猫額洞の日々

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2009年 09月 30日

シムノン「メグレ最後の事件」読了

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写真は、築地市場を闊歩する猫。あっ、昨日の写真は、あやうく幻に
なりかけた月島の八百屋さんです。

 1972年に書かれた「メグレ最後の事件」でシムノンは作家活動を
停止したと、後書きにあるが、全生涯に270冊の小説を書いたとも
記されている。
 河出書房版のメグレ警視シリーズ50冊以外に、長篇や短篇集が
他の出版社から出ている。日本語ではいったい何冊読めるのだろう?
 河出の50冊だって、わたしは何冊読んだのか。「港のマリ」や
「汽車を見送る男」といった、手に入れられなくはないが高い(!)
本まで考えると、日本語版シムノン全冊読破への道は遥かである。
潔く諦めよう。

 それはともかく、「メグレ最後の事件」のアル中女が哀れでいい。
殺された彼女の夫は、著名な公証人の息子としてみんなに愛され、
妻とうまく行かないせいの浮気だって周囲に認められているのに、
彼女の味方は、女中ただ一人である。(この女中の意固地な
キャラクターもいい。)

 同じ大きなアパルトマンで妻と別々の暮しを営み、ときどき商売女と
数日間、同棲する夫は、その間はまるで初々しい恋人同士のように、
女を喜ばせようと料理をしたりしている。一週間もすれば家に戻るが、
妻と接触することはない。彼女はひたすら飲み続け、女中に介抱して
もらうような日々だ。

 彼はカトリックだからという理由で離婚しない。彼を知る人々は皆、
彼を肯定するけれど、とても残酷な男に思える。
 それとも、彼女が貧しい育ちからのし上がろうと願ったことが、
そもそもの罪だったのだろうか。
     (メグレ警視シリーズ36 河出書房新社 78初 帯 VJ欠)
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by byogakudo | 2009-09-30 15:11 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 09月 29日

シムノン「メグレのバカンス」「メグレ推理を楽しむ」「メグレの失態」読了

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 そんな訳で(?)メグレ夫妻のリゾート地での休暇は終る。
     (メグレ警視シリーズ50 河出書房新社 80初 帯 VJ欠)

 「メグレ推理を楽しむ」も、メグレ夫妻の休暇ものである。
但し今回は出かけない。上記のリゾート地に行っていると
警視庁には伝えておいて、ふたりで、今まで行かなかった
パリの街区を歩き廻る。メグレ警視はともかく、主婦である
メグレ夫人はほとんど近所しか知らない。

 休暇の日々を毎日行き当たりばったり、散歩してレストランで
食事して、という夏休みである。初日はいいが、歩きつけない
メグレ夫人が、明日はローヒールを履こうと思ったり__
ハイヒールで石畳の街を歩き廻っていたのだ!__、今日は
うちでお昼にしてはどう?と夫に聞いたりするのが、なんともいい。

 センセーショナルな事件が起き、メグレ氏は捜査に参加したくて、
うずうずする。だが、せっかく部下が捜査主任をしているのだし、
パリにいないことになっているのだから、手が出せない。しかし口は出せる。
 一般人と同じく新聞記事しか情報源のないメグレ警視は、捜査のヒントを
匿名の手紙という形で警視庁に送る。
 全体の明るさが魅力的な一冊だった。
     (メグレ警視シリーズ43 河出書房新社 79初 帯 VJ欠)

 「メグレの失態」はお天気からして暗い。長雨の続く冬のパリでの事件である。
他を蹴落として成り上がってきた男が殺されるが、ここまで周囲の人から
嫌われている被害者も珍しい。メグレの幼なじみであるが、メグレは被害者にも
その父にも好感の持てない事情がある。捜査の間中ずっと、個人的な嫌悪感が
あるから、警察に保護を求めてきた被害者に対して、冷淡にふるまってしまった
のではないかと、メグレ警視は考え込む。
     (メグレ警視シリーズ44 河出書房新社 79初 VJ欠)
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by byogakudo | 2009-09-29 14:16 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 09月 28日

