猫額洞の日々

byogakudo.exblog.jp
ブログトップ

2017年 04月 21日 ( 1 )


2017年 04月 21日

フレドリック・ブラウン/高見沢潤子 訳『彼の名は死』読了

e0030187_2217779.jpg












 昨日は失礼しました。出かけていて帰りが遅かったので。

 数日前に読み終えたフレドリック・ブラウン『彼の名は死』、
『悪夢の五日間』と似た印象をもつのは、主人公の当意即妙と
いえば当意即妙、だが作話症めいた嘘のつきっぷりが、そう
感じさせるのだろう。

 『悪夢の五日間』の主人公は妻を誘拐された被害者だが、お金の
工面に当り、友だちに下手に事情を話して警察が知るところとなって
は妻が危険に曝されるので、次から次へと嘘の説明をする。
 『彼の名は死』の主人公は印刷所経営者。妻を殺したのに捕まら
なかった犯罪者だ。さらに偽札を作って金持ちになろうと不届きな
ことを考えるが、まだ使う予定でなかった偽札が流通しそうになり、
慌てて回収する。その際、嘘に嘘の口実を重ね、殺人を重ねる羽目
になる。"殺人は癖になる"、まったく。

 ふたりとも小説家を志望すればよかったのに、作話症の才能が
活かせたのにと、読み手は思うのである。それぐらい流暢な嘘話を
転がし続ける、小説批評的メタミステリかとも思われる書きぶりだ。

 『彼の名は死』の第一章は『彼女の名はジョイス・デュガン』、
第二章『彼の名はダリュウス・コン』等々、登場人物を紹介しながら
物語が動く。
 第七章『私の名はジョイス・ウィリアムズ』のジョイスは、第一章と
同一人物で、彼女の旧姓である。デートをすっぽかされ、ひとりで
犯罪映画を観るシーン__

< 少しずつ彼女は映画に興味を持ちはじめた。ほんの少し__[略]
 __<わたしは殺される>とよく似ていた。だれかが殺そうとしている
 女の話だった。しかし、<わたしは殺される>では、とにかく、しばらく
 してからだれかが殺そうとしていることを知ったのだ、そして助けを
 もとめつづけてそれができなかったのだ。この映画では、女と犯人の
 間でカット・バックがあり、観客は、女が危険であることを知っているが、
 女は知らない。[略]そしてその危険は、映画がすすむにしたがって
 ずんずん近づいている。>(p182)

__こういう箇所に、作者の自己言及性を感じる。フレドリック・ブラウン
って、こんなに変な作家だったかと、認識を改めるのだ。


     (フレドリック・ブラウン/高見沢潤子 訳『彼の名は死』
     創元推理文庫 1974年5版 J)



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 昨日4月20日付け「東京新聞」1面、『平和の俳句 戦後72年』
には81歳の女性の句が取られている。

<多喜二多喜二総理の夢に現れよかし>

 小林多喜二は1933(昭和8)年2月20日、特高警察に虐殺された。





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2017-04-21 23:08 | 読書ノート | Comments(0)