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2016年 06月 30日

夜のB・O

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 写真は、もちろんB・Oではない。格調高く、高円寺「越後屋書店」の
脇棚である。先日の常盤新平『グラスの中の街』はここのワゴンから。

 ところで、「越後屋書店」の近く、「古書十五時の犬」を3、4回訪れたが、
空振りしている。一度は午後3時前だったから。でも5時過ぎでも、シャッター
が下りていて、支柱には「十五時の犬」のカードが貼られたまま。定休日に
引っかかったのだろうか?

[7月25日追記:
 ついに、今日「古書十五時の犬」再訪に成功!]

 ある月曜日か火曜日。空振りの後、西部古書会館前を通りかかったら、
古書展の撤収作業をしていたが、上がり口の駐車スペースに黒いベンツが
停まっている。どなたの所有であろう。「古書十五時の犬」営業日と、
古書会館のベンツ。
 この2点の謎の解明が待たれる。

 買い忘れたものがあって、夜(といっても7時半過ぎ)、コンヴィニエンス
ストアに行く。ついでに何もない、ご近所B・Oに立ち寄る。
 日が落ちてから、ひとりで外に出ることがなくなったので、落ち着きが悪い
のだが、本があるところに入れば、すんなり収まる。

 しかし、日暮れ後のB・Oには女の姿がない。中年から高年男性ばかりで、
大変失礼だが、汗臭い感じ。もっとも、探し始めると関係なくなるけれど。

 8時半前に戻ってきたら、バレエのK・K夫人から10分くらい前に電話が
あったという。Sが、
 「彼女はちょっと本屋に行っています」と伝えたら、
 「あら、それじゃ時間がかかるわね」と仰ったそうで。

 108円の『クリスティ短編全集2 白鳥の歌』と神吉拓郎『洋食セーヌ軒』、
半額の小林信彦『映画が目にしみる 増補完全版』。
 さ、今からスプレーして糊を剥がし、グラシン紙でラッパーかけなくっちゃ。





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by byogakudo | 2016-06-30 22:25 | 雑録 | Comments(0)
2016年 06月 29日

銀座レトロギャラリーMUSEEへ

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 写真は近所で。落ち着いた、堂々としてる猫。

 梅雨の晴れ間をぬう。今日から銀座レトロギャラリーMUSEEで、
古い茅ヶ崎の洋館をモチーフにした絵画展があるので。

 丸ノ内線・銀座駅から左斜めに歩く。平日の午後でも、銀座はひとが多い。
日本の人口は東京や大都市圏に集中している。他の街は知らないが、東京
の中でも過密と過疎に分離しているのではないかしら。人気(ひとけ)の薄い
住宅地からやってきたので、よけい、そう感じるのかもかもしれない。

 先だっての「旅するルイ・ヴィトン展」のおかげでハイ・ブランドに対する
偏見は少し解消されたけれど、大通りをずらりと占拠するブランド旗艦店を
見ると、銀座は、と言わず東京は、だろうか、あるいは街が、大きな駅ビルの
一種になり果てたかのようにも感じる。センスの良し悪しはあるが。
 個人商店みたような在りようは、もはや許されない。商業活動といわず生産
活動はすべて(再生産の準備である消費行為も)、大企業のヒエラルキーの
下に展開すること、と宣告されているかのように。

 大通りからひとつ入った、中くらいの幅の道沿い。60~70年代造のビルから
テナントが撤退している。見捨てられたビルが銀座のあちこちで取り壊される
のを待つ。

 そんな風景の中に、銀座レトロギャラリーMUSEEが当たり前の顔して残って
いる。ほんとは奇蹟なのに、さりげなく。

 1930年代のビルの中で、1899年に建てられたサナトリウム「南湖院(なんこ
いん)」を描いた展覧会が開かれる。平下 英理 展 「忘れえぬ景色」だ。
 時間のずれ、空間のずれ(銀座と茅ヶ崎)、二重の記憶のずれと重なりが
体験できる。記憶について考える展覧会だ。
 7月3日(日)まで開催。