シムノン「メグレのバカンス」「メグレ推理を楽しむ」読了/「メグレの失態」もう少し

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 まったくもう、がつがつと品の悪い読み方で、恥ずかしい。古本屋を
止めれば、もうちょっと、おっとりと読んでいられるようになれるかも。

 「メグレのバカンス」は1947年の作品。メグレ夫妻は休暇中だが、
せっかく大西洋沿岸に来たのに、メグレ夫人が急性虫垂炎を起こし、
修道院経営の病院に入院してしまう。

 メグレ氏は毎日、定時のお見舞いしかすることがない。修道院の
お上品な女学校みたいな空気にもなじめない。ビヤホールで知り合った
街のお偉方のひとり、マンシュイ警察署長とその地の警察署を訪れ、
<[略]そこにこもった匂いを嗅いで、メグレはほっとするというか、
 すっかり嬉しくなってしまった。>(p34)

そんな訳で、休暇中であるにもかかわらず、結局、事件を解決してしまう
メグレ警視であった。 (続く)
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by byogakudo | 2009-09-28 13:39 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 09月 27日

シムノン「メグレとルンペン」読了/「メグレのバカンス」もう少し

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 写真は、築地6~7丁目の路地。バルテュス空間だ。人形町の路地にも
バルテュスを思い出させる場所があった。


 シムノンはこんなに貧乏くさく、せっつかれながら(誰に?と言えば、
自分自身)読むべきではない。ゆっくりパリの街や空気を楽しみながら、
物語に入っていくのが望ましい。と思いつつ、夜毎せっせと読み喰らって
いる。

 社交が仕事である億万長者の世界から、一夜にして今度はセーヌ川の
橋下に暮すルンペン(これはまだ自主規制用語ではないのか?)が襲われた
事件へ。

 1962年の作品であるが、この頃でもホームレスがいたので驚く。
「ポンヌフの恋人」__フランスの大竹しのぶが出てなければ良かった
__みたように、近年のアメリカ化の産物だと迂闊にも思っていた。

 ただ時代はまだ余裕があったのか、元娼婦のホームレス女性に、
<「[略]あたしらは無害な人間だからね。[略]みんながお互いの
 自由を尊重してるのよ・・・・・・みんながお互いの自由を尊重して
 なけりゃ、一体何だって橋の下なんかで眠るもんかね?・・・・・・」>
(p125)と発言させている。

 メグレ警視は元医者である襲われたホームレス男性に、なぜか
共感を覚える。彼の所持品を調べているとき、三個のビー玉を
見つけて、無意識にポケットに入れてしまう。
<ガラス製で、中に黄色と赤と青と緑の筋が見え、子供たちが
 五、六個の普通のビー玉と交換して、陽射しの中できらきらさせて
 楽しむ、あのビー玉である。>(p100)

 事件全体はやりきれない話だが、諦観と生きていることへの肯定的な
語り口が、後味の良さを残す。
     (メグレ警視シリーズ37 河出書房新社 79初 帯 VJ欠)

 「メグレのバカンス」も夜中に読み、朝も店に出かける前に読みしている。
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by byogakudo | 2009-09-27 13:19 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 09月 26日

シムノン「メグレとかわいい伯爵夫人」読了

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 今週の新着欄です、よろしく。
 新着欄


 ううっ、さっきいらしたお客さま、もしかして、この間、本を贈って
下さった方ではないだろうか・・・。ああ、古本屋は顔認識力が弱い。
三度お目にかかり、その都度お話しして、ようやくどんな本がお好きな
誰それさん、とインプットするのが古本屋だ。少なくとも中野新橋では
そうである。

