猫額洞の日々

byogakudo.exblog.jp
ブログトップ

<   2014年 08月 ( 30 )   > この月の画像一覧


2014年 08月 31日

ローレンス・ブロック「死者の長い列」読了

e0030187_11265787.jpg












~08月30日より続く

 物語も面白かったけれど、法月綸太郎による解説が面白い。
マット・スカダー・シリーズは共和党政権期に、泥棒バーニイ・
シリーズは民主党政権期に集中している、という指摘である。

<レーガン時代に発表された『暗闇にひと突き』『八百万の
 死にざま』『聖なる酒場の挽歌』の三作>で、
<アル中のネクラ探偵というイメージが定着>し、

<酒との壮絶な闘いが一段落した後、ブッシュ(父)が大統領に
 就任した一九八九年には、スカダーの影の分身(ダーク・ハーフ)
 というべきミック・バルーがシリーズに参入。ブッシュの在任
 期間中、矢継ぎ早に発表された「倒錯三部作」で、暴力的要素
 が頂点に達したというのも、なにやら意味深ではないか。>(p504)

 日本は政権交代しない民主主義国家(!)だから、ずるずると時代の
空気を引きずって、その年々のミステリなり純文学なりが書かれている
のかしら? 新刊小説を読んでないので、何ともいえないが。

 で、法月綸太郎によれば「死者の長い列」は、レックス・スタウト「腰ぬけ
連盟」が念頭にあるのだろう、と。「腰ぬけ連盟」、むかし読んでいるような
いないような...。レックス・スタウトは感じがよいのに、どんな話だったか、
すぐ忘れてしまう。
 また、法月綸太郎によればハヤカワ・ミステリ文庫版「泥棒は抽象画を描く』
の杉江松恋・解説に、
<ブロックがスタウトから受け継いだ「本格DNA」>(P506)
について詳しく書かれているそうなので、どこかでハヤカワ・ミステリ文庫版
を見つけたら買っておくこと!

 全31名のクラブがある。会員は毎年一度、全員で集まり、近況を報告し合う。
物故者が出ても、最後のひとりになるまで補充しない。最後の生き残りになって
ようやく、次世代の30人を指名し、会を存続させるのだが、この会の死亡率が
やたらと高いことに気づいた会員が、マット・スカダーに調査を頼む。

 男だけの閉鎖的なクラブ__家族もほとんどクラブのことを知らない__
なので、内部の誰かの手が加わっているのか__しかし連続殺人にしては
期間が長過ぎる__、偶然に過ぎないのか、真相が知りたい、と。

 マットから話を聞いたエレインが、トンティン(トンチン)みたいと言うの
だが、トンチンと違い、最後の生き残りが全年金を手にすることはない。最後
まで生きた会員の権利は、死者の名前を読み上げ、哀悼の意を表し、新規会員
を選ぶ、それだけだ。

 本格ミステリでありニューヨーク風景であり、マットとエレイン(+もうひとり)
の恋愛話でもあり、すべてが渾然とひとつのおいしいスープとして味わえる。

     (二見文庫 2005再 J)

[同日追記]
 2007年07月10日付け当ブログによれば、「腰ぬけ連盟」、読んでます。

09月01日に続く?~





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2014-08-31 15:47 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 08月 30日

ローレンス・ブロック「死者の長い列」半分強

e0030187_18263492.jpg












 シリーズものをネット注文するとき気をつけるのは、順序よく届くように、
だけれど、なかなか思うように行かない。マット・スカダー・シリーズも
後半に入り、順番通りに読んだ方がよさそうな3冊を頼んだら、最初に
読みたい1冊がいちばん後で(2冊が先に届いた、その翌日に)届く。

 まあ、その間、広津和郎「新編 同時代の作家たち」(岩波文庫 1992初
J)に手を出し、面白く読んでいるのだけれど(未了)。
 広津和郎は、まだ店をやっていたら、F氏にお薦めしていただろう。
もうすでにお読みかもしれないが、シブくて豊かでヒューマーがあって、
F氏好みの作家だ。

 ヒューマーといえば、「死者の長い列」もマット・スカダー・シリーズ
の中では明るいタッチらしいが、くそ真面目なヒューマーがある。

 ニューヨークが少し治安が回復し、売人とヤク中の溜まり場だった
公園が、芝生とお花畑のある小公園に変身し、通りの半分に街路樹が
並ぶようになった1990年代前半である。
 木を六本植えて一本育つような街であっても__

