猫額洞の日々

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2008年 12月 31日

今年もどうもありがとうございました

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 年々歳々、歳末風景が薄れていく。故ナンシー関が「お正月の
ハードルは、そんなに低いのか?」と、驚き嘆いた時期は疾うに
過ぎ、もう新年が始まっているかのような静かさである。
忙しいのは師ではなく、宅配便業者だ。年末年始も関係なく
お仕事している。

 あまり一年を振り返ったりする柄ではないが、冬休みになった
という意識からか、油断が出て、少し風邪っぽい。
 寝正月に終始しないよう、ストックした本を愉しみたい。
スタージョン3冊が待っている。嬉しい。ナイオ・マーシュも
半分ほど読んだが、昔風ミステリでいい。

 今年もいろいろな方にお会いでき、店も開け続けることが
できました。感謝。
 みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。
 来年もよろしくお願い申上げます。
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by byogakudo | 2008-12-31 16:13 | 雑録 | Comments(0)
2008年 12月 30日

「井上ひさし笑劇全集」読了、ナイオ・マーシュ「殺人者登場」へ

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 昭和40年代の半ば、ということは1970年頃か。最もTVから
遠ざかっていた時期だ。その頃に座付き作者たる井上ひさしは、
てんぷくトリオのために、これらのコントの台本を書いていた。

 てんぷくトリオを知ったのは、たぶん、80年代後半、小林信彦を
読んでからだから、どのみち間に合わなかったのだけれど、
それにしても残念だ。

 脚本で読み取れるのはコントの骨格だけであり、座付き作者は
メンバーひとりひとりを念頭において書いているのに、誰がどの役を
やっているかが解らない。

 ときどき役名が役者名そのままに出て来ることもあり、そのとき
だけ配役が理解でき、舞台を思い浮かべることができるが、
数が少ない。伊東四朗以外のメンバーの個性を知らないから
面白さが半減しているのではなかろうか。

 コントの構成に、対立は欠かせないと解る。弁証法的にできて
いるんだなと解ったけれど、駄洒落のやりとりの可笑しさは
文字で読んでいてもそれほど面白くはなく、TVとはいえライヴで、
動きとともに演じられるのを見るべきであった。
 かなりのスピードで演じられていたのではないか。オンタイムで
見ていなかったのが口惜しい。

     (井上ひさし 講談社文庫 上巻82年10刷 下巻82年8刷)

 昨夜から「殺人者登場」(ナイオ・マーシュ 新潮文庫 59初)。
イギリスの演劇界が舞台のミステリだ。始まって9頁目ですでに
事件発生の兆候があり、10頁目ではスコットランド・ヤードの
捜査課長が観劇に誘われる。手回しのよいこと。ピーター・
ディキンスン「生ける屍」の、読者を試すかのようなテンポの
遅さの真反対だ。
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by byogakudo | 2008-12-30 13:10 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 12月 29日

「読者は踊る」残りと「井上ひさし笑劇全集」

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 斎藤美奈子というと、軽妙かつ辛辣な文体イメージをもって
いたが、この本では、かなり素直な感情吐露も見受けられる。
 「『ばかけんちく』・・・」と同じ[ニッポンという異国]
ジャンルに収められた「日本列島は世界の縮図説から
国内植民地問題を考える」である。

 世界の縮図説とは、大本教の日本地図と世界地図は
ミクロとマクロの関係にある、という例の説。そこから出発
して「裏日本」を「日本海側」と言替える近年の風潮に抗し、
地域格差をごまかすやり口だと批判する。植民地主義の
現れではないか、と。

 斎藤美奈子は新潟市の出身だそうだが、コロニアリズムの
結果発生する、強い地域ナショナリズムに違和感を憶えた
彼女の記憶を記す。

<一九七二年に田中角栄が自民党の総裁選に勝ったとき、
私は高校生で、教師が嬉しそうにそれを報告すると教室中で
歓声があがった。秀才だと思って尊敬していた級友たちが
こぞって拍手している姿を見て、ここに永住するのはやめよう
と思ったんだから。>(p75-76)