 もし彼があの方でしたら、お許し下さい。すぐには覚えられないのです。

 昨夜読んだ「メグレとかわいい伯爵夫人」(メグレ警視シリーズ40 河出書房
新社 79初 帯 VJ欠)は高級ホテルが舞台だ。そこで働くには、お客の顔と
名前(と身分)が一度で覚えられないようなら、諦めた方がいいそうで、
わたしは絶対に無理。

 億万長者たちの間に発生した殺人事件を、メグレ警視が担当する。
 昔ならジェットセット、今ならセレブですか、大金持ちの間に入って、
メグレ氏は困惑する。彼らの感じ方・生き方に同調できず、事件のイメージが
掴みがたいから。

 ようやく、彼らの保守的で豪華だが、単調な生活に焦点が合わせられる
ようになり、そして事件も解決。
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by byogakudo | 2009-09-26 15:42 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 09月 25日

シムノン「メグレ夫人のいない夜」「メグレと無愛想な刑事」読了

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 一昨日・昨日と、某お客さまご推薦本を続けて読んでいる。アメリカに
移られたお客さまはメグレ警視シリーズもお好きで、
 「メグレ夫人が出てこない話があるんだけど、メグレ警視がアパートに
閉じこもって、そこから指揮するんです」と言っていらしたのが、これ、
「メグレ夫人のいない夜」であろう。

 奥さんの妹が入院したので、メグレ夫人はパリを離れて看病に行く。
ふたり暮らしに慣れたメグレ氏は、ひとり、落ち着かない日々を過ごす。
 こんなときこそと、奥さんの嫌いなエスカルゴを食べに行っても、
ひとりでは食事が楽しめない。家に戻っても、明かりを点けることから
始めなければならない。
 にわかやもめ暮らしのつまらなさや侘しさが描かれる冒頭部がすてきだ。

 部下が銃撃される事件が起きた。メグレ警視は事件解決のため、と称して
現場のアパートに下宿する。
 そこはメグレ夫人タイプの世話好きな大家さんが管理しており、メグレ氏も
彼女に面倒を見てもらう。(ライフスタイルというべきか、運命というべきか。)

 去年も疑問で、いまだどんなものかわからない、りんぼく酒をメグレ氏が
飲むシーンや、ベッドの下に潜む若いお尋ね者など、お約束化した(?)些事が
楽しいが、基本はメグレ・シリーズらしい哀切な犯罪情話だ。

 「メグレと無愛想な刑事」は短篇集。これも感じが良かった。
 さあ、今夜もメグレ警視のどれかを読もう。
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by byogakudo | 2009-09-25 20:03 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 09月 24日

ケストナー「飛ぶ教室」読了

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 ホジスンが一息に読めない。買取り本からケストナー「飛ぶ教室」
(光文社古典新訳文庫 06初 J)を持ち帰る。初読である。子ども向けは
「エミールと探偵たち」・「ふたりのロッテ」しか読んでいない。

 アメリカに移住されたお客さまが好きだと仰っていたのは、これだったか
「点子ちゃんとアントン」だったか。「飛ぶ教室」を読んでみた感じでは、
たぶんこれが、彼女の大好きだった本ではないかと思う。清々しいから。

 光文社古典新訳文庫シリーズは、どの本でも漢数字ではなく洋数字が
使われているのかしら? よしもとばななを読んだことがないので、縦書き
小説に洋数字が用いられているのを見るのは、初めてだ。

 最初はぎょっとするが、じき慣れる。慣れなかったのは、会話での
「てにをは」省略が多用されていることだ。たしかに実際の会話では
「てにをは」をきっちり入れて話したりしないけれど、文章で読んでいると、
ちよっと引っかかる。
 翻訳全体のトーンから言えば、「てにをは」省略はアリな文体であるが。
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by byogakudo | 2009-09-24 12:17 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 09月 23日

アガサ・クリスチィ「エンド・ハウスの怪事件」読了

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 写真は、たしか築地で。


 W・H・ホジスン「夜の声」、好きだけれど、似たような海の化け物話が
並ぶので、「エンド・ハウスの怪事件」(アガサ・クリスチィ 創元推理文庫
75初 J)を途中に入れた。

