猫額洞の日々

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2013年 01月 31日

谷克二「スペインの短い夏」読了

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 バレエの方のK夫人からお借りしたままだった谷克二「スペインの短い夏」を
やっと開く気になり読み終える。谷克二の愛読者とはいいがたいわたしだが、
この本はなかなか好みだった。

 フランコ政権末期のスペインを訪れた様々な日本人青年を主人公にする
短編集である。旅行者であったり写真家として仕事で訪れたり、立場は
異なるが、異邦人が当時のスペインと接触する様子が描かれる。

 独裁政権は、市民の反抗を押さえつけるために警察や軍の力__暴力を
必要とする。観光客は経済効果をもたらす存在として歓迎されるが、少しでも
内部の暴力に抵触するようなことがあれば、ためらいなく逮捕あるいは国外
追放措置がとられる。フランコの死が間近に感じられる時期になればなるほど、
暴力装置は強烈なものになる。主人公たちは暴力に否応なしに直面し、抗い、
逃走する。

 戦後処理にケリをつけることなく、目をつぶって経済繁栄路線を突っ走ってきた
ドブネズミ色の日本からやってきた青年に、スペインという光と影のコントラストの
強い現実がつきつけられる。彼らはめまいを起こしそうな日差しの中で決断を
迫られる。

 1986年初出の『風の神話』は、フランコ政権下の反逆児、"風"と呼ばれる
義賊を追う日本人カメラマンの物語だが、独裁政権下での自由の体現者に
対する彼の共感は、あの時代に共通してあった。それが自己の歴史を顧みない
独善的なものであったとしても、もっと深く沈潜したものであっても。

     (精興社エクセレントブックス 2011初 J)





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by byogakudo | 2013-01-31 14:32 | 読書ノート | Comments(0)
2013年 01月 30日

復活

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 ようやく二人とも復活。それでも絶好調ではないので、ぼちぼち
そろそろした復活である。遅めに開けて早めに閉めるような。

 頼んでいた「EP-4 u3/A Artaud」が届いた。全快・全開してから
聴くつもり。これって、ステッカー付きなのか、それとも?





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by byogakudo | 2013-01-30 14:06 | 雑録 | Comments(0)
2013年 01月 27日

ウインストン・グレアム「マーニイ」ほぼ読了

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 ネクロフィリアの傾向をもつ男、マーク・ラトランドは、社会的には
同族経営の印刷会社の重役だ。
 貧しさの中から這い上がってきた女、マー二イは、様々な名前と髪の
色をもつ泥棒である。しばらく会社に在籍しては、就職先から大金を
盗み逃亡する生活を3年も続けている。

 マークは考古学好きの最初の妻を亡くしている。家には彼女の残した
遺跡発掘物が、形見として相変わらず飾られている。

 彼はマーニイに惹かれた。彼女の自社からの盗みの後始末をしてやり、
結婚する。彼女がセックス恐怖症であることを結婚後に知り、分析医に
かかるよう勧める。
 彼は、彼女が冷感症タイプだから心惹かれたことに気づいていない
ようだ。マーニイは、前妻の遺品に取り巻かれていても嫉妬を感じない、
強烈なセックス嫌いである。

 冷感症とセックス恐怖症とでは、距離がある。マークはやはりマーニイ
からも愛を返してもらいたい。

 ネクロフィリアと冷感症とは、ある意味では理想的な結合であるが、
社会的には少数派だ。社会は多血質の欲望を中心に回転する。
 同じく重役であるマークの従兄弟のような、自己の欲望に会社を従わせ
たがる男たちの方がメインストリームであることは、いつでも変わらない。
 マークはどんな階級にあっても変わり者であろう。肌合いの違いに端を
発するふたりの重役の協同はむずかしい。

 映画「マー二イ」と原作が大きく異なるのは、階級間闘争の面である。
 マー二イは富者から盗むことは貧者の権利であるとも考える。富者である
マークは資本主義の前提を尊重するから、結婚後に知った、他の盗みを
できるだけ穏やかに解決できないかと努力する。

 トリスタンとイズーよりはボニーとクライドに近いマークとマーニイだが、
マークの無私の愛に縛られたマーニイは彼の愛に応える前に、社会への
借りを返そうと決意する。

     (HPB 1963初)





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by byogakudo | 2013-01-27 14:39 | 読書ノート | Comments(0)
2013年 01月 26日

H・C・ベイリー「死者の靴」/A・A・フェア「馬鹿者は金曜日に死ぬ」読了

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 昨日はやはり風邪でぼっとしていたのだろう。ホームページの新着欄をいつ
あげていようと、ブログはブログだから、今日、お知らせすればよかったのだ。
 新着欄

