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2014年 04月 30日

ジョゼフ・ハンセン「放浪のリトル・ドッグ」読了

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 ゲイの保険調査員デイヴィッド・ブランドステッターと、若い黒人の
TVリポーター、セシル・ハリスとの恋愛は続いている。2冊ほど感想を
書いたけれど、いつもブランドステッターがお金持ちなのを書き忘れて
いた。

 彼は父親が設立した保険会社の大株主で、父の遺した大きな三棟の
屋敷にセシル・ハリスと住む。義理の息子よりずっと若い義母が改修
したおしゃれな住まいで、食事用、居間、寝室用と三棟が独立していて、
中庭でつながっている。
 雨が降ったら傘をさして違う棟に通うのかと思うが、ロサンジェルスに
雨は降らないのか、たまたま物語で描かれた時期は乾季なのか、そんな
シーンはない。寝室の天窓から星が見えるのはすてきだけれど、「住吉の
長屋」LA版か、とも思う。

 おしゃれに暮すのもめんどくさいことが多そうだが__ここからは、
ゲイに関する偏見や誤解だと、それこそ誤読されかねない一文になるが
__、ゲイは全員、きれい好きで料理上手でおしゃれな人々なのかしら? 
お掃除嫌い、料理下手、むさ苦しいゲイは存在しないのか。

 でも、作者がいわばパーフェクトな人物像を作ったのは理解できる。
貧乏で不遇でゲイ、という設定だったら、貧困ミステリ(?)を書かな
ければならないし、強者としてのゲイ像にしないと、ゲイに対する偏見や
見当外れの憐れみを招くだけだろうから。


 中米の小国の腐敗を暴こうとしていた著名なジャーナリストが死亡する。
自殺と見なされるが、保険調査員ブランドステッターはそれを疑い、独自の
調査を続ける。
 ジャーナリストには後妻と、盲目のじつの娘がいる。他殺だとしたら、遺産
狙いの後妻とその愛人の仕業であろう。しかし、潜水服の男たちが目撃されて
いる。警備が厳重なゲーティッド・コミュニティだが、フェンスが破られた跡を
見た、という証言もある。この場合、小国からの刺客の可能性が高い。
 家庭内の問題と、国家的陰謀の物語とが同時に描かれ、どちらも解決しちゃう
ブランドステッター・ハリス組である。

     (HPB 1988初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2014-04-30 12:09 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 04月 29日

山崎阿弥「マイビークル|ホワイト カラード ブラックホール」展

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 昨日はふたりで三鷹の「ギャラリー由芽」へ、山崎阿弥さんの個展
「マイビークル|ホワイト カラード ブラックホール」を見に行く。

 阿弥さんのツイッターにもSが撮った写真があります。

 JR三鷹駅南口からぶらぶらと歩いてくると、「ギャラリー由芽」の
ガラス窓に阿弥さんの作品が目に入る。さらに進むと小さな庭と、
窓に対面してガラスの入口がある。

 木枠の中に密生する紙の羽根。ほとんどが手でちぎられた、白か
オフホワイトの紙切れが生命を持ったかのように、そこに存在する。
 生のざわめきや揺らぎが交錯する紙片の光と影の中から聴こえて
くるようだ、とても静なのに。

 ギャラリーの中仕切りを開き、シャープな三角形のコーナーを設け、
そこにも展示される。蔭になるので、ちょっと祈りの空間にも思える。

 入って右壁面にふたつある小さなアルコーヴを活かして、木枠の片側
だけ固定し、展示する。阿弥さんの個展やパフォーマンスは、いつも
空間との対話が行われるが、今回も空間把握と構成が見事だ。

 力の感じられる作品が並ぶ。繊細なきれいさに留まらない、強さが
伝わってきて感動的だ。

 いい個展です。5月7日(水)まで(ふだんは19:00まで、最終日は
17:00まで)開かれています。5月の連休は晴れるようなので、ぜひ
お見逃しなく。

     (2014年4月28日@ギャラリー由芽) 