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by byogakudo | 2016-06-29 22:25 | アート | Comments(0)
2016年 06月 28日

アンドリュー・ヴァクス/佐々田雅子 訳『ブロッサム』読了

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~6月27日より続く

 勝手知ったるニューヨークを離れ、インディアナにやってきた
バークは町の様子を知るために、食堂のウェイトレスで、彼の
席を受け持った女の子に声をかけ、案内してもらう。同じ食堂で
働いているのが今回のヒロイン、ブロッサム。バークを担当した
のは、おねえちゃんタイプのシンディーだ。

 ニューヨークでなくても、スパイクヒールは全盛期らしい。
 元トップレスバーにいたシンディーは、
<シームの入ったストッキング。中くらいの高さの白いスパイクヒール>
(p92)で注文を取っている。
 ブロッサムは、
<ユニフォームはシンディーと同じものだったが、この女が着ると、看護婦
 みたいに見えた。膝下まで丈のあるスカート、白いストッキング、フラット
 シューズをはき、ブラウスは首までボタンをかけている。>(p94)
と、地味に登場するけれど、あとでバークと親しくなると、俄然、スパイク
ヒールの女になる。

 町の案内係をやった後、シンディーは物語から姿を消すが、泣かせる
キャラクター設定である。
 バークの擬装はニューヨークのやり手ビジネスマンなので、どこかいい
レストランは、と尋ねる。

< 「それって二重丸の店のこと? 高級とか?」
  [略]
  「だったら、<リカード>にいかない? あたし、まだいった
 ことないけど、ほんとにいい店だって聞いてるからさ」>(p143)

 店のホステスはシンディーを値踏みして、悪い卓に案内しようとする。
バークは構わず、湖に近い卓に進む。ホステスとのやりとりを見ていた
にちがいないウェイターが、やってくる。
<修業歴が信任状になった時代に修業したような男だった。
 [略]
  「[略]何かお飲み物をお持ちいたしましょうか......シャンペンなど
 いかがでしょう?」
  「あたし、いいかな......?」
  おれはうなずいて、シンディーがそれ以上何かいうのをさえぎった。
 [略]
  シンディーはサーカスにきた子どもみたいに、まわりを見まわしていた。
 それも、はじめてきた子どものように。「わあ、すごい! きれいなお店。
 それに、店の人、あんたには丁寧だし。あたし、ほんとはシャンペン頼み
 たくなかったんだ。ていっても、好きは好きなんだけど。でも、いつも水で
 割ってあったりするじゃない」
  「ここはそんなことないだろう」
  「そうよね。だって......男の人がお酒を出してくるようなところなら、
 そんなことないもんね」>(p144~145)

 シンディーはインディアナのデイジー・ミラーにちがいない。しかし
インディアナと聞いても、主人公バークに劣らず、日本語読者は土地勘が
ない。インド林檎とカーレースしか思い浮かばないが、にも拘らず(?)、
バーク・シリーズにしては、しみじみと家族や家庭についての思いが伝わる。
ニューヨークを離れたおかげだろうか。

 また、余談の余談だが、ローレンス・ブロックでもアンドリュー・ヴァクス
でもアメリカ人は食事にお酒を飲まないときは、いつも甘い炭酸飲料を飲む
のかと驚かされていたが、ついにその伝統はブロッサムによって破られる。
 彼女はただの炭酸水を飲むのだ。アメリカ人らしくヴィタミン剤も摂る
けれど、食事時にまともなものを飲む登場人物に、やっと出会った。

     (アンドリュー・ヴァクス/佐々田雅子 訳『ブロッサム』
     ハヤカワ文庫 1996初 J)





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by byogakudo | 2016-06-28 22:18 | 読書ノート | Comments(0)
2016年 06月 27日

