猫額洞の日々

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カテゴリ:読書ノート( 2344 )


2017年 05月 23日

(2)川本三郎『東京つれづれ草』読了

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~5月22日より続く

 忘れないうちに『VI町を歩いて美術館の中へ』の『ロバート・
ベイツマン』から引用__

< ベイツマンの絵を見ているとカナダが生んだ名ピアニスト、
 グレン・グールドのエピソードも思い出す(湯川豊「イワナの夏」
 ちくま文庫、に書かれている)。グレン・グールドの父親は釣りが
 大好きだった。しかし、グレン・グールドは無益な殺生が嫌いだった。
 そこで彼は十年がかりで父親を説得して釣りをやめさせたばかりか、
 青年時代、夏を過ごす湖で、モーターボートを繰り出しては釣り人に
 「釣りをやめろ!」と絶叫してまわるのを日課にしたという。カナダの
 ピアニストらしいいいエピソードだ。>(p244)

__"絶叫してまわるのを日課にした"グールド。すてき。

 さて次は、『Vこの町はいつか来た町』の『寅さんの旅』から__

< 寅さんが泊まるのはたいてい商人宿である。[略]ローカル線の
 駅前にあるような小さな商人宿。[略]坊主畳の部屋のなかで、
 こたつにあたってお銚子が二、三本。酒の肴は刺身か焼魚。この
 しがなさ、せつなさがまた男の一人旅の良さである。「夜風が
 こたえるぜ」と背中を丸めてわびしいことを呟いても、男は、案外
 そのわびしさが楽しいのである。落魄(らくはく)の気分に酔いたい
 のである。>(p231)

 また、『エピローグ夕暮れの町』の『場末の映画館が隠れ家だった
ころ』では、
<七〇年代に"映画感傷旅行"の仕事>で<場末のピンク映画館ばかりを>
歩いたが__

< どこもうらぶれた、わびしいションベン・キネマだった。お客は映画を
 見に来るというよりも、暇つぶしや睡眠のために来ている方が多かった。
 それでも、やさぐれた場末の映画館の雰囲気は、私の気分には合った。
 [略]
 荒んだ映画館でひとりスクリーンに見入っていた。
  町歩きは昔から好きだったから、映画館に行くことは、町歩きの楽しみ
 にもなった。映画を見たあと、立石や南千住の赤提灯で安酒を飲むのが
 また落魄(らくはく)の感があってこたえられなかった。>(p290-291)

__わかっちゃいるけどやめられない"落魄"志向、"やつし"である。
自覚してるから、まあいいか。

 小林信彦だったか、コラムは執筆時現在のできごとを取り上げることが
多いので、一冊にまとめる際、初出年月日を添えないと話が通じなくなる、
というようなことを書いていた。
 1980年代以降、できごとの消費速度が烈しい。川本三郎『東京つれづれ草』
には1990年代ころのコラムが収録されているが、1990年とて今から20年前
である。

 『I心地よく秘密めいた町』の『都市のなかの緑』で、荒川が人工の川であり、
明治神宮の森が人工の森であると述べて__

<私たちは現在、大正時代の人間によって作られた川や森の恩恵を受けて
 いるのである。
  だからこんどは私たちの世代が次の世代に緑や自然を作りだしたい。
 新橋駅の東側に広がる旧国鉄の広大な跡地を見るたびにここを緑地に
 したらどんなにいいかと思う。>(p54)

__1993年に秘かにそう願われた跡地が結局、"汐留シオサイト"になる。


     (川本三郎『東京つれづれ草』 ちくま文庫 2000初 J)


呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 15:36 - 2017年5月22日





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by byogakudo | 2017-05-23 21:52 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 05月 22日

(1)川本三郎『東京つれづれ草』半分弱

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 文字の大きさにつられて、川本三郎『東京つれづれ草』を開く。
 
 『IIIひとり遊びぞわれはまされる』の『文士のたしなみ』では、
青木玉『小石川の家』で幸田露伴の「経師(きょうじ)、表装などは
男の嗜(たしな)み」という言葉を読んで、荷風『断腸亭日乗』での
漠然としかわからなかった記述に合点が行く。

