猫額洞の日々

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2017年 01月 31日

吉田健一『吉田健一対談集成』読了

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 おお、2017年分のひと月が終わる。老い先がますます縮小される。


 漫画家・近藤日出造との対談『やァこんにちわ』(「週間読売」
1954年11月28日号)より。

吉田 青年殉国靖国神社隊とかなんとかいうのがありますがね。
 あんなの、なにを考えてやがるんだろうな。今年は日の丸の国旗が
 定まった百年祭とかなんとかで、全国なんとかケッキせよ、というん
 でしょ。バカバカしい話ですよ。
 近藤 いくらか勉強はしてるんですね。日の丸の由来ぐらいは......。
 愛国心を買い占めたような顔をしてね。
 吉田 だれが本当の愛国者か、ということですよ。国を愛したら勉強
 しなくちゃならない。勉強してたら、あんなバカなことしてるひまが
 ないよ。二十代の身空で殉国靖国神社隊とかなんとかいうのは、よほど
 頭が悪いんだね。おそらく酒の飲み方も知らないね。飲んで醜態を演じる
 やつなんだ。
 近藤 飲めば詩吟......。
 吉田 世界で、もっとも野蛮な声楽......。
 近藤 そして剣舞がはじまる。
 吉田 五・一五でも二・二六でも、可哀そうに無学文盲だったから、
 だまされたんですからね。
 近藤 世間知らずのお人よしなんですよ。>(p48-49)


     (吉田健一『吉田健一対談集成』 講談社文芸文庫 2008初 J)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/





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by byogakudo | 2017-01-31 21:57 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 01月 30日

虎ノ門と新橋の真ん中〜神谷町

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 Sの用事につき合って、というか荷物運び兼助手未満の資格(?)で、
虎ノ門と新橋のちょうど真ん中辺りへ行く。どっちから行っても等距離。
 着くなり、どどどと用事に取りかかり、砂場にてランチ・ブレイク後、
また、どどど。

 予想より早く終わって、赤羽橋方面から帰ろうかと歩く。あちこちで
普請中だが、古い煉瓦様モダーニズム建築がある。近づいてみたら、慈恵
医大の旧館だった。女子医大の旧館と同じころの様式だろう。
 いつだったか、森ビルの何号館かから道を隔てて眺めた慈恵医大の奥が、
こうなっているのか。

 芝公園。歩道橋を渡る途中で、目の下の墓地で日向ぼっこしている猫たち。
今日は暖かくて、猫たちにはいい。ヒトには、温度変化がきつ過ぎる。

 再開発手前の、見覚えのある、静かな神谷町界隈。お茶を飲んで、
なんだかこのまま立ち上がれないような気になりかけて、やっと
地下鉄に乗る。



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/





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by byogakudo | 2017-01-30 20:53 | 雑録 | Comments(0)
2017年 01月 29日

(4)河盛好蔵『回想の本棚』再読を始める

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~2008年3月11日より続く

 いちおう懸念して検索してみた。2008年の春浅いころ、
読んでいる。やっぱりか、という思い。衝撃の忘却力だ。
 どこに反応しているかを見てみる。おんなじ箇所。死んでも
治りそうにない性格らしい。

 明日は一日中、用事がある。早く寝なくっちゃ、と思いながら
ぐずぐずしてるのだろう。


     (河盛好蔵『回想の本棚』 中公文庫 1982初 J)

2月9日に続く~



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/





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by byogakudo | 2017-01-29 20:33 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 01月 28日

(2)鮎川哲也『サムソンの犯罪』再読・読了

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 楽しく読み終わった後で、もしかしてと検索・確認してみたらば、
2010年5月29日に、既に読んでいるじゃないか。

 引用しようと思った箇所も似たり寄ったり、アシモフ『黒後家
蜘蛛の会』を思い出すこともおんなじ、そして、しっかり/すっかり
忘れきっていた。
 我ながら凄いなあ。

 今回の付箋は、以下のページに挟んでいた。

<人殺しのあった家はいやだといって家政婦がいきたがらぬもの
 だから、それに代わって学生アルバイト斡旋協同組合連合会東京
 事務局城南支部より派遣されたのだそうだ。>
(p40『中国屏風』)

< 駅の西口の改札口をぬけると、商店街をとおって淀橋の浄水場へ
 むかった。[略]
  二、三年前に廃止された浄水場の更地に、あたらしくビルや高層
 ホテルが建ったものの、場所によっては空地として放置されたところが
 ある。桐山吾平の小さな住居は、この空地に、三方をかこまれて孤立
 した形で建っていた。>(p79『割れた電球』)

