猫額洞の日々

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2017年 04月 19日

(1)立川談四楼『シャレのち曇り』半分ほど

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 他に読みかけがあるのに、つい読み出した。

 立川談志ファンのセヴンティーンが楽屋を訪れ、弟子入りを
請う。
< 「あのね坊や、落語ってな江戸っ子のものなんだ。[略]
 下町訛りと言ったらいいかな、つまり江戸弁が喋れねえと
 無理だし駄目なんだ。群馬か、うーん、ま、茨木や栃木よりは
 いくらかマシだけどなあ」
  談志は明らかに落胆していた。
  「ま、横浜がリミットだな。親父(おやっ)さんは何屋なんだ」
  「はい、大工です」
  「へえ、群馬にも大工がいるのか」
 [略]
 群馬と父親を笑われ、身を硬くするしかない。>
(p48『第一章 屈折十三年』)

 <身を硬くするしかない。>の次の行で、参議院議員になった談志
の議員会館の部屋に、談四楼の父(群馬の大工さん)が作った神棚
が吊られたエピソードに移り、ふたたび入門前の楽屋での会話に戻る。
 このジャンプ挿入が、どうも按配がよくない気がするが。

 巻末に『著者解説』があり、色川武大に書き直しを相談すると、
<「若書きのよさもあるんだよ。年を取っては書けない文章と
 いうものがね。寡聞にして、発表後に直してよくなったという
 例は知らないね。書いた時の自分を大事にしなさい」>(p350)
と、諭される。
 わたしの感じた上記の箇所と、著者が書き直したいと思った箇所が
同じであるかどうか知らないが、色川武大の最後のひとこと、いいな。


     (立川談四楼『シャレのち曇り』 PHP文芸文庫 2016初 帯 J)

4月24日に続く~



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

<学芸員ががんとは山中地方創生相も思い切ったことを言ったもんだ。
 先日の今村復興相と言い、いずれも謝る振りをしてケリ。昔は確実に
 首が飛び、内閣さえ吹っ飛んだものだが、今は誰も彼も平気の平左だね。
 こんなに世間を舐めてる政権は未曾有で、一部の人しか抗議の声を上げ
 ないのもまた未曾有なのだ。>
(https://twitter.com/Dgoutokuji/status/854165941797535744>


 昨日付け「東京新聞」朝刊4面『3・11後を生きる』欄は『「松川事件」
元被告が語る共謀罪』だ。

 阿部市次氏(93歳)は、
 1949年9月22日、26歳のとき、福島市内の共産党本部にやってきた
警察に逮捕された。
 1950年12月、福島地裁で阿部氏たち5人に死刑判決。
 1963年9月、「松川事件」被告全員の無罪が確定。
 阿部氏は無罪確定前の1959年5月に保釈されたが、10年近く拘置所に
留置されていた。

 阿部市次氏は「共謀罪」に反対する。
<「実行行為すらいらず、何にでも適用できる。反対勢力を追い落とす
 権力の横暴に歯止めがかからなくなる」
  特に気になるのが「自白」の重用だという。阿部さんたちを一審で
 死刑判決に追い込んだ「謀議」は、別件の暴行罪で逮捕された少年の
 自白を根拠にしていた。その後の裁判で自白は虚偽であったと認定
 される。
  ところが今、提出されている「共謀罪」法案には、「自首減免規定」
 も盛り込まれている。謀議に加わり、自首して情報を流した者には、
 罪を減じるという規定だ。
  「松川事件の判決は、自白はあてにならないと示した。その自白を
 重要視するのだから、時代が逆行したとしか思えない」>

 「自首減免規定」は権力側がスパイを潜入させるのに必要な措置だ。
たとえば、スパイが政権に反対する穏やかな市民運動体に参加する。
派手に仲間を煽動する。煽るだけ煽って、仲間が過激化し、頃は良し
と見極めたら自首して出る。スパイは執行猶予か何かがつき、権力側
に回収されるという仕組みである。
 風太郎の明治ものにも、この設定が出てきたが、「自首減免規定」の
使い道は、囮捜査用、これしかないだろう。火のないところで放火する
のがスパイの腕の見せ所だ。

 いいのか、こんな法律を通して? 





