猫額洞の日々

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2010年 09月 30日

J・G・バラード「楽園への疾走」もう少し

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~09月27日より続く

 もっと早く読み終わりそうなものを、そうか、疲れていたのかしら、
昨夜中に終らなかった。

 核爆発実験場であった南海のフランス領無人島が、環境保護過激派の
中年女性リーダーに導かれた数人の手によって占拠され、環境保護の聖地と
看做されるようになる。スローガンは「アホウドリを救え!」。
 アホウドリってとこがミソだ。イメージが広がる。

 何かことを起こせば余波が生まれる。流行りのメッセージ性を持つ行動は、
メディアによって増幅する。見逃される訳がない。
 アナウンス効果により、賛同者や観光客が訪れるは、善意の人々から様々な
物資が飛行機や船で届けられるは、禁欲的な聖なる島を夢見ていた女ノアは、
立て直しを迫られる。

 メディアや過度の情報がもたらすドタバタが、細かく丁寧に取り上げられる。
グロテスクな戯画は、まったくその通りであるが、なんだろう、細か過ぎて
物語の速度とズレを起こしているような気がするのだが。但しこれは読書時の
体調のせいで、そう感じたのかもしれない。

 ユートピアはいつだってディストピアに変貌する。
 アホウドリを救うという当初の目的はいつの間にか、島を地球上の希少
動植物の保護地にしようという運動に替わる。その土地固有の生態系がある
だろう、と問題提起する者は現れない。だって、世界の善意が集結した行為
だもの。
 
 送られてきた番い絶滅危惧動物は、繁殖を終えると生きるための食料にされる。
ありそうな話で、ノンフィクションを読んでいるような気になるのが、この小説の
問題点なのか。
     (創元SF文庫 09初 J)

10月1日に続く~





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by byogakudo | 2010-09-30 12:41 | 読書ノート | Comments(0)
2010年 09月 29日

シオドア・スタージョン「影よ、影よ、影の国」読了

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 愛らしいタイプの作品が集められたスタージョン短篇集だ。

 「嫉妬深い幽霊」は、「秘密嫌いの霊体」と同じアイディアから
作られたようなラヴ・ロマンス。

 「超能力の血」は、フェミニズム小説の一種ではなかろうか。
 いきなり主人公が切羽詰まっている。ずっと彼の焦燥感が描かれる。
いったい何の話だろうと読み進めて行ったら、超能力で妻の出産
(と、もうひとつ)を体験できる夫の物語だった。どこからこんな
ストーリーを思いつく? 思いついて小説に仕立てられる?

 「地球を継ぐもの」は、ちょっとラファティを思い出した。そりゃあ
ラッコは可愛いけど・・・。

 最後が「死を語る骨」。殺された被害者の網膜に残った映像から
加害者を特定する話があるが、網膜ではなく骨に置き換えてある。

 このシステムを開発したのが、<車線間のコンクリート壁を動かす
ことによって、ハイウエーの交通量を調節する>仕組みとか、
<五分の一秒から三十分まで好きな長さの間隔をおいて、三十発
撃てる銃>とかの発明者である。
 被害者の骨による犯人特定システムも、勿論、ひょうたんからコマで
発明された。

 スタージョンはいいなあ。
     (ソノラマ文庫 84初 帯 J)





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by byogakudo | 2010-09-29 13:17 | 読書ノート | Comments(0)
2010年 09月 28日

大雨に見舞われる

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 雷まで鳴り出す。怖いので雷鳴が収まってから店に出かけると、今度は
大雨! 視界が白くなるほどだ。あとで乾かせばいいさと諦めて、かまわず
歩いて店に着いたら、膝上まで濡れている。風邪を引きそう。

 1pm過ぎにはほとんど止んだ。来ただけで一日の仕事が終わった気分だ。
どうやって気力を取り戻せばいいのか。取りあえずコーヒーをいれる。

 コーヒーを飲み終えても、気力はあまり起きない。それでも事務作業を
ひとつこなしたから、普段のペースに回復したってことかなあ。





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by byogakudo | 2010-09-28 13:35 | 雑録 | Comments(0)
2010年 09月 27日

J・G・バラード「楽園への疾走」1/3

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 バラードの近年の作品で読んだのは,「コカイン・ナイト」だったか
「スーパー・カンヌ」だったか、それからして思い出せないが、それらの
前、1995年刊行の「楽園への疾走」は、遥かにいい。

 「コカイン・ナイト」或いは「スーパー・カンヌ」が現実という
油膜に覆われて作品世界の独立が怪しくなり、退屈なリアリズム描写、
現実の平板ななぞり、だったのと違って(たしか、そういう感想だった)、
現実世界と作品世界に微妙な距離がある。

 ここでも、実際の環境保護運動の純粋化・過激化が、そのまま誇張
なしにリポートされているかのような感触があるが、それが却って
グロテスクなリアリズムを感じさせる。作家の想像力と現実の動きが、
互いに追いつき追い越そうとするのを、目撃しているような不気味さだ。

