カテゴリ:読書ノート( 2312 )


2017年 03月 05日

鈴木創士氏のコラム『第84回 蒼ざめた女』

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 2017年3月、鈴木創士氏のコラムは、『第84回 蒼ざめた女』。

<いずれ小人(nain)はパン(pain)となり、夜(nuit)は井戸(puits)に
 変わるかもしれないのだし、つまりあるとき小人とパン、夜と井戸は同じ
 ものとなり、またあるときデスノスは、デュシャンの口を通して自分自身を
 食べ、デュシャンとともに自分から出て行ったのだということになるのだ。>

__眠り男チェーザレみたいなキリスト...?




呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-03-05 12:17 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 03月 04日

(2)邦枝完二『瓦斯燈時代』読了

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~3月3日より続く

 これ一冊を読んだだけで何か言うのは不遜ってものだが、
邦枝完二は自意識の甘さが弱点だと思う。自己認識が、
"敗残の江戸っ子の子孫"で終わってしまっていて、それ以上
考えたことがないのではないかしら、と失礼なことを思う。

 荷風を敬愛するのは分かる。荷風に、自分と同じような疎外感や、
それ故に江戸へ傾斜する愛を感じたからだろう。だが、荷風が江戸
や下町を愛したのは、眺めるに十分な焦点距離が持てたから、と考え
たことはなかったのかしら? 明治の成功者の子どもとして生まれ育ち、
経済的余裕があったから距離を保って愛することができるのではないか
などと、邦枝完二は考えたことがあるかしら? 荷風の記す、江戸や下町
への愛を、額面通りに、真正面から受けとめ過ぎではないかしら。

 昭和二(1927)年秋に書かれた『偏奇館去来』で荷風の思い出を語って
いると、

< ゴシップがあつて、始めて文名を保つてゐられる文士。分のいい方の
 味方をすることにのみ汲々たる文士。活動写真の提灯持で暮してゐる
 文士。__ああ文士稼業、やがては天気続きの大道に自動車が捲き
 上げる砂塵と、何等の差別もないことになりはせぬかとわたしは危ぶむ。
 さもあらばあれ、ままよ三度笠横ちよにかぶり、見ずに通れば、それも
 また他所の世界であらうか。>(p117上段)

__"ああ文士稼業"以下の荷風に似た口調なぞ、邦枝完二はどれほど意識
して書いたのだろう? パスティーシュ意識は、たぶんないだろうが。

 昭和十三(1938)年正月『江戸の凧』や、昭和十六(1941)年冬『火事
と纏』は、愛する対象にのめり込む気質がよく作用した例で、前者は
江戸の凧の歴史や種類について、後者は火事が好きなあまり、
<十七の年には遂に刺子半纏を買ひ、鳶口を買つた>(p57上下段)話
などが、情熱的に詳しく記されている。

 邦枝完二は小説や戯曲が、いいのかもしれない。自分のつくり出す世界に
没入できた方が、読者を巻き込む力も強くなるから。

 しかし、なんだか不遜で生意気な感想文だ。

     (邦枝完二『瓦斯燈時代』朝日文化手帖31
     朝日新聞社 1954初)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-03-04 21:20 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 03月 03日

(1)邦枝完二『瓦斯燈時代』3/4

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 邦枝完二って、たしか、あのひとのお父さんだけど、"あのひと"
の名前が思い出せない。ええい、検索しちゃうと、そう、木村梢だ。
 固有名詞に不自由なひとになって久しく、必死に思い出そうとする
努力も、めんどくさくなってしまった。もうだめだ。

 木村梢が新聞(「朝日」か「東京」)の日曜版に書いていたエッセイ
で、若いころの邦枝完二と友人たちが牛屋に行った。
 鍋の水はとっくに煮立っているのに、ネギもシラタキもあるのに、
肝心の牛肉がない。そこで、小島政二郎だったか誰かが、その状況に
ぴったりな、ことわざか歌舞伎の台詞だかをもじった地口を即座に
口にした、というのだけれど、それは何というフレーズだったか。
 これは自力で思い出すしかないだろう。