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by byogakudo | 2014-04-29 19:00 | 山崎阿弥 | Comments(0)
2014年 04月 27日

ジョナサン・ヴェイリン「火の湖(うみ)に眠る」読了

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(4月26日より続く)

 私立探偵ハリイ・ストウナーの友人、ロニー・ヤコフスキーは物語中の
現在時にはほとんど出て来ない。自殺を図ってハリイのアパートメントに
連れて来られたときだけが、唯一、現在形である。翌日には失踪し、
ロニーはかつての彼を知る様々なひとの記憶の中の" ロニー "像として
描かれる。

< 初めて会った時、ロニーは二十歳(はたち)のハンサムな若者だった。
 悲しげな目と薄い唇。ピーター・フォンダの黒髪・小型版といえなくも
 なかった。>(p21上段)と、ハリイに回想されるロニーの18年後は、
<私の記憶にある青年のころのロニーの、みすぼらしいつや消し版と
 いった風情だ。>(p27下段)

 女の子にもてたロニーは、彼女たちの記憶に居座り続けるが、男の
友人たちにとっても事情は同じだ。彼を思い出すと皆、かつての青春の
光に取りまかれ、ロニーを否定することは自分の過去を否定するに等しい
と、気がつく。

 チャーミングなルシファーであるロニー。彼と共に過ごした時間に厳しい
視線を注げるのは、麻薬使用は悪だとあの時期に主張していた、当時の
少数派であるハリイ・ストウナーだけだ。厳格な旧約の神みたようにふるまう
ハリイにしても、今に持ち込まれたロニーのトラブルの後始末を黙々と進める。

 現世で行える限りの裁きをもたらしたハリイだが、彼がつかの間愛し合った
ロニーの妻・カレンとの恋は、ロニーの死が決定的になったことで失われる。
 死が勝利する、影の地にいるルシファーは微笑みを浮かべたままだ。

     (HPB 1988初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2014-04-27 21:09 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 04月 26日

鈴木創士「文楽かんげき日誌 第七段 破れ目」/ジョナサン・ヴェイリン「火の湖(うみ)に眠る」もう少し

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 鈴木創士氏「文楽かんげき日誌 第七段」は、「破れ目」

 60年代後半から70年代にかけて若かった人々が青春__日本語で
「青春」とか「思春期」とか「人生」という概念を言いたいとき、
これらの単語しかないのが、じつに困る。どの面下げて、発音すれば
いいやら。__におとしまえをつけようとしたら、ひどい地獄巡りに
なってしまった、という1987年原作刊行のアメリカン・ミステリ。

 シンシナティの私立探偵ハリイ・ストウナーは、友人ロニーが18年ぶりに
街に戻ってきたのを、モーテル支配人からの電話で知らされる。ハリイの
名前と住所を騙り、自殺を図ったという。

 自宅に連れて来て休ませた。離婚手続きがすんでないロニーの妻・カレンに
連絡し、彼女を連れてきたら、ハリイのアパートメントは荒らされ、ロニーは
消えていた。
 ミュージシャンを夢見ていたロニーは、ドラッグ漬けの日々から抜け出せず、
今回のできごとも麻薬絡みであるらしい。

 街のジャンキー/ギャングどもも、麻薬捜査課の暴力警官も、ハリイとロニーが
つるんでクラックを横取りし、密売しようとしていると信じて、ハリイに暴行し、
カレンを脅かす。
 ロニーを探して、ふたりの地獄巡りが始まる。特にロニーと同じくジャンキー
だったカレンにとっては、辛い行脚だ。過去を清算したつもりでも、ロニーとの
日々の影はあちこちに残る。

 作者は青春におとしまえをつける決意が強いのか、ストーリーに必要以上に
自己懲罰的なにおいを感じる。ハリイは肉体的な暴力に晒され、カレンは
心の傷がうずくと、二分された形だが。