< そうして生き残った木の陰でベンチに坐り、この町もまんざら捨てた
 ものではないと思うのは悪くなかった。私はこれまでずっとこの町の
 明るい面を見るのが不得手だった。都市機能の麻痺、腐敗、社会的衰退
 といったものにどうしても眼がいってしまうのだ。そういう性格なの
 だろう。グラスにまだ半分ぐらい残っていると思う人間もいるだろうに、
 私の場合は、もう四分の三もなくなった、そのうち自分にできることは
 グラスに手をつけないことだけになるだろう、と思ってしまうのである。
 そういう性格なのだ。>(p80)

 こういうヒューマーがいい。

     (二見文庫 2005再 J)

08月31日に続く~





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2014-08-30 21:46 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 08月 29日

忘れる/思い出す

e0030187_17111476.jpg












 Sは昔、M画伯邸の奥の部屋を借りていた。もう一室あり、そこには
服飾デザイナーのKが住んでいた。(後にKは、わたしが住んでいた
初台の部屋を借りた。)

 ある日、何の脈絡もなくKの本名を思い出した。
 「ねえ、KはK・Mっていうんでしょ?」
 「いや、本名は知らないよ」
 「フルネームで、どんな漢字かまで思い出した」

 むかしの友だちや知り合いは、通称(ストリート・ネーム)でしか
知らないひとが多い。ドラムスのBishopだって、戸籍名(しかも
姓だけ)を知ったのが二、三年前だ。

 KことK・Mも、いきなり思い出して、すぐ忘れてしまい、別のある日、
Sがweb検索してみようと言い出すまで忘れていた。
 彼、生きてる! 胃が1/3しか残ってなくても元気そうに仕事してる!
年月を経ていても、あのKの顔とスタイルだ。正しい漢字遣いで覚えて
いたので、打ち込んだら、すぐ出てきた。パソコンはすごい。

 二、三ヶ月前、たまたま、西江雅之とすれ違った。年格好から見て
"あの"西江雅之だろう、あとで画像検索してみようと、そのときは
思ったのに、ずっとそのまま忘れていた。
 弁解になるけれど、薬の副作用で、持続しない記憶(持続するから
"記憶"か?)、実感のない記憶の持ち主になっているので、その場で
やらないと、ずっと忘れたままになり、もう一度思い出して実行する
まで、とても時間がかかる。やったことであってもやった記憶と実感
がない、不安を抱えて過ごす。

 やっと今日思い出して検索する。やっぱり、"あの"西江雅之だった。

 店をやっていた頃、始めて数年目くらいだったか、女性客と西江雅之の
書く日本語の魅力についてちょっとお話しした。二人とも彼のファンで、
西江雅之の日本語が発せられる地点や角度が不思議だ、ということを
話したのだった。

 西江雅之の「気まぐれ日記」である「蝦蟇屋敷・談」を少し読む。
もっと著作が出ていてもおかしくないのに何故だろうと思っていたが、
つまりパソコンができないから原稿依頼がない、ということではないか。
 なんてもったいない! 手書き原稿をパソコン上に起こす、専任の編集者
がひとり張りつけば、それですむのに、専任者ひとりの給料が出せない、
貧しい日本国のいま、なのだろう。あんまりだ。





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2014-08-29 20:32 | 雑録 | Comments(0)
2014年 08月 28日

やつらはみそとくそをコミでやってのける

e0030187_198594.jpg












 暑さと紫外線の脅威にさらされるか、傘をさしていても、やがて全身が
じっとり濡れてしまう、小雨が降ったり止んだりの肌寒い毎日か、である。
大変うっとうしい。新聞やTVニュースが目に入ると、もっと鬱陶しくなる。

 国連人種差別撤廃条約の履行を監視する、人種差別撤廃委員会の
対日審査会合で、日本政府のヘイトスピーチ対策が不十分(どころか、
こんな場合にのみ、"表現の自由"の美名のもと、故意に放置する。
警察はヘイトスピーチ側に手を出さず傍観する。)であると批判された。

 この記事を読んだのが、昨日の東京新聞・朝刊。今日の夕刊では、

< 自民党は二十八日、「ヘイトスピーチ」と呼ばれる人種差別的な
 街宣活動への対策を検討するプロジェクトチームの初会合を党本部で
 開き、国会周辺での大音量の街宣やデモに対する規制も併せて議論
 する方針を確認した。高市早苗政調会長は「仕事にならない状況が
 ある。仕事ができる環境を確保しなければいけない。批判を怖れず、
 議論を進める」と述べた。