__この風景描写を読んだときに、やや既視感を覚えたが、それ以上
なにも思い出さず、疑念も抱かず読み進んだのだ。この短篇集では、
訪ねて行った先のドアは大抵、ロックされてない。訪問者は試しにノブ
を握ってみて、死体に遭遇する。

< 三田尻は日劇のそばの階段から地下におりると、地下鉄銀座駅で
 荻窪ゆきの電車に乗り、中野坂上で乗りかえて終点の方南町で下車
 した。そして後も見ずに地上にでて、すぐ鼻の先のマンションに入った。>
(p144『菊香る』)

< 編集者の鈴木千吉は池上線の池上駅で下車すると、くず餅屋がならぶ
 商店街をぬけて、本門寺(ほんもんじ)のほうへ向かって少し急ぎ足で歩いて
 行った。>(p185『屍衣を着たドンホァン』)

__池上線・全沿線踏破、やってない。

< 「[略]この大時計というのはグランドファーザーズ・クロックと称する
 大型の振り子式時計で、[略]。
 柱にぶるさげるんじゃなくて、壁をバックに、床の上に立てておくんだ」
  ことわっておくけれど、ぶるさげるとはぶらさげるの謂(いい)である。
 この法律家は東京生まれの下町育ちだから、ときどき妙な日本語を
 つかう。>(p191『屍衣を着たドンホァン』)

< 小村のマンションは渋谷区代官山のはずれにある。七階建てのお伽噺に
 でてくるような屋根のとがった建物で、彼の部屋は一階のいちばん奥まった
 一画であった。窓をあけると、目の下を山手線がとおっている。>
(p242『走れ俊平』)

__(部屋にはもちろん死体があるのだが)訪問者は、このドアの錠が下りて
いるかどうか試さない、珍しいケース。

 『黒後家蜘蛛の会』ではレストランで会食しながら謎が提出され、会員たちが
それぞれの解釈を述べ、最後に神のごときウェイターにより、正解が語られる
パターンだ。
 『サムソンの犯罪』では、そこまでの形式化はされず、名探偵・バーテンダー
の推理が、いつも最後に来るとは限らない。

 前者はレストランが舞台であり、メンバーも生活には困らない層。犯罪とも
いえない"謎"が多いので、読後感は和やか・穏やかだ。
 後者は、殺されるのはプチブル層、犯人視されるのは、あまり豊かではない
人々(が多い)、調査に当るのが貧乏・私立探偵というパターン(だが、いっこう
に暗くない)なので、読後感がかなり違うことに今回、気がつく。

 前作『太鼓叩きはなぜ笑う』も読もうかしら。わたしが推理しなくても名探偵
が説明してくれるし、何より湿気がなくて楽しい。

 
     (鮎川哲也『サムソンの犯罪』 創元推理文庫 2003初 J)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/





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by byogakudo | 2017-01-28 22:16 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 01月 27日

本郷三丁目~湯島~外神田/秋葉原~下谷(’17/01/26)

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 昨日(1月26日)は一昨日(25日)より更にましな気温だったので
(今日は”まし”を通り越しているが)、大江戸線で本郷三丁目・
下車、湯島の方向にちょっと歩いてと、予定では、そうなっていた。

 「旧湯島 新花町(しんはなちょう)」など、界隈に地名の歴史を
記した案内がある。大きな道沿いはビルだけれど、内側に入ると、
木造平屋や木造モルタル二階屋が残る。庭ともいえない、道路に
直面した家屋とのすき間に、大木が夏みかんを実らせていたり。

 神田に向っているつもりが、大通りの地下鉄駅名は、末広町だ。
先に続くは秋葉原ではないか。
 また内側に入る。千代田区外神田5丁目、山木自動車の方から
声をかけられる。
 「久保田博二って写真家、知ってる、マグナムの?
 分らない、そうか、もう歳だからなあ。
 じゃ、本城直季は、ジオラマ写真の?」
 二人とも、この辺りのひと(か、住んでいた)という話だった。

 まだうろうろする。前に入り込んだ、高架下のアルティザン街、
2K540に入り込み、元の道筋に戻って昼食。

 コーヒーが飲みたいというSを誘って地下鉄。稲荷町・下車、
Coffeeヤマに行く前に、小山生菓子店へ。大福を買う。
 90年続いているそうだ。合天井が白くペイントされ、白い
ガラスに覆われたペンダントライトが下がる。壁付けの大きな
鏡もあり、ちょっと、むかしの床屋さんも思い出す。ある時代の
室内だ。

 ヤマ、健在! カウンター席の常連らしき男性と入れ替わりに
わたしたちが入り、しばらくすると中高年・女性の二人連れ。
 ココアを頼んだ高齢の女性が、涼しく甘い東京弁を響かせる。
 「治験っていうけど、人体実験じゃないの、いやよ」
 東京弁、健在!

