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2013年 10月 31日

獅子文六を再読してみよう

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 獅子文六が読みたいという若いお客さまが現れた。すばらしい!
 「自由学校」が読んでみたいと仰るが、うちでは売切れ。他で
手に入れた。

 彼が次にいらっしゃるまで間がありそうなので、お先に失礼して
わたしが読もう。
 朝日新聞社版「獅子文六全集 第五巻」には『嵐といふらむ』
『夫婦百景』『すれちがい夫婦』『自由学校』が入っている。
 『嵐といふらむ』を読みかけて、読んでいることに気がつく。
これはパス。昨夜から『夫婦百景』にしたが実録風で、あまり
面白がれない。やはり今夜から『自由学校』再読にしよう。

 「週刊文春」の小林信彦のコラムで、TV「あまちゃん」の
人気と朝刊連載中の『自由学校』の人気が似ている、とあった。
 毎朝、学校に行くと、主人公が今日は何をしていると、みんなで
騒いでいたそうだ。
 いま、紙の新聞を取る習慣が残っているのは、60歳代以上
だろうか? それでも新聞連載というフォーマットは続いている。

     (朝日新聞社 1968初 函)





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by byogakudo | 2013-10-31 14:58 | 読書ノート | Comments(0)
2013年 10月 30日

ギャビン・ライアル「マクシム少佐の指揮」読了

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 前の2冊は殺人の元プロ・現フリーランサーが主人公だった。今度は
元プロ殺人者(陸軍少佐)で現在は首相官邸詰めである。
 軍人やスパイ組織の実動部隊がオフィシャルな殺人者であることは誰も
否定できないし、殺人に合法性に似たものを与える。スパイアクションを
読みながら無粋なことを考えさせる近頃がうっとうしい。

 役所勤めの主人公なので、フリーランスでの行動とは別の問題が
生じる。フリーランサーは警察などの公的機関の援助が期待できない。
警察の目を避けて動かなければならない。

 しかし役所の一員となると、自分の属する機構の援助は得られても、
役所間のセクショナリズムに邪魔される。セクション間の面子を立て合い、
情報隠しをかいくぐり、やっと自分の取るべき行動をとる。敵のいる場に
出向いて暴力で成果を得る、シンプルな行動原理をもつ軍人出身者と
しては、大変めんどくさい思いをする。

 3冊続けて読んで、ギャビン・ライアル、これくらいでいいかしら?
「ちがった空」を見つけたら読んでみるかもしれない。

     (HPB 1983初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2013-10-30 14:56 | 読書ノート | Comments(0)
2013年 10月 29日

ウィル・ペリー「四十二丁目の埋葬」読了

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 1970年代のアメリカン・ニューシネマみたいな感触の小説。あんまり
ミステリではない。
 ヒトの主人公はいるが、むしろ70年代前半のニューヨーク、42丁目が
主人公だ。

 主人公、チャールズ・ド・ゴール・タイラーは南部出身、25歳の白人、
ゲイである。

<タイラーのセックスの好みを満足させるうえでは、軍隊はずっといい
 ところだった。あまりにいいところだったので、除隊したあとはニュー
 オーリンズに居つくことができず、南部のどこにも居場所がなかった
 ので、あらためて逃げ出すことになった。貧しい黒人と同じように、
 今度はニューヨークへ逃げた。>(p30上下段)

 南部ではいちおう上流の生活をしていたが、息子を呼び戻したがる
父親からの乏しい送金では、ニューヨークでは暮らしていけない。
上品な見かけこそあれ、自分の属していた階級にふさわしい仕事を
得る能力もなく、42丁目に流れ着く。
 そこで軍隊時代の黒人の友だちに会い、彼の外貌を活かした職を手に
入れる。紳士風のスーツを着て、大金持ちたちに麻薬を運ぶ仕事だ。

<手持ちの貧弱な服のなかではとびきり上等なスター・クラスといえる
 一着を取り出した。きちんとした高価なスーツで、タイラーが選び、
 ギャングが金を支払った。
 [中略]
 袖口とえりに香水をちょっとつけた。フランス製の気品のある香りで、
 タイラーが自分の金で買ったたったひとつのぜいたく品だった。その
 香水がロシアバレー団の主宰者ディアギレフの愛用した香水である
 ことを、タイラーはなにかで読んで知っており、鼻をくんくんいわせて
 オレンジの花の香りをかいだ。>(p18上下段)

 web検索してみると、香水はたぶんミツコだろう。

 南京虫のたかる汚い部屋で、42丁目の心理ガイドブックもどきの
日記を書き続け、いつか大金持ちになる日を夢想するタイラーだが、
仕事仲間のひとり、彼好みの黒人が逮捕された。
 彼が売ったのではないかとギャングに疑われ、自分の場違い性を
突きつけられる。自分は所詮、南部のお上品な白人であり、42丁目の
タフな風土には適合できないのだと。
 逃亡に失敗したタイラーは殺され、ギャングたちの仲間割れは続く。