< 大正六年九月十七日。「燈下反古紙にて箱を張る」
  大正八年十一月二十八日。「燈下臙脂(えんじ)を煮て原藁用紙
 罫紙を摺る」
 [略]
 露伴の言葉ですべてが理解出来る。不用の紙で箱を作ったり、
 原稿用紙の罫線を版木で摺ったりするのは、「男の嗜み」、
 文人趣味だったのである。
 [略]
  荷風と親交のあった堀口大學の語っているところによると(関容子
 「日本の鶯堀口大學聞書き」)、荷風は女性に封書を出すときは細身
 の封筒を自らこしらえ、それを使ったという。さらに海外にいる
 堀口大學に手紙を書くときは、アドレスの英字をやはり手ずから
 こしらえたインクを使い毛筆で書いた。
  「その赤黒いインクは、くちなしの実をすり潰した汁でつくった
 ものですって。そういうところにまで(荷風先生は)風流をお楽しみに
 なるのだね」
 [略]
 「日乗」大正十三年四月二十三日にある「(略)生薬屋にて偶然梔子
 (くちなし)の實を購得たり」の「梔子」とはこのインクのためだった
 のかと納得する。
  今東光「十二階崩壊」によれば、荷風は書き損なった原稿用紙の
 反古はこまかく切って観世縒(かんぜより)にして貯え、出来あがった
 原稿を綴じるときなどに使ったという。>(p107-108)


     (川本三郎『東京つれづれ草』 ちくま文庫 2000初 J)

5月23日に続く~


 昨日のEP-4、とってもよかったみたい! s.h.i.

 東京でも!
<【決定】EP-4[re:imagined]TOKYO 昨夜大盛況だった
 EP-4 5・21[re:imagined]の東京版が7月8日土曜日に
 開催されることになりました。京都での公演を観に来られ
 なかった方もぜひ足をお運びください! #EP_4>
(17:27 - 2017年5月21日)



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 【全訳きました!】国連報告者が安倍首相に共謀罪法案を懸念する
緊急書簡を送付
 





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by byogakudo | 2017-05-22 15:27 | 読書ノート | Comments(2)
2017年 05月 21日

(1)遅々として荒畑寒村『寒村自伝』上巻1/2

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 最新刊の岩波文庫を見ていないけれど、どうして復刊・復刻するとき
に文字サイズを大きくしないんだろう? ジャケット付きの1999年9刷
で読んでいるが、文字は1975年1刷のまま、と思われる小ささだ。
 ややヤケの紙面と相俟って目が辛い。本の形態にしがみつくのは圧倒的
に老人が多いのに...。Kindleは目が楽な電子書籍と聞いたが、直接光は
やはり疲れるだろう。

 というのが表立った言い訳。なかなか進まないのは、もちろん、わたしの
基礎知識不足のせいだ。

 『第2章 週間『平民新聞』』には日露戦争当時の日本とロシアの状況説明
が続く。ロシア革命が起りかけているロシアと、労働運動が芽生えている
日本である。漠然としたイメージしか持ってないので、つっかえながら読む。
やっと菅野須賀子との恋が出てきた。

 矢野誠一『文人たちの寄席』で知り、いつか読みたい本リストに挙って
忘れていたのを、いまやっと読んでいる。リストは長い。いまや、読んだら
すぐ忘れるし、これ以上長生きすると、目が文字を追うだけで何を読んでる
のか分からない身体になりかねない恐怖がある。

 『文人たちの寄席』は、『梟通信〜ホンの戯言』2010年5月15日に簡約
紹介されています。

 で、『寒村自伝』では荒畑寒村の記憶のよさに驚かされる。幼少時に
見聞きした見世物や芸人たちについて、あるいは寺子屋式小学校について、
昨日のことのような鮮やかさで、細かく詳しく書かれている。

< 要するに、私の幼少のころはまだ多分に江戸時代の風俗がのこっていた
 ので、現に母や叔母も唐金(からかね)の鏡を用いて歯を染めたり、芝居の
 髪結新三(かみゆいしんざ)のように鬢(びん)だらいをさげた廻り床屋(どこや)
 に顔を剃らせたりしていた。何しろ憲法発布、国会開設の二年前に生まれた
 [注:1887=明治20年]のだもの、私の住んでいた世界が前資本主義時代の
 古色蒼然(そうぜん)たるのも当然であろう。>
(p34『遊廓という別世界』『第1章空想少年の生い立ち』)


     (荒畑寒村『寒村自伝』上巻 岩波文庫 1999年9刷 J)



 もうすぐ7pmだ。始まりだ。
<【いよいよ本日!!!!! EP-4 5・21 in Kyoto】本日京都快晴なり。
 当日券あります。19時開演。EP-4の代表曲を全く新しいアレンジで
 再構築、仲間アーティストたちを加えた複数名でのシームレス・
 セッション・スタイルの今年のEP-4。間違いなく刺激的になる
 はず! 続>
(18:56 - 2017年5月20日)




呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 <報道特集。共謀罪について亀石弁護士の指摘。「法案賛成の
 立場の人も他人事ではない。時代が変われば自分が少数者に
 なる可能性もある。自分が排除される側になるかもしれない。
 そういう危機感は今はないのかもしれない」。法律は一度出来ると
 長く存在し続けるのだし、十分考えられる話なんですけどね…>
(2:11 - 2017年5月20日)

 安倍首相の国会答弁 あまりに下品で不誠実で幼稚
(『松尾貴史のちょっと違和感』)





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by byogakudo | 2017-05-21 18:35 | 読書ノート | Comments(3)
2017年 05月 20日

今週のホイホイ(12)『アトレイデスの血』に追加

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~5月17日より続く

 J=P・シャブラン判事が好きだと言ったが、もう一カ所、ノートして
おきたい数行があった。

 判事は或る女性と一夜をともにした。彼女のかつての愛人たちと
自分とを比較して__

<幻想だ! シャブラン判事は不屈の自尊心の持主だったが、虚栄心
 には無縁だった。恋愛において、彼は自分がほかの男より強いとは
 思っていなかった。むしろほかの男より劣るとさえ思っていた。忘れ
 がたい存在だって? そんなばかな!>(p236-237)

__こういう無私の(?)ナルシシズム、わかるなあ。自己満足している
自分自身は許さないが、自分の欠点や弱点をひとごとのように認め得る
自分自身には、満足する。

     (ピエール・マニャン/三輪秀彦 訳『アトレイデスの血』
     創元推理文庫 1981初 J)



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

<昨日の総務委。マイナンバーカードに記載されている氏名、住所、
 顔写真などの個人情報が、マイナンバーを管理する機構から警察に
 提供されていたことが明らかに。警察のもつ顔認証システムや監視
 カメラと組み合わせれば、特定の人の私生活を覗き見ることができる。
 「共謀罪」のでっち上げに使われる。>
(7:37 - 2017年5月17日)





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by byogakudo | 2017-05-20 20:20 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 05月 17日

ピエール・マニャン/三輪秀彦 訳『アトレイデスの血』読了

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 原作、1977年刊のフレンチ・ミステリ。初めはなかなかノレな
かったけれど、徐々にノッてきて、最終的にかなり楽しくなる。

 フレンチ・ミステリだけれどパリが舞台ではなく、プロヴァンスの
ディーニュ。若い男が的確な小石の投擲によって殺される事件が続く。

 主人公、ラヴィオレット警視は第二次大戦の兵士であり、定年まで
あと3年らしい。彼とわりとウマが合うシャブラン判事は、

<「たしかにぼくは一九六八年に([略])石をいくつかCRS(警察機動隊)
 に投げつけましたよ、でもそのために一人も死ななかったようには思え
 ませんが......」
  「彼らはヘルメットと楯(たて)を持っていたのですよ」
  「なるほど、しかしとてもでっかい敷石(しきいし)でしたよ......」
(p33)という経歴だから、1977年頃なら30歳くらいだろう。
 警視も判事も頭が切れ過ぎて、左遷されているようだ。

 いちおう連続殺人事件なのだけれど、立て続けではないし(街や人々
の生活描写・風俗描写に、筆も読者も気を取られて、連続感が薄い)、
フレンチ・ミステリらしいといえば、らしい。
 犯人像の描写に至れば、ギリシャ悲劇的・恐るべき一家が描かれる。
これも、らしい設定だ。

 退屈なのかと聞かれれば、ミステリを風俗小説として読む手合いだし、
シャブラン判事は好みなので、充分に楽しかった。

 出身大学の教授から<腹黒い極左主義者>(p22)と呼ばれ、

<こと恋愛に関しては、抵抗が多くて、肉の香りがぷんぷんして、
 てらいのない恋愛しか好まないシャブラン判事は、この都市でも
 十分に楽しめるものを見出していた。彼にとって、ボヴァリイ夫人と、
 レナール夫人([略])とは到達すべき二つの山頂だった。[略]
 彼はネックレス、指輪、入念な清潔さ、適当な長さのツーピース、
 しわのよっていないストッキングなどを愛した。幸いなことにここでは、
 まだためらいがちながら、残り時間にせきたてられ、そのことを強く
 意識している三十歳から五十歳までのあいだの婦人たちが不足して
 いなかった。>(p23-24)

 ルックスについては、
<髪粉をよくつけていないロベスピエールのような鋭い顔つき>(p26)
と描写されるのだ。


     (ピエール・マニャン/三輪秀彦 訳『アトレイデスの血』
     創元推理文庫 1981初 J)

5月20日に続く~



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 慶事に水をさすようなことをいうけれど、プレ婚約発表は
共謀罪から目を逸らさせるためにリークがあったのでは?

