猫額洞の日々

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2017年 04月 04日 ( 1 )


2017年 04月 04日

フレドリック・ブラウン/中村保男 訳『モーテルの女』読了

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 邦題は『モーテルの女』で、たしかにモーテルで女が殺される話だが、
原題は"ONE FOR THE ROAD"。これはどういう意味だろう? 読み
進むと、終りの方で"(バーを)出がけの一杯"という言い方が出てきた。
これだろう。事件解決の様子にも引っかけた言い方だ。

 フレドリック・ブラウンは近年になって、いい作家だと思うようになった。
70年代は、いわゆる気の効いたSF短篇の作家くらいにしか思っていなかった
(し、それゆえに忘れ去った作家だった)けれど、アムおじさん・シリーズ
(エド・ハンター・シリーズ)を続けて読んで、50年代・教養小説の感じの
よさに、あらためて好きになった。

 シカゴという大きな都会の片隅で送られる小さな生活が描かれたのが、
エド・ハンター・シリーズ第一作だった。
 国家としてのアメリカは巨大だけれど、人々の生活は人並みサイズでしか
なかった時代。小売店や中小企業など、小さな仕事で人々が生計を立てら
れた時代へのノスタルジーが、フレドリック・ブラウンを心地よく読むこと
と繋がっているのかしら。

 『モーテルの女』でも、主人公の青年は、新聞記者になりたいと願って、
まず、小さな町の週に一回だけ発行される新聞社からキャリアを始める。
その町で電話交換手をする娘と知り合い、ふたりは彼がひとりで二人分
稼げるようになったら結婚しようと約束する。

 事件なぞ何も起りそうもない町だが__そういうところに限って起きるん
だって!__、主人公と同じように、よそから来た女性がモーテルで殺される。
 地元出身である警察署長は、顔見知りばかりなのでどうも聞き込みしづらい。
青年は、彼のよそ者性を活かして町の人々に聞き込みを続け、事件解決、彼女
との結婚も可能になる。

 町の人々の、こじんまりした生活ぶりの描写がいい。警察署長はいつも奥さん
に電話してるし、バーの主人はむかし歌手だったので、ときどき美声を披露する。
モーテルの女主人が詮索好きだったり、新聞社の社長はケチだ。
 契約のとき、先に期限を決めておかなかったせいで、主人公は安月給の年季
奉公みたいな境遇に置かれる。
 ほろ苦い生活感がすてき。


     (フレドリック・ブラウン/中村保男 訳『モーテルの女』
     創元推理文庫 1967初 J)



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-04-04 23:04 | 読書ノート | Comments(0)