猫額洞の日々

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カテゴリ:読書ノート( 2345 )


2017年 04月 16日

フレドリック・ブラウン/向後英一 訳『悪夢の五日間』読了

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 リライトされてない大人向けの『ロビンソン・クルーソー』を読んだ
とき、収支決算書みたいな小説だと思った。
 無人島に漂着した主人公は生き延びるために計画を立て実行する。
実行の過程で修正が施される。他者を発見し、小さな共同体を営んで
いたある日、本国の船に発見され、帰還が叶う。

 『ロビンソン・クルーソー』は、このプロセスを淡々と描くだけで、
主人公は船の難破や漂流で特にショックを受けた様子もないし、漂着
したら、脅えたり悲嘆に暮れたりする閑もなく、せっせと作業を始める。
効率の話かと思うくらい、プロテスタントの倫理を生きる主人公だなあと、
思った(と記憶する)が、フレドリック・ブラウン『悪夢の五日間』の
主人公、ロイド・ジョンソンも、ロビンソン・クルーソーの末裔だ。

 フェニックスで投資相談業の会社を共同経営する主人公が帰宅したら、
妻がいない。誘拐犯からの身代金請求書が机上にあった。猶予は週末を
挟んで5日間、25.000ドルである。
 街では最近、誘拐事件が2件続いていた。プチブル家庭の妻が誘拐され、
警察に相談した方は殺され、黙って身代金を払った方は無事だった。
 主人公、ロイド・ジョンソンはショックで倒れたりせず、悩む閑もなく、
せっせとお金の作り方を実行してゆく。家を売っていくら、株を売って
いくら、といった按配に能率よく、お金をこしらえる。
 情報力の高い犯人は、被害者が払える可能性の中での最高額を提示して
いる。加害者も被害者も効率の鬼なのか。

 ロビンソン・クルーソーよりは物思う主人公だ(と思う)が、馬力を
かけて問題を解決してゆく姿勢は、似ている。
 スポーティなミステリ。


     (フレドリック・ブラウン/向後英一 訳『悪夢の五日間』
     創元推理文庫 1967初 J)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 シリア、アサド政権が化学兵器を使用したという証拠も示さず、
たとえ形だけのものにせよ、国連での討議もなくシリアを襲い、
アフガニスタンには核兵器に準ずるMOABを投下するトランプと、
それを真っ先に称賛する安倍晋三。
 気違いに刃物、トランプと金正恩に核ミサイル。

 偽ニュースと確証バイアス by 藻谷浩介・日本総合研究所主席研究員





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by byogakudo | 2017-04-16 21:24 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 14日

久生十蘭『久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集』読了

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 久生十蘭は男っぽい作家だ。男の中の男って感じもする。
男っぽさの中でも特に男っぽい作品を集めた、印象の短篇集だ。
 怪談であれ、我慢比べというか痩せ我慢比べの物語であれ、
主人公たちも記述の調子も、タフでクールだ。

 『生霊』では、絵描きが山奥にスケッチに行く。村人から去年、
戦死した男(彼も絵描き)にそっくり、生き写しだと言われる。
山村では、最初のお盆に迎え火を跨いで家に入ってくる者が新仏
(にいぼとけ)とされている。
 家に残された老人たちのために、新仏役を演じてくれないかと、
戦死者の妹(彼女も絵描き)から頼まれる。
 その前段階で、妹と絵描きとが、互いに相手を狐が化けている
のではないかと疑い合う、コミカルなシーンが続く。のどかな山村
風景と見るには、なんだか、ちぐはぐな会話のトーンである。
 絵描きは成り行きに従って(逆らわない!)、引き受ける。
 形だけ、死者を演じているつもりでいたが、ペルソナは身体に浸潤
する。演じているうちに、死に際の死者の記憶さえ、我がものに感じる
のである。ペルソナの物語であろうか。
 また、マレビトである絵描きの男(生者)、山に暮らす絵描きの女
(生者)、女の兄である絵描きの男(異郷で死んだ)の三人が、時空を
超えてメビウスの環に似た三角形を描く話とも思える。

