猫額洞の日々

byogakudo.exblog.jp
ブログトップ

<   2008年 01月 ( 30 )   > この月の画像一覧


2008年 01月 31日

(2)C.P.スノウ「ヨット船上の殺人」半分強

e0030187_13545616.jpg











~1月28日より続く

 1-2日空けたら話の続き方がよく判らなくなっている。
1章分再読して読み続ける。とくに探偵小説は一気に
読まないと、ほんとは面白くない。お師匠さんみたいな
ヴェテラン読み手であっても、「一日で読まないと
忘れちゃうからね」と仰る。彼はいわゆる純文学も、この
方式で読まれるそうだ。

 ミステリ中の登場人物が読んでいる本をチェックして行く
のも、愉しい。

 語り手である主人公が川遊びに誘われる。ヨットに着いた
翌朝には、招いてくれた友人が殺され、警察が捜査に入る。

 航海日誌がなくなっているので船内を捜索すると、ある
若い男性客のベッドの下から出てきたのが、コレット「パリの
クローディーヌ」(p47上段)。
 もうひとりの若い男性客は<その本が暴露されると皮肉な
含み笑いをした>が、捜査にあたる探偵小説ファンのアイル
ランド系の警官は、<顔を赤くして、大急ぎで本を下に置いた
のには、わたしも驚いた。>(p47上段)
 「パリのクローディーヌ」は、大の男が読んでるとホモセクシュアル
指向とでも思われるのか。

 殺人事件が起きたのでヨットに暮らすわけにも行かず、一行は
川岸の村にある知合いの別荘に引き移る。そこで主人公が読む
のは、ロンドンから持ってきたモロア「ディズレリ伝」(p88上段)。
 主人公は60年配なので、お歳に見合った選択だ。

 主人公と探偵役がロンドンに調査に出かける場面では、探偵が
語り手に<「ジュデス・パリス」(訳注・ヒュー・ウォルポールの
作品)>(p99下段)を停車場で買ってくれる。探偵が考えごとを
している間に退屈しないように<「これが入手できるもので、
一番長編のものらしい」>(p99下段)と言いながら手渡す。
 ヒュー・ウォルポールだから、波瀾万丈で飽きずに読める、
という心遣いなのだろう。これは翻訳があるかしら?

2月1日に続く~
[PR]

by byogakudo | 2008-01-31 13:55 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 01月 30日

「親父熱愛PART2」「日本人は笑わない」読了

e0030187_16132753.jpg












 写真は国立天文台 三鷹キャンパス「ゴーチェ子午環」。

 「親父熱愛(オヤジ・パッション)PART2」(伊東四朗 吉田照美
講談社文庫 03初)はラジオ番組を活字に起こしたもので、実際に
聞いていたらもう少し面白がれるのだろう。山手線各駅にまつわる
思い出話の中で、新大久保・海城(かいじょう)高校出身者として
岸田森の名前があがらないのが残念だ。

 「日本人は笑わない」(小林信彦 新潮文庫 97初)は、さっき読了。
美空ひばりに関する彼の視点が面白かった。

 わたしは田舎のプチブル家庭で、美空ひばりは「下品だから、
そんなもの聞いてはいけません」と言われて育ったが、オーセン
ティック(なぞと言うと「野暮天!」と叱られそうだ)な下町の
落語とアメリカニズムの混淆世界に育った小林信彦の目にとらえ
られた美空ひばり像は、儒教的な否定ではなく、自意識を欠いた
奇矯な存在への違和感が淡々と綴られ、同時に彼女の死で「昭和が
終わった」と簡単に片づけるメディアへの批判にも至る。

 本の感想とは何の関係もないが、夕べはジャック・イジュランの
名前が出てこなくて、45分かけてやっと思い出した。お風呂上がり
にふと「赤と青のブルース」でマリ・ラフォレと共演していたのは、
ジャック・・・ええとなんだっけ?と思ったのが運の尽きで、ほら、
アルチュール・Hのお父さんで、「赤と青のブルース」のころは
シシーな男だったけれど、ええと、バシュロン、いや、ブシュロン、
ロンで終わるような名前だ・・・と半分あきらめていた。店で
ウェブ検索すればいいやと寝る支度をしていたら、毛布を広げた
瞬間、「ジャック・イジュラン!」。
 固有名詞が海馬から消滅してゆく、寂しい季節。 
[PR]

by byogakudo | 2008-01-30 14:57 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 01月 29日

