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2006年 04月 30日

「狂風世界」読了

 むかしのバラードだって愚作を書く権利はあった。__ということか。

 数組のカップルが、凄まじい強風によって齎される世界の終末に 如何に翻弄され
対峙したか を描こうとしているが、焦点が定まらない。

 小説の前半は、登場人物群の状況説明に費やされる。物語の半分まで来て、やっと
何らかの動きが出てきたと思ったら、妙な誇大妄想的大金持ちが、世界の破滅に
対抗する人間の意志の表徴としてピラミッドを作って立て籠ったりするが、これが
ちっとも物語を収斂させない。最後は徐々に風の弱まる兆しを描いて大急ぎで終わる。

 わたしは何を読んだのだろう? もしかしたら全体小説指向だったのかも知れないが
誰だって失敗する権利はあるさと、忘れよう。
                  (J・G・バラード 創元推理文庫 76年5刷)
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by byogakudo | 2006-04-30 19:18 | 読書ノート | Comments(0)
2006年 04月 29日

「香水のすべて」

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 今週入れた中でいちばん好きな本だ。右側の写真、薄くて何のことやら
判明しませんが、頁を開くと活字も写真も紺色で印刷されているところを
紹介したくて、Sに撮ってもらった。
 うまく開いた状態で撮れず、止むなく縦長にカットしましたが、
実際は四六判。左の写真は本と別冊の匂い見本集、サンプルが付いてはいるけれど、
61年刊なのでどれも同じ残り香しかない。__つまり、お線香くさく残っています。
 函写真はHP新着欄でご覧下さい。

 61年。東京オリンピックもまだで、海外旅行は夢、経済成長を始めようと
する頃の空気が本から伝わる。
 食べ物も衣服や化粧品もある程度満たされ、次のお洒落は、というところで
日本女性に香水文化を広めようと企画された本であるが、匂い見本集は、「世界
名香の会」会員になると、3ヶ月間で6種類の香水を試せますという会員募集用。
 会費 3ヶ月分¥2000(但前納)、これは今なら いくらくらいだろう? 若い
女性たちに広める前にまず美容関係者に香水の知識を授けよう、ということか?

 パリがファッションの中心で、日本製の香水なぞ皆無に等しい時代だ。懐かしい
香水が紹介されている。今でもミス・ディオールが好きだけれど、この頃から
一般に知られるようになった匂いらしい。

 ガーベラ・レッドの表紙を開けると淡いグレイの見返し、角背の四六判。近頃の
単行本は ほとんど四六判より大きくなっているけれど、もう一度四六判が見直される
時代にならないかしら? 開いて手に持ったとき、ぴったり来るサイズなのに、
写真が大きく載せられないからか、こじんまりして目立ち難いからか、スタンダード・
サイズが消えて行きそうだ。   (東逸平・杉山賢一 わせだ出版 61初函)


新着本
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by byogakudo | 2006-04-29 14:25 | 読書ノート | Comments(0)
2006年 04月 28日

わたしは共謀罪を否定する

 時にはがらにもないことでも言うべき時がある。共謀罪を国会に提出しようとする
動きのある昨日・今日、マスメディアは、いったい何をしてるんだろう。

 堀江被告が拘置所から出てくる瞬間を捉えようと何時間も待っていたり、ニュース・
トップに持ってきたり、公聴会で発言する拉致被害者の話に終始しているようだが、
そもそも自由にニュースを伝えたり発言したりする権利が侵されようとしているのだ、
共謀罪の問題がトップであろう。

 犯罪は既遂がいちばん罪が重い。未遂や協議がその手前にある。共謀罪は、未遂や
協議の段階ですらなくとも、犯罪として成立させようとする犯罪的な法律だ。

 権力をもつ側にとって、これほど便利な法律もあるまい。気に入らない人間は
いつでも抹殺できる。
 何か時の政府に反対意見をもつ集団にスパイを入れ、「明日、抗議行動に
行こうか」と話し合った段階でも、密告者は無罪であるから、スパイは安心して
「おそれながら・・・」と警察に駆け込んで一網打尽。便利でしょ。

 いま政権にある公明党は、未来永劫 政権に取り付いている自信があるのだろうか、
いつでも 犯罪傾向のあるカルト集団扱いにされる法律を通すことになるのだが。

 思うことは自由、でもそれを表現することはできない。__それを自由な状態とは
呼ばない。圧政下にあると、普通は呼ぶ。デモ行進したりストライキしたりするのは
犯罪行為ではない、意志を伝える表現行為のひとつなのだ。
 国家がストーカー的に愛国心を強制するのに反対する権利も、わたしたちは持つ。
しかし、具体的に反対の意思表示がなされなければ、それは強制を認めることである。
あとでウダウダ文句を言ったって、もう遅い。

 だから、わたしは共謀罪を否定する立場にあると、ここに記しておく。
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by byogakudo | 2006-04-28 19:22 | 雑録 | Comments(0)
2006年 04月 27日

