猫額洞の日々

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2009年 10月 11日

シムノン「霧の港のメグレ」「メグレとワイン商」「メグレと賭博師の死」読了

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 写真は、旧乃木邸のキャットハウス。

 メグレ警視シリーズの文末には大抵、執筆場所と日付が
記されているが、「霧の港のメグレ」にはない。

 記憶喪失の男が元船長だったと分かり、メグレ氏は彼を
港町に送って行き、そこで更なる事件が・・・という物語だが、
もしかして戦前の作品だろうか?
 どうも時代背景がはっきりしない。アクション・シーンが
あるので昔の作品かと考えたのだが。

     (メグレ警視シリーズ47 河出書房新社 84新装初 帯 J)

 「メグレとワイン商」には1969年と書かれている。裸一貫から
成り上がったワイン卸商人が、高級連込みホテルから出た瞬間に
射殺される。会社の女事務員には全員手をつけ、ブルジョア階級の
女たちにも手を出す、忙しい男であるが、妻を含めて女たちは、
彼をやさしく理解している。自分の力を信じるために女を征服した
がっているのね、と。

 彼の最新の愛人は、<ばった.>と渾名されている。背が高く痩せて、
手足が長いからだ。メグレの尋問にも率直に答える。
<「[略]あの人は、あたしを欲しいときにはその合図をしましたけど、
 愛だの恋だのといったことは一度も口にしません。あたしもあの人を
 恋人とは思ってませんでした......」>(p26)

 渾名といい、もの言いといい、なんだか「ガリア」の頃のミレイユ・
ダルクのイメージだ。

     (メグレ警視シリーズ33 河出書房新社 78初 帯 VJ欠)

 「メグレ警視シリーズ」を読んでいると、メグレ警視の目を
通して、パリの(フランスの)全階級と知合いになった気が
してくる。

 パリに住むのはフランス人だけでなく、外国人も多い。
「メグレと賭博師の死」で殺されるのは、大金持ちのレバノン人だ。
彼はプロの賭博師で、妻と折合いが悪くなり、同じアパルトマンでは
あるが、彼女とは没交渉。同国人の秘書兼何でも屋の男と、過ごす
時間の方が多い。

 賭博師の妻も負傷するが、彼女はオランダ人、妻の愛人は
コロンビア人で、妻の女中はオランダ人、といった異国人陣営に
メグレ警視は捜査に赴く。このブルジョア一家に仕える唯一の
フランス人が、亭主が刑務所に入っている家政婦である。
 全員、口が重く、あるいはフランス語がうまくなく、非協力的で、
捜査に手こずる。
 1966年の作品だ。
 
     (メグレ警視シリーズ34 河出書房新社 79初 帯 VJ欠)
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by byogakudo | 2009-10-11 13:54 | Comments(2)
2009年 10月 10日

南青山一丁目広場!

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 写真は、南青山一丁目広場で。

 「メグレ警視」シリーズも2冊読んだけれど、それより南青山一丁目広場の
写真をしみじみ眺めていたい。奇蹟的なうつくしさだもの。街の豊かさって
こういう空間をもち続けることだ。

 今週の新着欄です、よろしく。
 新着欄
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by byogakudo | 2009-10-10 14:04 | 雑録 | Comments(2)
2009年 10月 09日

青山墓地周囲を一周する

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 体調がすっきりしないので、今日こそ歩こう。遠出すると帰りのへたりが
案じられるので、地下鉄大江戸線を青山一丁目下車。

 外苑東通りを都営青山一丁目アパートあたりで曲がってみる。南青山
一丁目広場という公園にぶつかる。あまり整備されすぎなくて、はらっぱ
みたいな感じがとても素敵だ。周りに高い建物が少なく、空が広い。
 ぽつんと残されたはらっぱに、ひとがちらほら散歩していたり、犬を
運動させたり、猫にも遇う。東京はきれいだ。