 "男っぽい"というなら、『南部の鼻曲り』や漂流譚の『藤九郎の島』、
『美国横断鉄路』辺りを取り上げるべきだったかしら。つい、怪談に
引っかかってしまう。ほんとにかっこいいなあ。


     (久生十蘭『久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集』
     河出文庫 2010初 J)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-04-14 21:50 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 13日

(3)邦枝完二『瓦斯燈時代』に追加

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~3月3日に追加

 邦枝完二の娘・木村梢がエッセイに書いていた話、
<若いころの邦枝完二と友人たちが牛屋に行った。
 鍋の水はとっくに煮立っているのに、ネギもシラタキも
 あるのに、肝心の牛肉がない。そこで、小島政二郎だった
 か誰かが、その状況にぴったりな、ことわざか歌舞伎の
 台詞だかをもじった地口を即座に口にした>、
その地口を昨夜、唐突に思い出した。

 「火を見て煮ざるは牛なきなり」だ! 
 ああ、よかった、思い出せた。疲れ果てて、それでも寝る前には
何かしら目を通さなければならないので、ノエル・カレフ『その子
を殺すな』を退屈しながら読み(先が見えすぎてメゲている)、
『佐藤春夫集 夢を築く人々』をぱらぱらして諦めをつけ、寝よう
とした刹那、ひらめいた。
 記憶は失われるんじゃなくて、思い出せないだけだ。折り畳まれ、
襞の中に圧縮されて存在する記憶が、何かの折りに浮上する。



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第4回ゲスト 山本太郎(前編)

室井 でも、日本は本当にやばい。共謀罪が閣議決定されたし、
 自民党は今国会で共謀罪を成立させるつもりなんでしょ? 共謀罪で
 徹底的に攻めてください! これで倒せそうですか?

 山本 残念ながら共謀罪では倒せないです。共謀罪成立を止める
 ことすら難しいのが国会のパワーバランスの現状ですから。共謀罪に
 関してはまだ国民の興味や反応が弱いですね。「テロに関係する」と
 言うハッタリで思考停止したのも大きいですし、「過去に3回、廃案に
 なっているんですよ」というところから説明するには、時間が掛かる。
 長い説明はみんな聞きたくない。工夫が必要と考えてます。街頭などの
 国会外でも説明して、なんとなく広がったかな、と思ったときには、もう
 法案が通っているというのが今までのパターン、安倍一強の現実です。
 その一方で、森友問題のように、「国民の財産を、タダ同然でオトモダチに
 くれてやる」というわかりやすい構図の事件、お金に関する事の方が人々は
 関心を持つし、すぐにイラッと反応する人が多い様に感じます。>


 内閣も役人も、記録保存に関心がない。
 公文書の管理に関して、

<秘密指定期間が30年以下の特定秘密を記した文書の保存期間が、
 秘密指定期間より短い場合、
 公文書管理法に基づき廃棄される可能性があるが、
 政府は何の手立ても講じるつもりがない>
と答える。

 秘密指定が通算30年、保存期間が20年の公文書は、秘密指定された
まま、それがどんな内容の秘密であったか国民に知らされることなく、
20年で廃棄される可能性がある。

<歴史的資料として重要な公文書は国立文書館などに移管され、
 それ以外は首相の同意を得た上で廃棄する手続を踏むので、
 現時点で何らかの特別な制度が必要とは考えていない>
というのが、内閣審議官の答えである。

 歴史の審判には到底耐えられない、と内心で自覚している(が、それを
認めたがらない)内閣と役人どもの群れなので、証拠書類はせっせと焼却・
削除に励む。死人に口なし、無公文書は何も語らず。





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by byogakudo | 2017-04-13 18:02 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 12日