古書 伊呂波文庫での個展(?)

e0030187_14151838.jpg








 まだ行ってなかった。早く行かないと1月分が終わってしまう。
近所の古書 伊呂波文庫さんが、お店のレジ後ろの壁面を使って
和本コレクションを展示中。2月は「都新聞」付録コレクション、
3月は60年代「平凡パンチ」シリーズだそうである。

 つまり3月続けてお店を覗くと(和本は非売品、他は不明)
江戸から昭和にかけての日本風俗誌がわかる仕組みである。
 和本は1冊ずつOPPに入れて両面テープ留めしてあるので、
外して中を見せていただくこともできる。お願いすれば解説も
して下さる筈だ。和本に触れるチャンスですよ。

 昨夜はC.P.スノウをさぼって買取本の「親父熱愛(オヤジ・
パッション)PART2」(伊東四朗・吉田照美 講談社文庫 03初)
に手をつける。今日中に終わるから、ええい、「日本人は笑わない」
(小林信彦 新潮文庫 97初)も読んじゃおうかな。スノウの方は、
死体も名探偵も登場しているから、少しばかり放っておいても
大丈夫ではないかしら?
[PR]

by byogakudo | 2008-01-29 14:15 | 雑録 | Comments(0)
2008年 01月 28日

(1)C.P.スノウ「ヨット船上の殺人」途中

e0030187_14342612.jpg








 今日も凍てつくような写真です。クリックしてお愉しみ下さい。

 「ヨット船上の殺人」(C.P.スノウ 弘文堂新社 67新装初)、
好きなタイプの探偵小説ではあるけれど、日本語訳の恐ろしいこと。
「ハムレット復讐せよ」(HPB 57初)の日本語と、どちらが兄で弟か、
近しさの感じられる変な日本語だ。

<私は棚を見つけ、わたしの身についてしまっている、きちっとした
 やり方で、その上に時計、カラーボタン、ネクタイを整頓した。>
(p14下段) 
 「わたしの」は要らないし、「身についてしまった」であろう。

<一週間前に乗船してからの最初の立食であった。>(p16上段)
 これは誤植かもしれないが、「してからの」の「の」は要らない。

<一行中で、わたし以外にきちんと服装をしているのは彼女だけ
だった。>(p21上段)
 「きちんとした服装」の誤植だろうか。

<わたしの年代のものが多くそうであるように、わたしもさまざまな
 変死体を見てきた。そのうちある記憶は、わたしの生きている限り、
 眼前に生き生きと残るであろう。>(p23上段)
 「生きている限り」「生き生きと」残るのか。似た表現が近すぎる。

<「(略)それには、まったくいままで通りにやっていくように
 することだ。そのことがはっきりなるのが、早ければ早いほど
 よいわけさ」(p31上段)
 「はっきりなる」ではなく「はっきりする」の誤植か。

 少なくとも数頁に一回はひっかかる表現が出てきて、その度に
自分なりの日本語を考えているものだから、ちっとも進まない。
ご苦労さんな重箱の隅体質がいけないのだが、得意のヤマカンで
判断するに、原文がそんなに凝った文体とは思えないので、英語は
読めるが日本語は苦手な翻訳者の責任ではないかと、愚考する。
どこかで新訳を出さないかしら。

 そのうち慣れて諦めても来るだろうから、できるだけ読み飛ばそう。
日本語さえ気にならなければ(!)のんきな英国調ミステリとして
愉しめる筈だ・・・。

1月31日に続く~
[PR]

by byogakudo | 2008-01-28 14:34 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 01月 27日

小林信彦「ちはやふる奥の細道」読了

e0030187_1485911.jpg








 1968年8月3日 朝日新聞夕刊に載ったイギリス演劇紹介記事
__<誤解は創造の始まり>と見出しがついた__に触発されるも
多忙にまぎれて忘れ、76年のブローティガン「ソンブレロ落下す
__ある日本小説」出版時にふたたび構想を得るも、誤解された
日本像をいかに描くかの糸口が見つからない。

 80年初夏に読んだ、二重構造をもつノーマン・スピンラッドの
SF「鉄の夢」が小説化の踏切台になり、架空の著者の作品を小林
信彦が翻訳した体裁のW.C.フラナガンものが書かれた、という
前史をもつ「ちはやふる奥の細道」(新潮文庫 88初)である。