 H・C・ベイリー「死者の靴」もA・A・フェア「馬鹿者は金曜日に死ぬ」も
2-3日前に読み終えたので、さあて何を書こうとしていたのか、にわとり頭
なので・・・。

 「死者の靴」に、英文学の伝統みたようなものを感じたことは覚えている。
ディケンズ(読んでないけれど)~ウィルキー・コリンズ路線の延長ではないか
と思ったのだった。なんの担保もないけれど。
     (創元推理文庫 2000初 J)

 「馬鹿者は金曜日に死ぬ」は、もっと悲しい記憶だ。犯人がわかってからも
被害者が誰だったか混乱したりしていた。熱っぽいときにミステリを読んでも
しようがないな、と思いながら、今は「マーニイ」後半である。
     (HPB 1957初)

 ところで、2008年7月26日付けで"The Last Time I Saw Paris"の翻訳を
希望していたが、実現している! 「最後に見たパリ」というタイトルで。
 この調子でキリル・ボンフィリオリも実現しますように!





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by byogakudo | 2013-01-26 11:08 | 読書ノート | Comments(0)
2013年 01月 25日

30日(水)頃まで臨時休業いたします

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 Sが年末年始にかけて倒れた。あたしって丈夫だなあと思っていたら、わたしも
倒れた。

 店が寒すぎて、体調を崩すとあっという間に進行する。今年は近年になく寒い。
困ったものです。

 病院に行ったついでに店に寄り、ホームページの新着欄を上げ(明日26日付け
です)、臨時休業のお知らせを入れた。

 という訳で早めの新着欄です、よろしく。お問合せは30日(水)過ぎにお願いいたします。
 新着欄





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by byogakudo | 2013-01-25 14:43 | 告知 | Comments(0)
2013年 01月 23日

常盤新平さん

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 2001年6月に古本屋を始めて半年後、12月25日(火曜日)だった。
午後に文庫本や単行本を買ってくださった中年男性がその日の夕方と夜、
続けて来てくださり、住まいは遠いが親戚宅がこの近くで、とおっしゃる。

 それから又一年、2002年12月23日(月曜日)7pm頃に彼がいらした。
このときは、近所のご親戚の女性から聞いて常盤新平さんだと知っていた。
 その後数年、クリスマスが近づくと、またお会いできるかしらと楽しみに
お待ちするようになった。

 いろいろと思い出す。ある日、小林力氏が日経のコラムをコピーして持って
来てくださった。
 「これ、お宅のことだろう?」
 常盤新平さんのコラムには商店街名も何も書かれてないけれど、知ってる
ひとが読めば、うちだとわかる、すてきな文章だった。

 ある日、今はアメリカに住まわれるミズY・Sとお喋りしていたとき、入って
来られた。ガールズトークなぞものともせず、じっくりしっかり店内の本を
見て回られ、買ってくださる。お帰りになられてからミズY・Sに、
 「彼、常盤新平さんよ」と伝えると、「なるほど!」

 郵便局かどこかに行っていて立ち会えなかった残念な一幕もある。
 前に書いたかも知れないが、Sが店番していたとき、お師匠さんと
常盤さんとが同時にいらした。二人ともただ黙って本棚を巡り、探す。
 「僕がいちばん素人だったよ」と、後でSが言う、静かで濃い午後。

 白内障手術の後、眼帯姿で来てくださり、買って行かれた常盤さん。

 本を読むことが書くことになり、書くことが読むことになる循環の中で
生きていらした方のために、天国の一隅に本がいっぱい詰まった書斎が
あればいいのだけれど。

 70年代の愛読書、ホレス・マッコイ「彼らは廃馬を撃つ」の翻訳が
常盤新平さんだったと、ずいぶん経ってから気がついた。お礼を
申上げたかったけれど、もうクリスマスにもいらっしゃらなくなり、
ご親戚も引っ越されてしまった。

 ご冥福をお祈りします。





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by byogakudo | 2013-01-23 14:37 | 雑録 | Comments(4)
2013年 01月 22日

ジョスリン・デイヴィー「花火と猫と提督」読了

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 隔靴掻痒感は何に由来してるのか? 読者であるあたしの無知・無教養さ
加減に? 及び腰の翻訳者のせいで? あるいは原作自体が、いささかクサい
から?

 主人公はオクスフォードの、いえ、オクスフォドの哲学講師だから古典の
引用はお手のもの、周囲の人々も各国の大使館仲間で、みんな知的な人ばかり。
その上、全米労働組合の指導者はクローチェ(名前だけ知っている)の愛読者で、
若手警官は夜学で文学や人類学コースを取っている、と来る。

 いきおい、話は硬軟取り混ぜた知的な、文学的・哲学的な過程を通る。カクテル
パーティでは、ミッキー・スピレーンとエウリピーデスとの相似を検討し、花火の
催しでは、ソ連大使と主人公とがロシア語でプーシキンを暗唱し合うようなことも
起り・・・。

 喰えない主人公であり、スタイルを重んじる作者であるが、原作でもこんなに
もたついた感じはあるのかしら? わたしに知識がないから、訳者の親切な注釈に
いちいち立ち止まってしまって、物語の中に入り込めないのだろうか?