 梢の妹の"クニエダヤスエ"という名前も、母が取っていた婦人雑誌で
よく目にしていた(が、ヤスエは2011年に死去)。

 そして彼女たちの父である邦枝完二を、初めて読む。小村雪岱の
エッセイは読んでいるのに。

 戦争が近づいた頃や戦時中に書かれたエッセイが多いせいなのか、
明治の子ども時代を回顧して今と比較するせいか、むかしはよかった/
いまはよくない、と言ってる感じが目につく。敗残の江戸っ子の子孫と
しての恨みつらみが、ときどきストレートに顔を出すので、こんな作家
だったのかと少し驚く。
 からっと明るい性格だったら、そもそも作家なんぞは志さないが、
屈託や鬱屈の表現のストレートさが、ちょっと不思議だ。不機嫌さを
無防備に表明している、と感じられるので。
 小説だと、また違うのかも。


     (邦枝完二『瓦斯燈時代』朝日文化手帖31
     朝日新聞社 1954初)

3月4日に続く~



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 今日の「東京新聞」『特報欄』は、"『共謀罪』賛成の理由は"
と題して、
<「一般人」はこの法案をどう理解しているか。>のレポートだ。

< 横浜市の会社経営の女性(70)は「もちろん賛成ですよ」と
 話し出した。「むやみに危害を加える人たちを、何とかする法律
 は必要だ」と話す。自分が対象となる心配はないかを尋ねると、
 「私はカッとなって犯罪をすることはない」。
  どうも話がかみ合わない。共謀罪の趣旨を説明すると「知らな
 かった。私は怖い人を取り締まる『凶暴罪』だと思っていた」と
 驚いていた。>

 新聞は読まれず、TVのニュースショーで取り上げられるできごとが
ニュースだと思われてしまってるのだろう。いまの日本は、北朝鮮並み
の報道管制が敷かれていると思うが。

 大新聞も同じ穴のムジナだ “安倍晋三小学校”疑惑の底なし__
<大手新聞の東京本社の用地が軒並み、1960年代から70年代
 にかけて国有地の払い下げを受けた>
から、「森友学園」事件は報道しないって...。

 安倍に第二の森友学園疑惑!__これはTVや新聞で後追い報道されるのか?





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by byogakudo | 2017-03-03 21:39 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 03月 02日

(2)ハーバート・ブリーン/森郁夫 訳『夜の闇のように』読了

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~3月1日より続く

 『夜の闇のように』の発表年が1949年、翻訳が1957年。
 ミッキー・スピレーンなどが流行っていた時代(?)にディク
スン・カー風の怪奇趣味やホームズ張りの推理論証を、風俗小説
まぶしで描いた、のかなあ?
 あか抜けない進行ぶりで困ったものだけれど、そういうときは、
どうでもよさそうな箇所に目を遣ればいい。

 日本語訳での脚注も多いし詳しいが、原註の詳しさは見物(みもの)、
いや、読物だ。

<「それからローマ風スピエディノときたら......」(原註*)>
(p149下段)
 この説明がp159上段の端から下段全部まで、本文の字体の半分
くらいの大きさで記される。

< これはイタリア料理のうちで最も美味なものであるが、欧州大陸の
 料理の書物には、稀にしか記載されていない。作り方が極めて簡単な
 料理であるだけに、残念なことであると思う。次に、ニューヨークの
 レストラン<デル・ベツォ>で調理している方法を述べておこう。>
(p159下段)と、調理方法が書かれている。

 いま"ローマ風スピエディノ"で検索したら、やはり同じ箇所に目を留めた
方がいらっしゃるようだ(ホームズ・ドイル・古本 片々録 by ひろ坊)。

 それでは、日本語訳での原音主義を__
<「私はコンソリデイテッド・ユアラピーアン自動車会社のスレッジです。」>
(p88下段)
 いまなら、"ヨーロピアン自動車会社"にするかしら?

<「あたしはカフマン(George Kaufman,1899__、現代アメリカの劇作家、
 批評家)の新作の初演を見に行くんだから」(p89上段)
 このジョージ・カウフマンって、『ハリウッド・バビロン』にも出てきた
劇作家だろう、たぶん。

 というわけで、今回もあらすじを紹介する気になれなかった。


     (ハーバート・ブリーン/森郁夫 訳『夜の闇のように』
     HPB 1957年5月15日刊)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 阿倍昭恵は電通ではシゴカれなかったのか? 社会見学気分で
就職したのか?