アンドリュー・ヴァクス/佐々田雅子 訳『ブロッサム』を読み始める

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 写真は青梅街道すぐ脇で。

 Sが先に読んでいたアンドリュー・ヴァクス/佐々田雅子 訳『ブロッサム』
に入る。これと次の『サクリファイス』でシーズン・1が終わるそうだ。連続
TVドラマなんぞ見ていると、ミステリのシリーズものの数え方にまで影響する。

 今回はニューヨークを離れるらしいが、まだインディアナへは行っていない。

 バーク・シリーズで覚えた英語が、バークのオフィス兼住まいに敷きつめ
られたアストロターフ(AstroTurf)と、出てくる女たちのほとんどが履いてる
スパイクヒール(spike heel)だ。AstroTurfはバンドエイドと同じように、
商品名が普通名詞化したのだろう。スパイクヒールとピンヒールの区別が
つかないが、<ピンヒール 英語>で引くとspike heelと出てくる。stiletto
heelというのはスパイクヒールより踵がさらに細い靴を示すのだろうか。
 どちらもママ・ウォンの店の酸辣湯と同じく、物語開始早々に登場。出張先の
インディアナでは、女たちはどんな靴を履いているだろう? 

 地下鉄や電車を使うのが、だんだん億劫になっているけれど、同乗した女性
たちの靴やファッションを見るのは、結構好きだ。面白い。
 一時期、女たちはスカートを拒絶していたようだが、近ごろはそうでもなく
なったのが、ライヴで確認できる。ファッション雑誌は見ないが、流行りものは
なんとなく分かる。たまに、すてきな組み合わせを見ることもある。

     (アンドリュー・ヴァクス/佐々田雅子 訳『ブロッサム』
     ハヤカワ文庫 1996初 J)

6月28日に続く~





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by byogakudo | 2016-06-27 21:45 | 読書ノート | Comments(3)
2016年 06月 26日

三島由紀夫『命売ります』読了

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~6月25日より続く

 なんだろう、木乃伊取りが木乃伊になるの逆パターンで、観念的には
生ける屍・木乃伊だったはずが、一周廻って、生体である木乃伊取りに
なりたがっていることに気がつく物語、とも言えるし、朱に交われば赤く
なる。かりそめの社会生活・新婚生活を演じているつもりが、いつの間
にか、生きることに汚染される方を好む自らに気がつく物語とも言えるし。

 ぶよぶよした生命の集合体である社会にうんざりして、乾いた白い骨の
ような観念の世界に生きるには死ぬしかないと分かっているけれど、そう
理解するのも生きているからで、主人公・山田羽仁男(はにお)は堂々巡り
する。

 実在する本かどうか知らないけれど、山脇源太郎『日本甲虫図鑑』を
参考にして作った自殺誘導薬を、羽仁男は飲んだ。

< 世界がこれで意味あるものに変るという予感は何もなかった。
 [略]
 世界が意味があるものに変れば、死んでも悔いないという気持と、
 世界が無意味だから、死んでもかまわないという気持とは、どこで
 折れ合うのだろうか。羽仁男にとっては、どっちみち死ぬことしか
 残っていなかった。
  そのうち、自分の周囲がゆっくりと流動体になって廻りはじめ、
 [略]
 どうしてそういう幻想が生ずるのかわからないが、何だか、ゴキブリ
 の活字で充たされた新聞のような退屈な世界が、一生けんめい、何か
 すばらしいものに化けているという努力を示していると感じられた。
 『それにしても努力が見えすぎるじゃないか』と羽仁男の心は批評して
 いた。『無意味そのものが努力しているなんて浅ましいじゃないか』>
(p76~77)
 
 三島由紀夫はアシッドを試したことがあるのかしら?