(2)笠信太郎『なくてななくせ』読了

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~3月30日より続く

 1964年から1966年にかけて書かれたエッセイであるが、

< 勲等に至っては数年前、ずいぶん反対もあったのに、そして
 それを復活した手続はどうだったかというと、新しい法律にも
 よらず、すこぶる疑問のある中を、閣議決定ということで強引に
 やってのけられたものでしたが、その勲等の等級を定めるのに
 何か新しく合理的な方法が発見されたわけでもありません。
  いうまでもないことながら、位階や勲等は、文化勲章とか、
 藍綬褒章(らんじゅほうしょう)のような特定の文化的な寄与とか、
 産業上の功績とかを表彰するものとは、まるで違った性質のもの
 であります。なにぶん、前者は、人間の等級をきめるようなことに
 なるのですから。
  そこで、勲等も位階と同様に戦後はすこぶる遠慮がちな姿勢で
 始められました。はじめは八十歳以上の人だけに出しました。
 これなら文句はあるまいというやり方のようでした。それが次には
 七十五歳以上になり、こんどは七十歳以上になりました。足音を
 立てないで歩くというやり方のようです。次は、そして、そのまた
 次は、どういうことになりますか。
  これら一切のことが、デモクラシーを打樹てようと国民すべてが
 決意した戦後の出来事だということは、いかに、段々畑式の社会
 のイメージが、その頭の中から消え去らないかということを示して
 いる、といって差支えありますまい。>
(p241『はげしい人間の「対流」』『第八章 社会のくせ』)

 勲等が<閣議決定という>手法で復活したのは池田内閣のときだ。
"閣議決定"は、自民党政権の伝統芸能として長く継承されている、
という証明だろう。

 近頃は<足音を立てないで歩く>どころか、足音高く、鼻息荒く、
横柄に振舞ってもかまわないという認識が、安倍晋三・独裁政権下の
閣僚、自民党議員・公明党議員、官僚、等々の段々畑ヒエラルキーに
蔓延している。

 明治維新でいきなり四民平等と言われたって、支配されるシステムに
慣れた(新しい日本国)国民は、市民同士で横につながる関係をつくり
上げようとはしなかった。願った人々は少しいたけれど、手をつなぐべき
横からは剣呑視され無視され、段々畑の低層から殺された。
 敗戦後、またしても他者から自由と平等を鼓吹されたが、独立した個人
の横断的つながりは、なかなかできなかったまま21世紀になったが。


     (笠信太郎『なくてななくせ』 朝日文庫 1987初 J)



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 「私人は喚問しながら首相夫人は」識者が語る官邸の暴走

杉田敦・法政大教授 森友学園の籠池(かごいけ)泰典前理事長は
 私人ですが、国会で証人喚問されました。ところが公人たる政治家や、
 官僚は、野党の要求にもかかわらず誰ひとり証人喚問されていない。

 長谷部恭男・早稲田大教授 国政調査権の使い方がいかにも党派的
 です。米議会や英議会では、国政調査権を党派的に発動しないと
 いうのが大原則です。どちらかの党派に有利/不利だから呼ぶ/
 呼ばないという判断は、少なくとも建前としてはしないことになって
 いる。中長期的な国政上の課題について調べることが目的ですから。

 杉田 証人として呼ぶのは、犯罪の嫌疑がある人だとする政治家も
 いました。

 長谷部 話が逆転しています。従来議論されてきたのは、国政調査権
 を行使することで犯罪の捜査や裁判の遂行に不当な影響を及ぼすのは
 よくない、捜査対象者は呼ぶべきではないのではないか、という点
 でした。>

杉田 昭恵氏が国会で証言すれば、白黒がつく可能性もある。
 安倍首相は「悪魔の証明」は出来ないなどと言いますが、当事者の
 言い分が食い違うことは、よくあること。どちらが信用できるかを
 裁判等で判断するのであって、それは悪魔の証明でも何でもない。
 単なる事実認定です。