 「妻は私人です」と安倍晋三は言うけれど、
<十数人のスタッフを抱えていたローラ[注:ジュニア・ブッシュ]夫人に
 ならい、昭恵さんのために官邸内に専用の部屋が用意され、スタッフも
 数人いるらしい。>(今日付け「東京新聞」朝刊『特報欄』)

 ファーストレディごっこが好きでやっていたのなら、それなりに責任を
とるべきだろう。
 わたしは感じたままに行動して来ただけとか何とか思っているようなら、
みんなすぐ忘れちゃうんだから、嵐が過ぎ去るのを待っていればいいと
考えているようなら、大間違いだ。

 梟通信〜ホンの戯言2017年2月26日・追加ブログを再読すると、

<2015年9月4日 午前10時から12時 近畿財務局9階において
 近畿財務局と森友学園による売買・価格交渉を行う(http://dai.ly/x5d48xk)

 同日午後、安倍首相はテレビ出演のために大阪入り。
 安保法制の審議の真っ最中だったため鴻池参院特別委員長も
 「一国の首相としていかがなものか」と不快感を示す。>

 この鴻池・参院特別委員長が、今回の「森友学園」事件で、陳情を
受けたことを認めた、鴻池祥肇。

 2015年9月4日・午後の安倍晋三の行動記録は、どのように記されて
いるのだろう。美しい日本国の恒例によって、破棄されているのか。





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by byogakudo | 2017-03-02 21:50 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 03月 01日

(1)ハーバート・ブリーン/森郁夫 訳『夜の闇のように』を読み出す

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 写真は善福寺川緑地で。緑地に面して少し高くなったところに
建つ家の柵に、大きめの鳥が留まっていた。下の地面からは手が
届かない距離にいると分かっているので(?)、落ち着いてこちら
を見ていた。雀なんかだと、それでもすぐに飛び立つのだろうが。
 なんという種類の鳥かしら?

 
 久しぶりにハーバート・ブリーン。前作『ワイルダー一家の失踪』
(2005年11月19日2005年11月20日2005年11月22日)に続く
話らしいが、そして『ワイルダー一家』の題名に覚えはあるが、
どんな話だったか。
 自分のブログを読み返してみても、何ら情報は得られず、ただ、
ハーバート・ブリーンの翻訳では、訳語がやたらと気にかかるのが
分かる。
 そこらで面白がるしかない、ということなのか。

 今回も、
<無所属の(フリー・ランス)写真家兼報道記者>
<構成(レイ・アウト)の最後の瞬間における変更>(p11上下段)、
<「スカッチ・オン・ザ・ロックスを頼むぜ、ジョー」>
<ウィンザー椅子(十八世紀頃用いられていた繊細な感じの椅子)>
<くすんだ渋い色のスカッチ>(p12上下段)などなどを味わって読む。
 
 あらすじを書くといっても、主人公がクリーヴランドの大学生時代
に知っていた女の子の叔父さんが、ニューヨークのホテルの26階から
落ちて死んだ記事を目にする。彼女も同じホテルに泊まっている。
 ショックを受けている彼女の役に立てないかと、主人公がホテルを
訪れる。

 しかし、その日の夕方、叔父さんが死んだのに、彼女は故郷の親戚に
連絡しないのかしら? それは警察に任せてあるのかしら?
 呆然として夕飯を忘れていたのは分かる。彼が誘ってくれて、ようやく、
お茶を飲んで気を落ち着けようとしたのも、いい。しかし、レストランで
彼に声をかけて来たショービジネス界の連中につき合って、催眠術の実験
を見に行くという展開である。
 いくら、
<「あたくしにしたって、気分を転換してみたいのよ」>(p22上段)
ったって、無理な展開ではないだろうか?

     (ハーバート・ブリーン/森郁夫 訳『夜の闇のように』
     HPB 1957年5月15日刊)

3月2日に続く~

呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 共謀罪は目の細かな大きな投網である。政治家稼業の連中は、
政敵から投げられた投網に引っかかって、獄舎につながれる
可能性を想像できないのか。自分の属する政党が、いつなんどき、
犯罪組織と見なされるか、分かったものではない。政敵に寝首を
かかれることが起り得る法律だと、分からないのだろうか?