 ところで羽仁男はコピイ・ライターの筈だった。
<テレビのコマーシャルの、五色製薬の胃の薬「スッキリ」の、
 「スッキリ
  ハッキリ 
  コレッキリ
  のんだと思えばもう治る」
  などというのは彼の作品だ。>(p7)

 それなのに、
< 彼はデザイナー時代からヒッピーの連中をよく知っていた。
 彼らは「無意味」の探求者にはちがいなかったが、不可避的に
 襲ってくる無意味に直面した人間とは思えなかった。
 [略]
  つまり、羽仁男の考えは、すべてを無意味からはじめて、その上で、
 意味づけの自由に生きるという考えだった。そのためには、決して
 決して
、意味ある行動からはじめてはならなかった。まず意味ある
 行動からはじめて、挫折したり、絶望したりして、無意味に直面する
 という人間は、ただのセンチメンタリストだった。命の惜しい奴ら
 だった。>(p186~187)

 この作品において、主人公の職業は、流行りのものなら何でも構わない。
カメラマンだろうと何だろうと。しかし、最初の設定がコピイ・ライターで、
作例も出していながら、次に職業の話が出たとき、デザイナーではまずい
のじゃないか。編集担当者は気がついたとしても、三島に指摘できなかった
のだろうか? 前にも書いたけれど、『宴のあと』のヒロインの私室が六畳間
から四畳半に方違えしてしまったり、なぜ編集者はミスを伝えなかったのかと、
重箱の隅屋は思う。
 他人(ひと)のことばかり言ってるから、加藤周一の本のタイトルと章題とを
まちがえて書いたりするのだが。(訂正済み)

     (三島由紀夫『命売ります』 ちくま文庫 2015年26刷 帯 J)





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by byogakudo | 2016-06-26 20:58 | 読書ノート | Comments(2)
2016年 06月 25日

三島由紀夫『命売ります』を読み始める

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 『命売ります』は、雑誌「プレイボーイ」に1968年、掲載。
 若い"コピイ・ライター"が自殺に失敗する。要らない命なら売っちまおう、
「ライフ・フォア・セイル」と商売を始めた。

 彼の自殺の原因が、テーブルの下に落ちた夕刊を拾おうとして出現した
光景だ。

< 落ちた新聞の上で、ゴキブリがじっとしている。そして彼が手をのばすと
 同時に、そのつやつやしたマホガニー色の虫が、すごい勢いで逃げ出して、
 新聞の活字の間に紛れ込んでしまったのだ。
  彼はそれでもようよう新聞を拾い上げ、[略]拾ったページへ目をとおした。
 すると読もうとする活字がみんなゴキブリになってしまう。読もうとすると、
 その活字が、いやにテラテラした赤黒い背中を見せて逃げてしまう。>
(p7~8)
__文庫版・解説の種村季弘は、ホーフマンスタールのエッセイから構想した
のではないかと言う。わたしは、ここはサルトルかしらん?、と思ったけれど。

     (三島由紀夫『命売ります』 ちくま文庫 2015年26刷 帯 J)

6月26日に続く~

 近ごろ刊の文庫本は文字が大きくて、ほんとに助かる。加藤周一『雑種文化』
を初めて読んだのが2008年11月13日だが、8年前はまだ目が丈夫だったのか。
いまは、寝床脇に以前より明るいライトを置いているのに、文字サイズが小さ
すぎて読むのが辛い。バスの行き先も、かなり近づいて来るまで読み取れない。





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by byogakudo | 2016-06-25 20:52 | 読書ノート | Comments(2)
2016年 06月 24日

加藤周一『雑種文化_日本の小さな希望_』再読+α

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 YouTubeで見られる、憲法改正誓いの儀式
ツイッターで知った。
(>https://twitter.com/roboandmiri
>https://twitter.com/asunokaori/status/745121853845364737)

 こちらもツイッターで知った、「住民票を今いるところに移してないから投票行くのムリ」
→いまいる場所で投票する方法

(>https://twitter.com/roboandmiri
>https://twitter.com/mmmmmoustache/status/745952268982222848
>https://twitter.com/nasukob/status/745196653389320192) 

 トランプに拍手喝采する貧乏白人、EUから離れれば仕事が得られると
信じる(信じたがる?)イギリスの貧乏白人...第二次、というより第一次
世界大戦前夜を繰り返しているような退行的既視感。近代を清算して
再構築するにも、優先順位や手順があるだろうに。
 安倍晋三や日本会議・連中のいう"美しい日本"への回帰だが、彼らが
日本の近代について考えたことがあるかしら?