 長谷部 ボールは政権側のコートにある。同じコートに出て打ち返す
 ことは、悪魔でなくてもできます。首相を侮辱した、というわけの
 わからない理由で私人が証人喚問されている。私人にそこまで要求
 しておきながら、文書は破棄したので何も言えないと官僚は開き直り、
 首相夫人は私人だからで済ませています。極めてバランスが悪い。

 杉田 官僚の文書廃棄については専門家から、違法ではないかとの指摘
 さえあります。保存期間を定めた公文書管理法の欠陥もありそうですが、
 仮に違法とまでは言えないとしても、そうした無責任な行政のあり方が
 許されるものなのか。

 長谷部 違法でなければ何をやってもいいのか。私人であればOKです。
 人のひんしゅくを買うような行為でも、それは個人の判断です。しかし、
 公人や公務員は違う。中長期的な社会公共のために行動する、そのために
 様々な権限や便宜を与えられているのだから、私人と同じように法に触れ
 なければいいということには、なりません。>

教育勅語について__

長谷部 [略]学校は、街頭やネット上のような一般的な表現の自由が
 成り立つ場所ではありません。教育の出発点は憲法26条の子どもが
 学習する権利です。将来、子どもが自分自身で物事を判断できるように
 なるための材料を提供しないといけないのだから、教えていい話とそう
 でない話の線引きがあるのは当たり前です。>





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by byogakudo | 2017-04-12 21:23 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 10日

D・M・ディヴァイン/中村有希 訳『ウォリス家の殺人』読了

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 2015年9月10日に読んだ『災厄の紳士』以来のD・M・ディヴァインだ。
ブログを読み直すと(読んでもストーリーは思い出せない)気に入ってる
ようだが、2冊目を読むまで1年半がかり。あんまりミステリ・ファンじゃ
ないな。

 wikiで見ると、D・M・ディヴァインは1920年-1980年。
 『災厄の紳士』は原作1971年刊、最新作『ウォリス家の殺人』が1981年
の原作刊行。わたしが知らなかっただけで、1994年から少しずつ翻訳されて
いた。長篇の未訳は2点のみ。本格ミステリが見直されてきたので、未紹介
だったディヴァインも注目されたのだろうか。

 これも地味でいいなあ。
 描かれる世界は1960年代のイギリス。語り手は歴史学者、モーリス・スレイター。
控えめな観察者タイプ。離婚して息子があるが、息子は母親から父の悪口を吹き込ま
れて育った。
 父と息子の物語は、タイトルのウォリス家にも"跡継ぎの息子が欲しかった"形で
共通する。ジョフリー・ウォリスは親を亡くし、スレイターの父に息子同様に(!)
育てられた。人気作家であり、今はTVの人気者でもある、派手なタイプだ。

 そうか、エディプスの物語でもあるんだと、いまさら確認。ジョフリー・ウォリス
には別々に遠く離れて育った兄、ライオネルがいる。彼が弟・ジョフリーの家に
顔を出し、近くに住むようになってから、ジョフリーの様子が変わってくる。暗く
なった。 
 カインとアベルの話でもある。ふたりのカイン(モーリスは義兄に近い)とひとり
のアベルだ。

 モーリスとジョフリーの妻(ジョフリーは元妻)は、どちらも家庭的ではない。
 モーリス元妻は美人だが無教育だ。結婚していたころ彼が彼女に気を遣わず、
学者の世界に閉じこもっていたのを今でも恨む。だから息子に彼の悪口を言い
続けたのだ。
 ジョフリーの妻は男を支配したがる。男といわず、ふたりの娘に対しても支配力を
行使したがる。長女がモーリスの息子、クリスと結婚したいというが、もっとお金持ち
の相手が好もしいので、モーリスを呼び寄せて阻止に協力させようとする。

 モーリスが語り手なので、世界は彼の視点によって記述される。女たちの側から
描けば、女の自立意志の萌芽期の物語でもあるだろう。元妻は振り向いてくれない男
への(へたくそな)反抗の形を取り、ジョフリーの妻は、夫(の権力)には女の権力
意志で対抗しようとする。

