猫額洞の日々

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カテゴリ:読書ノート( 2449 )


2006年 04月 09日

「殺人鬼」読了

 この頃(30年代)からもう探偵小説故の制限、問題点は意識されていたのか
という感想である。

 何度か探偵小説について言及されている。
<「・・・いったい、探偵小説に出てくる悪漢は大悪人すぎるよ。作りつけの、
生まれながらの悪人なんだ。たとえば、人を殺すのに、実に遠大な計画をたて、
冷静にやっつける。それから、あとでも実に平気でその始末をつけている。
あれがちょっといやだな。」>_小説の中の名探偵の発言である。小説は何だか、
その通りな犯人なのですが、でも さすがにあまり無理なく?作られている。

<探偵小説に出てくる名探偵は、シャーロック・ホームズでも、フィロ・ヴァンス
でも、ソーンダイクでも、ポワロでも、思わせぶりな言葉を時々出すばかりで、
最後の章まで自己のセオリーを少しもいわないのが通例である。しかし、それは
読者を最後まで引きつけておく一つの手段にすぎないのだ。>_なんてコメントも
ワトスン・小川氏は述べている。それに比べて(物語中の)現実の名探偵は云々と
続く、これはメタ・ミステリの嚆矢であったか!

 名探偵による最後の章での謎解き場面は、事件が解決して食欲も回復したのか、
銀座の洋食屋で行われる。フルコースの食卓だ。
 まずコンソメ、次は伊勢エビ、ビーフステーキ、果物には手をつけず、すぐに
紅茶、シガレットをたてつづけにくゆらしながら、紅茶をガブガブ喫しつつ論ずる。
 最終章は冒頭の喫茶店でまた紅茶である。コーヒーは遂に誰も飲んだ気配がない。
浜尾四郎自身が紅茶党だったのかしら。

 愉しく読めたけれど、頁破れを発見。修理して値下げしなくっちゃ・・・。
 そうそう、絵画の趣味と書斎の本の没趣味の食い違いについては、謎解きは
なされなかった。作者が(読者も?)忘れたか、たんに不調和な家庭を暗示する
舞台装置だったか であろう。
 いよいよ今夜からウッドハウス!
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by byogakudo | 2006-04-09 15:49 | 読書ノート | Comments(0)
2006年 04月 08日

「殺人鬼」途中にお師匠さんより

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「ウースター家の掟」(ウッドハウス 国書刊行会 06初帯)を入手。
 「本屋に予約してたんだけど、国書はコンスタントに出ないでしょ、たまたま
入った本屋で見つけたものだから、あっと思って買っちゃったら、本屋からも
届いて 2冊になったの」だそうで、おかげで「殺人鬼」が終わっても安心だ。

 浜尾四郎「殺人鬼」を読んでいるとお話しすると、「あれが一番面白いよ。
途中でガラッと変るでしょ、あっ、まだ そこまで読んでないの?」
 いえいえ、たとい全ストーリーをばらされても全く問題にならない読み方
ですので、ご安心を。

新着本
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by byogakudo | 2006-04-08 15:55 | 読書ノート | Comments(0)
2006年 04月 07日

「殺人鬼」

(浜尾四郎 春陽文庫 76年3刷)を昨夜から。31年発表の新聞連載作品だそうである。
頭の中をジャズ・エイジの尖端都市・東京に切換えて読もう。

 語り手(ワトスン役)は有閑階級の30代の男、名探偵はワトスン氏と旧制高校の
同期、検事出身の私立探偵。後にブルジョア家庭で殺人事件が起きると、もう一人
名探偵が登場する。

 名探偵・藤枝真太郎とワトスン氏こと小川雅夫が銀ブラ中に会い、喫茶店で紅茶と
菓子(アップルパイであった)を前にお喋りを始める。いわく、若い女同士が
喫茶店のボックス席に着くと、まず8割は一列に並んで坐っていると、名探偵は
まるで考現学者みたような指摘をする。

 藤枝名探偵は若い女性からの依頼の手紙を小川氏に見せ、封筒と便箋が同じ洋紙で
高価な箱入りセットものを使用していることを教える。丸善製品、あるいは伊東屋、
またはどちらかで買った外国製であろうか?

 この頃は禁煙権が存在しなかったので、男たちはほぼ全員、シガレットをふかす。
小川氏はチェリーに火をつけ、藤枝探偵はエアーシップ、検事(もうブルジョア家庭の
夫人が毒殺されたので検事も登場)は朝日、藤枝探偵のとっておきはスリーキャッスル
で、「ダンヒルライターを巧みに用いてそれに火をつけ」るのである。

 夫人が殺された富豪の屋敷の室内描写もいい。階段の壁にルーベンスの「三美神」
(複製写真である)、廊下にゴッホ(これも額装してあるが複製写真であろう)。

 「金持ちにしちゃめずらしい趣味だね」と名探偵が感想を述べるが、主人の書斎の
本は、<カーネギーの伝記だとか、大倉男(注: 男爵)の言説だとかいうものばかり。
そうでなければ、予約で売りつけられたらしい、二、三十円のバカ値のついている
出版物ばかりでうずめられ