<戦争中の「国民精神総動員」、つまり戦争を正当化するために天皇を
 祭りあげると同時に日本文化を祭りあげるという仕事をひきうけたのは、
 主に京都の哲学者の一派と日本浪漫派の一派であった。そこで西洋の
 哲学によって訓練された方法を使って哲学者たちは、天皇制を「近代化」
 したのである。
 [略]
 いわゆる「超国家主義」そのものが舶来の道具で組みたてられる他は
 なかった。純粋日本主義者にとって不都合極まるこういう事情は、しかし
 決してあたらしいものではなく、維新前後の尊王攘夷論の発展の経過の
 うちにもすでに示されていたといえそうである。
 [略]
 伝統的な日本文化の遺産だけにたよっていては、明治の富国強兵的
 国家主義をつくりだすことさえもできなかった[略]。
 なぜならばその場合の国家の概念そのものが「先進国」で歴史的に
 つくりあげられたものであったからだ。そのとき和魂洋才ということが
 原則として通用したのは当事者の主観においてにすぎない。
 [略]
 そのときすでに輸入を必要としていたのは西洋の技術制度だけでなく、
 それによってある程度まで西洋化した社会を統一するために必要な国家
 の概念そのものであった。その後半世紀、「資本主義最後の段階としての
 帝国主義」戦争の時代に、素朴な富国強兵的国家主義を普遍化し合理化
 して「大東亜共栄圏の理論」をこしらえる必要が生じたとき、そのための
 方法がもはや国学ではどうにもならなかったのは当然であろう。果たして
 ドイツ哲学の影響をうけた京都の哲学者が「動員」され、弁証法も重宝に
 使い、ゲオポリティークも便利に応用して、用を弁じるということになった
 のである。大東亜共栄圏の理論その他は本来日本的なものであるどころか、
 いたってハイカラなものだ。伝統的な概念的枠組みだけから日本とその
 伝統的文化の世界史的使命などという考え方が出てくるわけがない。>
(p37~39『日本文化の雑種性2』)

     (加藤周一『雑種文化_日本の小さな希望_』
     講談社文庫 1975年4刷 J)





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by byogakudo | 2016-06-24 22:18 | 読書ノート | Comments(0)
2016年 06月 23日

ラフレッサ再訪/常盤新平『グラスの中の街』再読

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 一年近く前、日本橋本町4丁目「ラフレッサ」に行った。読み返してみる。
 今回も曇り日、同じように道に迷い、なんとかたどり着き、感想はまったく
変わらない。店内のTVの韓流ドラマまで同じ(ほぼ同じ時間帯に行ったので)。
 スタッフが去年は男性ひとりだったのが、今回はさらにマダムとウェイトレス
の若い女性ふたりが加わる。少しして、ひとりが「お先に失礼します」と去った。

 電話がかかってきて、ウェイトレスが近所の会社にコーヒーの出前に行く。
店には男性会社員たちが入れ替わり立ち替わり。だから人手が必要だけれど、
そんなに広くはない店内にスタッフ4人が勢揃いすると、ふっと映画『私は猫
ストーカー』の古本屋にアルバイト女性2人、古本屋夫婦の計4人が登場する
場面を思い出すが、でもこれは現実に目にするシーンなのだ。