 吹きだまりのルポルタージュだ。街への愛と諦観のある感じのいい小説
だが、ジョージ・バクスト「ある奇妙な死」みたいに、手元に置きたいと
までは思わなかった。

     (HPB 1976初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2013-10-29 15:09 | 読書ノート | Comments(0)
2013年 10月 27日

本物の売国奴

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 見ていないが、むかし「偽の売国奴」という映画があった。
 「特定秘密保護法案」が衆議院に提出された。これこそ、
本物の売国奴の行為だ。

 自分から植民地にして下さいと言い出す国も珍しい。これを
やっておけば下請けとしての地位権力を維持できると信じる
役人や、孫請けに当たる政治屋の地位は当分、安泰であろう。
 彼らは、スキャンダルを広められて失脚する心配もなくなり、
余生はばら色と信じ込んでいるようだがしかし、下請けや孫請けは
不要になればいつでも切り捨てられる。「わが友ヒットラー」や
「地獄に堕ちた勇者ども」を読んだり見たりしたことがないの
だろうか。
 日本の保守主義者はただの自己保身主義者である。そして
他人に向っては、自由主義の行き過ぎはいけないと、お説教する。

 売国奴のおかげで、その他大勢であるわたしたちの人権は
失われる。

 ツィッターや2ちゃんねるの自由は保障されないのだが、
< 反原発団体のメンバーがつくった「特定秘密保護法案を
 考える市民の会」は[注: 十月]二十一〜二十三日に上野駅前
 など都内三カ所で街頭アンケートを実施。六百八十九人が参加し、 
 賛成三十四、反対三百四十二、分からない三百十、その他三
 という結果だった。>(東京新聞 2013年10月25日 夕刊より)

 <分からない三百十>というのが怖い。大文字の「政治」は、
こんなに身近に迫っているのに。





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by byogakudo | 2013-10-27 19:58 | 雑録 | Comments(1)
2013年 10月 26日

F・W・クロフツ「スターベル事件」読了/フランシス・アイルズ「犯行以前」中断 他

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 久しぶりの今週の新着欄です。1冊売れてしまいましたが、
よろしく。
 新着欄 


 もう忘れてしまった感じが強いF・W・クロフツ「スターベル事件」だが、
ええっと、地道な本格派。
 フレンチ警部は、ちょっと怪しい人物が現れれば調査し、疑わしい点が
消えれば次の犯人候補に向っていく。裏返しに並べたカードを一枚一枚、
ひっくり返していく作業を思わせる。最後に今までのカードを全部ひっくり
返して大団円。
 ミステリ・ファンには評価されるのだろう。わたしみたような、怠惰な
ミステリ読みは感激しない。

 おまけについていたM・D・ポースト「アンクル・アブナー」は因果応報もの。
暗さがよかった。

     (HPB 1954初 VJ無)

 冒頭を読んで面白そうに思えたのだが、フランシス・アイルズ「犯行以前」を
1/3ほど読んで諦める。これは夫婦間の共依存の話?!
 自分で選んだ夫なので、倫理的に許し難い欠点を見つけても、つい甘くなって
しまう妻。そこには自己欺瞞がたっぷり含まれる。よくわかる話だが、わかり
過ぎてどうでもよくなってしまった。風俗小説として読んでいけばいいのだろうが、
それでもめんどくさい。あきらめよう。

     (HPB 1955初 VJ無)

 読みかけていたW・R・バーネット「ハイ・シエラ」も1/4読んで諦める。
サスペンスものを時間をかけて読んではいけない。

     (HPB 2003初 「ポケミス名画座」帯 VJ)

 というわけで、今日からウィル・ペリー「四十二丁目の埋葬」にしよう。
バスの中で4頁読んだが、続けられそうだ。

     (HPB 1976初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2013-10-26 16:59 | 読書ノート | Comments(0)
2013年 10月 24日

TELEVISION en Montevideo: Persia

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 TELEVISION en Montevideo: Persia





