猫額洞の日々

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2012年 12月 31日

冬休み行状記 4 (2012年度末)/E・R・ジョンスン「シルヴァー・ストリート」

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 E・R・ジョンスン「シルヴァー・ストリート」を読みながら年を越す
ことになりそうだ。

 ポン引き殺しの犯人を捜査する、やばい界隈育ちの刑事の物語。
それに刑事の恋愛話も絡み、主人公と汚辱の街の住人それぞれの
サイドストーリーが絡み合う。

 E・リチャード・ジョンスンの第一作であり、「アメリカ探偵作家
クラブ 最優秀新人賞受賞策!」と、帯に謳われている。
 「モンゴが帰ってきた」のスタイリッシュさの追求ぶりより、
こちらの方が素直で好もしいかもしれない。

 連続するポン引き殺しにやや恐怖を覚える、コールガール組織の
ボスが、稼業について改めて考える。
<ろくでもないアメリカは、ポン引きでさえ企業化した。組合を作る
 べきだ。コール・ガール・インコーポレイテッド、冗談じゃない。>
(p75下段)

 売春はすべての労働行為の基本原理である。パラフレーズすると、
どんな職種にも売春婦-ポン引きの構造が見える。

 古本屋に適用してみよう。古書組合に属していない古本屋は、いわば
街娼である。組合加入の古本屋は、協同組合化された娼婦であろうか。
ここまでは娼婦と客とは直取引の関係である。

 薔薇色の悪夢のインターネット社会が訪れた。二種類の娼婦は、直取引
だけでは立ち行かなくなり、ポン引きの必要性に迫られる。
 娼婦たちは<コール・ガール・インコーポレイテッド>である あまぞん組や、
らくてん組、むらさき組等に加入して客を得ようとする。
 身も蓋もない話だ。しょうもないことを考えながら、今年も終わっていく。

     (HPB 1978初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2012-12-31 18:15 | 読書ノート | Comments(0)
2012年 12月 30日

冬休み行状記 3 (2012年度末)/フリーリング「雨の国の王者」

 まちがえて読んでしまったニコラス・フリーリングだが、3冊目を見つけた
のでものはついで、読んでみた。これ(「雨の国の王者」)がいちばん
面白いのではないかしら。

 大企業の跡継ぎが40歳にもなって家出したので密かに探してほしいと、
企業の幹部がアムステルダム警察に現れ、主人公、ファン・デル・ファルク
警部が御曹司探しにウィンターシーズンのヨーロッパの観光地を彷徨うお話。

 費用はいくらかかっても会社持ちであり、ファン・デル・ファルク警部も
御曹司を求めて、富豪階級の出入りする場所に顔を出す。
 室内描写が多いフリーリングの特徴はいつも通りだが、今回は、直接登場
しない跡継ぎの心理を描くのに、ぴったり即している。作者の好みだけでなく
必然性がある。

 文中でもファン・デル・ファルク自身が、まるでメグレ警視みたいだと思う
場面があるが、たしかにメグレ/シムノンの香りがある。大富豪・ブルジョア
階級の感じ方や考え方になじめないところなどもメグレ的だ。

 1966年の原作なので、まだカード社会ではなく、大金持ちが銀行で現金を
おろすシーンがあった。(p74下段)

     (HPB 1969初)





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by byogakudo | 2012-12-30 14:08 | 読書ノート | Comments(0)
2012年 12月 29日

冬休み行状記 2 (2012年度末)

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 ディクスン・カー漬けみたいに読んでいるけれど、恋愛小説とミステリは
相性が悪く、メロドラマとミステリは相性がいい、と今のところ思う。

 つまり恋愛を描くなら当事者ふたり、それぞれの心理を描かざるを得ず、
そこに時間を取られるとミステリとしての進行が遅くなるが、メロドラマは
心理ではなく、できごとを書くことに力点が置かれるから、ミステリ進行と
ストーリーが絡めやすい。

