猫額洞の日々

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2014年 11月 30日

K・K夫人__野音と日比谷公会堂の夏

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 療養が続くバレエのK・K夫人から電話をいただく。先日より調子が
よさそうで、少し安心する。治療は、最終的には身体の状態をよくする
けれど、その途中で具合が悪くなったり、また体調が上がったり、ムラ
がある。
 自分で経験してみて、それは分かった。体調が下がっていく中でも、
日々、今日は多少、調子がよかったり、次の日はまた悪かったりで、
進んでいった。

 K・K夫人に日比谷公園の話をした。彼女はバレエ団にいた当時の話で
返してくださる。

 敗戦後、みんなが文化的な飢えや渇きを満たそうと熱中していた頃、
バレエ団の夏場の公演となると、K・K夫人の出番が殊に求められた。
 「なんだか涼しそうな顔して出てくるんですってさ」

 バレエなどの身体表現の実体は重労働に決まっている。でも表現行為たる
もの、努力してるのが外から見えてはならない。重力なんて存在しないかの
ように、あくまでも見た目は軽々と、難なく何てことなく演ってるように
見えなくてはならない。

 だから真夏の、冷房装置はまだなく、天井に吊るした扇風機で空気をかき回し、
客席では扇子を遣うくらいしか暑さ対策のない日比谷公会堂で、あるいは野天の
(さすがに夕方からの公演だと思うが)日比谷野外音楽堂で、K・K夫人は涼やかに
舞った。身体中、汗だくになりながら。
 「新聞の批評では、『一陣の風が吹いたようだ』って書かれたのよ」

 特に野音ではオーケストラ・メンバーは全員、首にタオルを巻いて汗を拭き拭き、
楽器に飛び散る汗も拭きながら演奏し、舞台では汗で張りついた衣装を身につけた
K・K夫人やバレエ団主宰者が、オーケストラ・ピットに汗を飛ばしながら、涼しく
「ブルー・ダニューヴ」を踊る。演る方も見る方もイノチガケなのは、べつに近年の
EP-4ライヴだけではないな、とも思うけれど、ともかく敗戦から少し経った当時は、
暑さなんぞ忘れてしまえる、喜びだっただろう。

 日比谷公会堂のモギリのおばさんも彼女の出番になると扉口に見にきて、
 「涼しそうにしてる」と評し、K・K夫人の叔母上は、
 「あんたが出てくると(客席の)扇子が閉じられるのよ」と教えてくれる、
そういう爽やかなパフォーマンスだったそうだ。暑苦しくない、というのは
どんなジャンルでも好ましい。(効果としての暑苦しさ使用は別。)





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by byogakudo | 2014-11-30 20:39 | 雑録 | Comments(0)
2014年 11月 29日

日比谷公園へ

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 11月09日付けブログの写真は、日比谷公園の鶴の噴水
だったが、あの頃はまだ、遠出する自信がなかった。
 「どこ行ってきたの?」
 「久生十蘭に敬意を表しに行ったのさ」
 その日比谷公園へ、昨日は二人で。日比谷公園はそれほど
知らない、新宿御苑みたようには。

 空は暗いけれど降らないというので2時に出た。陰っていたし
平日だから公園は静かだ。S が先だって歩いたコースを再訪。

 旧公園資料館は可愛らしく、2羽のペリカン噴水のペリカンの
顔がいい。アメリカの漫画に描かれる顔とはちがって、やっぱり
日本らしい顔つきをしている。資材置き場だったかのキリン像は
面相が悪くって、それはそれでいいが。

 S もまだ寄っていなかった日比谷公会堂の方へ。公演がない日
なので閉まっているが、脇にキャフェの案内が出ている。

 日比谷公園アーカイブカフェ(いちばん下のパノラマ写真で
一周できます)。雨もよいにもなってきたので休憩する、煙草は
吸えないけれど。ここがよかった...。

 建築は時間を蓄える。戦前からの公演の記憶の積み重なりが、
空間中に漂っている。コンサートが始まる前のわくわくするような、
きやきやした気分が押し寄せる。
 電蓄からヴァイオリンの音が流れてくる。コーヒーを出す青年に
尋ねると、CDを見せてくれた。メニューインだって。(電蓄の
真後ろにCDプレイヤがある。)
 この音は聴き覚えがあるし、メニューインの名前も知ってたけれど、
やっと音と演奏家が一致した。SPの音源をCD化したそうだが、空間
との相性もいいのかもしれないが、かなり音量があっても、キンキン
せずに気持よく聴いていた。
 電蓄は今でも使える。SP盤の「アヴェ・マリア」をかけてくれた。
アナログ音っていいな。