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by byogakudo | 2017-04-19 19:51 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 18日

大和町から阿佐谷北へ

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 近隣でありながら、あまり行ったことのない、何もないところを
歩こう。中野駅までバス。北口、中野区役所前からまた阿佐ヶ谷駅
行きバス、大和町三丁目で降りる。

 わたしは一度来たことがある。バレエのK・K夫人が当った都営
住宅の検分にお供したのだ。静かでのどかだ。いちばん近い"街"
がバスで行く中野。彼女が行く病院は新宿方面だから、さらにバス
を乗り継ぐ。図書館も近くになさそう。
 そんなこんなで彼女は辞退した。Sは今日初めて(?)ここらを
歩き、物件を見たが、見た途端、
 「あ、K・Kさん、無理」。もっと街の気配がある静かなところ
でないと。
 
 何もないといっても、こういう何もなさではないんだがな。
 歩いていると陽が出て暑くなる。身体が冬を引きずってるから、
具合が悪くなる。早稲田通りは休憩地点が期待できない。
 阿佐ヶ谷を目指す。

 中杉通りに出た。リユース/骨董店が通りに面して在った。入ってみる。
暑くて、お店の名前を確認するのを忘れてしまったけれど、使いやすい
品物が多そうだ。

 さらにJR阿佐ヶ谷駅方向に進むと、ゆたか。書房

 均一台を見ていた男性が入場し、購入。わたしたちも続く。
なつかしい古本のにおいに包まれる。紙衣(パピエ・コレ)展の
小図録(『パピエ・ア・ラ・モード』)、モノクロームの
『新信濃写真風土記 4 里のあかり』なぞ見ていると、リュック
の男性が入店、
 「こないだの『広辞林』、まだある?」と、購入。
 こちらは文庫棚から立川談四楼『シャレのち曇り』(PHP文芸文庫)。
 わたしたちが出た直後にも入っていく男性を目撃。中央線沿線には
本好きが多いのか。

 駅前のビルにある、「ニューシャドー」(ついに入った)で休憩して
電車とバスで戻る。



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-04-18 21:12 | 雑録 | Comments(0)
2017年 04月 17日

(2)ヒラリー・ウォー/法村里絵 訳『この町の誰かが』に追加

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~2015年11月27日より続く

 1年半も前に読んでて、よく覚えているものだが、今朝、
Sとわたしのベッドのマットレスを交換していて、思い出した。

 『この町の誰かが』は関係者の手記の形式でストーリーが
進む。殺された少女の母親の記録に、週に一度、毎週・木曜日
に家族のシーツを取り替える話が出てくる。母親はついでに
マットレスの天地もひっくり返す、というのだ。

 これはマットレスのへこみを緩和するのにいいが、どれくらい
の厚さ・重さのマットレスなのだろうと、気になったのだ。
 だって、うちのマットレスは厚み21cm以上ある。かなり重い。
半年に一度の天地変更が精一杯なのに、40歳前であろう母親とは
いえ、厚くて重かったら、いくらなんでもターンさせる回数を減らす
のじゃないかしら?
 それとも40歳くらいのアメリカの白人女性の体力なら、重い
マットレスだろうと平気でやってのけられることなのだろうか? 
読みながら、つくづく厚さと重さが知りたかった。
 まったく、ミステリに何を求めているのだろう。


     (ヒラリー・ウォー/法村里絵 訳『この町の誰かが』
     創元推理文庫 1999初 J)

 Sが肩が痛いのはマットレスの型くずれのせいではないか、と
いうことで交換して天地も回転させたのだが、しばらく寝てみない
と分からない。
 掛け布団の冬装備も今日で止めて、春から初夏用に替えた。
あとは、加湿器を掃除して片づけるのは、明日以降にしよう。
 一日の奮闘は一日にて足れり。



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 三宅弘弁護士 財務省の森友交渉記録は「今からでも作れる」

<――「文書はない」で終わらせては絶対にいけない、ということですね。

  財務省が「ない」と言っていることについて安倍首相が国会で「ない
 ことを証明するのは悪魔の証明だ」と言っていましたが、自分たちの
 法律上の保存義務違反を棚に上げて、あんな場面で「悪魔の証明」
 を使うのはいかがなものか。そもそもこの公文書管理法は麻生首相
 (現財務大臣)の時に作った法律ですよ。皆さん国会で笑っているし
 ねえ。