 今日は神田方向から戻る。町並も町名もうつくしい。紺屋町交差点から
内側に入ると、「北乗物町7」や「北乗物町5」と大きな字で縦書きした、
青い琺瑯看板が店舗兼住宅の壁に掲げられている。
 鍛冶町2丁目角のお家は、入口のガラス戸が木枠で造り直してある。
建具師がいるのだ。(8月14日に続く~)

 「ラフレッサ」の辺りもこの辺も、壊して建てている音に包囲されて
いる。

 2005年10月に読んだらしい『グラスの中の街』は、どんなエッセイ
だったか忘れていた。

<私が都会的なもの、洗練されたものに惹かれるのは、田舎育ちの
 せいである。そして、東京と私が育った土地とのあいだには超え
 がたい壁があるように思われる。ただし、私の娘には、そういう
 壁はない。
  ジョン・アップダイクという作家はニューヨークのストリート・
 シーン(街の風景)を雑誌に無署名で数多く書いてきた。なぜそういう
 ものを書いたかといえば、地方から都にのぼってきた若者にとって、
 ニューヨークは驚異であり、驚異の目でニューヨークを見たからである。
 つまり、アップダイクは田舎育ちであることによって、ニューヨークを
 ニューヨーク育ちとはちがった目で見ることができたのである。その
 結果、ニューヨークの魅力の発見になった。
  私は銀座によく出かけるが、娘は銀座などに興味を持たずに、
 生まれて育った町を歩きまわっている。あるいは、私が育った仙台の
 兄のところへ遊びに行ったりする。東京に生まれて育つとはこういう
 ことかと思う。>(p228『故郷の幻影』)

     (常盤新平『グラスの中の街』 文春文庫 1987初 J)





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by byogakudo | 2016-06-23 21:07 | 雑録 | Comments(0)
2016年 06月 22日

特定秘密保護法の衆参両院本会議での投票行動一覧

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 これで三度目(?)の、"特定秘密保護法"こと"不特定秘密保護法"
あるいは"全権委任法"に賛成票を投じた衆参両院・議員名・ブラック
リストだ。彼らを引きずり落とそう。

_________________________

 参議院で賛成した、東京選挙区と比例の議員名を記す。

1)自民 110票

  武見敬三/丸川珠代/中川雅治

  比例
  山東昭子/橋本聖子/脇雅史/石井みどり  
  衛藤晟一/佐藤信秋/佐藤正久/藤井基之
  丸山和也/水落敏栄/山田俊男/山谷えり子
  赤石清美/石田昌宏/宇都隆史/太田房江
  片山さつき/北村経夫/木村義雄/小坂憲次
  佐藤ゆかり/高階恵美子/柘植芳文/羽生田俊
  堀内恒雄/三原じゅん子/宮本周司/渡辺美樹
_________________________

2)公明 20票

  山口那津男/竹谷とし子

  比例
  荒木清寛/魚住裕一郎/山本香苗/谷合正明
  浜田昌良/山本博司/秋野公造/河野義博
  長沢広明/新妻秀規/平木大作/横山信一
  若松謙維
_________________________


 なお、衆議院で全権委任法に賛成した、東京選挙区の議員名は、

1)自民 290票

  1区 山田美樹/2区 辻清人/4区 平将明/5区 若宮健嗣
  6区 越智隆雄/8区 石原伸晃/9区 菅原一秀/10区 小池百合子
  11区 下村博文/13区 鴨下一郎/14区 松島みどり/16区 大西英男   
  17区 平沢勝栄/18区 土屋正忠/19区 松本洋平/20区 木原誠二   
  22区 伊藤達也/23区 小倉将信/24区 荻生田光一/25区 井上信治