 20世紀にたくさんのミステリが書かれ、21世紀になってもそうかもしれない
のは、ミステリは、何を書くかではなく、いかに書くかが最初にある。
 言葉について意識的な時代を反映してるのか、と思ったが、それにしては
文体意識のないミステリもまた大量生産されているようだから、妥当性の
低い思い込みか。

 話を変える。3・11もフクシマもなかったと信じ込んでいるような自民党政権
の復活を見ると、政官業の連中は、原発を止めようと願う大多数の国民に宣戦
布告しているに等しい。

 あの手合いへの対抗策として、CIAの工作マニュアルを研究しては、どう
だろうか?
 政権を倒し、民衆を支配するやり口を長年、研究実践しているCIAの
戦略や戦術は、使い出のあるシステムではないかしら。お金がないから
応用編は廉価版になるが。

 ただ、感情と思考が混同されやすく(!)、どれほど論理的に正しいことで
あっても、感情に訴えない限り拒否される日本の文化風土である。高度の
応用力が求められる。

 孤独で孤立した個人という状況下にあれば冷静に思考できても、集団に
なると思考がどこかに飛んでいってしまうのは、日本人ばかりではないが、
そうするとナチのプロパガンダは相変わらず有効であるのが証明される
だけで、大衆操作などと、退屈で嫌な話になる。





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by byogakudo | 2012-12-29 20:09 | 雑録 | Comments(0)
2012年 12月 28日

冬休み行状記 1 (2012年度末)

 やっと冬休み気分になる。なんだかだとあって休業を早めたのが
一段落して、どうやらお休みらしくなってきた。

 カーター・ディクスン「五つの箱の死」(HPB 1993年3班 VJ 復刊帯)
読了。ヘンリー・メリヴェール卿とフェル博士の区別がつかないけれど、
これもドタバタ+メロドラマだった。
 今夜はニコラス・フリーリング「雨の国の王者」にするか、E・R・ジョンスン
「シルヴァー・ストリート」か、重いけれど(重量が)R・H・ファン・フーリク
「中国のテナガザル」をベッドに抱えてゆくか。

 webでの佐藤薫氏の対談が面白かった。いつ行われた対談なのかデータが知りたい。





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by byogakudo | 2012-12-28 20:04 | 雑録 | Comments(0)
2012年 12月 27日

E・リチャード・ジョンスン「モンゴが帰ってきた」読了

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 刑務所の房の扉に手をかけた写真は、宣伝用に囚人服姿で
ポーズしてるのかと思ったら、実際、収監中だったそうで、頁を
繰ってみるとクリスマス・シーズンの物語だ。

 原作は1969年刊。今から40年以上前のクリスマスを思い浮かべ
ながら、23日(日)から読み出し、25日(火)読了。

 売春と麻薬の街にもクリスマスを前に雪が降り始める。聖なるホワイト・
クリスマスが約束されたかのような汚辱の街を背景に、善悪が対峙する
クリスマス・ストーリーだ。
 悪を代表するのが殺し屋、モンゴ・ナッシュ、善の代表がFBI特別
捜査官、リー・ゴードン。物語は、主にふたりの視点から交互に記述
されてゆく。

 殺し屋は誰を殺害すればいいのか解らずに依頼を受け、育った街に
帰ってくる。FBIは、偽札事件が起きたので派遣されてきた。
 ふたりはいつ相見えるかと思わせながら、たたみかけるようなビートで
物語が進む。原文で読めば、もっとカッコいいかもしれない。

 犯罪社会の連中も、警察やFBI捜査官も、不穏な空気にいらだちながら
同時に、ひとりぼっちでクリスマスを過ごすことを恐れている。
 アメリカ人にとってのクリスマスは、そういうもののようだ。家族や友人と
過ごせないクリスマスとは、拷問に近いものらしい。