 作者の意思__みえみえの実験小説にはしたくない__が
貫かれた傑作に、へたな感想文なぞ要らない。読んで愉しんで
味わってくださる方が、もっと増えればいいな。

 映画「珍道中」シリーズを見たことがないので、「モロッコへの
道」の節でうたえるように作られた戯れ歌のおかしさが、十全に
味わえないとか、無知の悲しみを嘆きながらも、一晩で読み終える。

 佐渡の銀山での爆発シーン(p233)
< 次の瞬間、芭蕉の身体は壁に叩きつけられた。視界のすべてが
 オレンジ色に染められ、音はきこえなかった。
     (3行省略)
  ひとしきり、岩が崩れる音がつづき、途絶えた。あちこちで
 悲鳴がきこえ、芭蕉は鼓膜が破れたのではないとわかった。>
こういった忙中閑ありなとぼけ方も素敵。

 その後シェクリイの短編集を読みかけたが、短編はあんまり
面白がれない。アイディアだけで、それ以上展開してくれない。
 今夜は「ヨット船上の殺人」(C.P.スノウ 弘文堂新社67新装初)
の予定。
[PR]

by byogakudo | 2008-01-27 14:09 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 01月 26日

シェクリイ「精神交換」読了

e0030187_14294699.jpg











 連日寒そうな写真が続いている。これは昨日のお茶の水駅界隈。
ちょうど曲り角で、寒風が吹きつけてきた。

 ロバート・シェクリイ「精神交換」(HPB 69初)読了。ハチャ
メチャにストーリー展開して強引に地球に戻って終わる。ちっとも
凄くはないが、詭弁論理学や詭弁哲学(ほとんどトートロジー)を
景気づけに用いて、タイム&スペースを飛び回るどたばたSF。
嫌いじゃない。

 主人公が火星旅行するために火星人と肉体を交換したら、悪い
火星人で、他に12人の人類と交換契約を結んでいた。(たしか
12人だった筈。読み終える以前に忘れてしまった。)

 もし元の身体が失われることがあったら地球に戻れない。そこで
奪われた肉体を求める冒険が始まる訳だが、全部で13名の地球人が
かかわっていることから予想されるように、キリスト教がらみです。
死後に復活するのにbodyが欠かせないから主人公も、あんなに
がんばるのだろう。

 昨夜はシェクリイも持ち帰ったが、前から置いていた小林信彦
「ちはやふる奥の細道」(新潮文庫 88初)を読み出した。こちらは
リファインの極み。

 今週の新着欄です。よろしく。
 新着欄
[PR]

by byogakudo | 2008-01-26 14:07 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 01月 25日

寒い!

e0030187_20182375.jpg











 一日いなかった店に来ると、なんて寒さだろう。エアコンをつけ
使い捨て懐炉をポケットに入れ、外のワゴン出し時に着る上着を
ひっかけ、それでも指先を凍りつかせている。サヴァイヴァルな
冬です。修行じゃあるまいに。

 2pmころ古書会館に着く。人がいっぱい。図録等に抜かれた跡が
あるのが怖い。「それ、あたしの!」と叫びたくなる何かが買われて
しまったに違いない。きっと、そうだ。

 今日は持ち帰ることが可能な重さだ。でも寒すぎてSのカメラも
お茶の水駅近くで出しただけ。大通りからひとつ入った所に、まだ
木造家屋が残っていた。消える前に撮っておかなければ。

 新宿で用足し後、おとなしくバスで戻る。往復に「精神交換」
(ロバート・シェクリイ HPB 69初)を読む。詭弁論理学・詭弁哲学の
オンパレード。Sが勧めてくれたが、たしかにわたしが喜びそうな
どたばたSFだ。今夜のもう1冊もシェクリイにしようかな?
[PR]

by byogakudo | 2008-01-25 20:18 | 雑録 | Comments(0)
2008年 01月 24日

「神野推理氏の華麗な冒険」から「超人探偵」へ

e0030187_139450.jpg








 どちらも昔読んだ覚えはあるが、ほぼ白紙に近い記憶なので
この際、再読。第1作「神野推理氏の華麗な冒険」(新潮文庫
84年5刷)の一話・二話は作者の認める通り、スタイルが決まら
なくてギクシャクした印象をうける。調子が出てきて、会話の
やり取りも生き生きしてくるのは第四話あたりからじゃないかしら?

