プロスペロー [略]
 余興はもう終わりだ。いまの役者たちは、
 さっきも言ったように、みな妖精だ、そしてもう
 空気に融けてしまった、希薄な空気に。
 だが、礎(いしずえ)を欠くいまの幻影と同じように、
 雲をいただく高い塔、豪華な宮殿、
 荘厳な寺院、巨大な地球そのものも、
 そうとも、この地上のありとあらゆるものはやがて融け去り、
 あの実体のない仮面劇がはかなく消えていったように、
 あとにはひとすじの雲も残らない。我々は
 夢と同じ糸で織り上げられている、ささやかな一生を
 しめくくるのは眠りなのだ。[略]>
(p128-129『第四幕 第一場』)

 エピローグで、プロスペロー役者が素に戻って、観客に語り
かける異化効果もかっこいいし。ほんとになんともすてき。


     (松岡和子 訳『シェイクスピア全集8 テンペスト』
     ちくま文庫 2000初 J)

 p141(『第五幕 第一場』)のプロスペローの台詞、
<だが、この荒々しい魔術は
 この場で捨てる。>で思い出した、メアリー・スチュアート
『この荒々しい魔術』も、読むべき、読んだほうが楽しい?



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/





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by byogakudo | 2017-02-06 21:53 | 読書ノート | Comments(0)