猫額洞の日々

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2017年 08月 28日 ( 1 )


2017年 08月 28日

(2)大泉黒石『黄(ウォン)夫人の手 黒石怪奇物語集』読了

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~8月25日より続く

 全8篇中、最後から2番目の『青白き屍』が好きだ。ロシアの
脱獄囚・ロザノフの逃亡奇譚だ。

 逃げ出して隠れ潜んだ家の瀕死の老婆は、彼を僧侶と信じ
込んで死ぬ。脱獄囚を追跡する馬車の音が聞こえた。
 彼は獄卒と巡邏を逃れ、さらに逃亡を続け、雑貨屋の店先に
倒れ込む。ここまでは一人称的に、彼の泡立つような焦燥感
に読者を引き摺り込む書き方である。追われていることしか
分からない。
 倒れ込んだ先で、ようやく彼の風体が描かれ、逃亡への経緯が
語られる。彼の口を通した話なので、真実か虚偽かは不明だ。

 女将の目に映るのは、囚人らしく髪の毛を刈り上げられているが、
<微妙な鑿で削られたような女だちの痩せた柔らかい頬(ほお)
 [略]
 仏蘭西(フランス)風の女袴を佩(は)いて、襞(ひだ)を摘み上げて>
(p176)いるのがふさわしい、優美な若者である。

 しかし彼女は、ロザノフの白い左腕に彫られた、
<筋かいに組まれた人間の脚骨と、桃の実とが、鮮やかな緑と紅に
 豊かに浮き出た色艶>(p179)の刺青(いれずみ)を見てしまう。
 牢獄の中で無理強いに入れられた刺青である。

<囚人服を脱いだロザノフの肌は美しかった。そのうちで腕は優れて
 妖艶に見えた。こんな誘惑性の恐ろしいものに向かって、正直に
 美しいと言う言葉が適用出来るなら、正(まさ)に美しかった。
 [略]
 もしそのとき、亭主が居合わせなかったら、恐らく囚人の腕に接吻
 したかも知れなかった。>(p179)

 ロザノフはパンと紅茶を恵んでもらって雑貨屋を去り、塩坑に潜む。
10年後、石筍の中に閉じこめられた彼の立像が発見される、という
結末だが、小説全体のバランスは変だ。
 小説の結構を問題にするのではなく、自分の描写したい箇所を、
時間をかけ(字数を費やし)、デッサンしたいという作者の欲望で
あろう。表現主義的だ。

 由良君美による解説、2篇が収められている。引用された『俺の
自叙伝』が面白そうで、これも文庫化を望む。ビート文学の先駆
といえるのに、もっと手軽に読めないだろうか。


     (大泉黒石『黄(ウォン)夫人の手 黒石怪奇物語集』
     河出文庫 2013初 J)




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by byogakudo | 2017-08-28 21:09 | 読書ノート | Comments(0)