「魔法使いの弟子」と「狐の鶏」に追加

 「中島らも烈伝」(河出書房新社)もそうであるが、「魔法使いの弟子」(現代思潮
新社)第2部を読んでいると、鈴木創士氏には小説を書いてもらいたいと思う。
 第2部は彼のパリ時代の記憶のあれこれが鏤められた、とても音楽的な流れの
記述である。「烈伝」にも同じ音楽性が感じられたし、「烈伝」は、伝記という
より むしろ小説と読んだのだが。

                *

 「狐の鶏」(日影丈吉 講談社文庫)中の「ねずみ」は構成が好きだ。

 主人公が言葉も解らないまま台湾劇を見ていると、部下に呼ばれて観劇は中断し、
部下の浮気問題になる。
 主人公は穏便にことを済ませようとするが、あまり上手く行かない。そこへ
台湾劇に詳しい別の部下が登場して、中断したままの劇の粗筋を教えてくれる。
部下の問題と同じような三角関係の話で、最後は神が遣わした鼠のおかげで万事
解決するがしかし、現実のトラブルは・・・という二重構造である。
 やがて砲火に曝され、台湾の土地の演劇も現実も、等しく遠い記憶の彼方の
できごととなった地点から物語られる遠近法も、乾いた静かな昼下がりの印象を
与える。
 (大過去も半過去もない)過去形に乏しい日本語で過去を描くには、どんな手法を
要するか でもある。

 「新コ半代記」が待ってた筈なのに、いつの間にか「狂風世界」(バラード 創元推理
文庫 76年5刷)を手にしていた。原題 " THE WIND FROM NOWHERE " は、中国語なら
うまく翻訳できるだろうな。
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by byogakudo | 2006-04-27 13:28 | 読書ノート | Comments(1)
2006年 04月 26日

「狐の鶏」途中

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 「狐の鶏」(日影丈吉 講談社文庫 79初)は標題作を避けながら読んでいる。
暗い農村の話が怖いので。実際読んでみれば、別の感想になるかも知れないが、
読むとしたら いちばん最後だ。
 
 台湾ものの「ねずみ」、次が馬鹿話の「王とのつきあい」が好きである。
 「ねずみ」は戦争中のエアポケットみたいな時空間に、兵隊と民間人の間に
三角関係が生じる。遠い過去の思い出風に書かれているせいなのか、どろどろした
暗い物語にならず、主人公が言葉もわからないまま、途中まで見た台湾演劇
(京劇の一種だろうか?)の舞台の印象みたいな、淡く不気味な感触が好もしい。
 「王とのつきあい」は人間詰め大蛇料理の話。とぼけてる。
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by byogakudo | 2006-04-26 18:43 | 読書ノート | Comments(0)
2006年 04月 25日

「魔法使いの弟子」を読み始める

 読書指導要綱に背いて第2部以外も読んでみる。みごとに敗退する。引用された
文章などで時々ピンとくることもあるけれど、入れない。困った。抽象的な思考力に
欠けるので、仕方ないのだが。
 書くこと或いは書くことの不可能性を廻る記述なのかなあ? 単盲象を撫でるのは
止めておこう。

 勧めて頂いた第2部は、さすがにわかる。解るというより感じられる。ひとりの
日本人青年の肉体に刻み込まれた或る戦後ヨーロッパ史 とも読める。鈴木創士氏の
文章で素敵なのは、思考に身体性が感じられることだ。偏差値お化けどもよ、
恥ずかしいと思いなさい。

 第3部に含まれる「モーリス・ブランショ」中の『私の死の瞬間』は、あの短文の
ことだろうか、ナチに殺されそうになった時の話ではあるが、非・劇的、非・心理的な
エーテル化した事物のようなあの文章の?
 もしそうであるなら再読したいのだが。
               (鈴木創士 現代思潮新社 エートル叢書17 06初帯)
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by byogakudo | 2006-04-25 18:19 | 読書ノート | Comments(0)
2006年 04月 24日

「古書殺人事件」読了、そして

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 失礼! 「古書殺人事件」は85年だかに改訂版が出ているようです。
たぶん、そっちの方が面白く読めそうだが、旧版でもそれなりに?読んだ。

 原作は38年初版、ラナ・ターナーの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」が製作
されていたかどうかは ともかく、まだ悪女は金髪ではなくブルネットだ。

<・・・「若い女だ。」・・・「非常に美しい。彼女を難儀な目にあわせたら
 承知しないぞ」・・・「背は高い、脚もきれいだ、服装もスマートだ。」
 「ブロンドかね?」
 「いや、ブルネットだ。しなやかな手をしている。・・・」>という、ピアノの
上手い悪女だった。

 55年訳であるが、もうメートル法の時代の筈なのに、
<彼はこの四十五分間に、ウイスキーを六合も飲んでいた。>とか、
<「万事好調よ、スティーヴ・・・八ポンド(約九百六十匁)の赤ちゃんよ、
はねまわってるわ・・・」>と尺貫法表記なのは、まだ当時の青年たち・大人たちに
こちらの方が解りやすかったのか? 新訳ではどうなってるのだろう?
                         (マルコ・ペイジ HPB 83再)

 そして、昨夜から「魔法使いの弟子 批評的エッセイ」に取掛かる。
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by byogakudo | 2006-04-24 13:44 | 読書ノート | Comments(0)
2006年 04月 23日

Mr. 岡崎武志!