 「花見にスマホ持参で逮捕」低レベルすぎる国会審議で共謀罪を採決か
―答弁できない法相、日本語歪める首相


 「そもそも、云々は"でんでん"とも読める」という閣議決定も
あったんじゃなくて?!
 戦犯の孫息子がまた戦犯になろうとしてる。





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by byogakudo | 2017-05-17 22:02 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 05月 15日

久生十蘭『真説・鉄仮面』読了

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 「ルイ14世は偽物で、ほんとの王様は鉄仮面だったっていうのよ」
 「へえ、『王子と乞食』みたいなの?」
 「うーん、むしろ、逆・天一坊かな?」

 鉄仮面の周囲の人々は大きな分類では、支持者と反対者に分かれる。

 支持者は彼のためを思い、王権を狙わず、ひっそり静かに暮らさせて
あげようと尽力する一派と、彼の本来持つべきであった権力を使おうと
する一派に分かれる。後者はフランス国内の隠謀派と、正統な王様と
して外国で即位させ、フランスの力を削ごうとする外国勢とに分かれる。
 現・ルイ14世の体制を維持した方が自分のためになるので、あくまでも
鉄仮面を幽閉し続けようとする体制維持派が、鉄仮面の反対者だ。

 しかし、主人公・鉄仮面は、彼自身の欲望がそもそも希薄だ。空っぽで
非在の人。鉄の仮面の下に虚無の空洞をかかえているような存在だ。
 彼は自分が本来持つべきであった"権力"を理解しない。だから、人々の
欲望の反射板として存在することになる。

 エンタテインメントなら、主人公とその支持者は善人、反対者は悪人に
描かれるものだが、どんな立場の登場人物にも冷静で厳格な久生十蘭
なので、そんなシンプルな記述はしない。

 鉄仮面はあまりに不用意、ナイーヴ過ぎて地に混乱を引き起こすだけ。
 支持者も彼のためを思ってする自分の行動が、無私の行為ではなく、
自分のエゴを反映させているのを知っている。
 反対者もまた、鉄仮面を幽閉する自分の行為が誉められることではない
と分かってやっている。

 鉄仮面という非在の人の死を受け、支持者と、幽閉した側とが並んで、
埋葬に立ち会うエンディングである。

 なんだか天皇制の話なのかしらって気さえする。


     (久生十蘭『真説・鉄仮面』 講談社大衆文学館文庫コレクション
     1997初 J)



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 創価学会員50人に聞いた 「あなたは共謀罪に賛成ですか」
<「中身がよく分かりません。公明党は賛成しているのですか」
 (50代女性)、「知らん。興味ない」(60代男性)、
 「名前は聞いたことがある」(20代男性)。>

 (政治断簡)おごる首相がつかんだ「コツ」
<長年、安倍氏と対決してきた長妻氏によれば、「最近、首相は
 変なコツをつかんだ」そうだ。

  いわく、(1)質問に答えずにはぐらかす(2)ヤジに反応する
 (3)ヤジに対して長々と反論をして時間をかせぐ(4)「だから
 民進の支持率は上がらない」という民進批判に切り替える、
 という流れで追及から逃げ切る「コツ」。これでは議論が深まる
 はずもない。>





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by byogakudo | 2017-05-15 21:48 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 05月 11日

鹿島茂『フランス歳時記 生活風景12か月』読了

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 『パリの異邦人』は文芸評論あるいは評伝だったが、こちらは
もっと実用書だ。