 写真も撮っていいと言われて、ひっそりした午後をゆっくり過ごす。
いい日だった。また行きたい。





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by byogakudo | 2014-11-29 14:55 | 雑録 | Comments(0)
2014年 11月 28日

平山盧江「つめびき」読了/鈴木創士「文楽かんげき日誌」第9弾「鬼はどこにいるのか」

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 (2005年1月1日付けになっていた<「悪霊の群」読了>が
2006年4月17日付けとのダブリなのを発見して、前者を削除
できた。どうでもいいことだけれど、気持がすっきりした。)

~11月27日より続く

 お酌・やや子を止めて実家に戻ったおみよは、再び、近所の三味線の
お師匠さん宅に通う。次々にやって来る弟子が途絶えたとき、お師匠さん
から、蕎麦を頼んできてと言われる。

< ざるを二つと天ぷらそばを一つ頼んで>(p54)、
師匠宅に持ち帰る。

< 二人がお盆を間にさしむかひになる時、おみよは小さな鼠入らずから
 飯茶碗を二つ持つて来た。
  天ぷらそばを半分それに分けて、師匠の前と自分の前へおき、
  「かうしてね、天ぷらそばの方を先に食べてさ、おつゆをなるだけ残す
 やうにして、それから、残つたおつゆでざるそばをいただくんです、さう
 すると得(とく)だわ」
  これは浪花家の姐さんがいつもやつてゐる食べ方だつた。
  浪花家にゐる頃、いつもいつも[注:踊り字表記]お腹(なか)が減(へ)る
 ので内箱(うちばこ)のかつちやんと、今にお小使が出来たら、あれやって
 見やうね、とても得(とく)でおいしそうだわと、うたに唄うやうにいひ
 つづけたが、到頭一度もやらなかつた[以下略]>(第二章『糸みち』 p55)

 お師匠さんから<「[略]大層あたじけない話だね」>(p55)と評される
この食べ方は、芸者・菊丸になり、お師匠さんにご挨拶に行ったときにも
繰り返される(第三章『縁』 p83)。

 しかし、このころの芸者屋の食生活のひどいこと!ほとんど日本人全員が
低カロリーで生きていた時代だけれど、芸者屋はひどい。労働着である着物
にお金をかけ、おつき合いにもしみったれない金額を包み、その他あれこれ
出銭が多いので、食生活を切り詰めるしかないかもしれないが、いい旦那が
ついた売れっ子の芸者・菊丸の所属する音羽屋にしても、

< ここはまだ、日々の御飯につけものの用意と、たまにはつくだ煮か煮豆
 ぐらゐのおかずがお膳の上に出る事になつてゐるのだが、浪花家では
 三度の食事が、いつもいつも[注:踊り字表記]足らぬがちだつた。
 [中略]
 お酌時代のやや子は内箱のかつちやんと二人、空腹をかかへて寒さが
 一入身にしみる夜が多かつた。
 [中略]
 姐さんが何かの用で出かけたのを待ちかまへて、かつちやんのはからひで、
 おはちの中の御飯をそつとおにぎりにこしらへ、二人がにつこり笑つて、
 赤ン坊のあたまほどなのを、あんぐりかぢりついた途端に>
姐さんが帰ってきた。

 雪隠に隠れたやや子は諦めておにぎりを捨て、かつちやんは、流しの上に
置いて洗い桶を被せておいたので、半分こしようと言ってくれたが、慌てて
桶を被せたので、桶の縁でおにぎりを半分つぶしてしまい、それを猫がむしゃ
むしゃ食っていた(第六章『縁切り』 p164~165)。

