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2009年 02月 28日

イーヴリン・ウォー「囁きの霊園」読了

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 今週の新着欄です。よろしく。
 新着欄

 イーヴリン・ウォーは愉しい。作中でも言及されているが、ヘンリー・
ジェイムズの主題を加害者側(?)から書くと、ウォーになる。
 つまり、アメリカの無垢がヨーロッパの経験に敗北するジェイムズの
悲劇が、ウォーでは喜劇になる、と言っていいだろうか。

 初めは被害者タイプに見える主人公デニスであるが、デイジー・
ミラー型の無垢な(ナイーヴな)ヒロインの自殺をきっかけとして、
終わりには立派にしたたかな英国人として、イギリスに凱旋帰国する
悪漢小説だ。

 ヒロインの名前からしてエイメ・タナトジェノスだから、「囁きの霊園」
ではなく、原題のThe Loved Oneを生かしたタイトルにできなかったか
と、やや残念に思う。
 巻末の由良君美の解説は丁寧ではあるが、ウォーの優雅で意地悪な
喜劇を語る手つきが、あんまり鮮やかでない__身のほど知らずな
感想で、恐縮です。__のと共に、残念だ。

   (早川書房ブラック・ユーモア選集第2巻 70初函)
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by byogakudo | 2009-02-28 14:52 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 02月 27日

雪にもめげず

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 積もりはしないが雪だ。背中に貼るタイプ、ポケットには貼らない
タイプの使い捨て懐炉を忍ばせ、地下鉄に向かう。躯幹は寒くない、
顔と耳が痛い。

 古書会館、1:40pm着。混んではいないが、季節にも天候にも
左右されない、けして若くない男たちが、いつものように本棚と
対話している、いつもの古書展風景だ。
 なんだかだと買う。値段であきらめた本もある。ほとんど送って
もらったが、帰りの地下鉄内で読むために「囁きの霊園」(イーヴリン・
ウォー 早川書房ブラック・ユーモア選集第2巻 70初函)を取りのける。
「おくりびと」ブームに反抗するためではなく、未読だったから。

 植民地で、尚更イギリス風にふるまう英国人の様子が戯画化される。
ハリウッドがいわば植民地として設定され、出稼ぎ上流階級が
からかわれているようだ。
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by byogakudo | 2009-02-27 19:57 | 雑録 | Comments(0)
2009年 02月 26日

東京新聞2月25日夕刊「文芸時評」より

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 東京新聞夕刊の「文芸時評」に、担当者・沼野充義が、
村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチについて書いていた。
その末尾に、
<エルサレム賞の過去の受賞者の中には、オクタビオ・パス、
ナイポール、クッツェーといった、後にノーベル文学賞を受けた
作家たちもいる。しかも彼らは皆、欧米先進国の周縁の出身者
である。今回のスピーチによって、村上春樹もこの輝かしい系譜に
連なる作家として、国際的な尊敬を勝ち得たものと思う。>とある。

 この記述にまで、「欧米に追いつき、追い越せ」スローガンの
遠い木霊を聴いてしまう、錯聴アタマの我が身が嘆かわしい。
 まあ、ノーベル賞とオリンピックと国連を過大評価する日本の
事大主義がほとほと、いやなのだろう。田舎臭くって、さ。
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by byogakudo | 2009-02-26 16:57 | 雑録 | Comments(0)
2009年 02月 25日

「月刊美術09年3月号」より

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 コレクター/アーティスト、森秀貴氏が彼のインタヴューが掲載された
「月刊美術09年3月号」(サン・アート 03年2月)を持ってきて下さる。
特集「春を呼ぶ版画祭り2009」の、堂々トップを飾る登場である。
 いよいよコレクターとしての正式デビューか。めでたい。

 彼のコレクションでの基本姿勢、「同じ作家を必ず2点買う」というのが
眼目であろう。
 「1点だけだと、自分の目が確かかどうか分らない。2点あって
良いとなると、やっぱり間違い無かったって自分自身が納得するん
ですよ。」(p50)
 そして、コレクションは飾って愉しむ。
 「いい作品というのは毎日見てても、毎日イメージが変わるんです。
だから飾っておくと、今まで気づかなかった良さにふと気づくことが
あるんですよ。それが発見ですよ。」(p49)