 映画評論家が使う原稿用紙はペラ(20枚)が基本だと初めて知った。
(第六話「粗忽な<恍惚>」p154)

 いちおう12話で完結__ホームズの失踪と同じパターン__して
4年後(単行本でいうと)に出された神野推理氏の復活・活躍が
「超人探偵」(新潮文庫 84再)である。

 復活後の方が、神野-ホームズ-推理氏の性格もマザコンを脱して
好ましい。ストーリー展開も自在に感じられる。ミステリの定型の
なかで、おっとりスウィングしながら物語が語られてゆく心地よさだ。
 作者は探偵小説のパロディであるとは、どういう事態であるかに
ついて頭を悩ませていても、読者は無責任に愉しんでしまうだけで、
なんだか申訳ないが。

 今夜中にこちらも読み終わるので、次はロバート・シェクリイ
「精神交換」(HPB 69初)。
[PR]

by byogakudo | 2008-01-24 13:25 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 01月 23日

小林信彦「紳士同盟ふたたび」読了

e0030187_13173174.jpg











 雪は地面にふれた瞬間、消えてしまう。このまま雨になってくれ。
積もった雪を溶かしてくれ、暗くならないうちに。わたしが滑るから。
転んで怪我すると店が開けられなくなるから。

 と身勝手な願いごとをしながら、今日は閉店休業に決めた猫額洞。
身支度してワゴンを出すには寒すぎて、からだを壊しそうなので。

 昨夜は小林信彦「紳士同盟ふたたび」(新潮文庫 86初)を読む。
ついに発見、日本人も封筒にメモをとるシーン!と思ったら便箋
だった。残念である。

< 彼は会社の名入りの便箋(びんせん)を裏返しにして、プロットを
 メモし始めた。>(第二章 p87)

 前作から4年後、ちょうどバブル経済期の真っ只中に書かれた
作品なので、地上げに高額絵画蒐集なぞ、当時の話題がうまく
はめ込まれている。
 世界同時株安危機の現在に読んでいるのも妙なものだが、小説の
数人によるコン・ゲームの可憐さに比すと、世界規模の信用詐欺が
暴露された結果じゃないさ、と思うだけ。結果の酷烈さにさらされる
のは、権力に関係ない個人なのだけれど。
[PR]

by byogakudo | 2008-01-23 13:17 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 01月 22日

小林信彦「素晴しい日本野球」読了

e0030187_1338262.jpg











 うまいなあと、何をいまさらな感想を抱きながら愉しく読了。
あっという間に読み終わるのが欠点だ。

 敗戦後の日本が(旧)ソ連に占領されていたら、という設定の
「サモワール・メモワール」でのTV番組構成エピソードが好きだ。
 8月15日は「解放記念日」と呼ばれているが、その日に放送する
「流行歌で綴(つづ)る戦後史」のために、主人公と友人のTV人とが
選曲を考える。

 いわく「ハバロフスク小唄」「憧(あこが)れのナホトカ航路」
「おばこマドロス」「モスクワだよおっ母(か)さん」「ナホトカの
女(ひと)」「デカブリスト三度笠」「革命ドドンパ娘」「哀愁鉄道」
「嵐(あらし)を呼ぶ労働者」「ギターを持った労働英雄」等々。

 次期の芸術大臣の噂のある三波春夫先生のコーナーは、
「ちゃんちきタワリシチ」「ヴォルガ川無情」「ステンカ・ラージン」
「ピョートル大帝土俵入り」「ナロードニキ月夜」「民衆(ナロード)
さんよ」、そして「世界の人民こんにちは」で締める。
 「ステンカ・ラージン」は浪曲と台詞(せりふ)入りだ。浪曲部分の
おかしさは最高だけれど、長くなるので引用はやめる。

 しかし、このおかしさは、今の若い方は笑えるかしら? 元ネタを
知らないで、パスティーシュやパロディはどこまで通じるか判らないが、
小林信彦の抱く苦々しさだけは、感じられると思う。

   (新潮文庫 87初)
[PR]

by byogakudo | 2008-01-22 13:38 | 読書ノート | Comments(0)