 ――公文書管理法は2009年の施行。麻生さんの前の福田康夫元首相が
 熱心だった。

  福田さんがなんとしても成立させるんだって頑張って、くだんの4条
 (意思形成過程を残す)が入ったのです。これはすごく大事で、集団的
 自衛権の行使を認める閣議決定時に、内閣法制局が「意見なし」とした
 件で、その経緯に関わる意思決定文書を法制局長官は「ない」とした。
 しかし、情報公開・個人情報保護審査会は、次長レベルで上がってきた
 想定問答を「意思決定の経緯を残すもの」だとして公文書だと答申した
 のです。こうした経過を知っていれば、首相は「悪魔の証明」なんて
 言えないはずです。>





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by byogakudo | 2017-04-17 15:45 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 16日

フレドリック・ブラウン/向後英一 訳『悪夢の五日間』読了

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 リライトされてない大人向けの『ロビンソン・クルーソー』を読んだ
とき、収支決算書みたいな小説だと思った。
 無人島に漂着した主人公は生き延びるために計画を立て実行する。
実行の過程で修正が施される。他者を発見し、小さな共同体を営んで
いたある日、本国の船に発見され、帰還が叶う。

 『ロビンソン・クルーソー』は、このプロセスを淡々と描くだけで、
主人公は船の難破や漂流で特にショックを受けた様子もないし、漂着
したら、脅えたり悲嘆に暮れたりする閑もなく、せっせと作業を始める。
効率の話かと思うくらい、プロテスタントの倫理を生きる主人公だなあと、
思った(と記憶する)が、フレドリック・ブラウン『悪夢の五日間』の
主人公、ロイド・ジョンソンも、ロビンソン・クルーソーの末裔だ。

 フェニックスで投資相談業の会社を共同経営する主人公が帰宅したら、
妻がいない。誘拐犯からの身代金請求書が机上にあった。猶予は週末を
挟んで5日間、25.000ドルである。
 街では最近、誘拐事件が2件続いていた。プチブル家庭の妻が誘拐され、
警察に相談した方は殺され、黙って身代金を払った方は無事だった。
 主人公、ロイド・ジョンソンはショックで倒れたりせず、悩む閑もなく、
せっせとお金の作り方を実行してゆく。家を売っていくら、株を売って
いくら、といった按配に能率よく、お金をこしらえる。
 情報力の高い犯人は、被害者が払える可能性の中での最高額を提示して
いる。加害者も被害者も効率の鬼なのか。

 ロビンソン・クルーソーよりは物思う主人公だ(と思う)が、馬力を
かけて問題を解決してゆく姿勢は、似ている。
 スポーティなミステリ。


     (フレドリック・ブラウン/向後英一 訳『悪夢の五日間』
     創元推理文庫 1967初 J)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 シリア、アサド政権が化学兵器を使用したという証拠も示さず、
たとえ形だけのものにせよ、国連での討議もなくシリアを襲い、
アフガニスタンには核兵器に準ずるMOABを投下するトランプと、
それを真っ先に称賛する安倍晋三。
 気違いに刃物、トランプと金正恩に核ミサイル。

 偽ニュースと確証バイアス by 藻谷浩介・日本総合研究所主席研究員





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by byogakudo | 2017-04-16 21:24 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 15日

台東区元浅草2丁目辺り(2017/04/14)

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 毎日のように出歩く。毎日のように近所歩きが続く。西の東京の
風景に食傷して、昨日は西新宿三丁目から地下鉄・大江戸線に乗り、
新御徒町・下車。

 下谷神社の方へ、Coffeeヤマを目指す。きれいなトタン板の建物に
目を奪われて、つい右側に寄ったら道を間違える。A1から出てすぐ
左折、まっすぐ進めばヤマだった。
 でも、こんなにきれいな町なんだもの、迷ってうろつくのが真骨頂。

 ヤマでアイスコーヒーとトースト(お昼がまだだった)。トースト
に蜂蜜も塗った方がいい?と聞かれ、お願いする。トーストも林檎の
入った小さなサラダも、やさしくおいしい。カウンター席からは野球
の話(ジャイアンツ戦)が聞こえる、Coffeeヤマの午後。

 下谷神社に、またアヒルがいた。結構、高齢みたいだ。まるで猫の
ような気配で水のバケツの隣に羽をたたんで坐り込む。

 おかず横丁を目指してさまよう。さまようってほどではない距離と
地理だけれど、よそ者としては、さまよう気分。

 台東区元浅草2丁目7の辺り、気が狂いそうにうつくしい。東京に
まだ、すきまが残っている。いずれ遠からぬうちにすきまは埋め尽く
され、記憶をとどめるよすがも喪われるだろうが、でもまだ、無駄で
不思議な、贅沢な場所にぶつかる。