彼は膨大な量のモダーンアートの版画作品をお持ちだが、
「作品はやはり見てもらえるのが幸せですから、公にすべきだと」
思って、三鷹市美術ギャラリーに寄贈した。
 「収集はするけれど独占欲はないんです。」(p49)
<フルクサスの子ども>らしい、姿勢である。

 28日(土)から4月4日まで、小西真奈の個展が新富町
ARATANIURANO開催される。
 今までの後ろ姿の人物像が、ついに正面を向いて描かれている。
見たいけれど、古書展の帰りに視力が残っているだろうか。
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by byogakudo | 2009-02-25 14:46 | アート | Comments(0)
2009年 02月 24日

陳舜臣「柊(ひいらぎ)の館」読了

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 2月20日付けdaily-sumusにアラン・グラス情報が!
作品が見られます。おお・・・。

 「柊(ひいらぎ)の館」、始まりは小沼丹「黒いハンカチ」風の、
のどかな連作短篇ミステリ集かと思ったが、どうして、後味は
ビターである。
 巻末の解説に<大人のメルヘン、ロマンに満ちた推理小説>
とあるけれど、そうかなあ。わたしの読み癖がヘンなのだろうか。

 神戸、北野町の異人館に長年勤めるメイド頭が、大正末から
昭和初期に異人館周辺で起きた事件やできごとを語る、という
作りである。元版は1973年刊。「ディスカバー・ジャパン」キャン
ペーンがあり、「異人館、素敵っ!」と若い女たちの旅行熱が高まった
頃だろうか。

 異人館はイギリスの船会社の持ち物で、住み手は本国採用の
イギリス人(白人)、サーヴするのは日本人や中国人(黄色人種)の
女たちである。
 イギリス人の坊ちゃんは若い日本人メイドと戯れても、本命は
同じ人種と階級に属するお嬢さんである。メイドもわかっているから
本気にならない。彼女は封建的な主従関係より、個室を与えられた
ドライな雇用関係を好んでいる。

 幕末の居留地気分を引きずっているのか、イギリス人たちは殺人
事件が起きても、日本の警察に連絡せずに、自分たちの中で
処理しようとする。被害者も加害者も同じ人種・同国人である限り。
 但し、同じイギリス人であっても、本国採用と日本での現地採用組
には歴然と格差がある。日本人との混血児は、さらに下位に属する。

 シヴィアな人間関係の構成と考察は、作者が日本に生まれ育った
中国人だから持てた視点ではないか。
 うつくしかったであろう戦前の神戸風景を思い浮かべながらも、
うっとりとだけはしていられない読み方になった。ヘンかしら。

   (陳舜臣 講談社文庫 82初帯)
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by byogakudo | 2009-02-24 14:18 | 読書ノート | Comments(2)
2009年 02月 23日

「つゆのあとさき」読了

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 読み直すと、前とは違うところに反応する。今回は君枝の布団場面
(森茉莉の表現に倣う)である。
 p43より引用。
<[略]君枝は男の胸の上に抱かれたまま、羽織の下に片手を廻し、
帯の掛けを抜いて引き出したので、薄い金紗(きんしゃ)の袷(あわせ)は
捻(ねじ)れながら肩先から滑り落ちて、だんだら染(ぞめ)の長襦袢
(ながじゅばん)の胸もはだけた艶(なまめか)しさ。
[略]
端折(はしょ)りのしごきを解き棄(す)て、膝(ひざ)の上に抱かれたまま
身をそらすようにして仰向(あおむ)きに打倒れて、「みんな取って頂戴
(ちょうだい)、足袋(たび)もよ。」>

 着物を着たことがないので、「帯の掛け」ってなんですか状態であるが、
セクシーさは伝わる。

 ただ、読んでいると、日本の女の描写というより、パリの私娼の身振りに
見えてくる。ベッドに腰かけ、黒いストッキングを巻き取りながら脱ぐパリ女
に見えてしまう。書いているとき、荷風の頭の中にも、パリの記憶があった
のではないかしら。

   (永井荷風 岩波文庫 92改版9刷)
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by byogakudo | 2009-02-23 17:27 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 02月 22日

低気圧の夕まぐれ

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 昼間は晴れていたが、徐々に曇ってくる。同時に気持まで下がる。
どうもよくない。
 近所の外猫の一匹がこの二日ほど、具合が悪そうなのも気がかりだ。
うずくまって日向ぼっこしていたが、風が出て来たので見に行くと、
いない。どこか暖かいところに隠れているなら、いいけれど。