 核実験に立ち会ったせいで死亡したと思しき父を持つ、若い英国人の
少年は、タナトス性向だ。核爆発による死、世界の終末を秘かに願って
いる。
 母がアメリカ人と再婚したせいもあるのか、彼は年上の女に惹かれる。
環境保護運動家であるイギリス人の中年女性は、元医師だ。患者を安楽死
させた件で結局、医師免許を剥奪され、ジャーナリスティックに言えば、
「死から生へ」と転換し、今はタヒチ近くの核実験場に棲むアホウドリ
救済運動に熱狂しているとき、彼と知り合い、運動に巻き込む。

     (創元SF文庫 09初 J)

09月30日に続く~





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by byogakudo | 2010-09-27 18:05 | 読書ノート | Comments(0)
2010年 09月 26日

スタージョン「影よ、影よ、影の国」とバラード「楽園への疾走」併読中

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 やっぱりシオドア・スタージョン! 最初の「影よ、影よ、
影の国」は他の短篇集で読んでいる。次の「秘密嫌いの霊体」は
コミカルでおかしい。超能力とは、進化の過程で不要になった能力の
ことだが、こういう使い道もあったかと納得。
 第三篇「金星の水晶」では、スタージョンってこういうタイプの変人
__なんとなくズレていて、からかいの対象になりやすいが、ひがみ
っぽくない。__ではないかしらと思わせる男について語られる。
 愉しく読んでいる。
     (ソノラマ文庫 84初 帯 J)

 あまり期待せずに読み出したJ・G・バラード「楽園への疾走」だが、
こちらも悪くない始まり方だ。環境過激派の中年女性科学者に惹きつけ
られる、破滅願望(地球の終末を願う)のある若い男という組合せだ。
     (創元SF文庫 09初 J)





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by byogakudo | 2010-09-26 13:39 | 読書ノート | Comments(0)
2010年 09月 25日

レイ・ラッセル「血の伯爵夫人」読了

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 今週の新着欄です、よろしく。
 新着欄

 趣味のいいお洒落な、違いのわかる男かもしれないが、小説家としては
どうだろう? いちばん肝心な、書きたい! 書かずにはいられない! 
というのが伝わってこない。

 タイトル作「血の伯爵夫人」はバートリ・エリザベート異聞であるが、
矮小化されたサドもどき、という感想だ。

 エリザベートは無知なあまり性本能を認識できず、雄々しい美貌の影に
邪悪さを隠した夫とその愛人にしてやられ、残虐行為に加担するはめになる。
 自分も処罰を受ける覚悟で告発するが、夫は名誉の戦死を遂げて、おとがめ
なし、手下どもは処刑され、告発書を届けた筈の腹心の乳母は、エリザベート
ではなく自分がやった行為だと主張して、愛人とともに極刑にさらされ、彼女のみ
幽閉されて死を待つ。

 皮肉な結末と作者は思っているようだが、そうかなあ。頭の悪いプチ・
ジュスティーヌが恨みがましく愚痴ってるお話にしか思えず、わたしは悲しい。
サドの換骨奪胎のつもりかもしれないが、サドはこんなにケチくさくないでしょ。

     (ソノラマ文庫 86初 帯 J)





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by byogakudo | 2010-09-25 13:03 | 読書ノート | Comments(0)
2010年 09月 24日

寒さに震えて(?)五反田へ

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 寒暖の差が激しすぎて、何を着ていったらいいのか解らない。湿度も高い。
部屋の中では暑いくらいにして表に出ると、肌寒いような、歩いていれば
そのうち暖かくなるような。
 わからない。

 そのまま五反田へ。名前も知らない(タイトルは見たが忘れてしまった)
画家のハードカヴァの画集を、感じが悪くないから買う。目録や画集は
目で確かめて、なにか感じたら買うことにしている。John Registerも
そうやって買い、わりとすぐに注文がきて売れた。ひとりぼっちでは
ないことが証明されて嬉しかった。(しかし、ヴィフレド・ラムは__
相変わらず孤独な思いをしている。)

 他に何を買ったっけ。好みの路線に沿って、だったと思う。売れ行きが
はかばかしくないのなら、好きなものを提示したい。それだけで押し通す
ことは勿論できないが、嫌いだけど売れ筋だからと選んでいると、古本屋を
続ける気をなくす。

 帰りは高輪台まで歩く。やっぱり寒かった。





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by byogakudo | 2010-09-24 20:04 | 雑録 | Comments(0)
2010年 09月 23日

レイ・ラッセル「血の伯爵夫人」1/3

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 まだ途中だが、よく出来た短篇小説集だ。へたくそな日本の若手の
長篇を読む苦痛を思えば、巧いけれど、なんか退屈なぞと言っては、
バチが当る。不心得者め。

 だが、たとえばハリウッド・バビロン譚である「ビザンチン宮殿
の夜」のエンディング、落ちにさらに落ちを加えるテクニックを読むと、
どうも古くさい、というか・・・、不満だ。