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by byogakudo | 2013-10-24 14:42 | アート | Comments(0)
2013年 10月 22日

もやもやと

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 ゴダール映画の中でアンナ・カリーナが、
 「わたしが右手を上げる。それはわたしの責任」だったか、
正確な引用ではないが、そんな台詞を言う。

 権力は、いわゆる政治権力だけを意味するものではない。わたしと
あなたがここにいるとき、権力は発生している。だから、すべての言説は
権力の施行であり、政治的であることを免れ得ない。

 それが前提だと思うが、いわゆる政治的発言は日本では、周囲から
引かれる。ひとが二人いれば、そこはすでに政治的空間であるのに、
大文字のいわゆる「政治」について何か言うと変人扱いされ、敬遠
される。
 なぜだろう。

 EP-4 9・20ライヴでの"radioactivity"パフォーマンス(解釈)は
とても的確だった。いくらでもメロディックに盛り上げ、感情に訴える
ことができる曲を質素に抑え、静かに演る。





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by byogakudo | 2013-10-22 21:49 | 雑録 | Comments(0)
2013年 10月 21日

さあ、次もF・W・クロフツ、「スターベル事件」だ。

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 クロフツを続けて読んでしまおうと思い、帰りのバスの暗い照明の下、
黄ばんで読みづらい「スターベル事件」を開き、目次を眺める。
 最後は江戸川乱歩の解説だが、その前に、<アンクル・アブナー   
M・D・ポースト>とある。

 表紙にも背表紙にも裏表紙の作品概要にも、ポーストの短篇を含む、
とはひと言も書かれていない。どういうことだろう?
 乱歩の解説を走り読みしてもクロフツのことしか書いてない。1954年
刊行のHPBだから、こういうこともあるのかしら? 「スターベル事件」
だけでは薄い本になるから、ついでに他の作家の短篇をひとつ入れちゃえ、
とか?
 でも、クロフツは短篇も書いているのだから、それを入れればよさそうな
ものを。

 「スターベル事件」を全部読んで、続けて「アンクル・アブナー」を
読めば、なぜこれを編入(?)したのか、理由がわかるかしら。
 (あんまり期待できないな。)





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by byogakudo | 2013-10-21 20:42 | 読書ノート | Comments(0)
2013年 10月 20日

F・W・クロフツ「チェイン氏の秘密」読了

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 イギリスの探偵小説は冒険小説に傾きやすい。1926年刊のクロフツ
「チェイン氏の秘密」もそうである。おまけに怪奇小説にも、行こうと
思えば行けそうな書き方だ。

 フレンチ警部ものだが、主人公は若い冒険好きの紳士、チェイン氏。
フレンチ警部が登場するのは残り半分を切ってからで、それまでは
ロマンティックな性向をもつチェイン氏が、詐欺師集団の繰り出す
種々様々な嘘話に翻弄される冒険小説タイプである。

 チェイン氏は彼ら詐欺師たちを充分に疑っているのに、冒険趣味を
刺激されると、その方向に走り出してしまう。最初は爵位継承権の話に
つい騙され、次は画期的な発明話、その間に若い女性との恋愛が入る。
 嘘話の連続に、これはもしやアーサー・マッケン「三人の詐欺師」風に
展開するつもりか、と思うほどだ。

 そうはならず、恋人を誘拐されたチェイン氏が、ようやく警視庁を訪れ、
フレンチ警部に相談してから、やっと探偵小説の軌道に乗る。地道な捜査、
仮説の検証、そしてやはり冒険小説的エンディングを迎える。

 ときどき、クロフツはメタ・ミステリを書くつもりだったのかとも思い
ながら読んだ。意図せずにメタ・ミステリになってしまいそうな感触も
ある。

 詐欺師たちの家に忍び込むための道具を恋人に披露するシーンで、
彼女にからかわれる。
< 「くるぶしまでのアンクレットはお持ちになりませんの?」
 [中略]
  「[略]サメに喰われないようにするためだわ」
 [中略]「あの白馬の騎士が自分の馬のために、身につけていたことを
 おぼえていらっしゃいませんの?」>(p132上下段)

 大詰め、謎解き場面でも、話題が冒険小説に逸れる箇所がある。
モーリス・ドレイクの「ウォー2」という物語だそうだが、フレンチ警部に
言わせれば、
<「[略]私のお目にかかった最上の物語の一つでした。[以下略]」>
(p250下段)