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by byogakudo | 2017-03-01 21:24 | 読書ノート | Comments(2)
2017年 02月 28日

(2)北村薫・宮部みゆき 編『名短篇、さらにあり』読了

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~2月26日より続く

 残りも全部、読み終わった。岡本かの子『家霊』だけ既読。
かの子から岩野泡鳴への流れ方が楽しい。

 かの子も泡鳴も、厚かましいほどズンズンと、読者の前に
クロースアップで迫るし、血圧の高そうな文体だ。時代の
違いは大きい。彼らと比較すると(比べる意味もないが)、
いまの作家たちは、読者との距離に注意を払い、暑苦しく
ならないよう、無意識に気遣っているのではないかしら。

 川口松太郎のみ、2作品収録なのは、巻末の『解説対談』に
よると、宮部みゆきが『不動図』が好きでたまらず、北村薫は
『人情馬鹿物語』から取りたかったので、2篇になったという。

 『不動図』、そんなにいいかなあ? たんにエッセイ風小説
と思えるが、宮部みゆきは、作者・川口松太郎自身と思しい
語り手にしか愛されない、絵画・"不動図"が不憫でならない
ようで、彼女はこれを、"フェティシズム小説"として愛してる
のだろうか?
 わたしはいっそ、新派悲劇調満載の『紅梅振袖』(『人情
馬鹿物語』)の大仰ロマンティシズム路線を好むけれど。
 俗悪さは、Amanda Lear - Fashion Pack HD SOUND
みたいに、自覚的に大振りな方がすてきじゃないか。

 林芙美子『骨』の、ガラスの欠片がネオンサインのちらつきに
震えて輝くような文体と、初めて(!)読んだ島崎藤村、『ある
女の生涯』の狂いっぷりの描写に驚く。

 なんでもそうだけれど、ひとつの流れを考えながら編集する
のは大変だったと思うが、受け手は編者の苦労も知らぬ気に、
勝手に摘み読みし、レコードやCDなら勝手に再編集してしまう。
 あいすまぬ。


     ((北村薫・宮部みゆき 編『名短篇、さらにあり』
     ちくま文庫 2008再 J)


呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-02-28 20:32 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 02月 26日

(1)北村薫・宮部みゆき 編『名短篇、さらにあり』半分ほど

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 全12篇収録。面白そうなものから先に読んでしまった。

 名前も初めて知った十和田操、すてき! リズムがいい、擬音の
音感がいい、『押入の中の鏡花先生』以外の作品も、読んでみたい。

< 鏡台の前に並んでいるお化粧罎のような小さい格好(かっこう)の
 やつが、びっこを引いて、一日中、けしょけしょと、かあちゃんの
 お尻について歩き廻るので、かあちゃんから「おけしょびんちゃん」
 という名をつけられているのだが、そのかあちゃんのことは、かあ
 ちゃんと呼んで、とうちゃんのことは、とうちんといってふざける。>
(p120)

 "お化粧罎のよう"に小さくて、"けしょけしょと"動き回る、幼い息子。
小鳥のような愛らしさだ。

 擬音ってセンスがいる。
 話が木内昇『笑い三年、泣き三月。』(文春文庫 2014初 J)に横滑り
すると、第一章・第一行、
< 最後に、もんっ、と大きく叫んで汽車が止まった。>(p10)で座礁
して、後が続かない。
 "もんっ"に拒否反応。一文の背後に、作者の"どうだ、決まってるでしょ"
という会心の笑みを視るわ、日本近代文学臭味は感じ取るわ、一行目で
ストップ。
 いつか、気難しくないときに試みよう。

 『名短篇、さらにあり』に戻る。
 久生十蘭『雲の小径』。飛行機に乗り、雲海の中でエクトプラズムの
話になるのだ。すばらしい。
 体質的に苦手で敬遠する内田百閒だが、『とほぼえ』すごい。少しずつ、
少しずつ、話が転調していく間合い!
 ようやく読んだ岩野泡鳴、『ぼんち』。なんだか、関西の男版・岡本かの子
みたような感触。
 好みが偏しているので、永井龍男『出口入口』みたような短篇小説らしい
巧さには、だからどうしたと思ってしまう、日本近代文学痴だ。