 こんなことばかりノートしてるから、どんな話だったかを忘れるのだろう。60年代の
カインとアベル物語でも、アベル=ジョフリーが殺され、イギリス田園地帯は不穏な
空気につつまれる。ストレート・ノヴェル風の語り口だが、観察者・モーリスがいつしか
調査に乗出す、ちゃんとした本格ミステリだ。


     (D・M・ディヴァイン/中村有希 訳『ウォリス家の殺人』
     創元推理文庫 2008初 帯J)





呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-04-10 21:31 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 07日

(2)鴨下信一『忘れられた名文たち』読了

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~4月6日より続く

 『第一章』が野球や演劇・映画批評の名文に、"悪態文"。
 『第二章』は画家、新聞記者の文に、宗教書(説得文)、
取扱説明書。
 『第三章』、浮気小説に身の上相談、俳人・歌人の書く散文。
 『第四章』、口述筆記文、食に関する文、紀行文、天文エッセイ。
 『第五章』が翻訳文、学者の雑文や西洋文物・紹介者の文。
 『第六章』、方言で書かれた文、口頭語的コロキュアルな文体、
記述法の工夫・変遷(正書法)、戯曲作家の雑文。
 『第七章』、時代小説と"です=ます調"。

 こういったおおまかで緩やかな分類(インデックス)で、日本語
の書き言葉について考えてゆく。仮説を立てて立証してゆくのでは
なく、ふだん感じている事柄を軸にして思考の枝葉を増やすやり方
である。
 ホームページを作っていた頃の項目の増殖ぶりを思い出した。

 作家でないわたし(たち)でも、不特定多数を意識した文章を綴る
ことができる。思うように意図が伝わっているかどうかは、ともかく。
 (誰でも書け、)誰が読んでもまず理解できる平易な文体や記述法
(正書法)が定まったのは1960年代半ば以後である、という。

< 司馬遼太郎氏によると、現代口語の書きことばの標準的文体が
 定まるのは、昭和四十年ころだという。ここでいう標準の文体
 とは、それ一つで政治経済のことから身辺雑記まで書き表せる
 ような文体(スタイル)のことだが、[略]
 全員が同じような文体でものを書くようになったのである。
  同じく司馬氏によると、この標準文体は[略]正岡子規に至ると
 いう。[略]
 逆にいえば子規から、昭和四十年ごろ、つまりは日本で大衆社会と
 いうものが成立する年代までの長い間、わが国ではずいぶん種々
 さまざまな文体が同時に併存していたというわけだ。この文章の
 平均化は、テレビによる日本の文化の平準化が四十年代に完成する
 のと奇妙に符節をあわせている。[略]
  こうした標準文体の成立を助けたものの一つに<正書法>の整備
 がある。仮名づかいとそれにともなう漢字の制限・略字体の確定等
 である。>(p291-292『正書法1』『第六章』)

 "標準語"というのは、東京・山の手方言をベースに作られた人工語だ。
鴨下信一が下町っ子の木村荘八の『東京の風俗』から『花火の夢』を
引用しながら、

<一見してまったく標準語文体のようでいて東京下町の言いまわしが
 ずいぶん入っている。>
< ぼく自身が東京下町の育ちだから、この文章が東京方言風に書か
 れているのがよくわかる。[略]標準語の中に方言が隠れている例は、
 細かく見れば東京方言ばかりでなくさまざまあるのだろう。標準語の
 文化規制の問題とこの隠れ方言の問題は、いますこし議論されても
 よいような気がする。>(p253-254『方言1』『第六章』)

 こう指摘されても、根っから<標準語の文化規制>症候群なので、実感的
理解とはいかない。言われてみて、ああ、ここらかと思うくらいで。

 いま、いちばん日本語が読める媒体といえばwebだが、『忘れられた
名文たち 其の2』も出ているけれど1998年刊なので、まだweb日本語に
ついては考察されていないだろう。
 『第一章』に出てくる"悪態文"は可愛さ余って悪態をつくが、webに
そんな余裕(や愛嬌)はない。2ちゃんねる日本語とか、営業右翼・
保守ビジネス・ネット右翼等のひたすらな悪意文が目に余る。