     (HPB 1988初 帯 VJ無)

(4月27日に続く)





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by byogakudo | 2014-04-26 19:11 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 04月 24日

ジルベール・タニュジ「赤い運河」読了

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 フランスのミステリと英米ミステリの差異は、英米のそれは
曲がりなりにも、つまり机上の論理の展開に過ぎなくても、
論理的な整合性を忘れないが、フランスものはあまりそこらに
こだわっていないように見えることだ。あのエピソードの顛末は
どうなったのだろうと、ふと思い出すようなことは、英米ミステリ
では起こり得ない。穴はきっちり塞がれている。

 ところがフランスのミステリと来ると、小さな穴はもちろん、大穴
だって開いているのではないか。英米ミステリほどフランスものは
読んでいないが(英米ミステリだって、お粗末な読書量だけれど)、
そう感じる。もしかして、' 論理性 ' に対する認識が違うのかしら?

 ストーリー全体が問題であって、些末な(と、作者は思うのであろう)
見落とし(と、不注意な読者であるわたしにすら思える)なぞ気にしない
剛胆さが、フランス・ミステリの持ち味でさえある、と言ってしまうのは
もちろん言い過ぎだ。

 1970年前後のアムステルダムに集うヒッピーのカップルが殺される。
殺し方がナチの人体実験とそっくりで、逃げ延びた戦争犯罪者である
医師がまだ生存していることをCIAに確信させる。「赤い運河」という
タイトルは、紅灯の巷であるアムステルダムと、運河に投げ込まれた
血塗られた死体のふたつが掛けられているのだろう。
 医師を逮捕できれば、生存説がささやかれるボルマンとナチの掠奪
遺産にも捜査の手が伸ばせる。
 CIAはアムステルダムに集結し、秘かに大捕物の網が張り巡らされる...。

 アムステルダム観光ガイドみたような記述の合間に、時代の徒花である
ヒッピーたちの情景がさし挟まれ、医師の逮捕に備えるCIA職員たちの
焦燥感が記される。文体の混淆が面白く読めた。スタイルが問題であって、
ここに英米ミステリ風の論理性を持ち出しても意味がない。

 これがわりと気にいって、一冊しか読んでないポール・アルテが駄目だと
いうのは、我ながら非論理(?!)的だけれど、アルテの場合、まだスタイル
とまで行ってないように、たしか思ったのだった。もう一冊くらい、アルテも
読んでから言うべきだが。

     (HPB 1973初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2014-04-24 21:08 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 04月 23日

ジョン・ラッツ「稲妻に乗れ」読了/ジルベール・タニュジ「赤い運河」半分

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 しつこさだけが全能力ともいえるセントルイスの私立探偵、アロー・
ナジャーをもう一冊読んでみた。

 彼は「深夜回線の女」のときより、やや攻撃性を見せているが、事件
絡みではなく__脅しにかかってきた大男に徹底的にやられる。__、
自殺を防いだことでつき合い始めた女性、クローディアの新しい男友だち
に嫉妬して殴りかかり、空手の茶帯・男に軽くあしらわれる。
 家庭内暴力の連鎖からまだ離れきっていないクローディアが、彼女の
事情にタッチしない、ニュートラルな(?)男ともつき合ってみたいと思う
のは回復期にあるからだが、ナジャーとしては無論おもしろい筈がない。

 こういった箇所は巧く書かれているのに、ミステリ部分がなんだか弱い。
「深夜回線の女」にも似たような感じがしたけれど、読んでいて解決への
道のりが充分に納得させてくれない、と思うのだ。ここでいえば、弁護士が
電気椅子を待つだけになった犯人とされる男の無罪を信じ始める件りが、
そうである。弁護士もまた無罪を確信した、みたようなことが書かれているが、
そう書いただけでは何も言ってないに等しい。描写力が必要だろう、読者も
また、確信するためには。