 さらに佐竹商店街までノシて、鳥越煎餅 加賀屋(品川巻)と
佐藤精肉店。目前のおかず横丁までの元気はなく、やっと新御徒町
から帰る。
 今日はヘタばって過ごす。



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/





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by byogakudo | 2017-01-27 20:53 | 雑録 | Comments(0)
2017年 01月 26日

(4)久生十蘭『久生十蘭「従軍日記」』ほぼ読了+荻窪散歩('17/01/25)

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~1月24日より続く

 戦争は国家が自国民を人質にとることで起きる。人質にされた
側は反抗すれば殺される(少なくとも不利益になる)と理解する
ので、あきらめて大人しく国家の暴力に従う。不本意ながら従う
のは面白くない。だから、頭の中で合理化する。

 すばらしい国なんだ、我々はすばらしい国民なんだ、だから国家に
従って行こう、他国との戦争は、やつらは醜悪なのだから襲って当然、
こちらが劣勢になっても、いや、このすばらしい国家が我々を率いて
いるのだから、我々はいつか勝つのだ等々、国民のほぼ全員が洗脳され
ているので、個人と国家という抽象的な機構(母国!)との間に齟齬は
来さない。敗北の日まで、蜜月は続く。

 より小規模な閉鎖状況であれば、途中で、自分がストックホルム症候群
に陥っていると自覚する瞬間もあるだろうが、お隣もその隣もと、同調の
渦の中にいると、なかなか気づけない。

 久生十蘭は折角、南方に従軍して来たのだからと、前線の視察を志願する。
 第四章から第八章まで、前線基地での日記である。着いた翌晩から空襲だ。
防空壕に避難しなければならない。壕の中で隣の兵士と同じ恐怖を体感する。
脅えながらも、まるでシェル・ショック中毒みたように、次の前線に赴く。
 電信兵が告げる敵機の降下角度が、直接「鉤括弧」で記されるのが効果的
だが、角度とか何機襲来とかは軍の記録に残されるのかしら、それを翌日に
でも見せてもらって、"従軍日記"に書いたのだろうか?

 そんな感想を抱きながら読んでいたら、ふっと、国家神道に洗脳された
ストックホルム症候群、と浮かんでくる。安倍・でんでん・晋三の憧れの
国家形態...。


     (久生十蘭『『久生十蘭「従軍日記」』 講談社文庫 2012初 帯 J)


 昨日(1月25日)は一昨日よりは少しましな気温だったので、近場、
荻窪まで地下鉄で行き、大田黒公園辺りからささまに北上しようと。

 荻外荘の公園部分に廻ってみる。建物部分はまだ入れない。公開
準備中だ。「防空壕の場所をご存じの方、情報を提供ください」と
掲示あり。

 ささま書店の外で、鮎川哲也『サムソンの犯罪』(創元推理文庫)、
河盛好蔵『回想の本棚』(中公文庫)。中で、鹿島茂『文学的パリ
ガイド』(中公文庫)、『日本探偵小説全集8 久生十蘭集』(創元
推理文庫)、吉田健一『旅の時間』+『吉田健一対談集成』(講談社
文芸文庫)、ジャン=ルネ・ユグナン『荒れた海辺』(筑摩書房)、
ピンチョン『ヴァインランド』(河出書房新社)。



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/





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by byogakudo | 2017-01-26 21:26 | 読書ノート | Comments(1)
2017年 01月 25日

鈴木創士『文楽かんげき日誌 「死と人形」』

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 年初の現代思潮新社コラムに続く、2017年最初の鈴木創士氏
『文楽かんげき日誌 「死と人形」』
 人(ひと)と人形(ひとがた/にんぎょう)との関係、あるいは
生と死のあわい。





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by byogakudo | 2017-01-25 19:42 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 01月 24日