 警察庁の担当者は国会周辺での拡声器の使用を規制する静穏保持法
 に基づく摘発が年間一件程度との現状を説明した。

  一方、ヘイトスピーチの規制に関しては新規立法が必要かどうか
 検討を進める。高市氏は二〇二〇年の東京五輪開催を見据え「特定の
 国家や民族を口汚くののしるのは日本人として恥ずかしい」と強調した。>

 土建屋国家に当分お金が回るオリンピック興行に関しては、無事に
開催しなければならないから、少なくとも開催年の2020年までは、
おとなしくお上品に、人種差別撤廃委員会の意向に添ってふるまう
かのように、おもてなしの精神でもって演じて見せよう、というのだろう。

 法律だけ作っても現場で実行しなければいいのだし、ヘイトスピーチの
規制と国会周辺でのデモ規制を同時に提案することで審議を長引かせ、
あるいは時間切れで法案を葬り去り、野党が反対するからヘイトスピーチ
の規制ができなかったと、言い訳もできる。

 ところで恥ずかしげもなく、高市早苗や丸川珠代の類いを口汚くののしる
ことにする。非国民だもので。

 男のやり口・手口をマスターして、必要なときには女の肉体も意図的・
効果的に使用しながら(ファッションに気を配り、女性的な魅力ってのを
見せびらかしながら)、男社会の中でキャリアを積み上げよう(トップには
行けないけれど、大抵の男や、女の中ではトップに行こう)とする、"二番手
の男"型・女の行動パターンといったら、もう反吐が出る。

 目先の費用対効果でしかものを考えられず__だから、丸川珠代なぞは
手っ取り早く(彼女の言う)政策を実行するために自民党に入る、と公言
した。__、女の身体でありつつ、目の前のお手本である男のやり口に倣い、
手っ取り早く権力の中に入ろうとするのは、明治以来の、近代化日本や近代の
日本の男の姿を、今現在の身体を持つ日本の女が再現しようと試みることだ。
ブキミ。
 男の猿真似ではなく、女なりの方法を発明する気はないのか。

 和魂洋才といったって、技術とそれを生み出した思考とを分離させるのは
不可能なのに、器用さで手っ取り早く、文明開化を成し遂げたつもりになり、
無理が積もって第二次世界大戦の敗戦を迎える。安倍晋三とその取り巻き
どもは、これをもう一度繰り返したいのか。同調する女どもは、これがいいと
信じているのか。

 経団連は自民党への企業献金を復活させ、特定秘密保護法に関する
有識者会議「情報保全諮問会議」の座長は渡辺恒雄であり、毎日新聞
記者だった西山氏を非難して、いつものプロパガンダ「甘言を弄(ろう)
して外務省の女性事務官に国家機密を盗ませたのは事実だ」と繰り返す。
 何度も上書きすれば、検証されることもなく事実として流通させることが
可能だという、赤新聞やイエロー・ジャーナリズムの論理の実践であろう。

 日本のどこが民主主義国家なのか、わからない。ネポティズムと取り巻き
だけでできた体制を、前近代的だと言って、近代の男どもは馬鹿にしてきた
のではないか。





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2014-08-28 21:25 | 雑録 | Comments(2)
2014年 08月 27日

ローレンス・ブロック「暗闇にひと突き」読了(+「死者との誓い」)

e0030187_12373217.jpg












 マット・スカダーの二人の恋人、高級娼婦・エレインと彫刻家のジャン
(ジャニス)・キーンについて書くには、初期の「暗闇にひと突き」と後期
の「死者との誓い」を並べて考えたほうがいいかもしれない。

 順序よく読んでこなかったせいで、最初の恋人ジャンは、間接話法で
描かれる存在、エレインはマットとともに行動する直接話法的存在だと、
なんとなく思ってきた。
 ジャンの話が、マットとそのAAでの助言者、ジム・フェイバーとの会話
によく出てくる(ように感じていた)ので、物語の裏側に回った元・恋人
という印象を持ったのだろう。
 ジャンが登場するのは「暗闇にひと突き」のときが最初、事件関係者
のひとりとしてだが、気が合い、マット・スカダーとつき合うようになる。
 それにしてもマットは気軽に関係者と寝る。国づくりの基にピューリタ
ニズムがあり、それへの反撥・反動で性的にカジュアルな60年代を
過ごした世代だからだろうか?