 一人称でなく三人称で書かれる私立探偵ものだから、推理部分に漠然と
遠さや弱さを感じるのかとも最初考えていたのだが、そうじゃなくて、たぶん
ミステリとしての骨格の弱さではないかしら? 推理もせずにミステリを読み
続けるあたしが言うのも口幅ったく、あつかましいけれど。

     (HPB 1989初 帯 VJ無)

 口直しにジルベール・タニュジ「赤い運河」を読み始めた。「赤い運河」と
いっても火星の話ではない。





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by byogakudo | 2014-04-23 20:29 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 04月 22日

山崎阿弥さんの個展が始まる

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 お知らせするのが遅くなって失礼! 今日から山崎阿弥さんの
個展「マイビークル|ホワイト カラード ブラックホール」が三鷹の
「ぎゃらりー由芽(ゆめ)」で始まりました。

 木曜休廊、12:00-19:00、5月7日(水)まで(最終日は
17:00まで)。2週間くらいやってるのねと油断してると
あっという間に最終日ですよ! お早めに、お忘れなく。





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by byogakudo | 2014-04-22 20:09 | 山崎阿弥 | Comments(0)
2014年 04月 20日

ジョン・ラッツ「深夜回線の女」読了

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(4月19日より続く)

 原作は1984年刊。アメリカではフェミニズムが社会に定着した時期
なのだろうか。フェミニズムの影響で男たちもマチスモからの解放を
望むようになり、セントルイスのひ弱な私立探偵、アロー・ナジャーが
造形されたのではないかしら。

 もちろん男らしさの神話は依然として続いている。惨殺現場を見るはめに
なったアロー・ナジャーの描写は、

< 一瞥をくれただけで、彼は後退し、台所に駆けこんで、すぐさま流しに
 へどを吐いた。力なく顔を上げ、冷たい水道水をだしながら、流しの世話に
 なったのは彼が初めてではないことに気づいた。
 [中略]
  数分後、ナジャーは流しに手をついた状態でやっとまっすぐ立った。情けなく
 なり、[中略]青白い顔をしているにちがいないと思った。震えだすような予感がし、
 そうはならないでくれと願った。青白くなったことによって、すでに男らしさが
 かなり失われているのだ。>(p146上段)

 神話は続いているがしかし、弱さの描写はマチスモ神話克服の第一歩だ。
男たちよ、男らしさ神話から自らを解き放て、というメッセージと捉える。

 男(たち)がマチスモから逃れようとしている半面、ナジャーに依頼した女と
その母は「男のいない女たち」とでも言うべきか__あー、村上春樹...勘弁だ
__、厳格な家父長制を実行しようとする、セントルイス物語である。

     (HPB 1968初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2014-04-20 17:43 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 04月 19日

ジョン・ラッツ「深夜回線の女」半分強

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 気がつけば近年の(80年代や90年代は、わたしには近年)ハード
ボイルド・ミステリを立て続けに読んでいる。そこでは様々な個性を
もつ私立探偵像が描かれる。ゲイもいれば黒人や片腕の男もいた。
 今度は白人で、たぶん一番ひ弱な私立探偵だ。

 元警官だが、惨殺現場や残酷さ・暴力のにおいがすると、いや、まだ
しなくても気配を感じただけで胃の具合が悪くなる。精神安定剤の
ように制酸剤を飲む。水なしで飲んでいるが、胃には大丈夫なのか?
 威圧的な依頼人を前にすると、同じく高圧的な元妻が扶助料の支払い
に訪ねてくると、彼は制酸剤に手を出す。充分に制酸剤中毒だ。飲んでも
気分が高揚するわけではないだろうが。

 彼の取り柄といえば、厖大な量の退屈な調査項目であっても、見つかる
まで念入りにチェックし続けられることと、いったん推理を始めたら納得が
行くまで考え続ける、忍耐強さであろう。脅されればすぐ怯えるけれど、
しつこく事件に張りつく質なので、この調子なら解決できるだろうと、いう
ところまで読んだ。