 煉瓦の建物はなんだろうと道を渡ったら、乃木邸の馬小屋だ。
黒く塗られた旧乃木邸は、外から覗けるように建物の周りに一周コースが
設けられているが、個人住宅なのに、なんでこんなに暗いのだろう?  
 凶事があった家というだけでなく、掲示板によれば、フランスの軍隊宿舎を
参考にして建てた、とある。ストイックにもほどがある。
 庭のすみっこに外猫用の小屋が作ってあった。入り口にはヴィニル傘が
差しかけられ、発泡スチロール製キャットハウスは赤煉瓦柄にペイントされて
いる。

 乃木坂は、むかしは何もない坂道だったけれど、変ってしまった。30余年も
経てば当然ではあるが、これが元防衛庁跡? 「東京村起こし」みたいなビルが
建っていて、風景は西新宿や中野坂上と変らない。
 外苑東通りを六本木交差点に近づくにつれ、殺伐たる空気が押し寄せる。
交差点は、もはや御徒町気分である。ここまで荒れ果てるものか。
 殺風景を眺めながら少休。

 龍土町や星条旗新聞社を過ぎて、外苑西通りを歩く。どこまで歩いても
青山墓地が続くような気になる。へたって来たので、もう一度休憩。

 車道端に坐っているひとがいる。視線の先には並木と、その奥に絵画館。
絵画館に夕日が沈もうとしているパースペクティヴを、水彩で描いている。

 また青山一町目駅から地下鉄で戻る。大江戸線は地下深いので、
プラットフォームにたどり着くまで、迷路を歩いてるみたい。
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by byogakudo | 2009-10-09 19:58 | 雑録 | Comments(0)
2009年 10月 08日

シムノン「メグレ保安官になる」読了/「霧の港のメグレ」半分弱

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 お言葉に甘えてゆっくり読み出したメグレ警視シリーズ、
「メグレ保安官になる」では、メグレ氏はアリゾナ州ツーソンに
滞在中である。なんでまた?

 「メグレ式捜査法」と逆のパターンで、今回はメグレ警視が
アメリカで研修旅行をしたときの話だ。証人審問が開かれるから
見てみたら?と誘われ、どんな事件かも分からず、法廷でひとり、
ほったらかされて坐っているシーンから始まる。

 徐々に事件が明らかになり、フランスとは異なるアメリカでの法廷の
様子が描かれるが、主題はヨーロッパから見たアメリカ文明批評だ。

< ある国とよその国では、いろいろなことが変る。どこへ行っても
 同じものもある。
  しかし、もしかしたら、国境を越えてもっとも色彩が変るのは
 悲惨さではなかろうか?[中略]
  ここでは、彼は、ボロのない、きれいに洗い上げた惨めさ、浴室の
 ついた惨めさの存在に感づいている。これが彼にはいっそうつらい、
 いっそう冷酷で、いっそう絶望的なものに思える。>(p103) 
     (メグレ警視シリーズ39 河出書房新社 79初 帯 VJ欠)
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by byogakudo | 2009-10-08 14:09 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 10月 07日

デイヴ・ブルーベック「ブランデンブルグ・ゲイト」

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 頼んでいたBrandenburg Gate: Revisited (Dave Brubeck)が
やっと届いた。台風接近で客足のない店内、存分に聴いている。

 ひとが所有できるのは記憶だけだ。それもいつかは喪われるけれど、
思い出せる限りはもっていたい。
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by byogakudo | 2009-10-07 14:52 | アート | Comments(0)
2009年 10月 06日

シムノン「メグレと録音マニア」読了

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 某お客さまからお墨つき(?)を得て、晴れて読み続ける「メグレ
警視シリーズ」であるが、冒頭部より引用__

<雨はこの三日間降りつづいていて、ラジオのニュースでは、
三十五年ぶりの記録的な大雨ということであった。[中略]
誰もがうんざりしていた。>(p5)

 物語の中だけでなく、読んでいるこちら側でも、雨続きで
うんざりしている。義母の言葉を借りれば「くさくさしちゃう」
である。昔の東宝映画で高峰秀子あたりが言いそうな台詞だ。