 アル中を治そうとするジャンは未だ自覚せざるアル中・マットと別れ、
マット・スカダー・シリーズのヒロインは、長年の(お巡りと娼婦の馴れ
合い時代からの)つき合いであるエレインになる。エレインは第一作
「過去からの弔鐘」に既に登場。

 ジャンとエレイン、タイプとしては、あまり変わりないように、わたしは
思うのだが。
 ふたりとも自立心が強い。男に頼らず、男を甘やかさない。たとえ恋人
であっても相手の個人的領域をけっして侵さない意志の強さ(他者性の
確立)、友愛心が基本にある恋愛関係であり、しかも彼女たちはふたり
とも、経済的・社会的に成功している。マットという男に頼らずとも
生きていける女性だ。

 ローレンス・ブロックは、ガールフレンド的な女性を好むのか、あるいは
60年代、70年代を経てきたニューヨーク風景を描くには、フェミニズム
傾向を持つ女性像が欠かせないのか。たぶん、こちらだろう。
 50年代の延長でもある郊外の主婦的、理想の妻や母親タイプでは、
暴力にさらされる卑しい街で、動き回り、生き延びることはできない。
 軽快なニューヨーカー風俗の泥棒バーニイ・シリーズだと、文字通りの
ガールフレンド、レズビアンのキャロリンが、バーニイと対等のつき合いを
する。彼女の場合は"ガールフレンド"から、さらに"バディ"寄りだが。

 アメリカ映画から"美人"がいなくなったのも、こういう現実の反映かしらと、
横道に逸れて考える。なよなよと男に頼りすがるタイプの美女を造形しようと
思っても、脚本が書けないだろう。強く性格もきつく、そして美女、それなら
現在を舞台にした映画の中で生きていける。

 「死者との誓い」の終わりで、ジャンは癌で死亡するが、マットがエレインと
結婚すると聞いて祝福する。昔の恋人だと理解していても、エレインは秘かに
ジャンに嫉妬していたが、マットがジャンと会っていたのは、死の恐怖から身を
守る護符のように、銃を手に入れて欲しいと願った彼女の依頼があったからと
聞き、自分の嫉妬を恥ずかしくさえ思う。

 こんなにイカす女たちに愛され、そのひとりと結婚する決意を固めながら、
まだ「死者との誓い」で知り合った(寝ちゃった)事件関係者の女性に電話
しようかと考えないでもない、マット・スカダーのあるいは男の往生際の悪さ
が描かれているのがいい。女も結婚直前には憂鬱になるが、男だってそうである。

     (「暗闇にひと突き」 ハヤカワ文庫 1993年3刷 J)
     (「死者との誓い」 二見文庫 2002初 J)





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2014-08-27 20:57 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 08月 26日

ローレンス・ブロック「死者との誓い」読了

e0030187_14513524.jpg












 カヴァがかけられたバイクの中と外で遊んでいた子猫たちの
片方。二匹とも大きくなったので、わたしたちと目が合っても
即座に逃げ出したりせず、ヒトの接近を余裕を持って眺める。
 でも、近づき過ぎたらいつでも逃げ出す空気を漂わせている。


 いいミステリなのに、じつにどうでもいい事柄をまずノートする。

 マット・スカダーがお葬式に参列する。
< 『見よや、十字架の旗高し(オンワード・クリスチャン・ソルジャーズ)』
 と『主よ、ともに宿りませ(アバイド・ウィズ・ミー)』。この二曲の讃美歌
 が歌われた。[略]
 二曲目では、その曲のセロニアス・モンク版を思い出した。その曲には
 たった八小節、それもメロディだけだが、耳について忘れられないところ
 があった。ジャン・キーン[注:マットの昔の恋人で、今、癌に侵されている]
 がそのレコードを持っていたのだ。もう何年も聞いてなかった。>(p407)
 __この演奏かしら? Thelonious Monk Septet 1957 ~ Abide With Me

 マット・スカダーの粘りで、警察署内で所在不明になりかけた鍵が
見つかる。それを聞いた弁護士が、冗談を言う。
<「もしもう絶対に見つからないところに隠れたければ、警察の倉庫に
 はいり込んで、棚の上に寝そべってることだ。ピーター・スタイヴェサント
 の義足も警察の倉庫に眠ってるということだから[以下略]」>(p412)

