猫額洞の日々

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カテゴリ:読書ノート( 2384 )


2005年 12月 24日

「目まいのする散歩」 他

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 写真はk夫人から戴いた猫のポプリ。いつもは守護天使のようにレジの背後に
掛かっている。

 昨夜は「目まいのする散歩」を専ら読んでいた。何故 散歩に出る度に自分が
スパイに見えやしないかと心配するのだろう?
 ソ連への船旅では「軍事探偵」に思われていないかと大時代に気にしている。
不思議な心性である。ヒューマーかも知れないが、では どんな種類の?

 勿論ウッドハウスにも手を付けた。最初の2章を読んで、いや これはゆっくり
読まなければと反省して閉じる。ウッドハウスを読んでいると じっくり幸福感が
寄せてくる。(でも読み出すと あっという間に読み終えるんだろうな。)

 「ハウザーの記憶」も途中である。東側からアメリカに亡命しようとした学者が
殺される。その脳から抽出したRNAを自らに注射した若い研究者が、自分でも
気付かないうちに飛行機に乗ってヨーロッパに向かっている ところで中断。

 いったい他人のRNAを入れただけで、他人の記憶も自己に取り込めるかしら?
前提から疑問を抱かせるSFサスペンスである。
 そもそも若い研究者が心酔する孤独なノーベル賞学者が、自分で生体実験すると
言い出すものだから、先生に何かあってはならないと、青年研究者はひとりで
先走ってしまった。無茶な前提と無茶な登場人物で構成されている。どうするつもり
かと、こちらが心配しても仕方ないが、こっちも放っておけないし、今夜はこれの
片を付けることにしようか。

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by byogakudo | 2005-12-24 12:51 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 12月 22日

「夢幻会社」読了 他

 次に読む本の当てができたので安心して読了。ロンドン郊外の小さな町だけを
支配する、二流の異教神(主人公自ら 二流と自己規定している)による
天地再創造の物語だった。

 読みながらデヴィッド・ボウイーを何度も思い出す。若い頃にこの作品の映画化の
話があったら、真っ先に主人公役をやりたかっただろう。テクニカラアどころか
LSD的にきらきらしたシーンの連続(落ち着いた郊外の町が一気に熱帯のジャングルに
変貌する)、人力飛行の夢に取り憑かれた若い男が空から墜ちてくる__「地球に
落ちてきた男」は疎外の物語でもあるが、こちらは自分自身を生贄に捧げて
天地を再創造する神なのだ。ボウイーがやりたがらない筈がない。

 わたしは面白かったけれど、いまの若い方々には、どうなのだろう? あんまり
きんきらし過ぎて付いて行けない?かとも思う。
 少なくとも90年代に発表されたバラード作品みたいな 硬直して痩せた感じが
なくて、素敵だった。
                    (J・G・バラード サンリオSF文庫 81初)

 きのうの紙の酸化に関してまた教えて戴いた。ありがとうございます。
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/janul/j/publications/reports/41/41_4.html
 ただ残念ながら、こちらに基礎知識がないものだから、紙の劣化を防ぐのは本当に
困難であるとしか解らなかった。いまのところ完璧に劣化させない方法は存在しない
のですね。湿気のない冷暗所に保存するのが考えられる ましな保存方法とはいえ、
それじゃ古本屋はどうやって毎日そこで過ごすのかという問題が出てくるし、難しい。

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by byogakudo | 2005-12-22 17:59 | 読書ノート | Comments(1)
2005年 12月 18日

「夢幻会社」

 まだ途中。いまのところ、かなり好きなタイプのバラードみたいだ。この調子で
最後まで進んでくれるといい。
 ただ、翻訳に問題あり。ウインゲイトという神父だか牧師なのか はっきりしない
登場人物があって、彼が出てくる度にカトリックかプロテスタンか、読む方は悩む。

 牧師館に住んだりしているウインゲイト神父であるが、
 「ファーザー・ウインゲイト!」と呼びかけられるシーンがあったので、やっと
カトリックの神父であると確定した。