(3)久生十蘭『久生十蘭「従軍日記」』第二章・読了

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~1月23日より続く

 『第二章 サランガン湖畔
(自 昭和18=1943年4月22日/至 昭和18=1943年6月1日)。
第一章の沈滞ぶりから一変。俄然、面白くなる。

 涼しい山間の地、サランガンに移って、熱帯性・懶惰症候群から
回復するかと思ったら、伏兵あり。久生十蘭は、植民地症候群みた
ような、占領地の長官に見込まれてしまう。

 遠く日本から離れて過ごす長官は、さみしがりやのニッポン男児。
近代そのもののような男である。

 内地から滞在に来てくれた日本人というだけで嬉しいのに、"久生十蘭"
というネームヴァリュー付きの阿倍正雄氏と知り合えたのだ。長官は十蘭
のために、ありとあらゆる歓迎興行を催す。第一章の終わりで、ヒトラー
誕生日に開校する独逸人小学校のオープニングに、十蘭が仏蘭西語で祝辞
を述べることを酔った勢いで引き受けたのが、つき合いの始まりだ。

 囲っている芸者を着飾らせて見せびらかす田舎代議士にも似て、長官は
様々なレセプションを催し、彼の支配地をあちこち案内し、自分は名士と
親しいのだと、部下や占領地の人々に知らしめる。と同時に、傲慢な振舞、
過剰な接待をすることで、十蘭に自分の権力を見せつける。

 いつも過剰で、病的な焦燥感にあふれる、長官とのスラップスティック
な交流の様子は、ぜひ本文で。

<君のためならなんでもしてやる、とか、おれのものはみな君にやる
 とかとたびたびくりかえす。この異常な友情をどう受けとめていいか
 わからずマゴマゴす。これがもし直率というならわれわれの世界に
 ないことで応対に苦しむなり。>(p148)

 長官は、やたらと久生十蘭に身体的接触(手を握り、肩を抱くようだ)
をしてくる。十蘭は閉口するが、彼の親切のおかげを蒙っていると自覚
するので、邪険にもできず、ずるずる、つき合う。せっかく涼しい湖畔の
地に来たのに、昼間は視察と見学に追われ、夜は不眠症の長官とのビリ
ヤードに費やされ、仕事は月末にやっと、まとめて書く。

 長官は、どう見てもホモ・ソーシャルの域を越えて、ホモ・セクシュアル
と思えるが(本人は無自覚の様子)、久生十蘭は(感じていても)この言葉
を日記に記さない。名づけることでそれを実在させると、無意識に分っている
からだろうか。
 
 日記中の自称は"おれ"、他人(ひと)から呼ばれるときの呼称は"久生さん"
と書かれる。久生十蘭の中で"阿倍正雄"は、先祖の霊の守護を願うとき、
くらいにしか現れないのではないかしら。このアイデンティフィケーションは、
さすが久生十蘭、面白い。


     (久生十蘭『『久生十蘭「従軍日記」』 講談社文庫 2012初 帯 J)

1月26日に続く~



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/





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by byogakudo | 2017-01-24 21:44 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 01月 23日

(2)久生十蘭『久生十蘭「従軍日記」』第一章・読了

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~1月22日より続く

 この日記を書いた頃(1943年)、久生十蘭は40歳くらい。
徴兵される年齢ではなかったとしても、"従軍"したのは生活上
の理由でもあったのかと、巻末の小林真二『解題__もっと
本書を楽しむために』を急いで読んでみた。

 第二次大戦中の、原稿料で生活する作家たちは、大政翼賛会に
属さないと、何か書いても発表する場が実質的になかったのだろう。
こういう基本的なことまで書いておいて欲しいと思うのは、こちらが
無知だからに過ぎないけれど、荷風みたような金利生活者でない限り、
原稿料生活者の仕事場は大政翼賛会絡みにならざるを得ない。
 その延長での"従軍"なのだろう。軍の側はプロパガンダを望み、
作家たちは取材活動として(あるいは愛国の念に燃えて?)占領地や、
もっと先、前線まで行く。

 第一章で爪哇(ジャワ)に着いた久生十蘭は、暑さにヤラれたのかしら、
本人も呆れるほど怠惰な日々を過ごす。これがあの針葉樹みたような
文体の久生十蘭のオフかと思うと、到底信じられない、ダルな毎日だ。
 作品を書くどころか日記を書くのが精一杯。連日、麻雀、飲酒、買春、
水浴、昼寝。(7月2日に少し続く~)