 そして、この項は
< 地方の問題は、中央集権的な生産性優先の時代が
百年続いたことのツケである。「お国柄」ってな楽しい話題と
いっしょくたにすべきではない。植民地[注 裏日本]から
宗主国[注 東京]に出稼ぎに来て、そのまま居残った移民
ごときに、とやかくいわれたかないって? そうそう、そういう
発想が大切なんですね。>(p76)と結ばれる。見事だ。

   (斎藤美奈子 文春文庫 04年5刷)

 「井上ひさし笑劇全集」(講談社文庫)は上巻が、1976年
3月15日初刷、手持ちの本は82年6月11日10刷である。
 下巻初刷は76年4月15日、手元にあるのは82年6月11日
8刷だ。
 コントとはいえ、脚本集である。その文庫本がこんなに版を
重ねるなんて、目を疑う。井上ひさしブームだったのか、
それとも井上ひさしが座付き作者であった、てんぷくトリオの
ブームに乗ったのか。
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by byogakudo | 2008-12-29 13:06 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 12月 28日

斎藤美奈子「読者は踊る」から「井上ひさし笑劇全集」へ

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 いつも何だかよく解らない読書傾向をご披露している感が
あるけれど、幅はせまい。文明批評家・斎藤美奈子の本を
読むと、仕事とは言え、得意科目ではない理系の本にも
食らいつき、噛み砕いて、ポイントを外さずレポートしてくれる。
ありがたいことである。自分で読もうとは思わないが。

 「『ばかけんちく』が林立する九〇年代日本の風景」の章では、
バブリーな建物が集団発生した80~90年代の状況を伝える
「偽装するニッポン」(中川理 彰国社 96年)が面白そうで、
いつか読む本のリストに入れよう。

 ここまで書いて制限時間(?)が来たので続きは明日にでも、
もし内容がまだ憶えられていたら、ということで・・・。
 大丈夫かなあ?

   (斎藤美奈子 文春文庫 04年5刷)
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by byogakudo | 2008-12-28 18:20 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 12月 27日

ピーター・ディキンスン「生ける屍」読了

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 今年最後の新着欄をどうぞ。
 新着欄

 年末年始の営業をお知らせします。
 2008年の営業は、12月30日(火曜日)まで。
 2009年度は、1月6日(火曜日)から始めます。
 よろしくお願い申上げます。

 さて、「生ける屍」(ピーター・ディキンスン サンリオSF文庫 81初)を
昨夜、読み終える。地味で面白かった。リゾート地を舞台にしても
バラードではなく、むしろグレアム・グリーン寄り。しかもグリーンの
ギリシア悲劇風の偉きさ、パセティックな響きではなく、どこまでも
地道でしぶといタッチがディキンスンらしい。主人公に英雄的
身振りをさせたがらない。

 クラシック歌手の恋人から、仕事以外の事柄に無反応なあなたは
「生ける屍」みたいなものよ、と指摘されている主人公が、旧家の
一族に支配された島で、政治犯を使って人体実験を行うよう
強制される。断れば殺される。いやいやながら何とか人道的に
ふるまおうとする主人公は、徐々に政治犯の解放に向けて努力する
のだが、決意ではなく徐々にいつのまにか、というところがいい。
ちっとも颯爽としてなくて人間的である。

 後半は、映画でいえば「大脱走」だが、主人公の感受性に即した
描写だから、読者は全くヒロイックな気分にならない。年代物の
蒸気機関車の煤煙に包まれた狭いトンネルの中で、身を縮める
主人公の冒険(?)場面を読みながら、「カタルシス、それは何?」と
問うてみたくなる。

 一種のイニシエーションを経て、主人公は「生ける屍」状態から
回復するが、その前にある後始末シーンがおかしい。独裁者を
倒し軍事政権を樹立しようとする軍人に、アドヴァイスするのである。
 アメリカがカーター政権に変り、軍事独裁国家に批判的になるから、
山岳地帯にいる世捨て人的反体制集団(人体実験に使われかけた
人々)は放っておく方が上手く行くと、アングロサクスン流交渉術を
授ける。
 また軍人に対して、余計なことは言わないから、と約束する。
契約と交渉の場面が、いかにもイギリス的だ。