 昼間、電話会社の修理人や設置係が機器のテストをするためにだけ使用
される、いくつかの電話番号が、どういう経緯か一般の人々に漏れて、出会い
を求める連中が夜中に使っている。そこで知り合った男に双子の妹は殺された
と主張する依頼人がやって来る。ひ弱な私立探偵が自分で試してみると、
自殺願望の女性と回線が通じる。なんとか自殺を止めようと彼は必死になる。
 やがて粘り強い推理の結果、彼女の住まいまで突きとめ、心に傷を負った者
同士がつき合い始める、という恋愛小説の展開と、依頼された事件の展開とが
同時並行する。

     (HPB 1988初 帯 VJ無)

(4月20日に続く)





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by byogakudo | 2014-04-19 21:40 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 04月 17日

スティーヴン・グリーンリーフ「匿名原稿」読了

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 どうも納得できないエンディングだ。どう納得できないかを
書くには、ストーリーを明かさざるを得ないので、未読の方は
できればこれは読まないでもらいたいが、それでも構わなければ
お読みください。


 サンフランシスコの私立探偵が、友人の出版人から著者を探して
くれと依頼される。

 お金持ちの子弟が通う私立高校で、人望ある教師が生徒を強姦した
として逮捕収監され、服役後に自分をハメた人々に復讐しに行く、
という小説が匿名で、友人の出版社に送られてきた。
 文芸書を出している小さな出版社なのでヒット作が欲しい。文学的
にも読物としても優れているので出版したいが、著者を見つけなければ
契約ができない。

 私立探偵が調べていくと、現実の某私立高校で似たような事件が
あったことがわかる。どうもノンフィクション・ノヴェルらしい。

 ここで大胆に身も蓋もなく端折って結論を言えば、じつは書いたのは
出版人そのひとで、宣伝活動の一環として探偵に調査を頼み、何やら
すごい新人の作品があるようだという噂を広めたかったのだ。
 リベラルなインテリ出版人で、同じく知的な、弁護士上がりの探偵と
反レーガン的な意見を交わしたりしている男が、出版社を続けるための
起死回生作として取った行動だが、そのせいで出所してきた元教師は
返り討ちみたいに殺されてしまう。

 インテリ出版人は自分の軽率な行為で起きた殺人事件に悩まないのか。
刑務所で人格破壊されホームレスに陥った挙句殺された元教師に対して、
慚愧の念は起きないのか。

 ここらの書き方があっさりし過ぎているので、納得できない思いに
駆られる。こんなに調子がよくていいの? 
 出版社は奥さんの資産に支えられて続いているのだが、彼女の資産は、
この事件の黒幕である彼女の元夫からもらったものだ。元夫は彼女に
いやがらせするために画策していたが、事件が明るみに出て失脚した
ので、彼女の資産は守られ、出版社の経営も安定する。

 ここでも、彼女が文学ではなく経営に頭を働かせることが皮肉っぽく
書かれている(わたしは、そう読んだ)けれど、良心的な出版社社主で
ある現在の夫には、探偵はきつく当たらない。探偵も出版人も、そして
このミステリの著者も、脳天気過ぎやしないか? (あるいはたんに、
よくある女嫌いなのか。)

 アメリカの出版事情や小説についての話題は豊富で、その面では面白く
読めるし、ミステリ内ミステリの扱いなども巧いけれど、ひどくご都合
主義な著者設定のせいで、昔の本格ミステリの不自然さを思い出して
しまう。
 なんかヘンよ。モダーンぶっちゃって、機械仕掛けの神や猿しか描け
なかった、ということでしょ。

     (HPB 1992初 帯 VJ無)





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by byogakudo | 2014-04-17 12:31 | 読書ノート | Comments(0)