猫額洞の日々

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カテゴリ:読書ノート( 2447 )


2017年 11月 18日

エヴァンズ&ホールドストック編/浅倉久志・他訳『アザー・エデン』読了

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 初めの3篇を読んだとき、もしやこれは大傑作/名作・短篇集か
と予感したが、全部読み終わると、好みの問題があるので全篇・
大好きとは行かない。濃淡が出てくる。それにしても、こんなに
すばらしい短篇ばかり集まっているのは壮観というか、壮挙って
いうのか。
 暗いトーンの物語がほとんどで、まさにわたしの好みだ。暗いか、
或いはまったくの馬鹿話か。好みは両端にあるが、いちばんSFから
遠い『ささやかな遺産』(M・ジョン・ハリスン/中村融 訳)に、
いちばん感激した。

 作家の兄が急死する。妹が遺稿を整理することになり、兄の家を
訪れる。残されたノートを読みながら、妹は兄が生きているかの
ように、ひとつひとつに反応する。記述された言葉は現実の一部
として、現在形で再生される。
 
<流行遅れのきつい香水の匂い[略]__むっとする、ビザンチン
 風の香り。>(p73)__これは妹が嗅いだ偽臭かもしれないが、
香りと誰かがいる気配がして、戦争(第二次大戦)の記憶が甦る。
戦争は終わり、平和な時代のはずなのに、冷戦という名の戦争、
殺戮が続く。

 帰りの列車で遭遇した火事の臭い__ここでも匂い/臭いだ
__が、アウシュビッツの死者たちの気配を立ちのぼらせる。


 落着いてタフなフェミニズムSF『きず』(リサ・タトル/乾遥子 訳)、
『掌篇三題』の『豚足ライトと手鳥』(ギャリー・キルワース/大森望
訳)の乾いて妙な身体改変譚、これらが好きだ。

 80年代までは、暗い趣きの、翻訳SF短篇集が出せたのだろうか。
くたばれ、"読みやすい"小説...。


     (エヴァンズ&ホールドストック編/浅倉久志・他訳
     『アザー・エデン』 ハヤカワ文庫 1989初 J)





呪 亜屁沈臓/呪 汚池腐裏子/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/呪 吐爛腐・夷蛮禍/

 安保関連法(こと戦争法)の本会議投票行動(PDF)東京都の
安保関連法(戦争法)に賛成した議員名


 共謀罪強行成立記念! 安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る
「共謀罪トンデモ答弁・暴言録」


 【票を入れるな危険】日本会議所属の都議候補一覧

 小池百合子氏 日本会議“本流”から外れた愛国者

 「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動

 上記のPDF





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by byogakudo | 2017-11-18 22:21 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 11月 09日

結城昌治『暗い落日』読了(紙上東京散歩/アパート考察)

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 家出した娘の行方を探してくれと、大金持ちから私立探偵に
依頼がある。探偵は以前、警察にいた。いまは事務所(兼住い)
で、ひとりで仕事をする。

 主人公の一人称の視点で書かれるハードボイルド・ミステリだが、
東京と近県を動きまわる主人公とともにする、紙上・東京散歩として
読んだ。探偵は、車で移動する。着いたら歩き廻る。土地の描写に
加えて、住いの描写もある。

 まず、依頼主の大金持ちの家に呼ばれる。

< 磯村英作(いそむらえいさく)の邸は田園調布の高台にあった。
 美しく刈りそろえた杉垣沿いに車をとめた。石造りの門から奥まった
 玄関まで、植込みに狭められた道は飛石を埋め込み、黒い土は昨夜の
 雨がしみこんでいた。
 [略]
 静かな公園があり、高台から南へ坂道を下りれば、多摩川の流れが
 早春の日射しを銀色にはね返している。>(p7)

 娘は自分の車、水色のブルーバードで出かけたきり、戻っていない。
19歳の劇団員(まだ"前衛"演劇ではなく、新劇系だろう)の娘に車を
買い与えるほど、お金持ち。原作刊行は1965年だ。

 次は、娘の恋人が助手として働く、北青山の写真家(当時の最尖端・
お洒落な職業)のスタジオに向かおうとするが、彼は欠勤している。
 代りに娘の演劇関係の女友だちを訪ねる。

< 渋谷区神山町__双葉荘はモルタル塗り二階建ての小さな
 アパートだった。
  部屋はコンクリートの狭い廊下の両側に並んでいた。>(p27)

__この形式のアパート時代も長い。これは内廊下式だが、外階段・
外廊下式が、この後に出てくるのではないか。

 向かい合わせに部屋を取り、間に廊下を通すと、居住空間が狭くなる。
だから、共用トイレットに共用流し(洗面台兼用)である。
 お風呂は銭湯に行くとしても、トイレットが個室内に欲しいと、まず声が
上がる。次いで、やっぱりお風呂もなきゃ、銭湯は好きな時間に入れないし、
定休日がある、と。
 バス・トイレット付きのアパートが増えるのと銭湯の減少とが反比例する。
 
 浴室とトイレットを別々でなく一カ所にまとめたとしても、内廊下を
挟んで向かい合わせの部屋を作るには、大きめの敷地が必要だろう。
外廊下に各部屋のドアが並ぶ形式なら、浴室・トイレット付き個室が
なんとか確保できる。
 戦前に建てられたアパートは内廊下式、戦後ある時から外廊下式になる
と感じられるが、アパートの形式の変遷について、何を読めばいいだろう?

 女友だちから、娘を渋谷のジャズ喫茶で見かけたひとがいる、という話を
聞く。「ブルー・モンク」という喫茶店だ。
 <道玄坂の途中を左に折れた繁華街に>(p119)あるという設定。
 探偵は自分の事務所から車で行くが、事務所兼住いの場所だけ、どことも
書かれていない。左折して繁華街、というと65年頃なら、坂を渋谷駅方向に
下って左手、百軒店だろうか?

 娘の恋人が両親と暮らす家に向かう。

< 魚籃坂(ぎょらんざか)下の交番で道順をきいた。
  坂の途中に左折できる道がなく、坂を上がりきって迂回した。一帯は
 大小の寺が多い。家々が狭い道の両側に軒を接し、魚籃坂下の騒音も
 ここまでは聞こえず、静かな住宅地だった。
  幾度も道を曲り、同じ道に出たりしてようやく[略]表札を探しあてた。
 古びた平屋だった。門の木戸が半開きのまま外れていた。一またぎすれば
 玄関だった。建物は古いがそう貧しい造りではない。>(p55)

 恋人の家庭は崩壊している。母親はアルコールに、父親は女に溺れている。
父親の愛人(バー「モルト」ホステ