  比例
  松本文明/赤枝恒雄/秋元司/小田原潔/田畑毅
_________________________

2)公明 31票

  12区 太田昭宏
  
  比例
  高木陽介/高木美智代
_________________________

3)みんな 14票

  比例
  大熊利昭/三谷英弘
_________________________


 関連記事は、
 東京新聞 特定秘密保護法

 日本中の議員たちの投票行動が見られるPDFは、
 特定秘密保護法 国会議員の投票行動

 今日明日、どうやって食べて行くかを訴えたくても出来なくさせる
法制度の第一弾がこれだ。

 サッチャリズム、レーガノミクス、アベノミクス...政治家名を頭につけた
経済政策はすべて、貧富の差を拡大させる結果を持つ。

 羹に懲りて膾を吹くような非合理性は止めよう。安倍晋三・独裁政権を
退陣させ、いまの野党で政権を取る。役人が協力しない訳には行かなく
なるくらいの大差で政権につき、市民は政策を、こうるさくチェックする。
当選議員に任せきりにしない。
 民主主義って、そういうものではないかしら。





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by byogakudo | 2016-06-22 21:13 | 雑録 | Comments(0)
2016年 06月 21日

イーヴリン・ウォー/大久保譲 訳『卑しい肉体』読了

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 『20世紀イギリス小説 個性派セレクション5』は、イーヴリン・
ウォーだ。これを読んだら『ブライヅヘッドふたたび』に戻って、
その余勢を駆ってマックス・ビアボーム/佐々木徹 訳『ズリイカ・
ドブソン』に再挑戦、ついでにエリザベス・ボーエン/篠田綾子 訳
『ローマ歴史散歩』辺りへ飛ぶ、という読書ツアーを考えているの
だが、どうなることやら。

 もうひとつのコースもある。鹿島茂で、ほったらかしてある『蕩尽王、
パリをゆく』を読みつつ、『パリの日本人』と『パリが愛した娼婦』を
手にいれて読む、というもの。

 どちらもいつか実行するだろう、いつか。

 わたしは感傷癖ある日本人読者なので、イーヴリン・ウォーは追憶や
思いが素直に出ている、例外的な作風の『ブライヅヘッドふたたび』が
結局、いちばん好きなのではないかしら?

 イギリス式のブラック・ヒューマーは、たとえばモンティ・パイソン
には大笑いするけれど、小説の形で読んで、心から楽しんでいるかと
いうと、そうじゃない。頭で面白さは理解するけれど、身体で笑っては
いない。

 『衰亡記』や『卑しい肉体』は、むしろ今の若い人々の方がピンと
くる小説ではないか。

 時代と場所は、第一次大戦と第二次大戦との中間期のイギリス。
主人公は若い作家だが、パリから船で戻ってきた途端、税関で、
書いたばかりの自伝・原稿を取り上げられ、いわば過去を失った男
として作中を放浪する。友人たちと、どんちゃん騒ぎしながら。

 華々しい過去は主人公たちが誕生する前に終わってしまった。
未来はおぼつかない。若い連中だけでなく、大人や老人たちも
ばか騒ぎに耽る。
 現在をスピーディに消費することで、現在を過去形に押しやり、
その反作用で未来も素早く招聘されると、無意識に考えるの
だろうか。

 終わってしまっている、という感覚、あらかじめの喪失感は、今の若い人々
にとって、もはや意識にも上らない既定事項かもしれない。わたしがかつて
若い女だった頃感じていたよりもっと痛切に、世界からの解離感が感情の
基盤に刻印されていそうだ。

 コンピュータは現在の規定・インフラであり、もうそれがない世界は考え
られない。未来もじつは決定済みで、自分はこれかあれかを選ばされるだけ
の存在だと感じるのは、居心地よいものではない。これもあれもいやだった
ときの選択肢がない世界では、ばか騒ぎして乗り切ろうとした先達を思い出す
のもよいだろう。
 近代は、何度となく反復されるが、肉体である限り、完璧なコピーである
分身は存在しないのだから。
 少しちがう。大いにちがう。

     (イーヴリン・ウォー/大久保譲 訳『卑しい肉体』
     新人物往来社『20世紀イギリス小説 個性派セレクション5』
     2012初 帯 J)





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by byogakudo | 2016-06-21 23:51 | 読書ノート | Comments(0)