 少し生き生きしたものが伝わってくるのは、街で買物をするときだけだ。
20歳若い妻が喜びそうな、化粧品や腕時計や服を見つけては、いそいそと
お買物してる。ついでに、すてきな自分用の腕時計もやはり買う。文章の
センスだけでなく、生活全般の趣味がよさそう。1943年当時、内地には、
もうお洒落で楽しい品物がなくなっていたのかしら。無知は不便だ。

 女の服飾品についても判断できる日本の男が、戦前、どれくらいいたのか?
鷗外は娘・茉莉のために服を選んでやったし、渡辺紳一郎も奥さんの帯を彼の
センスで選んだ。それに続く、久生十蘭。他にもいるだろうが、日本文学に無知
なので。

 涼しい山中の湖畔、サランガンに行って、久生十蘭はようやく仕事をする
心身に戻れそうである。


     (久生十蘭『『久生十蘭「従軍日記」』 講談社文庫 2012初 帯 J)

1月24日に続く~



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by byogakudo | 2017-01-23 22:11 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 01月 22日

(1)久生十蘭『久生十蘭「従軍日記」』を読み始める

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 写真は善福寺川緑地のプラタナス。今日もこの近くを歩いた。

 昨夜から久生十蘭『『久生十蘭「従軍日記」』を読み始める。
この後に、一ノ瀬俊也『明治・大正・昭和 軍隊マニュアル 人は
なぜ戦場へ行ったか』を読めば、作家と普通の人々との従軍に
対する姿勢の違いなり何なり、わかるかもしれない。
 戦前の日本の男は徴兵制があるから、男は何らかの形で戦争
に行くものだと、みんな諦念さえ自覚せずに、行っていたのかも
しれない。

 『第一章 日本・爪哇(ジャワ)
 (自 昭和18=1943年2月24日/至 昭和18=1943年4月22日)
 __ジャカルタ、ボゴール、ジョクジャ見物__』を読み出した
ばかりだが、日記らしい日記、記録文が続く。

 東京から飛行機で福岡、台北へ。台北からマニラまでの軍用機が
なかなか飛ばず、待機にうんざりしている。
 やっとマニラに着く。
<戦前は一流のアパート・ホテル>(p32)に泊まることになり、白服に
着替えて街を案内してもらう。
< 靴を磨かせ、生きかえったような気持になる。
  本式にホテルで食事をしたかったのだが、>(p33)日本人の案内者が、
そういう趣味のひとではなかった。
<女は[略]身体の格好はいいが顔立の美しいものは居らず、要するに
 土人面なり。ただ一人混血児だけは美しかった。>(p33)

 "土人"はこういう風に使われる言葉だ。沖縄に派遣された機動隊員は、
沖縄の人々を馬鹿にする言葉を吐いたのであり、それを擁護した連中は、
沖縄の人々は日本人ではない、馬鹿にしてよい存在だと思っていることを
自ら証明したのだ。
 わたしにとって日本人とは、日本語を母語として生きる人々を指す。米語を
母語とすればアメリカ人、英語を母語とするイギリス人、何人(なにじん)で
あるとは、それ以上の意味を持たない。
 わたしは黄色人種に属する東アジア人であり、雑種文化圏に生きる日系
日本人だ。"日本人"という純粋な血筋は存在しない。

 本文に戻る。久生十蘭は久しぶりに"街"の生活に戻って喜んでいる
のが分る。占領下ではあるが戦場ではない。だから街行く女たちに美を
求める。

 マニラからメナド(ラングアン)へ行く。そこで椰子の葉に包まれた
弁当を開く。
<納豆のつととよく似た形に包んだ椰子の葉のつとの中に鶏肉薄切の
 ソーテ、鮪、ゆで玉子二つ、むすび三つ、大根漬、それに青い小さな
 レモンが添えてある。心づかい凡ならず、親切な心がこもった仕方で
 ある。[略]
 昨夜、部屋のきたなさや、なじみのなさだけで不快を去り得なかった
 おれの心情を悔恨した。みじめなもの不潔さなど、表面的なものだけで
 すぐものの価値をきめ、その裏のこういう心づかいと見る目にも美しい
 手並みと風趣をもっている土人のよさを見抜けなかったのは浅薄である。>
(p39)


     (久生十蘭『『久生十蘭「従軍日記」』 講談社文庫 2012初 帯 J)

~1月23日に続く~



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by byogakudo | 2017-01-22 20:44 | 読書ノート | Comments(0)