 いっそ、幻想と怪奇と奇妙な味だけのアンソロジーにしてくれてたらなあ。


     (北村薫・宮部みゆき 編『名短篇、さらにあり』
     ちくま文庫 2008再 J)

2月28日に続く~

呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-02-26 21:55 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 02月 24日

ローレンス・ブロック/阿倍里美 訳『タナーと謎のナチ老人』読了

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 睡眠機能を失った、眠らない/眠れない男、エヴァン・タナーの
冒険活劇、第二弾だ。第一作『怪盗タナーは眠らない』を読んだ
のが2014年7月20日
 時間が経つのは、なんて速いのだろう。ひたすらローレンス・
ブロックを読み続けてやり過ごした、2014年の夏だ。食事の
ときは坐るが、それ以外はソファで横になってブロックを読む
だけ。

 『タナーと謎のナチ老人』は、1966年に原作刊行。タナーは
東西冷戦下の、中部あるいは東ヨーロッパに行く。
 ナチに協力していたスロヴァキア人のコタセック(もう老人だ)
を、プラハの監獄から生きて連れ出し、彼が持つ情報を西側のもの
にする、というのがタナーが頼まれた仕事。

 多言語者であるタナーは、東ヨーロッパの言葉もお手のものだ。
或るときはネオナチ・シンパ、或るときは親イスラエル(これは
本音に近い部分がある)と、時と場合によって異なる思想を口に
して生き延びる。スパイは常に二重スパイ、のセオリー通りに
振舞って生き残る。

< コタセックと一緒にいるときは、熱狂的なナチの信奉者を演じ、
 フェレンツと一緒のときは、自由主義を信奉する反ファシストの
 革命家を演じてきた。私はこれまでを振り返り、自分のいい加減さ
 に強い嫌悪感を覚え、口やかましいお荷物に吐き気を催した。
 そして、ピーセクでの自分の演説__<親独協会>に向けた演説__
 のことを考えた。言葉に意志があるように、あんな台詞(せりふ)が
 自分の口から飛び出すとは。私はあの場で自分に求められる役割を
 演じただけだが、なぜあれほど興奮したのか。
  私は『鏡の国のアリス』の中でチェスの赤の女王がアリスにした
 助言を思い出した。
  「英語で何と言うのかわからなかったら、フランス語で言うことね
 __歩くときはつまさきを外側に向けること__そして、自分が誰か
 ってことを忘れないようにするの!」
  自分が誰かってことを忘れないようにする。これはそれほど簡単な
 ことではなく、時間を追うごとに難しくなっていた。>(p223)
 
 脱獄させた老人・コタセックの持病の一つにカタレプシーがある。
発作が起きると心音も停まり、死体と変わらない。タナーの慢性完全
不眠症といい勝負だが、この症状を利用して、タナーは遂に老人を
リスボンまで連れ帰り、情報を吐き出させる。

 
     (ローレンス・ブロック/阿倍里美 訳『タナーと謎のナチ老人』
     創元推理文庫 2008初 帯 J)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 今日の「東京新聞」夕刊・1面の左側に相模原市の障害者施設を
襲った男の精神鑑定結果が出ていた。
 彼は"自己愛性パーソナリティー障害"と診断され、症状の説明が
される。
<成長過程で形作られる人格のゆがみを意味する「人格障害」の
 一種。自分を特別な存在と過度に思い込み、他人に自分を称揚
 するよう強要することもある。>そうで、
 1面・右側の「森友学園」疑惑の記事との関連を思う。安倍晋三も
同じ症状ではないか。

 「森友学園」創立者と、いつ・どこで・どんなきっかけで知り合ったか、
まず、そこを尋ねてから(記憶にないとか言いそうだが)、国会での
森友学園理事長・籠池(かごいけ)泰典の証人喚問は?
 後援会で紹介されたくらいのつき合いで、安倍晋三の名前を冠した
小学校を創立したりするのか?