 ハリウッドのタイクーンの館が鉄球で破壊されるシーンから始まり、
かつて館で開かれたパーティでのできごとに物語が移る。

 タイクーンは、周りの映画監督や脚本家、出演スターたちが、表面は
お世辞だらだら、陰では馬鹿にしているのを知っている。
 彼らの本音なんか解っていることを見せつけてやるために、ゲスト
ルームに秘かに録音装置をしかける。

 パーティの翌朝、皆に録音を聞かせる。タイクーン自身も聞くのは
初めてだ。ところが予期に反して、誰もが彼に感謝している内容だった。
 まさかの展開にショックを受け、感動し、タイクーンは泣き出す。

 月日は流れ、冒頭の解体現場のシーンに戻る。壊される様子を見守る
のは、館の執事であることが、ここで明かされる。じつは執事が客室に
「壁に耳あり」とそっと注意書きを置いていたのだ。
 最も身近な男に復讐された、という落ちである。

 悪くはないけどさあ。気が利いてるでしょ、というセンスが今では
古めかしく感じられる、ということなのか。
 いま、この話を書くとして、どう書くだろう? もっと、ぶった切った
感じ、ぶっきらぼうに終えるのか。

 短篇の完璧な小宇宙が、世界を現すのにあまり有効ではなくなり、
いたずらに長過ぎる長篇が受け入れられるのが今、ということなのか。

     (ソノラマ文庫 86初 帯 J)
 





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by byogakudo | 2010-09-23 14:06 | 読書ノート | Comments(0)
2010年 09月 22日

エドガー・パングボーン「オブザーバーの鏡」読了

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 原作の発表は1954年。穏やかなSFだった。ちっとも悪くはない
けれど、穏和すぎて、ときどき「さっさと話を進めないかなあ」と、
チリチリもした。

 火星人の目を借りて、人類のヒューマニティについて考察する物語だ。
 シニカルな火星人たちのおかげで天分が伸ばせず、引きこもりっぽく
なった天才少年が、善き火星人に再会して生き直す。
 感動的なエンディングである筈が感動しなかったのは、読者の責任だ。

 この本の良さはむしろ、子ども心が描かれる箇所にある。
 善き火星人は、天才少年の幼なじみの少女・シャロンと知り合う。
彼女は彼を信頼し、秘密の場所に連れてゆく。貧民街の見捨てられた
空家の台所だ。

< この台所の中に、大きな貧弱な建造物がほのかに姿を現わした。
 古い木箱を集めて作った、家の中の家である。シャロンは「待って」
 と言って、その建造物の中にもぐりこみ、マッチをすった。二本の
 蝋燭がともる。「もうはいっていいわ」身をちぢめて中にはいり
 こむと、彼女は声をひそめ、厳粛ぶって、海のように青い目を巨大な
 暗黒の中に沈ませていた。「あたしのほかには、まだ誰もはいった
 ことがないのよ__これはアマゴーヤなの」そして、明らかに思い
 なおし、同時にわたしを信用して大丈夫なのかと不安がって、こう
 言った、「もちろん、これはまぎれもないメイク・ビリーヴだけどね」 
 (メイク・ビリーヴとは本物ではないのに本物だというふりをすること。)
  それはメイク・ビリーヴであり、同時にそうでなかった。ここには
 祭壇があった。底を上にむけた箱である。その上の即製の棚には、
 ぼろ人形と見まちがえそうな物がのっている。「アマッグよ」と
 シャロンはその人形らしき物にむかってうなずきながら言った。
 「象徴だわ、前は人形だったんだけど。人形なんて子供っぽいでしょう。
 そう思わないこと?」[以下略]>(p63)

 あるいは成人した後、善き火星人に再会した折りの会話である。
 <歩道にあった特別な裂け目>、<くねくねした裂け目で、SとAの字を
いっしょにしたように>見える裂け目から彼らの王国・ゴヤランティスが
幻視され、彼らはそこに生きたという思い出だ。

 国際幻想文学受賞作と、J下端に記されているのは、こういう辺りで
あろうか。

     (創元推理文庫 67再 J)





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by byogakudo | 2010-09-22 13:38 | 読書ノート | Comments(0)
2010年 09月 21日

山崎阿弥さんのライヴ「BONE & PAGES」、追加

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 <ひとつの行為にもうひとつのヴァリアント>があるのは、正と反の対では
なく、ひとつの事象の見え方・存在のありようは複数である、という意味での
二個目、であろう。

 また、第二部での蠟燭の使い方を書き落としていた。
 マッチをすり、小さな蠟燭に火をともし、蠟を掌に垂らして蠟燭を固定する。
下からのほのかな灯りに照らされて歌い出し、歌い終わるとともに吹き消す。

 第二部の途中に入る拍手の音は、第一部が終わったときの拍手を録って
いたのだろうか。

 出した音を録り、delayで複合追走させ、いわば時間のホログラフィを
観客の目の前で創って見せるパフォーマンスだ。





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by byogakudo | 2010-09-21 13:39 | 山崎阿弥 | Comments(0)