 今にも雨が降り出しそうで まだ持ちこたえている暗い日曜日の午後、何となく
見覚えのあるような ないようなお客様あり。
 岡崎武志氏でありました。「彷書月刊」連載記事で中野新橋の古本屋を訪ねる
ことになったのでと、仰る。キャッ、どうしましょ!

 何をお話したかしら、よく覚えていない。microjournal で弊店を見つけて
訪ねて下さったそうです。MS 鈴木に改めて感謝!

 岡崎氏は次に I 文庫へ向かわれ、後刻 I さんから電話あり。I 文庫氏は
しっかり岡崎氏に逆インタヴュー。わたしも もっとお聞きしたかったけれど、いざ
その場に立つと聞きたいことを忘れちゃうものですね。
 MR. 岡崎は静かでプロフェッショナルな空気の方でありました。
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by byogakudo | 2006-04-23 18:56 | 望月典子・松竹少女歌劇団員 | Comments(2)
2006年 04月 22日

「古書殺人事件」を読み始める

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 その前に「南の風」(獅子文六 角川文庫 55年8刷帯 記名)を大急ぎで読み終える。
何だかノートしておこうと思ったこともあるような気がするが、忘れた。
 時代設定は戦中、西郷隆盛は城山で死なずに南方に逃れ、その子孫がいるだの、
からゆきさんの話だのあったと思う。そんなに戦意高揚ではなかったけれど、
愚直の素晴らしさを讃えるなら、もっと悲劇的に扱わないと素晴らしさが
伝わり難いし、悲劇にすれば獅子文六タッチではなくなるし、読んだというだけ。

 寝床で「古書殺人事件」を開く。古書は古書でも稀覯本、しかも盗品を加工し、
出所不明な割安稀覯本を売る話だ。どうやって加工するのか知りたいところだが、
眼目はそこにはなさそうで、専ら登場人物間の気の利いた会話を愉しむべき作品
らしい。それなのに、翻訳のスピードが遅くて、いまなら もっと上手く訳せるのにと
昨日の発言を取り消したくなる。

 「魔法使いの弟子 批評的エッセイ」(鈴木創士 現代思潮新社 06初帯)を戴く。
全部読まなくて良い、ニコやゲンズブール等だけで良いよとの読書指導を頂いている
ので安心であるが、「ある市井の徒」(長谷川伸 中公文庫 91初 図書館廃棄本)も
次に控えている。どういう順序で読めばいいだろう?

新着本
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by byogakudo | 2006-04-22 15:50 | 読書ノート | Comments(0)
2006年 04月 21日

散歩

 古書会館がお休み。荻窪に行こうか、いや、市ヶ谷界隈を歩きたい。天気も
悪くないじゃない? 少し風は冷たいけれど、歩くには気持がよい。

 いつもと違い、まず散歩である。肩に重い荷物を背負わずに歩くなんて、何年ぶり
だろう。ふたりとも昔は延々と歩いていた。
 かつてのお屋敷街は、だが、相続税がいけないんだ、着々と集合住宅化しつつある。
虚しく哀しい。でも残り香をせめて味わう。

 眼力と脚力を使い果たして(情けない)、九段下タリーズに休む。あまり ゆっくり
すると、このまま帰ってしまいたくなるので腰を上げる。さて、何かあるかしら?

 こんなに文庫本ばかりで、いいのか? 明日の新着欄はどうなる? 何とかします、
と言いつつ、(ほぼ個人用の)「古書殺人事件」(マルコ・ペイジ HPB 83再)が手に入って機嫌がいい。
 早川書房は復刊する際、翻訳者も元版も改めずに出すのが問題だ(元版の誤植や
明らかな翻訳ミスも訂正されないままだから)と書いたけれど、この本に関しては
低コスト路線を支持する。扉裏・登場人物表の印字の塩梅が好きなので。

 <ジョエル・グラス・・・・ニューヨークの古書商。
  ガーダ・グラス・・・・・ジョエル・グラスの妻。
  ドック・ドーラン・・・・ジョエルの友人, 古書商。
  エイブ・セリグ・・・・・古書商, 殺される。
  ・・・(以下省略)・・・>
 本では、「ニューヨークの」や「ジョエル・グラスの」等、カタカナ表記部分の
活字が小さく、1行で収まるように工夫されている。また、「ジョエルの友人, 」と
読み点「、」でなく、カンマ " , " が使われたりしているのが愉しい。
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by byogakudo | 2006-04-21 20:50 | 雑録 | Comments(0)