 ピーター・スタイヴェサントについて細かい字で説明してあるのを見て、
05月25日に書いたのを思い出した。

 あの時はweb検索を思いつかなかったが、いまはネット中毒だから、
すぐにPeter Stuyvesant cigarettesと画像検索した。調香師・Lのお土産
であるあの煙草、Peter Stuyvesant は、英語読みすれば「ピーター・スタイ
ヴァサント」ないし「ピーター・スタイヴサント」のようで、オランダ語読み
なら「ピーター・ストイフェサント」、綴りも英語式なら Peter Stuyvesant、
オランダ語式の名前は Pieter あるいは Petrus と書かれた、とウィキペディア
で読む。( Peter Stuyvesant で検索すると日本語版がトップにあるのに、
うまくリンクできない。)

 ここまで書いて疲れたので、続きは(続きがあるとすれば)また明日。

     (二見文庫 2002初 J)





..... Ads by Excite ........
 
[PR]

by byogakudo | 2014-08-26 20:05 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 08月 25日

よかった...

e0030187_19151068.jpg












 5月に大急ぎの閉店を決めたとき、大急ぎでお客さまにお知らせした。
メールアドレスのある方にはメールで、メールアドレスは存じ上げない
けれど、住所は知っている方には郵便で、連絡をとったつもりだが、
遺漏がある。

 ときどき、本を抱えて持ってきてくださるカップルがあった。世の中に
こんなに似たような本の趣味の方がいらっしゃるのかと、驚くのだが、
いつも買取作業に時間を取られ、ゆっくりお話しする機会がない。
 Sのグループ展のとき、チャンスがきた。フライヤをお送りしたら来て
くださった。お話ししてみると、たしかに昔すれ違っていそうな方だ。
ご主人とSが主に話し、隣で奥様が、
 「何にも註釈なしで話が進むのがすごいですね」と仰っていたけれど、
たしかに同時代人の会話だった。行っていた喫茶店、さまよう界隈、
全部、互いの了解事項である。

 そうであるのに、その方たちに連絡しそびれていた。まだ、この住所に
お住まいかしら、引っ越されていても一年以内なら転送してくれるからと、
遅ればせの閉店のお知らせを出してみる。そして今日、すてきな絵葉書で
お返事をいただいた。よかった...。ほっとした。





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2014-08-25 19:57 | 雑録 | Comments(0)
2014年 08月 24日

今日が締切/「特定秘密保護法」パブリック・コメント

e0030187_20581231.jpg












 今日が締切の「特定秘密保護法」パブリック・コメントだが、
なぜわたしは参加しないのだろう、と考える。

 環境アセスメントや何かと同じように、公権力による意見募集は
参加したとて何ら効力を持たず、ガス抜きに参加した挙句、役人や
政府に、意見を承った証拠として扱われるから? 
 しかしそれなら、ガス抜きと分かっていながら、衆議院議員選挙
時に同時に行われる最高裁裁判官国民審査に、しっかり参加して、
×印をつけていることとの整合性は、どうなる? どう違う?

 <意見提出フォーム>は、任意での名前や住所・メールアドレス
記入であるが、下段の<個人情報の取扱いについて>を見ると、

<(1)当サイトでは、利用者のインターネットドメイン名、IP
 アドレス、ブラウザの種類、端末のオペレーティングシステム
 の種類に係る情報を自動的に収集します。>と、ある。
<(1)において収集した情報は、当サイトが提供するサービス
 の利便性を向上させるため、利用者の利用傾向を分析する
 等の参考として利用します。>だそうな。

 昨日の午後、新宿区で「パブコメを出そう!会」が開かれたが、
もし参加できていたら、わたしはどうしただろう。みんなで書けば
情報漏れの恐怖も薄まり、未来に対する責任も少し果たせたと、
満足して帰ってきたのだろうか。





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2014-08-24 13:10 | 雑録 | Comments(0)
2014年 08月 23日

ローレンス・ブロック「獣たちの墓」読了

e0030187_17175072.jpg












 <倒錯三部作>の三番目、「獣たちの墓」も陰惨な快楽殺人者
の話である。エグい話をエグいまま書かれては、読者は読むのを
止めたくなるかもしれない。エンタテインメントの場合、陰惨さ
が基調であるなら、それを緩和する対立的要素を物語に呼び込む
必要がある。映画でいえば"ノンストップ・アクション"は退屈至極
で、やっぱり緩急がなければ平べったい映画になるだけのことで
__といっても、こういう古風な美学(?)も今はあまり通用しない
のだろうが__、女を誘拐しては身体の一部を切り取るようなサイコ
キラーの話に不可欠な要素、それはヒューマーとトリックスターだ。