 「夢幻会社」が創元推理文庫あたりで復刊されることがあるならば、ぜひ この箇所
だけでも訂正してもらいたい。重箱のすみ探検家としては、これはこれで面白がれる
翻訳でもあるが、明らかな誤訳は あまり放っておかない方がよいだろう。

 サンリオSF文庫の功績は認めるけれど、どれも大抵 大急ぎで出版されたためか
翻訳の肌理の荒さが目につく。どこかで「サンリオSF文庫 全点復刊!」シリーズを
始める際には、新訳でお願いしたい__そんなことになると古本屋は泣くのだが。

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by byogakudo | 2005-12-18 16:59 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 12月 17日

「蠅 ザ・フライ」読了

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 短篇集だったが、面白かったのは「蠅」「彼方のどこにもいない女」、おまけして
「考えるロボット」であろうか。
 もっと時間が経てば それなりの古風な怪談の味が出てくるかも知れないけれど、
今は 読むのにいちばん中途半端な時期のようだ。特に最後の段落が蛇足であったり、
理屈落ちしていたり、下手だと思う。自分の創り出した世界に自信がないのでは
ないかとすら感じる。我ながらひどいことを言うけれど。
                 (ジョルジュ・ランジュラン 早川文庫 86初帯)

 店の棚の前に立ち、未読だった「夢幻会社」(J・G・バラード サンリオSF文庫
81初)を選んで昨夜から読み出す。原作の発表は79年、なかなかいいではないか、
きらきらしてて。まだ大丈夫だった頃のJ・G・バラード?

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by byogakudo | 2005-12-17 14:22 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 12月 15日

「ちょっといい話」

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(戸板康二 文春文庫 82初)をなぜか昨夜 再読、「蠅」を中断して。

 一時期、「じじむさい本」と密かに呼ぶ種類の本に凝っていたが、これもその
類いだろうか。「粋人酔筆」シリーズとか、南部僑一郎「おとこ放談」とかいった
昭和30年代の軟派エッセイである。古本好きになると一度は辿る道であろう。
 今はそれほど熱中していないが、読めば気持よい。まだ暢気だった時代の空気が
味わえるから。

 TVなんぞで昭和30年代ブームと言われるけれど、本気かしら? もはや
十分に過去だが、そんなに古きよき時代だったっけ? ガチャガチャしていて
たしかに隙間の多い世の中ではあったろうが、「よき時代」と思うのはノスタルジー
であろう。いつだってオン・タイムに生きていれば、それなりの問題を感じる。
 それがアルカディアに思えるのは、当時を生きていなかったから、それが もう
取り戻せないほどの過去に属しているから、安心して追憶にひたれるのではないかと、
過去しか愛せない者は考える。

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by byogakudo | 2005-12-15 13:35 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 12月 14日

「蠅 ザ・フライ」

(ジョルジュ・ランジュラン 早川文庫 86初帯)の途中。「フランスSFかあ」と疑いを
抱きつつ 訳者あとがきを見たら、フランス生まれの英国人小説家だったので安心した。
フランス・ミステリやSFを、どうも信用していない。

 でも いまいち かしら、やっぱり。「蠅」はよかったけれど、次の「奇蹟」は落ちが
見え見えだし、「忘却への墜落」も同じ欠点をもつ。「彼方のどこにもいない女」は
わりと好ましい。
 物質の原子を分解して再構成したり、原子爆弾もの?だと面白く読めるみたいだ、
いまのところ。今夜は短篇集の後半を読む予定。

 サブタイトルに「ザ・フライ」が加わっているのは勿論、クロネンバーグの
「ザ・フライ」公開に合わせた文庫版出版だからで、58年版「ハエ男の恐怖」は
とても原作に忠実だったと解る。
 「ザ・フライ」はクロネンバーグ・テーマ__変容する人体__に沿った作品で、
原作とはあまり関係しない 別のコンセプトに依っている。映画としては「ハエ男の
恐怖」の、抑圧された性的妄執に とても惹かれるのだが。

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by byogakudo | 2005-12-14 16:23 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 12月 13日