 「ブルックリン最終出口」とまでは行かないが、好きだ。ちっぽけな悪党
どもの焦燥感がいい。第一作「シルヴァー・ストリート」も店奥から見つけた
ので、冬休み用に持ち帰ってきた。

     (HPB 1973初 VJ 帯)


 今年も終わります。どうもありがとうございました。
 来年もよろしくお願いいたします。
 





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by byogakudo | 2012-12-27 22:43 | 読書ノート | Comments(0)
2012年 12月 26日

持つべきものは

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 持つべきものは親切なお客さま。
 先日「メッキの神像」に既読感があると書いたら、ミステリ本
コレクターのお客さまからメールをいただいた。

 デジャヴュしたのも無理はない。創元推理文庫版「仮面荘の
怪事件」と同じ話ですよ、と教えてくださった。
 お客さまとは、かくもありがたきもの。ようやく腑に落ちて、
これで安心して年が越せる。よかった、よかった。
 どうもありがとうございます!





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by byogakudo | 2012-12-26 14:04 | 雑録 | Comments(0)
2012年 12月 25日

冬期休業のお知らせ

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 2012年度は12月25日(火曜日)まで営業します。
 2012年度は1月5日(土曜日)から店を開けます。

 26日(水)から4日(金)まで10日間、何をして過ごす
つもりなのでしょう?
 旅行は嫌いだし、散歩と本であっという間に終わりそうな。





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by byogakudo | 2012-12-25 15:21 | 告知 | Comments(0)
2012年 12月 23日

ジョン・ディクスン・カー「四つの凶器」読了

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 「夜歩く」や「蝋人形館の殺人」も読んだと思うのだが、さっぱり
覚えていない。あれらがバンコラン探偵ものだった、という記憶
さえなくて、わたしの記憶は一体どこに落ちているのだろう?
 引退して地味になったと書かれていても、まるで初対面の感じで
読むアンリ・バンコランの名推理である。

 数字でいえば「2」がキーワードで構成された物語と言えよう。
シンプルな構成に装飾があれこれ加わり、複雑怪奇に見える。
 探偵小説は、大体そういう作りなのだけれど。

 最後に出てくるカードゲームが、腕前とは関係なく、ただ運だけで
勝負がつくようなゲームで、賭事には興味がないが、なかなか迫力
あるシーンだった。

     (HPB 1993年3版 VJ 復刊帯)





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by byogakudo | 2012-12-23 12:59 | 読書ノート | Comments(0)
2012年 12月 22日

2012年度は12月27日(木)まで、でしょう。

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 今年最後の新着欄です、よろしく。
 新着欄

 年内の営業は、たぶん27日(木)までです。新春は、いつからにしましょう?
2-3日中に正式決定(?)いたします。

 来年早々の新着欄も作ってしまったし、頭が冬休みに傾いています。別に何を
するわけでもないけれど。





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by byogakudo | 2012-12-22 15:53 | 告知 | Comments(0)
2012年 12月 20日

カート・シオドマク「ドノヴァンの脳髄」読了

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 木乃伊になり損ねたマザコン・木乃伊取り男の物語、と要約すると、
読んだひとにしか解らない。

 脳の働きを研究する医者がいる。偶然に事故死した死体にぶつかり、
ひそかに脳髄だけ抜き取って研究材料にする。
 死者の脳を生かし続けながらコンタクトを取ろうとして成功するが、
今度は、精力的な人格だった死者の脳に医師の肉体が乗っ取られる。

 肉体的な精神分裂危機を救うのが、彼のただひとりの友人である医師と、
彼にあまり愛されていないが愛し続ける、聖母マリアか守護天使のような
彼の妻だ。
 物語の進行上そうせざるを得ないが、主人公が調子のいい奴に思える。

 死者の脳の観察日記の体裁で淡々と綴られる、実存主義的SF。かなり
面白かった。
     (HPB 1965再)





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by byogakudo | 2012-12-20 13:33 | 読書ノート | Comments(0)