<どんなにフランスが身近になっても、実際に自分の肉体をかの地に
 置いてみないと絶対にわからないものがある。フランスの四季折々
 の季節感と空気である。
 [略]
 季節感あふれる祝祭や行事が行われるとき[略]、人々はケルト=
 ゲルマンの原始宗教やキリスト教に起源を持つ花や植物などを
 手にして、歓びをあらわにした。
 [略]
 都市生活の進展で、自然が急激に失われたいまでも、フランス人は、
 花や植物で、季節の移ろいを意識するのである。[略]季節の移ろいは、
 カトリックの国フランスでは、守護聖人の名前と密接に結びついている。
 なぜなら、一年の三百六十五日に守護聖人が割り当てられ、[略]
 フランスの歳時記を書こうとすれば、どうしても聖人カレンダーを参照
 しなければならなくなる
 [略]
 本書では、毎月の風物や行事を中心としたエッセイに、その月の有名な
 守護聖人を農事暦とともに紹介したエッセイを継ぎ足すようなかたちに
 して[略]季節ごとの風物を味わいながら、その背景となっているキリスト教
 信仰(あるいはそれに覆い隠されている原始宗教)のバックグラウンドが理解
 しやすくなる>ように、さらに

<フランスの文化人のミニ・バイオグラフィーを付録として添え>、

<フランスの文化と文学に親しんで>もらうことを意図して書かれている。
(p1-3 はしがき)

 もとになったのは__
 セゾン総合研究所発行「生活起点」1998年5月号から1999年5月号まで
連載された『歴史に見る生活風景』、
 日本放送出版協会発行「NHKテレビ フランス語会話』2001年4月号から
2002年3月号まで連載、
 共同通信社配信の「信濃毎日」ほか各紙に1999年1月から1年間連載
__された文章である。

 鹿島茂はガイドブック風の本もよく書く。飲み食いとショッピング以外の
パリやフランスに目を向けると、もっと面白く味わえるのに、という思い
からだろうか。

<自分がほしいものは自分で作ってしまえばいい>ということで、
<三百六十五日の守護聖人とそれぞれの守護分野、象徴的な事物
 (エンブレム)を網羅し、サービスとして多少の占い的要素も加えた
 一種の聖人カレンダー『バースデイ・セイント』(飛鳥新社)>も出した
そうだ。(p11 『4月の守護聖人』『4月』)
 手近にあると、翻訳小説を読むときに何かと便利だろう。

 『11月にまつわる文化人』として、マリー・キュリーが取り上げられる。

<故河盛好蔵先生の自慢の一つは、マリー・キュリーの娘の書いた母親
 の伝記を『キュリー夫人伝』として翻訳するよう、出版社に働きかけ、
 戦前の大ベストセラーにしたことだった。
  先生が、これは日本で受けると考えた理由の一つは、この本が一つ
 の貧乏物語であることだった。つまり、向学心に燃えてポーランドから
 パリに出てきた若い女性が花の都で貧困と不幸に耐えながらラジウムを
 発見するまでの過程が、日本人の琴線を刺戟するとにらんだのである。
  この読みは見事にあたり、作家の井上ひさし氏などは、これを貧乏生活
 マニュアルとして読み、寒いときには新聞紙を毛布代わりにする方法など
 を学んだという。
  しかし、日本人には受けたマリー・キュリーの刻苦勉励(こっくべんれい)
 の生活の裏にはもう一つの大きな苦悩があった。それはポーランド国籍の
 ユダヤ人という出自に対するフランス人の偏見である。>
(p154-155)


     (鹿島茂『フランス歳時記 生活風景12か月』
     中公新書 2002初 J)



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 日本会議の抱える“後ろめたさ”とは?

< 「日本会議が進めている運動には、憲法改正と天皇『元首』化、
 歴史認識と教育、靖国神社や夫婦別姓反対、領土問題や安全保障
 など多数ありますが、彼らは課題ごとにそのつど運動の前面に立つ
 組織を結成します。だからみんな同一の人物がやっている素の顔に
 なかなか気付かない。たとえば改憲であれば『美しい日本の憲法を
 つくる国民の会』、教育分野では『日本教育再生機構』などですね。
 みんな日本会議による運動の一環であることを社会的に秘密化して
 いるのです」>

< 「調べていくうちに、教科書以外の集会でも日本会議に所属する
 宗教団体が信者を組織動員していることがわかってきた。2003年1月
 には、『つくる会』の主要メンバーが日本会議と協力して『「日本の
 教育改革」有識者懇談会』(民間教育臨調)という団体を立ち上げます。
 これは、教科書問題と隣接した教育基本法の改悪を目的とする組織です。
 東京で1200人を集めました。その中心となって全体を統括していたのが
 生長の家出身者です。そしてやはり、民間教育臨調の“裏の事務局”は
 日本会議であり、集会の聴衆も関東の宗教団体を組織動員した形跡が
 見られました。日本会議が宗教右翼に支えられていると確信しました。
 東京でも、大阪の1997年の集会と同じ構造で右派運動が作られていた
 んです」>