「クールな男」読了

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 「見れる」「知れる」がどこに出ていたか思い出せない。もしそれらが
地の文だったら 昨日の感想はそのまま、会話文に使われていたなら 文章効果
ということになる。その場合は訂正します。

 日常と幻想とが地続きの小説だった。「壁抜け男」にしたって、そういえば
そうである。現場を発見された密夫が、なんとかこの場を逃れたいと願望したら
壁を通り抜けられたという話だった。呪文すら称えることなく。

 短篇集「クールな男」も同じような作りで、例えば「ぶりかえし」に於いては
一年を24ヶ月にする法案が国会で可決された途端、フランス国籍をもつ全員が
年齢を半減する。成人や老人は若返り、ヒロインである婚約したばかりの若い女性は
一気に9歳のこどもに戻ってしまい、それでも意識は18歳のまま。
 若くして結婚した夫婦たちも、10歳の身体で家族を養い 子育てをしなければ
ならない理不尽さに見舞われ、クライマックスでは、若返りを喜ぶ大人たち 対
こども時代に閉じ込められた若者たちとの市街戦に至る。まるで68年みたいだ。
 「エヴァンジル通り」の主人公はアラブだし、アクチュアルな問題がフランスでも
修正されることなく続いてきたのかという感想も浮かぶ。

 「エヴァンジル通り」の小さな界隈にしか生きられないアラブ人が、少し先の通りに
出ようとした時の手がかりのなさ・儚さの描写なぞ、とても実感的なファンタシーだ。

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by byogakudo | 2005-12-13 14:52 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 12月 12日

「クールな男」

(マルセル・エイメ 福武文庫 90初帯)を読み始める。「壁抜け男」みたような
ファンタシーではない。パリの市井の人々の様子がリアルに、でも妙に白日夢めいた
印象を与える書きっぷりで描かれている短篇集だ。

 先週の東京新聞 夕刊にエーメの彫像の話が出ていた。
 鹿島茂の隔週掲載「パリの秘密」12月8日付けによれば、モンマルトル近く、
ノルヴァン通りの入り口の壁から、エーメの顔と手足が突き出ている彫像で、
作者は あのジャン・マレーだそうである。
 マレーは絵を描くだけでなく、彫刻もするとは知らなかったが、エーメの彫像の顔と
脚と右手はエーメ、左手はジャン・コクトーの手を模したそうである。泣かせる。

 「壁抜け男」にしても、うっすら悲哀感のあるコントだったが、「クールな男」は
ノアール感ある短篇集だ。翻訳者の「見れる」「知れる」訳と、あとがきの文体には
かなり疑問を持つし、"L'indifferent"を「クールな」と訳すのも何だかピンと来ない
のだけれど、わりと面白がって読んでいる。今晩中に終わる筈だから、次の1冊を
また何か探さなくては。

 Marcel Aymeのカタカナ表記がエイメとエーメに別れているのは、エイメが
「クールな男」の翻訳者・露崎俊和に、エーメが鹿島茂の表記に倣ったためです。

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by byogakudo | 2005-12-12 16:30 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 12月 08日

「日常・共同体・アイロニー」

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をハードSFや長篇探偵小説のノリで読むことにした。すなわち、解らないところは
速やかにすっ飛ばし、時間をかけると登場人物やできごと・伏線を忘れてしまうから
ともかく速く読む方法で。

 現代思想ではなく社会学系のひとなのか、宮台真司は。(現代思想のひとって、
あれでしょ、ジャーゴンをどれだけ駆使できるか 競い合う秘教集団に属してる、
付合う気になれないオタクのことだと理解しているのですが。)

 社会学は社会学で、あの向日性に付いて行けない部分があるけれど、今のところ、
何とか2/3まで漕ぎつけた。ノリと勢いで読んじゃおう、どれほど理解したかは
この際問わない。ここで用いられている「アイロニー」は、わたしの言い方だと
「距離」とか「ヒューマー」のことらしいとか、パラフレーズできるものは
置換えながら。

 写真の左隅に映っているのが当店。今年も果てるのです。

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by byogakudo | 2005-12-08 13:34 | 読書ノート | Comments(0)
2005年 1