 読み終わったが、前に読んでいるのかいないのか、まったく解らないから
初読ということにしよう。

 「遠近法は神の視点」というフレーズが浮かんだ。いきなり出てきた訳では
なくて、なぜクリスティは、ポアロやミス・マープルのような名探偵を作ったか
と考えていたら、浮かび上がった。

 ポアロはイギリスに暮らすベルギー人であり、ミス・マープルは英国人だが
一人暮らしの老嬢である。どちらも社会的にはアウトサイドだ。
 しかし外部であることによって、市民社会の中に起きる事件を鳥瞰する
目が持てる。

 シャーロック・ホームズの昔から、探偵小説家が名探偵の変人ぶりを
強調するのは、彼らの他者性を際立たせ、神の視点には及ばずとも、
社会の中に充足して存在していては持ち得ない、客観的なまなざしを
彼らに与えるためなのだろう。

 彼ら名探偵たちは、物事を大小に関わらず点検して出来事を整理し、
事件の見取り図を読者に展開する。そこでいきなり「遠近法は神の視点」
が出てきたのだが、飛躍しすぎている・・・。
 ヴェラスケス「侍女たち」まで思い浮かんだのは、どういう観念連合
なのか、我ながら不明だ。
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by byogakudo | 2009-09-23 13:00 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 09月 22日

The Only Ones の続き

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 猫額洞入り口には「私は猫ストーカー」ポスターが貼ってある。
今はその下に、小ぶりながら赤・黒・黄色の目にも鮮やかな
"The Only Ones"ポスターがある。(レジ前にフライヤが置いて
ありますので、どうぞ!)

 大学生の方から好みが若いと言われたが、ロックは当節、むしろ
中高年に聴かれている音ではないかしら?
 フラットに発音する「クラブ」に行ったことがないので、若い人が
どんな音を耳にしているのか知らないのだが。

 80年代前半、EP-4ライヴの後、インクスティックで大勢で会食した
ことがある。(その頃「打ち上げ」という言葉があったのか?)
 ずらり並んだ人々を見ながら、数十年後の情景を視た。
 大部屋の老人病棟である。それぞれ点滴や酸素吸入器に縛りつけ
られながらも、口だけは達者な老人の群れの幻想だ。

 終末を実感する現在では、もっと息も絶え絶えになっている筈だと
わかるが、そのときは、とてもリアルだった。

 それでも、今の中高年が老人介護施設に収容される頃には、
催し物も変わるのではないか。変わらざるを得ない。

 「裸のラリーズとフレンチポップスを考察する」討論会やら、
「春宵値千金__カリガリ博士とツァラ・レアンダーの夕べ」とか、
そういった角度での催し物でないと、老人たちは満足できない
のではないだろうか。

 どうせ特種老人の一般的でない好みと片づけられて、提案しても
却下されるだろうが、近い将来の希望として述べておく。
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by byogakudo | 2009-09-22 13:14 | アート | Comments(0)
2009年 09月 21日

亜湖さんの詩のパフォーマンス/THE ONLY ONES

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 10月24日(土)7pmから、新宿シアターPOOにて、亜湖さんの詩の
パフォーマンスがあります。
 「タバコと水中毒」というタイトル。
 猫額洞にフライヤがあります。皆さま、どうぞ!

 THE ONLY ONES、行こうかどうしようか迷っている方、迷わず
行くべし! まだチケットが買えるかもしれません。
 恋人をホスト/ホステスにたたき売らなくても、我と我が身を苦界に
沈めなくても買える値段です。
 
お問合わせはVINYL JAPANへ。

 初日に行くつもりでしたが、パディのカドリー・トイズが出るので、
11月8日(日)の2日目に変更してもらいました。
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by byogakudo | 2009-09-21 17:04 | アート | Comments(0)