 こんな感想ではなく、魔術と科学の平行対立状況の話や、
魂と肉体と服との、順列組合せの論理展開シーン__
<魂と服なら幽霊、魂と肉体だけならば野蛮人、服と肉体だけ
ならば屍__いや、屍ならば組合せなくてもひとつだけで屍だ。
服と肉体との組合せは、生ける屍ではないか。>
(p165-166)辺りを紹介すべきなのだろうが。
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by byogakudo | 2008-12-27 13:10 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 12月 26日

「生ける屍」、その前に

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 冬休みが近い。持ち帰り候補の文庫本を選んでいたら、つい
斎藤美奈子「読者は踊る」(文春文庫 04年5刷)を読み出して
しまい、部屋に戻っても続く。ディキンスンが待っているのに。
 宮部みゆきも斎藤美奈子もお預けにして、夜中は「生ける屍」
(ピーター・ディキンスン サンリオSF文庫 81初)。

 原作は77年なのかしら? カリブ海の旧英国植民地(今は
リゾート開発中の島)に薬品研究所があり、主人公の研究者が
休暇をかねて派遣される。J・G・バラードを思い出すような
場所の設定であるが、ディキンスンだから描写は地味だ。

 現地人の暮す地域と観光客用スポットの相違なぞ、バラード
だったら、これでもかとばかりに、きんきらと悲惨とゴージャスさ
の対比を描くのではないか、と思いながら読んでいる。

 まだ1/4辺りなので、主人公が自分の研究に関することしか
興味のないノンポリ・インテリであるのが解っただけ。そろそろ
何か起りそうな気配はある。
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by byogakudo | 2008-12-26 13:53 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 12月 25日

S.A.ステーマン「マネキン人形殺害事件」読了

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 妙なストーリー展開を見せる探偵小説で、主人公の刑事は
頼まれもしない趣味の(?)捜査の途中、本部から別の事件で
呼び戻されブリュッセルに戻る。それはまだいい、刑事なの
だから。

 仕事が片づき、街に戻ってほっとするも束の間、やはり
中途半端なマネキン人形殺害の一件が気がかりで、刑事は
素人名探偵のもとを訪れる。

 ここでいきなり名探偵の知恵を借りなくてもよさそうなもの
だが、重苦しい田舎町(フランドル地方の見捨てられた村落
でのこと、というのが物語も終盤、p252で明らかになる。
わたしはどこかで場所の記述を読み落としていたのだろうか?
不安になる。)の記述が続くから、閑話休題なのだろう。
名探偵のアパートメントではパーティーの最中であった。

 その後、物語は急展開し解決する。しかも冒頭の新聞記事に
ある全く別の事件の解決にもなる。
 見事なストーリーテリング、というべきだろうが、あんまり
そう感じないのは、ノアールだからでしょう。

 刑事の行動というより懺悔聴聞僧の話みたいだった。
クルーゾー「犯罪河岸」(見ていない)の原作者だそうである。

   (角川文庫 76再帯)

 昨夜からは、お師匠さんからお借りしている宮部みゆき。
2-3篇読んだが、読物とエンタテインメントの差異を思う。
 でも中断して、今夜から「生ける屍」(ピーター・ディキンスン
サンリオSF文庫 81初)にする。
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by byogakudo | 2008-12-25 15:56 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 12月 24日

まだ「マネキン人形殺害事件」を読んでいる

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 速読に悩んでいる筈が、いまだにS.A.ステーマン「マネキン
人形殺害事件」(角川文庫 76再帯)の半分強だ。
 それは何故? ひとえに疲れが溜まっているから。

 普段は夕食後、本を広げ、ベットに入っても読んでいるが、
このところの夕食後は、ひたすら茫然としている。
 お風呂に入らなきゃ、後片付けしなきゃという内に寝る時間
が来る。横になってしばらくすると泥のように眠りに落ちる。
 不本意な日々である。