 悪くはなかったが、いまいちノレなかった。
 ところで、大使館勤務者は全員、スパイでもあるのかしら?

     (HPB 1958初)





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by byogakudo | 2013-01-22 14:31 | 読書ノート | Comments(0)
2013年 01月 20日

J・J・マリック「ギデオンの一日」読了/ジョスリン・デイヴィー「花火と猫と提督」半分弱

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 写真は大川端で。寒くて久しく行けない。春にならないかなあ。

 J・J・マリック「ギデオンの一日」は、ロンドン警視庁・ギデオン警視の
ある忙しい一日の物語。

 たしかに、物語が始まると同時に事件が起き、物語の終りに解決する、
というのは実際の警察ではあり得ない。前から手がけている事件もある
だろうし、そこらの経緯がドキュメンタリックに(?)描かれている。

 2、3台の電話の前に座り、片っ端から情報を聞き、違う事件への適切な
指示を与え、現場にも直行する、タフで忙しいギデオン警視だが、捜査の
ちょっとした空き時間に家に戻り、台所でお茶を飲み、買い物に行く奥さんを
車に乗せてやったりもする。

 一日のうちに、いったいいくつの事件を解決したのか。出来事がぎっしり
詰まっているので数える気にならなんだ。

     (HPB 1958初)

 ジョスリン・デイヴィー「花火と猫と提督」は、文芸スパイ小説みたい。
花火の音にまぎれて在米イギリス大使館で殺人事件発生。オクスフォード
の哲学講師である主人公は、スパイを見つけるために派遣されたのだと、
物語が半分近くに来て、ようやく明かされる。

     (HPB 1958初)





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by byogakudo | 2013-01-20 14:55 | 読書ノート | Comments(0)
2013年 01月 19日

Marie Laforêt / Viens, viens

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 買い物の帰るさ頭の中でメロディーが聴こえる。"que je t'aime'と歌って
いるようだ。数歩歩いて、Marie Laforêt / Danielの一節だと気がつく。

 Marie Laforêt / Viens, viens
 同じ曲の別のとき__Marie Laforêt / Viens, viens

 美貌は女の武器なのに、マリー・ラフォレもイーディも、不器用にしか
生きられない。


 今週の新着欄です、よろしく。
 新着欄





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by byogakudo | 2013-01-19 13:00 | アート | Comments(0)
2013年 01月 17日

1・17/3・11

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 地球に時間意識があるとしたら、地球に寄生している人類のそれとは
かけ離れたものだろう。
 1995年1月17日の阪神淡路大震災は、地球にとっては(人間側の)
一秒前にもならない過去かもしれないし、2011年3月11日の東日本
大震災は現在に属する時間かもしれない。

 ヒトは忘れっぽいし、辛いできごとは無意識に忘れようとする。忘れた
からって、地球に運動を止めてもらえる訳ではない。
 辛いことであっても、思い出した方がいい。1・17で崩れ落ちた高速道路や、
崩壊して道を占拠したビルの残骸や、一面火の海になった長田地区の映像
などを。
 わたしたちはあのとき死んだのではないか。

 3・11と、翌日のフクシマ。引き延ばされた死が続いている。死ねない死が続く。

 復興? 何もなかったかのような顔をすることではあるまい。勘違いしてはいけない。
 死者を死者たらしめ、生者は屍の上にまだ生きているのだと自覚し、そこからでは
ないか、生き直すのは。

 株価が上がった、一時的に。復興名目の予算は相変わらずの赤字国債、だから
増税しなきゃ。最低賃金を上げずに生活保護費を下げることで消費税増税の言い訳
をする。貧乏人同士を噛み合わせよう。
 生き残った人間が疲れ果て、ともすれば思考麻痺を起こしている状況につけ込む
復興政策。そして「民意の反映」と称する。だって選挙に勝ったのだから。
 原発だって、いまのところ他に地方経済をもり立てる方策がないからと、地方自治体
首長自ら再開を望む。フクシマさえ忘れられる、終りのない人災。

 原発に反対だというと、原発知識の有無で発言資格を問われそうだが、毎日誰かが
被爆しなければ維持管理できず、核燃料廃棄物の処理方法がヒトの時間帯には存在
しないことを知るだけで、それは悪であり、止めるしかない。

 せめて原発を止めることで死者を弔おう。最低の儀礼として。





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by byogakudo | 2013-01-17 11:49 | 雑録 | Comments(0)