 写真上は大通りに面したビルの一部。
 手前は薄暗い駐車場、芝居が始まる前の観客席のようだ。奥、正面は
白い外壁、上手にトタン板の壁。まるで強烈なフラッドライトのような
外光を蓄えた奥の一郭だ。下手はどうなっているのかと、舞台を眺める
ように感動して見入る、街角の演劇的空間だ。

 すてきに錆びたトタン板で三方を囲んだ駐車場。屋根とトタン板の壁の
間にすきまがある、葭簀張りの小屋の記憶に連なる場所。

 東の東京はうつくしい。いまさら無理と分かっていても、来てしまうと、
ここで最晩年が過ごせたらなあと熱望する瞬間がある。
 ここらの集合住宅に部屋を借りて、食べるものは佐竹商店街か、おかず
横丁。本は通信販売と、着るものは新高円寺の古着屋で手に入れるから、
そのついでに古本屋に行く。ここらに住めば大川は近いし、人形町や銀座
も近い。あ、頼れる接骨院も探さなきゃと、妄想が瞬時に脳内を巡る。

 おかず横丁、入舟や。相変わらず、宝石箱のようにうつくしいショー
ウィンドー。
  "入舟やで朝食を"って浮かんだけど、あまりにもそのままである。

 おかず横丁の近くに工場跡を改装したショップ、SyuRoがあった。
蔵前や門前仲町と同じように、若者(?)が東を目指す運動の一端だろう。
角地に建つので両側を広く開けて風が通る。天井が高く、中二階みたような
事務所スペースもある。モノが見やすい、気持よいレイアウトだ。
 
 入舟やさんのご主人からお話を伺う。おかず横丁は昭和2(1927)年、
関東大震災後にできた商店街で、戦火に遭わなかった。入舟やさんは
昭和10(1935)年に開業、ご主人は昭和13(1938)年にここで生まれ、
ここで育ち、ここで仕事を続ける。
 「同級生はほとんどサラリーマンになって、別のところに行っちゃった。
先輩はひとりかふたり、残っているけどね」
 「子どもも跡を継がないしね、マンション暮らしに慣れちゃうと、
こういう__と、向かいのお店の幅や奥行きを示し__むかしの家は
全部この寸法でできてたから、狭いとこに5、6人も一緒に住んでたんだ」

 わたしたちが中野新橋近くの商店街で古本屋をやっていたと言うと、
 「ここにも2軒、本屋があったんだよ。昭和50(1975)年には消えたけど」

 川島商店街と同じように何かイヴェントがあると、webで知るらしく、
ふだん人気(ひとけ)のない商店街に、どこからか人が大勢集まるそうで、
コンスタントにひとが流れている商店街というと、高円寺・阿佐ヶ谷くらい
しか、わたしは知らない。

 高円寺はむかしから、よそからやってきた妙な風体の若い衆も受け入れる
風土だったので、小さな間口のむかし風店舗を彼らに貸すことも可能だった
のだろう。土地の記憶を活かした再開発は不可能ではない筈だが、土建屋
文化は根強く、目先の儲けが何よりも優先される。後は野となれで、原発も
共謀罪も、世界に先駆けるトランプ支持も、何もかも...。

呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-04-15 21:40 | 雑録 | Comments(2)
2017年 04月 14日

久生十蘭『久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集』読了

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 久生十蘭は男っぽい作家だ。男の中の男って感じもする。
男っぽさの中でも特に男っぽい作品を集めた、印象の短篇集だ。
 怪談であれ、我慢比べというか痩せ我慢比べの物語であれ、
主人公たちも記述の調子も、タフでクールだ。