 ステーマンはかなりシムノンを意識していたということだが、
この本でも、主人公の刑事がシムノンの「ニューファウンドランド
で逢おう」という小説の一節を思い出している(p131~132)。
これは翻訳されているのかしら。

 不思議なのは、いくらベルギー警察に所属する刑事とはいえ、
物語が半分強になっても、まだ地元の警察に顔を出していない
ことだ。

 休暇中に遭遇した出来事であり、人が殺されたのではなく、
旧家の死んだ息子の顔をモデルにした臘製マネキン人形が
ひどく破壊された事件(?)に犯罪の匂いを嗅ぎつけて、刑事は
捜査令状を取るべきかと思いながらも、聞き込みしている。

 探偵小説としての整合性よりノアール性を重んじている、
ということなんでしょう、たぶん。作者がせっかく暗い空気を
醸し出しているから、あまりその点は、つつかないでおこう。
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by byogakudo | 2008-12-24 13:30 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 12月 23日

S.A.ステーマン「マネキン人形殺害事件」を読み始める

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 宮部みゆきの前に、くだんのS.A.ステーマン「マネキン人形
殺害事件」(角川文庫 76再帯)に手を出す。ステーマンは、
シムノンと同じくベルギー出身の作家であるそうな。1931年に
書かれた「マネキン人形殺害事件」は43年に改稿され、翻訳は
こちらを元にしている。

 刑事が汽車に間違えて乗ったことに気がつき、見知らぬ土地で
下車する。嵐の夜、名も知らぬ田舎町、刑事は目に入るものすべてに
謎を読み取り、破壊されたマネキン人形に事件性ありと決めつける。

 むかしのミステリはいいな。書き手が自分の描く世界を本気で
信じて書いていることが感じられて。

 今でもその姿勢で書けなくはないけれど、それをやると馬鹿に
されやすいので、作家たちは遠慮がちに小説世界を提供せざるを
得ない。お互い不幸なことだが、時代が変わったのでどうしようも
ない。大時代ミステリのパスティーシュをやって、臭くならないのは
難しいし。
 いまのところ、フランス・ミステリの問題点に悩まされずに読書中。
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by byogakudo | 2008-12-23 14:28 | 読書ノート | Comments(0)
2008年 12月 22日

葉室麟「いのちなりけり」読了

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 お師匠さんからお借りした三冊目、葉室麟「いのちなりけり」
(文藝春秋 08初帯)を昨夜、読了。

 恋愛と地球規模の愛(天道への忠義心)の二筋道を
どちらも全うする、立派な侍の物語。出てくる武士たちは
それぞれに、己の信じる道を進み、静かに死んで行く、
偉い人たちが多い。

 でも誰ひとり、チャーミングに思えないのが最大の欠点
ではなかろうか。下手な小説ではないのだが、どこへ
行っても結局、便利な殺し屋として扱われてしまう主人公に、
共感することは難しい。従容として自分の宿命に従う、
と言えばカッコいいことかも知れないが、武闘集団に生まれた
からって、離脱することもできるじゃないかと思いながら読む。
 武士の枠内で可能な限り、誠実に生きようという設定だから、
それはないのだけれど。

 お師匠さんがいらっしゃる。宮部みゆき「おそろし」を貸して
下さる。「(出来が)いいよ」とのこと。
 三冊への感想を述べる。がんばれ、恒川光太郎!

 棚に出していない文庫本が多いので、あわてて値段付け
してお見せする。
 「これ、お持ちですか」とS.A.ステーマン「マネキン人形
殺害事件」(角川文庫 76再帯)を出したら、
 「あ、読んだよ。面白かった。でも、昔の探偵小説だから
そのつもりでね」とのお言葉(ちぇっ、やっぱり)。80年早い、
お師匠さんへのチャレンジをしてしまう。
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by byogakudo | 2008-12-22 12:55 | 読書ノート | Comments(0)