< 『日本会議とは何か』の44〜45ページに上杉は、国立公文書館に所蔵
 されている「日本国憲法最終案」の画像を大きく掲載した。黒字になって
 いるのは、GHQ案をもとに日本政府が帝国議会へ提出した改正案。その上
 から赤字で修正している大半の部分が、当時の衆議院と貴族院によるものだ。
 前文にも9条にも、徹底して細かな修正を加えていることがわかる。1946年
 10月7日、議会はこの最終案を枢密院へ提出。同年11月に日本国憲法は公布
 された。

  「この文書こそ『日本会議とは何か』における“命”のページと言ってもいい。
 赤い文字は誰が書いたのか。日本のそれまでの歴史のなかで、もっとも民主的
 な選挙で選ばれた国会議員が書いたのですよ。日本人みんなが、書かせたん
 です。これを単純に『押し付け』だなんて言えるものですか。日本会議も安倍
 首相も“違憲の疑いをかけられている自衛隊を、はっきり新憲法に明記しよう”
 と叫びます。しかしマッカーサーのスタッフたちが草案を作成する過程で、
 すでに自衛戦争の放棄を取り消し、日本側も現行の9条の2項に《前項の目的
 を達するため》といういわゆる芦田修正を施しました。これが専守防衛の根拠
 です。だから、日本会議と安倍政権が仕掛ける世論誘導に騙されてはいけないし、
 護憲派はそうした改憲派の論拠を徹底してつぶしていくべき。いつまでも
 『憲法は自衛権をすべて否定している』という絶対平和主義の牧歌的な考え方
 のままでいれば、結果的に日本会議の思う壺ですよ」>

< “日本会議の限界”を指摘したうえで、上杉は「本体を隠しながら課題別の
 実働団体を駆使する手法」を単眼的に見るのではなく、「右派運動の総合商社、
 あるいはデパート」として全体的に把握すべきだと繰り返し強調する。そして
 最後に「日本会議の弱点」について、こう示唆してくれた。

  「彼らが『日本会議』という看板を表に出そうとしないのは、ものすごい
 “後ろめたさ”を抱えていることの証左でもあります。この“後ろめたさ”こそ、
 彼らの最大のウィークポイント。だから、メディアは彼らをどんどん陽の
 もとに当てたらいいのですよ。彼らの実態は宗教団体でありながら、目的外
 の活動をやっているんです。政教分離違反です」>





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by byogakudo | 2017-05-11 20:41 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 05月 10日

鹿島茂『パリの異邦人』読了

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 < パリというのは、どうやら触媒都市であるらしい。
 [略]
  「パリジャンは変わらない」と「異邦人が異邦人のままでいることを
 許す」という事実のおかげで、異邦人は自らを見つめ、自らを変容させ、
 [略]そこから新しいものを創り出すことができるようになった[略]。
  これぞ、触媒的パラドックスである。
  この意味で、異邦人が大量にパリにやってきて、「モダン」なるものを
 創造した二十世紀前半のパリほど興味深いものはない。>
(p282『あとがき』)

 「遊歩人」連載のコラムを2008年に単行本化(中央公論新社・刊行)。
 文庫化に当り「CREA TRAVELLER」に連載された『パリ、人生の移動
祝祭日』という短いコラム集が加わった。

 20世紀前半、パリに異邦人たちが続々と押し寄せて、モダーニスム都市・
パリが花開く。
 リルケ、ヘミングウェイ、ジョージ・オーウェル、ヨーゼフ・ロート、
ヘンリー・ミラー、と来れば次はアナイス・ニン、エリザベス・ボウエン、
そしてガートルード・スタイン、で終わる。

 最初の方では"明るいパリ・イメージ"と"陰りのあるパリ・イメージ"との
対比で記述されていたが__鹿島茂の用語では「陽パリ」と「陰パリ」。
「ようぱり」「いんぱり」って響きが、どうも気になる。__、ヘンリー・
ミラーとアナイス・ニンの四角関係の話辺りから、俄然、ノッてくる。
 読むこと、読み解くことの快楽が直接にライヴに伝わってきて、次の
エリザベス・ボウエンの項で最高潮に達する。

 エリザベス・ボウエン『パリの家』の分析の、ドライヴ感のすばらしさ。

<どんよりと曇った暗い冬の早朝の、[注:パリの北駅の]陰鬱な雰囲気
 の描写>(p170)に始まり、リュク