 『生霊』では、絵描きが山奥にスケッチに行く。村人から去年、
戦死した男(彼も絵描き)にそっくり、生き写しだと言われる。
山村では、最初のお盆に迎え火を跨いで家に入ってくる者が新仏
(にいぼとけ)とされている。
 家に残された老人たちのために、新仏役を演じてくれないかと、
戦死者の妹(彼女も絵描き)から頼まれる。
 その前段階で、妹と絵描きとが、互いに相手を狐が化けている
のではないかと疑い合う、コミカルなシーンが続く。のどかな山村
風景と見るには、なんだか、ちぐはぐな会話のトーンである。
 絵描きは成り行きに従って(逆らわない!)、引き受ける。
 形だけ、死者を演じているつもりでいたが、ペルソナは身体に浸潤
する。演じているうちに、死に際の死者の記憶さえ、我がものに感じる
のである。ペルソナの物語であろうか。
 また、マレビトである絵描きの男(生者)、山に暮らす絵描きの女
(生者)、女の兄である絵描きの男(異郷で死んだ)の三人が、時空を
超えてメビウスの環に似た三角形を描く話とも思える。

 "男っぽい"というなら、『南部の鼻曲り』や漂流譚の『藤九郎の島』、
『美国横断鉄路』辺りを取り上げるべきだったかしら。つい、怪談に
引っかかってしまう。ほんとにかっこいいなあ。


     (久生十蘭『久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集』
     河出文庫 2010初 J)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-04-14 21:50 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 13日

(3)邦枝完二『瓦斯燈時代』に追加

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~3月3日に追加

 邦枝完二の娘・木村梢がエッセイに書いていた話、
<若いころの邦枝完二と友人たちが牛屋に行った。
 鍋の水はとっくに煮立っているのに、ネギもシラタキも
 あるのに、肝心の牛肉がない。そこで、小島政二郎だった
 か誰かが、その状況にぴったりな、ことわざか歌舞伎の
 台詞だかをもじった地口を即座に口にした>、
その地口を昨夜、唐突に思い出した。

 「火を見て煮ざるは牛なきなり」だ! 
 ああ、よかった、思い出せた。疲れ果てて、それでも寝る前には
何かしら目を通さなければならないので、ノエル・カレフ『その子
を殺すな』を退屈しながら読み(先が見えすぎてメゲている)、
『佐藤春夫集 夢を築く人々』をぱらぱらして諦めをつけ、寝よう
とした刹那、ひらめいた。
 記憶は失われるんじゃなくて、思い出せないだけだ。折り畳まれ、
襞の中に圧縮されて存在する記憶が、何かの折りに浮上する。



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第4回ゲスト 山本太郎(前編)

室井 でも、日本は本当にやばい。共謀罪が閣議決定されたし、
 自民党は今国会で共謀罪を成立させるつもりなんでしょ? 共謀罪で
 徹底的に攻めてください! これで倒せそうですか?

 山本 残念ながら共謀罪では倒せないです。共謀罪成立を止める
 ことすら難しいのが国会のパワーバランスの現状ですから。共謀罪に
 関してはまだ国民の興味や反応が弱いですね。「テロに関係する」と
 言うハッタリで思考停止したのも大きいですし、「過去に3回、廃案に
 なっているんですよ」というところから説明するには、時間が掛かる。
 長い説明はみんな聞きたくない。工夫が必要と考えてます。街頭などの
 国会外でも説明して、なんとなく広がったかな、と思ったときには、もう
 法案が通っているというのが今までのパターン、安倍一強の現実です。
 その一方で、森友問題のように、「国民の財産を、タダ同然でオトモダチに
 くれてやる」というわかりやすい構図の事件、お金に関する事の方が人々は
 関心を持つし、すぐにイラッと反応する人が多い様に感じます。>


 内閣も役人も、記録保存に関心がない。
 公文書の管理に関して、

<秘密指定期間が30年以下の特定秘密を記した文書の保存期間が、
 秘密指定期間より短い場合、
 公文書管理法に基づき廃棄される可能性があるが、
 政府は何の手立ても講じるつもりがない>
と答える。

 秘密指定が通算30年、保存期間が20年の公文書は、秘密指定された
まま、それがどんな内容の秘密であったか国民に知らされることなく、
20年で廃棄される可能性がある。

<歴史的資料として重要な公文書は国立文書館などに移管され、
 それ以外は首相の同意を得た上で廃棄する手続を踏むので、
 現時点で何らかの特別な制度が必要とは考えていない>
というのが、内閣審議官の答えである。

 歴史の審判には到底耐えられない、と内心で自覚している(が、それを
認めたがらない)内閣と役人どもの群れなので、証拠書類はせっせと焼却・
削除に励む。死人に口なし、無公文書は何も語らず。