 売れっ子芸者にはなったけれど、なんだか空しさを覚える菊丸姐さんは、
幼なじみと再会して、恋をする。芸者から堅気のおかみさんになるところで、
おしまい。

     (平山盧江「つめびき」 住吉書店 1952初 J)

 鈴木創士氏の「文楽かんげき日誌」第9弾は、「鬼はどこにいるのか」





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by byogakudo | 2014-11-28 21:01 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 11月 27日

平山盧江「つめびき」もう少々

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~11月26日より続く

 第三章 『縁』にある<同盟を衝く>とは、つまり回状を回すみた
ようなことだろう。

< 娘を芸者に住み込ませる多勢の親たちの中には、前借だけを目当に
 話を持ち込んで来るものが随分あつた。七年でも八年でも年期をつけ、
 貸してくれるだけの金を借り込んで素直に住込みをさせたあとで、親子
 なれあひで逃げ出させ、更に又別の主人を求めて第二の借金をさせると
 いふ風に、何遍でも借り込み何遍でも籠ぬけをすることに目的を立てた
 ひどいのが相当にあるので、芸者屋側では全国的に芸者屋組合をつくり、
 組合規約の力で、かうした食はせものに引かからぬ手配(てはい)をし
 はじめた。その事を「同盟を衝く」といつてゐる、おみよはそれに
 引かかつてゐるにちがひないと、女将[注:再デビューの相談に行った
 待合「うす墨」の女将]は睨んでゐるのであつた。>(p79)

 100円の前借金を半年後、350円以上払って返したのに、ブラックリスト
に載ってるなんてそんな馬鹿な、と驚く、おみよと父親(と読者)であるが、
今回も「うす墨」の女将が代行処理をしてくれる。

 見番(けんばん)に問い合わせると、やはりリストに上がっているので、
女将は、
< 「[略]どうでせう、五十円ほど差し水をして下さいませんか、どうも
 見込まれたが因果です」>(p80)

 女将は次の就職先(住み込んで働く芸者屋)も紹介してくれたので、おみよ
たちはそこで200円前借りして、その中から50円を持って、おみよ/やや子が
勤めていた芸者屋「浪花家」を訪れ、リストから外してもらおうとする。
 「浪花家」は芸者屋を止めて、郊外に暮していた。

< 「もうそろそろ[注:踊り字表記]舞戻つて来る時分だと思つたよ。よく
 来ておくれだつた」
  大層機嫌よく父にも女将にも愛想がよかつた。
  決して悪気で同盟を衝いたわけではない。実はあのままではいろいろ[注:
 踊り字表記]やりにくい内輪の事情があつたので、一旦打切りにして改めて
 出なほさうと思つた。出直すとすればどうしても昔なじみの力がほしいので、
 わざと同盟を衝いておみよを再び自分のところへ引戻すつもりだつたので
 など、あつさり種明かしをしたあとで、
 [中略]
  こんな風で、用意しておいた包み金も快く受け、同盟の方もすぐに解いて
 くれたので幾日も経たぬ中に、おみよは一人前の芸者として音羽屋菊丸と
 名乗つて出る手筈が出来た。>(p81)

 自分の都合でブラックリストに載せる非礼を働きながら、差し出された50円を
<快く>受け取るのが、生野暮だもので、理解できない。押し戻すのも角が立つ、
かもしれないけれど、野暮天側としては納得できない。お金を差し出して謝罪
するのは芸者屋・旧「浪花家」側ではないかしら?
 それとも、お酌・やや子を仕込んでくれた、一種、親代わりみたような立場
だから、娘分からの上納金は<快く>受け取るべき、なのか? ここらの呼吸や
心意気は、どうにも理解し難い。
 まあ、50円全額が旧「浪花家」の手元に残るとは思わない。芸者組合や見番
にも廻るだろうと思うけれど、割り勘がいちばん、と信じる合理・原理主義的
生野暮には心意気の代数や税務処理は不可解だ。