     (メグレ警視シリーズ27 河出書房新社 78初 TV化帯)
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by byogakudo | 2009-10-06 13:50 | 読書ノート | Comments(2)
2009年 10月 05日

河出書房版「メグレ警視シリーズ」について

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 連日せっせと読んでいる「メグレ警視シリーズ」に関して、
某お客さまからお電話を頂いた。シリーズは彼の依頼でお探し
したのだが、
 「ブログを見たよぉ。いいよ、今忙しくって取りに行けないから、
ゆっくり読んじゃってて。年内には買いにくるからね」と仰る。

 という事件(?)がありまして、河出書房版「メグレ警視シリーズ」に
ついてのノートである。

 シリーズのサイズがまず好きだ。タテ×ヨコが17.5×11.5cmと小ぶり
である。1976年に第一シリーズが10巻完結の予定で始まるが、この
シリーズの帯幅3cmは、帯嫌いも認めざるを得ない、きれいな細さだ。
 ただ、ソフトカヴァにヴィニル・ジャケット(VJ)を着せたのが難点で、
よほどヴィニルの収縮率を案配してVJサイズを決めないと、本の首が
絞まる。

 その欠点を補って出されたのであろう、1983年頃からの
新装版「メグレ警視シリーズ」は、紙ジャケットに帯付きだが、
帯幅4.5cmが、あまり可愛くない。細い帯は、印刷所段階で早くも
傷んだり失われたりしやすいと、聞いたことがあるし、VJ時には
ジャケットの内部に帯を入れられたが、紙ジャケットではできない。

 当初の全10巻が全36巻、さらには全50巻刊行決定、となった
のはいつ頃だろう?

 また、1978年頃からテレビ朝日で「東京メグレ警視シリーズ」
というTVドラマが制作されたので、70年代末のシリーズ・帯幅は
9cmになり、ドラマ化写真が大きく用いられている。

 「東京メグレ警視シリーズ」を見たことがないので何にもわからないが、
おそらく「人情デカ」シリーズではなかろうか。目暮(めぐれ)警視が
目黒署勤務だったらおかしいけれど、浅草辺りの警視だったのかしら? 
 都筑道夫のホテルディック・シリーズみたように象潟署が、
いちばんぴったりだと思うが、あれ、ホテルディック・シリーズに、
ほんとに象潟署が出てきたっけ? 自信がない。
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by byogakudo | 2009-10-05 13:42 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 10月 04日

シムノン「メグレと匿名の密告者」読了

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 メグレ・シリーズも終りの頃(1971年)に書かれたもの。
誰かの後書きで、シムノンは生涯に270冊の小説を書いたとか
記されていたが、河出のシリーズ・裏表紙の作者紹介には400冊
以上と、書かれている。いずれにしても多作である。
 やや同工異曲が目立っても、いいじゃないか。読者は謎解きに
挑戦するのではなく、メグレ夫妻や登場人物の生きている様子、
街の空気を読みたくって読んでいる。

 「メグレと匿名の密告者」は、メグレ夫妻と町医者のパルドン
夫妻との夕食の話で始まる。
 今回はメグレ宅での食事なので、メグレ夫人は、ほろほろ鳥の
パイ巻きに腕をふるう。<男たちのほうはアルザスのりんぼく酒か
木苺のリキュールなどをのみながら>夕食を待つ。
 食事中はとっておきの葡萄酒、さらに食後も<それから、彼らは
一体何杯のりんぼく酒を飲んだのだろうか?>(p7)

 その夜中の二時に、殺人事件発生で起されたメグレ氏は、当然
気分がすぐれない。朝方戻って昼前に目を覚ましても依然、不調
である。メグレ夫人から軽食を勧められても、あまり食欲がない。
 メグレ夫人が、ほろほろ鳥のせいで消化不良を起しているのかと
心配する。
< 「そいつは消化したんだが、パルドンと少しりんぼく酒を
 飲みすぎたようだ......それに、葡萄酒もあったし......」(p37)