 前作「倒錯の美学」に出てきた黒人少年・TJ(はしっこくて賢い
けれど、42丁目育ちだから大人になるまで生きていられるか不明)
は、マット・スカダーのような私立探偵になることを夢見るように
なり、毎日マットに電話しては、何か仕事をさせろと要求する。

 しつこいTJ攻勢のおかげで、天才ハッカー少年二人組と知り合い、
誘拐犯からかかってきた電話番号を突き止めることができた。
 マットも天才たちから、捜査への執拗さを賞賛される。
<「マット、おたくの手先がどれだけ器用なのか、ブラインド・
 タッチでキーボードが打てるかどうか、それは知らないけど、
 それから、おたくは機械にはあんまり強くないみたいだけど、
 これだけは言えるよ。おたくにはハッカーのハートと魂がある」>
(p240)

 ポケット・ベルが出回り始めたころの物語である。わたしがついに
手を触れることがないまま市場から消えたポケット・ベル。携帯電話
も持たず、スマートフォンも未だ。義母から借りてる10年ものPHSが
唯一のモバイルフォンで、携帯電話なんぞなくとも、生きていける実例
だが、そんなあたしでもmacが好きとか言ったりしてる...。ふむ。

 すてきな高級娼婦・エレインとの恋愛も、じわりじわりと結婚の方向に
進み、彼らが彼らなりに幸福になってくれればと願わせるが、マットの
AAでの知り合いの、アル中兼ヤク中の男もよかった。

 ヘロイン好きだが注射針が怖くて鼻から吸い込むだけ(HIVは心配
しないですんだ、と言っている)が、ヘロイン中毒になり、中毒の
恐怖を紛らわすために酒浸りになった男である。

<フルトン・ストリートの魚市場の近く、再開発された一帯>を通り
ながら、この辺りがいちばんいいのは、
<「寒くて人気(ひとけ)がなくて小雨がぱらついているような、今夜
 みたいな夜が一番だ。ここいらが一番きれいに見えるのは、今夜
 みたいな夜だよ」そう言って彼は笑った。
 「だんだんヤク中のくりごとそのものになってきたね。ヤク中ってのは、
 エデンの園を見せられたって、もっと暗くて寒くてみじめったらしい
 ところがいいって言うのさ。でもって、そこにひとりでいたいってね」>
(p171)

     (二見文庫 2001年初 J)
 





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2014-08-23 20:18 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 08月 22日

ローレンス・ブロック「倒錯の舞踏」読了

e0030187_17171978.jpg












〜8月22日より続く

 警察や法律の力では退治できない悪に直面したマット・スカダーは
どうするか? 前作「墓場への切符」ではサイコ・キラーを殺すことで、
罪の対価としての罰を個人的に行使する。警察官でもなく許可証を持つ
私立探偵ですらない、一私人のマット・スカダーが、どんな資格で裁判官
兼刑罰の執行者足り得るか。リンチに走る暴徒と、どんな違いがあるか。

 傍目にはほとんど差異はない。ただ心の奥底を覗くと、暴徒は自らの正義
を頼んで、自分を疑うことがない。マットは自分もまた罪を犯すことを自覚
して、それでも敢えてやろうとする、その僅かで確実な姿勢の差が、読者の
共感を引き出す。いい気なひとり自警団と、言われたってしかたない部分が
あっても、ぎりぎりのところで、読者はマット・スカダーと思いを共有する。

 「倒錯の舞踏」でも、邪悪な犯人たちを処罰するために、自分は手を汚さず
にすむやり方を知りながら、自らの血で血を贖うことを選ぶ。

< 「[略]いずれにしろ、汚い仕事を他人任せにするということが、どうも
 しっくり来なかったんだ。たとえ彼らを死刑にできても、現実に自分に
 できることと言えば、彼らが吊るされるのを見に行くのが関の山だ__
 なんだかそんな気がしたのさ」>(p465)

 マネー・ローンダリング、スナッフ・フィルムに性倒錯、邪悪な茨が蔓延る
ニューヨーク・バビロン風景だが、大人の関係を保ち続けよう、互いに自立
した存在であり続けようとしながらも次の段階を望まないでもない、高級
娼婦・エレインと元アル中で元警官のマットとの恋愛場面が、抑制的である
故に切なくてきれいだ。

     (二見文庫 2006年3版 J)





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2014-08-22 16:24 | 読書ノート | Comments(0)