 不思議がるわたしがヘンなのかもしれないが、なんだか妙なミステリを
読んだ気分。楽しかったが。

     (HPB 1963初 VJ無)





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by byogakudo | 2013-10-20 20:26 | 読書ノート | Comments(0)
2013年 10月 19日

小野幸恵「焼け跡の『白鳥の湖』 島田廣が駆け抜けた戦後日本バレエ史」読了

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(〜10月16日より続く)

 戦争が終わった。やっと再び、音楽を流しながらバレエのレッスンが
できる時代になった。戦時中はレコードをかけない、ピアノ伴奏しない
という条件でしか稽古場が借りられず、無音で黙々とレッスンしていた。
 しかし今度は、一面の焼け野原だ。住むところがない。まして稽古場に
使えるような場所なぞ、更にない。
 K・K夫人の記憶では、ボクシングの練習場みたいなところでも稽古した。
 「ほら、ボールか何か吊るしてあるでしょ。あれを叩いて遊んだのよ」

 戦中を耐えてバレエを続けてきた様々なバレエ団が、必死で稽古場と
仕事先を探していたとき、ドイツでモダンダンスを学び、戦後帰国して
きた邦正美が、本格的なクラシックバレエ公演を行うという「東京新聞」
の記事が出た。「火の鳥」や「白鳥湖」の本格的な上演企画である。

 島田廣は蘆原英了宅へ向う。
< 「邦に先を越されたくないという気持ちだった。戦時中、我々がどんな
 苦労をしながらバレエを続けてきたか、それがわかる者同士でやらなく
 てはならないと思いましたね」>(p132)

 葦原英了を代表に立て、東宝と交渉してもらい、別々に行動してきた
各バレエ団がともかくも大同団結して結成された「東京バレエ団」に
よる「白鳥の湖」公演が、この本の山場であろう。

 結成前も本番中も公演後も、トラブル続出であるが、お嬢さん方の
お稽古事視されてきたバレエが、本格的、プロフェッショナルな芸術
として確立された出来事だった。

 優しく華やかでうつくしい舞台に感激した観客たちの声が紹介される。
肉体だけでない精神の飢えが満たされた瞬間への感謝が、口をつく。
 バレエではないが、山田風太郎が敗戦後、荷風の「踊り子」だったかを
読んで、乾いた喉に水が与えられたような感動を覚えた、という。
 なんとか生き延び、肉体の飢えを満たすに汲々たる日々、精神もまた
飢えていたことに人々は気づく。

 「東京バレエ団」前後の章は戦後の勢いが伝わり、スリリングで
感動的な場面ではあるが、「プロジェクトX」を思い出したり、
東日本大震災以後の「がんばろうニッポン」キャンペーンを
思い出したりもする。
 著者の善意や誠意は感じるけれど、いまいちノレなくなるのは、評伝
(やノンフィクション)が結局、偉人伝に終わりやすいシステムである
ことと関係していよう。

 島田廣はその後、創作バレエの道を進み、日本にバレエを定着させた
第一人者となるが、一般にはあまり知られていない。島田廣の業績を
正しく伝えたい、顕彰したい思いから書かれた評伝であり、同時に、
見通しのいい日本のバレエ・通史である。

 やや違和感を覚えるのは、「自虐史観」の反対語といっていいのか、
「プロジェクトX」史観のせいかもしれない。(だから「ノンフィクション」
は存在しない。)

 今でいう在日コリアンの陸上少年がやがて文学や演劇に目覚め、
バレエに自分の進むべき道を見いだし、成就する。
 感動の物語であるけれども、やや健康的・肯定的側面が強く、
たとえばアーティスト・エゴの問題にあまり触れられていなかったり
するのが物足りなさの理由でもあろう。「東京バレエ団」のあっと
いう間の分裂も、各アーティストのエゴを越えて協同することが
できなかったからだ。

 個人の欠点をあげつらった暴露本を読みたいのではない。影の部分も
調べた上で(それを秘めて)書かれていたら、と思うのだ。新聞記者の
心得に「十を聞いて一を書く」とあるそうだが、氷山の下は深く大きい。

 また、細かいことだが、K・K夫人によれば、本文中の写真キャプションが
違っている箇所があるそうだ。高齢の島田廣に紙碑を捧げるために急いで
書く必要があったので、チェック漏れしたのかもしれない。

     (文藝春秋 2013初 帯 J) 


 今週の新着欄はお休みです。





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by byogakudo | 2013-10-19 10:58 | 読書ノート | Comments(0)