 こういう箇所も楽しんでのメグレ警視シリーズだ。
     (メグレ警視シリーズ32 河出書房新社 78初 帯 VJ欠)
 
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by byogakudo | 2009-10-04 14:56 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 10月 03日

シムノン「メグレ式捜査法」読了

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 昨日は失礼しました。店に来て書いて、その後調べものをしていたら、
非公開のままだったことを忘れて帰ってしまい、気づいたのは部屋まで
あと1分のところ。店に戻る元気をなくしました。

 今週の新着欄です、よろしく。
 新着欄


 「メグレ式捜査法」といったって、マニュアル化できるような特殊な
技術がある訳ではない。観想法といおうか、事件関係者のそれまで
生きてきた状況を内在的に理解し、犯罪の構造理解に至るということだろう。

 そんな「メグレ式捜査法」を学ぶためにスコットランドヤードから刑事が
派遣され、メグレ警視に密着学習する日々が続く。メグレ氏は辟易する。
 礼儀正しく控えめな英国人なのだけれど、日々の仕事ぶりをじーっと端で
観察されていたら、どんな職種であれ、気ぶっせいである。視線を気にする
メグレ氏が、毎春メグレ夫妻のアパートメントを訪れる、長っ尻な親戚を
思い出すのがおかしい。

 まだ気心が知れない人であるのも、神経をつかう原因だ。正確なフランス語を
話す刑事であるが、外国人に正確すぎる自国語を話されると、却って
<言葉の裏に隠されたものを探ってしまう>(p26)というのは納得できる。
 メグレ・シリーズの冒頭部の引込みは、いつも巧い。
     (メグレ警視シリーズ13 河出書房新社 77初 帯 VJ欠)
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by byogakudo | 2009-10-03 14:30 | 読書ノート | Comments(0)
2009年 10月 02日

シムノン「メグレの拳銃」「メグレと深夜の十字路」読了

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 一昨日も昨日も、そして今夜も、ふらんす情話ことメグレ警視シリーズに
かかりきる。この機会を逃すと、また探さなければならないので、必死の
読書となる。売るのを諦めれば、ゆっくり読めるのではあるが。

 「メグレの拳銃」は、メグレ警視の自宅を訪れた若い男に、FBIからもらった
拳銃が盗まれることから物語が始まる。拳銃には、
<J・J・メグレへ、F・B・Iの友人一同より。>と刻まれている。

 メグレ警視のフルネームは、ジュール・ジョゼフ・アンテルム・メグレ、である。
 ところで、メグレ夫人の名前は、なんと言うのだろう? シリーズのどこかで
出てくることがあるだろうか?

 メグレ夫妻に子どもがいないからか、メグレ警視は無知から犯罪に走りそうな
若い男に親切である。拳銃を盗んだ青年が殺人を犯さないようにと、ロンドン
まで彼を追いかけ、ホテルで食事を奢ってやりながら説得し、犯行を防ぐ。
     (メグレ警視シリーズ38 河出書房新社 79初 帯 VJ欠)

 前者は1952年の作、「メグレと深夜の十字路」は1932年だ。メグレ警視が
中年にさしかかった頃の事件であるが、大変、ノアールだった。

 ピストルやカービン銃が何度も発射され、メグレ警視が銃弾をくぐる大捕り物劇
である。びっくりした。
 これまで読んだ本では銃撃された死体は出てくるが、銃撃戦の様子が直接
描かれることはなかったので、驚いたのだ。

 パリ郊外の寂しい十字路に建つ三軒の家。ひとつは、亡命貴族の兄妹が
借りている、いわくつきの古い屋敷。そしてガスステイション兼自動車修理工場、
保険業者の住まい、三軒しかない。暗い雰囲気たっぷりである。
     (メグレ警視シリーズ46 河出書房新社 84新装初 帯 J)
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by byogakudo | 2009-10-02 16:00 | 読書ノート | Comments(0)