 今は音羽屋菊丸と名乗る、本名・みよ/お酌・やや子は、客を取る行為も肯定した。

<蔭のおざしきの事も、所詮は習はうより慣れろで、一年二年と経つ中にこれも
 この世のなりはひの一つと思ひ捨てるあきらめもつき、左程苦にはならない
 ところまで来た。
 たつた一つ、思ふやうにならないのが種銭(たねせん)に借りた借金の二百円で、
 これが減らすとは殖え、減らすとは殖えして丸二年ごしをどう奮発しても、どう
 手許をつめても自前の看板をあげるところまで行き得なかつた(何と云つても好い
 旦那といふ後援者が出来ないことにはねえ。自力一本では無理だわ)うす墨の
 女将はいつもさう云つて、(まア待つておいで、その中にはあたしの家で好い
 旦那をつけてあげるから)と力瘤を入れつづけてゐるのだつた。>(p84)

 明日は、つましく、おいしく、経済的な天ぷらそばの食べ方を書き抜こう。

     (平山盧江「つめびき」 住吉書店 1952初 J)

11月28日に続く~





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by byogakudo | 2014-11-27 22:08 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 11月 26日

平山盧江「つめびき」3/4

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~11月25日より続く

 人情ものが苦手なので、気のいいだけの芸者の一生小説だったら
退屈だが、と懸念したけれど、祈れば叶うこともある。プロレタリア
小説には進まないが、何にも知らない少女が周囲から学んで、ひとと
して芸者として成長する教養小説になって行く。"芸者の一生"小説
だけでなく"芸者経済小説"でもある。

 第二章 『糸みち』では、半年前に、お酌になったとき、芸者屋
から実家に100円支払われたその後、の話が出る。

 これは契約金というより前払金だから、芸者を止めるに当たって
借金100円+利子+違約金=三百何十円を返済しなければならない。
 客が芸者を身請けすると高くつくが、親許身請けの形をとっても
これだけかかる。身請け処理をしてくれた待合「うす墨」にもお礼
をする。
 親切な客は500円くれたので、お酌・やや子こと、おみよの実家に
7、80円残った。つまり、100円の借金は半年後に420円から430円
払って帳消しになった。

 第三章『縁』には、
<日露戦争以来、無やみに広くつかはれるやうになつた言葉>
(p83)として「独占する」という言葉を少女・おみよが使うシーンが
あるし、
<日露戦争が終つてたつた三年足らずではあるが>(p78)とある
ので、小説は1908年(明治41年)ころに時代設定されていると思う
が、この時代だって税制も税務署もあっただろう。芸者屋や待合の
税金は、どのように徴収されていたのかしら?

 少女・おみよの兄の仕事場を作るのにかかった資金が100円、
大事に使おうと箪笥預金した7、80円は一枚減り、二枚減りして
いるうちに底をつく(ここら、とても人ごとではないリアリティ
がある)。8ヶ月後、おみよは再び芸者に出る。いつまでも実家に
いる訳に行かないので。

 実家もお金に縁がないが、近所はどこでも同じ風なのを見て
おみよは、
< みんなが金で苦労をしてゐる、ともいへるし、金のために
 みんながうろついたりまごついたりしてゐるともいへる、たか
 猪の絵を印刷した紙片一枚のために、人間はだれもかれも猪の
 やうに駆けずりまはつてゐるんだ。
  (お金つて、妙なものだわ)>(p51 『糸みち』)と思う。

 その前に、親切な客に言われたように、お嫁に行こうかとも考えてみたが
しかし、兄嫁と兄の関係を見たり、芸はあるが酒飲みで独身を通す三味線の
師匠(元・旗本の娘)を見たりしているうちに、芸で身を立てようと思う。

 芸者に戻る前に、お金を出してくれた、親切な客に断りを入れる義理がある。
 会いに行くと客は、自分が幼い頃に両親を亡くしているので、やや子/おみよ
の親孝行に、ほだされたからだ言う。鋳物工場が100円で建つときの500円を、
役所勤めの身で出せるのは、どの程度の地位にいるのだろう? 汚職なんぞして
なければよいが、まっすぐに純情な、いい人・キャラのようだ。