 昨日の新着欄、「広告の六十年」にページ写真を追加しました。
写真が小さいので解り辛いのですが、モノクロームの、かしっとした
端正なレイアウトがいい本です。
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by byogakudo | 2009-02-22 13:49 | 雑録 | Comments(0)
2009年 02月 21日

「ドイツ幻想小説傑作集」と「つゆのあとさき」

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 今週の新着欄です。よろしく。
 新着欄

 Sもおとといの夜「モレルの発明」を読み終える。ひとしきりビオイ=
カサーレス讃美の深夜となった。1940年にあんなすごいものを書かれては
敵わない。老後はラテンアメリカ文学と久生十蘭で過ごそう。

 また読むものに困り、先日、部屋の戸棚に見つけた「ドイツ幻想小説
傑作集」(種村季弘編 白水uブックス 85初)と「つゆのあとさき」を併読中。
 前者には図録を新着欄に入れたことのある、ウーヴェ・ブレーマーの
短篇がある。SF風、それほど面白くはなかった。ハンス・カール・アルトマン
「風のある日」は悪くない。

 「つゆのあとさき」は気分よく眠るために読む。女給たちの言葉遣いが
いきいきしている。
<「[略]わたしみたような女給なんぞは全く一時的の慰み物だわ。」>
(p16)とか、
<「[略]その方が経済だからねえ。」>(p20)、
<「[略]だから今度は大(おおい)に発展してやろうと思ってるのよ。」>
(p16)や、
<「[略]わたし大(おおい)に悲観しているのよ。」>(p21)。

 わざと硬い言葉を遣うのが、流行りだったのだろうか。
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by byogakudo | 2009-02-21 14:25 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 02月 20日

「雪のなかのミモザ」

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 13日の金曜日的事柄にけりをつけるべく、バスで渋谷税務署へ。
必要事項がほとんど記入済みなので、今回は早い。区役所の
国民年金課にまわる。ついでに年金相談所にも寄って相談するよう
勧められる。まだ3:30にもならない。
 相談所に行く。人手が明らかに足りないなかで、相談や受付が
行われている。少し待ってみたが、待ちきれずに次回、予約してから
行くことにする。

 晴れてきたので、歩いて戻ろう。
 松濤の裾を廻り、神山町へ。大体の方向が合っていれば、いい。
散歩は愉しい。あれは__ミモザだ。白い木造洋館が数件建ち並ぶ
一郭にミモザが咲いている。そっと触れると、朝の雨の雫が残っている。
泣きたくなる。

 前に書いたかもしれない。
 「雪のなかのミモザ」というフレーズが頭に巣食っている。
実際に目にした風景なのか、幻視したのか、それさえはっきりしない。
ただ言葉として、「雪のなかのミモザ」というイメージが記憶され、
定着した。
 ミモザの色と匂いに包まれ、フレーズを思い出し、数十年分の
記憶が押寄せる。だから泣きたくなったのか。

 初台へ向かっているつもりが逸れてしまったようで、代々木郵便局に
来ている。この辺りの住宅でもミモザの樹を見た。
 初台へ方向修正して、部屋に戻る。1時間半くらい歩いた。少し
疲れたが、気分がいい。

 いまネット検索したら、神山町のミモザハウスという貸しスタジオだった。
昔は外国人用ハウスだった洋館を、撮影スタジオに転用したのかしら。
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by byogakudo | 2009-02-20 20:10 | 雑録 | Comments(0)
2009年 02月 19日

"SHUZO AZUCHI GULLIVER"

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 一昨日、1月の三鷹市美術ギャラリーでの靉嘔展でお見かけしていた
(と、お顔を拝見してから解る)K氏が店にいらした。安土修三・ガリバー氏
の友人である。91年に出版された"SHUZO AZUCHI GULLIVER"画集の
製作に尽力奔走された方だ。

 展覧会会場ではお話することがなかったが、なぜかわたしたちを気に入った
ということで、同書をプレゼントしてくださる。

 初めて目にするが、いい本だ。本というオブジェとして完成されていて、
開いて見ていると、とてもいいものが伝わってくる。そんな画集である。
製作に携わった人々の思いがダイレクトに感じられる、91年時点での
ガリバー回顧展の趣がある一冊だ。
 出版に至るまでには大変だったそうだが、ここに作品としての本が
確実に在る。うつくしい作品だ。

 もし見たい方がいらしたら、お見せします。
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by byogakudo | 2009-02-19 17:11 | 読書ノート | Comments(0)