     (鴨下信一『忘れられた名文たち』 文春文庫 1997初 J)



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-04-07 22:50 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 06日

(1)鴨下信一『忘れられた名文たち』半分ほど

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 生まれたての赤ん坊は周りの人々の喋る声に反応して
母語といわれる言語を自分に取り入れる。思考する個人
の生活(の初歩)が始まる。話し言葉はそうだが、書き
言葉はどうやって手に入れるのか? 

 教科書に載っている、作家の小説__名文とされるであろう、
それらから学び取るのではない。日常、いろいろな媒体で目に
する雑多な文章、いわば雑文から得た情報で作られるという
前提("仮説"ではなさそう)で、大まかにジャンル分けされた
各種・名文が紹介される。

 そう言われれば、毎日書いているブログ、友人に宛てるメール、
こういった文章の書き方を、わたしはどうやって獲得(?)した
のか。
 いつの間にか身につけたとしか、自分では言い様がないけれど、
毎日目にする日本語の群れから、好き嫌いもあり、選択した結果、
こうなったということかしら? 

 どうしても読めない日本語というのもあって、司馬遼太郎が、
わたしの場合、そう。朝日文庫の『本郷』だったか、読もうと
しても二、三行で止まる。どうにも合わなかった。新聞記者の
文体から出発した文章だろうから、それなら新聞も読めなさそう
なものを、あれらは平気。どういうことなのか。


     (鴨下信一『忘れられた名文たち』 文春文庫 1997初 J)

4月7日に続く~



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 #今村復興大臣辞めろ

 日本ペンクラブ声明 「共謀罪に反対する」

< 公明党の漆原良夫中央幹事会会長は6日の記者会見で、
 「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案について
 「与党として、4月いっぱいに衆院を通過させ、連休後は
 参院で審議していただきたいと思っている」と述べた。>
(「東京新聞」2017年4月6日夕刊2面)

 むかし弾圧されたから、今度は弾圧する側に廻りたいってこと?
<審議時間を30~40時間程度と想定している>そうで、駆け足で
"審議"、シャンシャン賛成多数、よって本案は可決されたものと認め
ますと議事録には書かせ、これは破棄しないのか。





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by byogakudo | 2017-04-06 21:36 | 読書ノート | Comments(2)
2017年 04月 05日

鈴木創士氏のコラム『第85回 不動の曲線に永遠が…』

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 4月の鈴木創士氏のコラム、『第85回 不動の曲線に永遠が…』

< 病のなかに見え隠れするある種の容赦のない動き。そして病人の
 からだのもつ、偽の、見かけの不動性。それらは両立するかに見えて、
 鋭く対立し、仮象を退けるように(そのひとつは有機体である)、
 互いが互いを欺くように分裂を繰り返している。>




呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 #今村復興大臣辞めろ

< 公明党は、国政選挙並みに重視する東京と議会都議選
 (6月23日告示・7月2日投票)に国会日程が重なるのを
 避けるために、[注:共謀罪の審議を優先する自民党に]
 歩み寄った。ある党幹部は「(審議を急ぐ)首相の意向を
 忖度(そんたく)した。都議選には全議員が集中しなければ
 ならない。会期延長はとんでもない」と漏らした。>
(「東京新聞」2017年4月4日朝刊2面)
 
 日本国の住人は日本会議の連中にナメられきっているのみならず、
元々は日本会議と反発し合った関係であるはずの創価学会=公明党
からも、ナメられている。





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by byogakudo | 2017-04-05 20:08 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 04日

フレドリック・ブラウン/中村保男 訳『モーテルの女』読了

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 邦題は『モーテルの女』で、たしかにモーテル