 さて、再度のお勤めにも経済問題が出てくる。100円の借金に対して350円
かもっと払っているのに、二度目のデビューには<「同盟を衝く」>問題が
発生するそうな。
 というところで、この件は明日。

     (平山盧江「つめびき」 住吉書店 1952初 J)

11月27日に続く~





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by byogakudo | 2014-11-26 22:08 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 11月 25日

平山盧江「つめびき」を読み始める

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 これがあったんだと、昨夜から平山盧江「つめびき」を読み始めた。
"芸者の一生"みたような話らしい。第一章に当たる『雪の夜』では、
若いというのか子どもっぽいというべきか、15、6歳(むかしだから
数え年だ。たぶん満年齢の13、4歳、中学生くらい?)のお酌・やや子
が雪の夜、足袋はだしで待合「満月」から、少女の所属する芸者家
「浪花家」に逃げ帰る。

 彼女の父親は、かねて、
< 「つとめ奉公に上つても男の人と寝たりなんかしちやいけないつて、
 芸者はどこまでも芸だけ売れば可いので身体を汚すんぢやないつて」>
(P5)と、やや子に言っていたので、待合で客を取るように言われたら、
親の言いつけに従って逃げ出すしかない。

 そもそも、彼女が芸者家に身売りしなければ、一家の長男の仕事場を
作る資金ができなかったのだから、娘が芸のある売春婦になることが
分かっていながらの父親の台詞は、自己欺瞞である。本気で芸のみで
立つ芸者が可能だと信じているなら、父親は気がおかしいか愚鈍なの
だろう。

 やや子が逃げ帰ってきた翌日、偶然か、あるいは芸者屋の女将にそっと
呼びつけられたのかもしれない、彼女の母親が芸者屋に借金にきて、断ら
れる。それを聞いた娘は、いよいよ身体を売って一人前の芸者になろうと
決心する。母の行為も、無意識にせよ自己欺瞞だ。

 しかし彼女の貞操は、心優しい水揚げ客の思いやりによって守られ、
やや子は借金も払ってもらえて、無事に実家に戻ることができた。
 でも、親切な客は、見返りも求めず借金を肩代わりしてくれるのなら、
もう一歩踏み込んだ処置を考えるべきではなかっただろうか?
 少女が実家に戻ったところで、造花つくりの内職をする父、仕立てもの
内職の母、14歳の弟、別に暮らす鋳物職人の兄一家という家族構成だ。
貧困の度合いを考えれば、再度のお披露目をするのは、目に見えている
ではないか。彼の親切は身を売るのを、いっとき遅らせてやるに過ぎない。
 詰めの甘い慈善行為もまた、自己満足である。

 __と、細やかな義理人情の交錯する世界の発生源、その欺瞞性に
ばかり偏向注目して読むのは、断然まちがっているけれど、小説がいか
ようにも書けるように、読むほうもいかようにも読めるのだから、あたかも、
"プロレタリア、学習せよ! その後、立ち上がれ!"と言わんばかりのノリ
で花柳界小説を読むのもアリではないかしら?

     (平山盧江「つめびき」 住吉書店 1952初 J)

11月26日に続く~





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by byogakudo | 2014-11-25 20:35 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 11月 24日

レジナルド・ヒル「ソ連に幽霊は存在しない」ほぼ読了

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 いま気がついたのだが、レジナルド・ヒルとコリン・デクスターを
ごっちゃにしていた。ダルジール警視とパスコー部長刑事の名前だけ
知っていて、どうも本文は読んでなかったようである。
 どおりで、ダルジール警視もののメタ・ミステリである『踏みにじ
られて』を読んでも__急いでつけ加えれば本書は短篇集。__
ピンと来ないはずである。(もっとも、記憶障害で覚えてないから、
という理由も大いに考えられるが。)

 けして推理することなくミステリを読み進めるのをモットーにして
いるのに、どうしたことだ、話の行き先が見える物語ばかり続き、
しかも予想通りの展開が広がり、着地してしまう。これは困った。
約束が違うじゃないか、ともいえないし。

 ジェイン・オースティン「エマ」の後日譚である『かわいそうなエマ』は
まあ好きか。幸福な結婚のその後は、いかに退屈な日常に耐えて生きるか
であるけれど、『かわいそうなエマ』では全編、全員、将来への備え、即ち
お金の話しかしない。お体裁ぶった紳士階級・ブルジョアへの批判とも読める
けれど、身も蓋もない、実録「田園小説」が書きたかったのかしら?