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by byogakudo | 2017-02-24 21:45 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 02月 23日

(2)ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良 訳『二役は大変!』読了

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~2月22日より続く

 半分強をだらだらと、後半を大急ぎで読了。
 ひとり二役という難問をどうクリアするか。無茶な使命を主人公に
与えた作者・ウェストレイクは、着実に回収漏れなく、余波を鎮めて
終結させる。主人公と関わったあのひとはどうなった?と、読者に
心配させないのは偉いけれど、事態収拾のために三人も殺しちゃって、
いいのかなあ。

 その答えは、主人公は双子の姉妹それぞれと(!)結婚して、お金持ちに
なってしまったので法律からも逃避できる、というもの。そりゃあ、現実
でもそうではあるけれど、このミステリはどんなジャンルなのだろう、コミ
カルなハードボイルド? 冗談で話をつなぐ、ドライなハメット調?
 ハメットの系譜ではあるだろう。

 妻たちを喪い、遺産相続で大金持ちになった主人公、アート・ドッジは、
姉妹が生前、頼んでいた法律事務所の男、ゴードン・オールワージーを
引き続き雇う。

<おれは彼に金を支払える限り、彼を信頼している。
 [略]
 最終的には、おれ独りでは[注・法的処理を]できなかっただろうと
 悟った。それに、オールワージーがいると、なんて簡単なんだろう。
  それに、金というものについて完全には理解していなかったという
 事実がある。金は自分自身の脳や知識を補うための脳と知識を買える。
 おれは自分の生来の機知と、自立のためにやりくりする才能だけで、
 かなりのところまで来た。
 [略] 
 今では、何もしなくてもよいといえる状態にいる。[略] 
 黙認が必要ならば、ハーヴァード法学校で黙認を教えている男を雇う
 ことができる。
  ゴードン・オールワージーがどれほど知っているのか、もしくは
 疑っているのかは知らないが、それは構わない。[略] 
 もし彼がおれを警察に引き渡したら、仕事を失うだろう。[略] 
 彼はおれを警察に引き渡すだろうか? あんたなら、どうだい?
  そう、ゴードン・オールワージーもしないだろう。>(P340-341)

 "Two Much!"という原題がすてき。


     (ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良 訳『二役は大変!』
     ハヤカワ・ミステリアス・プレス文庫 1995初 J)

[同日追記: 
 双子で思い出したが、『十二夜』も読むべきだろうか。]



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/
 最高裁第三小法廷(裁判長・大谷剛彦)が、特別抗告を棄却
した。山城博治(沖縄平和運動センター議長)氏の保釈を認め
ないと、決定した。
 安倍晋三がトランプの靴を舐めるように、司法の長である大谷
剛彦が安倍晋三の靴を舐める、共謀罪を先取りするように。





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by byogakudo | 2017-02-23 20:29 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 02月 22日

(1)ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良 訳『二役は大変!』半分

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 男がすてきなお金持ちの美女と知り合う。彼女には一卵性双生児
の妹がいるそうだ。男は、はずみで、自分も一卵性双生児の兄だと
言ってしまう。

 お金持ちというだけで魅力的なのに、双子! 
 アメリカの小説の主人公は、グレイト・ギャツビー以来、お金持ちの
魅力に引き寄せられるのだろうか? そういえば、今日はウォーホルの
命日だ。お金持ちに美と権威と魅力を認めた彼の死から、もう30年。

 双子と寝ることを体験したくて、男はひとり二役を演ってみる。
前髪を垂らしてコンタクトレンズをはめているのが本人のアート、
オールバックで眼鏡をかけると、弟のバート。
 そういう無茶な設定で話はトントン拍子に進み、半分を過ぎた現在、
弟・バートは妹のベティーと結婚、兄・アートも姉のリズから求婚されて
いる。ひとり二役を強引に実行する無理が事細かに記されて、遺漏がない
のは偉い(?)けれど、退屈なのが問題だ。

 ミッチ・トビンのシリーズは好きだったが、他はどうもウマが合わない。
最後のミッチ・トビン『刑事くずれ/最後の依頼人』を、読んでいなかった。


     (ドナルド・E・ウェストレイク/木村仁良 訳『二役は大変!』
     ハヤカワ・ミステリアス・プレス文庫 1995初 J)

2月23日に続く~

呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-02-22 21:16 | 読書ノート | Comments(0)