 表題作『ソ連に幽霊は存在しない』では、ほんとに何の説明も解釈もなく、
幽霊を登場させていながら、無理のないストーリーになっているのが巧い。

 短篇ミステリで、わたしは気の利いたオチに興味がないのだと分かった。
せっかく作者が見せ場を作っているのに、そんなこと、どうでもいいや、と
思うのでは、うまい短篇集の存在理由を否定するようなものだ。ひどい読者。

 ローレンス・ブロック欠乏症に陥り、短篇集を注文してしまったのだが、
こんな調子で大丈夫かなあ。

     (レジナルド・ヒル/嵯峨静江 訳「ソ連に幽霊は存在しない」
     HPB 1990初 帯 VJ)





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by byogakudo | 2014-11-24 19:48 | 読書ノート | Comments(0)
2014年 11月 23日

Mer-de-cure の後で(4)

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 今日も歩く。昨日より、も少し長い時間、歩く。昨日がたぶん1時間少々、
今日は2時間ほど。10年以上前、ふたりとも無事で、残余の体力があった
ころは、4、5時間通しで行軍してたなあと、中野坂上・ドトールで思い出す。

 午後2時過ぎに部屋を出る。地下鉄・新中野付近からJR・中野駅方向へ
歩き、右折して桃園川緑道沿いに歩く。S がひとりで撮り歩きしながら、
見つけた場所を一緒に歩く。

 桃園川緑道沿い、古い木造民家を用いたキャフェができている。軒から
柿がぶら下がり、干し柿になりつつある。若い人に好まれそうな家だ。
 11月7日付けブログ写真のお家もある。たしかにカメラを向けたくなる
たたずまいだ。2階の増築部分なのだが、何かなつかしい。米軍ハウスや、
小住宅の白いペンキ塗りの木柵みたいな懐かしさだ。

 さらに進むと、中野区立・宮前公園。そう広くはないが、石組だけの池や
雑木林風の樹木の様子と、遊具のバランスがちょうどいい。いじり過ぎず、
感じよくできている。

 「あれ、行き過ぎちゃったか?」と S が危ぶむが、あった! 今や幻と
なった本郷館をすぐ思い出させる、木造住宅の並ぶ一郭に着いた。
 中野区中央2丁目某所。緑道近い側に3戸、同じ作りの古い木造二階建て
住宅が並ぶ。それぞれ冠木門つきで曲がり角まで敷地が続き、角を曲がると、
裏手にもまた、平屋・冠木門つきの住宅がひかえる。
 大家さんがむかし(いつ頃のむかしだろう、冠木門をつけるなんて?)
同じ作りの分譲住宅を建てて供給した、ということかしら? 
 古びて傷んでいるが存在感がすばらしい。

 中野坂上交差点へ向かい、地下広場(?)のドトールで休む。中野坂上
サンブライトツインビルが正式名称らしいが、できたときからスラムの
空気があった。いまだ、つつがなく(?)安っぽいままだ。
 建築基準法や、いろいろ制約があってままならないのかもしれないが、
ポップにはじけることもならず、荘重さや静かな落ち着きももたらし得ず、
貧相ないじけ方をした高層ビルだ。初台辺りから山手通りを北に向かうと、
どのビルも軒並み、新建材のポストモダン調で、絵空事の面白みもない
書割りの中を歩いているような、不快さが続く。

 帰ってくると、眠りはしないが、やっぱり横になる。次回は山手通りを
越えて東中野〜大久保方面だったか、の散歩になるらしい。





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by byogakudo | 2014-11-23 21:06 | 雑録 | Comments(0)
2014年 11月 22日

Mer-de-cure の後で(3)

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 Mer-de-cure の後で、つまりリハビリ散歩日記だ。少しばかり
長歩きすると、まだ帰ってきてから疲れが出る。ソファに横に
なると眠気が襲う。

 S は腰、わたしは肩の痛みが取れない。方南通り沿いの接骨院
を終え、元・海洋研究所、今は東大附属中高校グラウンドから、
幡ヶ谷方向へ。

 むかし歩いた辺りだ。消防署員用集合住宅は改築されるが、
4階建てが5階になるくらいですみそう。個人住宅が新建材で
建て直されたりして、印象が変わったところもあるが、大筋は
変わらない、ありふれた東京の町だ。大きな通りのすぐ裏は、
土地に細かい高低差があり、細い道がすぐに曲がる、東京風景。
 水道道路を渡り、以前にも見た、何の仕事かわからない、広い
敷地の会社が、トタン板(青色)の資材置き場(?)や、横に長い
平屋(赤煉瓦色)の工場(?)とともに健在。

 歩道橋で甲州街道を越え、小さな踏切を渡って幡ヶ谷の緑道
方向へ。

 幡ヶ谷駅近くのドトールで休む。珍しく禁煙席と喫煙席の広さ
があまり違わない。入口側の禁煙席はおしゃべりに花が咲く、
数人連れが目立ち、喫煙側はひとりで静かに過ごす客が多い。

 バスで戻る。





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by byogakudo | 2014-11-22 20:30 | 雑録 | Comments(0)
2014年 11月 21日

特定秘密保護法に賛成した国会議員名・東京編(2013年12月14日の再録)

 年末、12月10日に特定秘密保護法を施行させた後に投票日である。
ナメた真似をする。馬鹿にされっぱなしな、お人よしでは、いたくない。
 一年近く前にブログに上げた、特定秘密保護法に賛成した、東京
選挙区の国会議員名リストを再録する。
 今回は棄権者や欠席者名も挙げる。

______________________________

 衆議院で賛成した、東京選挙区と比例の議員名を記す。

1)自民 290票

  1区 山田美樹/2区 辻清人/4区 平将明/5区 若宮健嗣
  6区 越智隆雄/8区 石原伸晃/9区 菅原一秀/10区 小池百合子
  11区 下村博文/13区 鴨下一郎/14区 松島みどり/16区 大西英男   
  17区 平沢勝栄/18区 土屋正忠/19区 松本洋平/20区 木原誠二   
  22区 伊藤達也/23区 小倉将信/24区 荻生田光一/25区 井上信治

  比例
  松本文明/赤枝恒雄/秋元司/小田原潔/田畑毅

_________________________

2)公明 31票

  12区 太田昭宏
  
  比例
  高木陽介/高木美智代

_________________________

3)みんな 14票

  比例
  大熊利昭/三谷英弘

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 衆議院では、

  棄権 54人  山田宏/今村洋史
  欠席 5人  自民・3区 石原宏高/自民・比例 石原慎太郎

_________________________


 参議院で賛成した、東京選挙区と比例の議員名を記す。

1)自民 110票

  武見敬三/丸川珠代/中川雅治

  比例
  山東昭子/橋本聖子/脇雅史/石井みどり  
  衛藤晟一/佐藤信秋/佐藤正久/藤井基之
  丸山和也/水落敏栄/山田俊男/山谷えり子
  赤石清美/石田昌宏/宇都隆史/太田房江
  片山さつき/北村経夫/木村義雄/小坂憲次
  佐藤ゆかり/高階恵美子/柘植芳文/羽生田俊
  堀内恒雄/三原じゅん子/宮本周司/渡辺美樹
_________________________

2)公明 20票

  山口那津男/竹谷とし子  

  比例
  荒木清寛/魚住裕一郎/山本香苗/谷合正明
  浜田昌良/山本博司/秋野公造/河野義博
  長沢広明/新妻秀規/平木大作/横山信一
  若松謙維

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 参議院では、

  棄権 25人  みんな・松田公太
  欠席 2人  自民・比例/ 有村治子/赤池誠章

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 「東京新聞」2013年12月14日朝刊より抜粋。
投票時の参考になれば幸いです。





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by byogakudo | 2014-11-21 17:43 | 雑録 | Comments(0)