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by byogakudo | 2017-04-13 18:02 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 12日

(2)笠信太郎『なくてななくせ』読了

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~3月30日より続く

 1964年から1966年にかけて書かれたエッセイであるが、

< 勲等に至っては数年前、ずいぶん反対もあったのに、そして
 それを復活した手続はどうだったかというと、新しい法律にも
 よらず、すこぶる疑問のある中を、閣議決定ということで強引に
 やってのけられたものでしたが、その勲等の等級を定めるのに
 何か新しく合理的な方法が発見されたわけでもありません。
  いうまでもないことながら、位階や勲等は、文化勲章とか、
 藍綬褒章(らんじゅほうしょう)のような特定の文化的な寄与とか、
 産業上の功績とかを表彰するものとは、まるで違った性質のもの
 であります。なにぶん、前者は、人間の等級をきめるようなことに
 なるのですから。
  そこで、勲等も位階と同様に戦後はすこぶる遠慮がちな姿勢で
 始められました。はじめは八十歳以上の人だけに出しました。
 これなら文句はあるまいというやり方のようでした。それが次には
 七十五歳以上になり、こんどは七十歳以上になりました。足音を
 立てないで歩くというやり方のようです。次は、そして、そのまた
 次は、どういうことになりますか。
  これら一切のことが、デモクラシーを打樹てようと国民すべてが
 決意した戦後の出来事だということは、いかに、段々畑式の社会
 のイメージが、その頭の中から消え去らないかということを示して
 いる、といって差支えありますまい。>
(p241『はげしい人間の「対流」』『第八章 社会のくせ』)

 勲等が<閣議決定という>手法で復活したのは池田内閣のときだ。
"閣議決定"は、自民党政権の伝統芸能として長く継承されている、
という証明だろう。

 近頃は<足音を立てないで歩く>どころか、足音高く、鼻息荒く、
横柄に振舞ってもかまわないという認識が、安倍晋三・独裁政権下の
閣僚、自民党議員・公明党議員、官僚、等々の段々畑ヒエラルキーに
蔓延している。

 明治維新でいきなり四民平等と言われたって、支配されるシステムに
慣れた(新しい日本国)国民は、市民同士で横につながる関係をつくり
上げようとはしなかった。願った人々は少しいたけれど、手をつなぐべき
横からは剣呑視され無視され、段々畑の低層から殺された。
 敗戦後、またしても他者から自由と平等を鼓吹されたが、独立した個人
の横断的つながりは、なかなかできなかったまま21世紀になったが。


     (笠信太郎『なくてななくせ』 朝日文庫 1987初 J)



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

 「私人は喚問しながら首相夫人は」識者が語る官邸の暴走

杉田敦・法政大教授 森友学園の籠池(かごいけ)泰典前理事長は
 私人ですが、国会で証人喚問されました。ところが公人たる政治家や、
 官僚は、野党の要求にもかかわらず誰ひとり証人喚問されていない。

 長谷部恭男・早稲田大教授 国政調査権の使い方がいかにも党派的
 です。米議会や英議会では、国政調査権を党派的に発動しないと
 いうのが大原則です。どちらかの党派に有利/不利だから呼ぶ/
 呼ばないという判断は、少なくとも建前としてはしないことになって
 いる。中長期的な国政上の課題について調べることが目的ですから。

 杉田 証人として呼ぶのは、犯罪の嫌疑がある人だとする政治家も
 いました。

 長谷部 話が逆転しています。従来議論されてきたのは、国政調査権
 を行使することで犯罪の捜査や裁判の遂行に不当な影響を及ぼすのは
 よくない、捜査対象者は呼ぶべきではないのではないか、という点
 でした。>

杉田 昭恵氏が国会で証言すれば、白黒がつく可能性もある。
 安倍首相は「悪魔の証明」は出来ないなどと言いますが、当事者の
 言い分が食い違うことは、よくあること。どちらが信用できるかを
 裁判等で判断するのであって、それは悪魔の証明でも何でもない。
 単なる事実認定です。

 長谷部 ボールは政権側のコートにある。同じコートに出て打ち返す
 ことは、悪魔でなくてもできます。首相を侮辱した、というわけの
 わからない理由で私人が証人喚問されている。私人にそこまで要求
 しておきながら、文書は破棄したので何も言えないと官僚は開き直り、
 首相夫人は私人だからで済ませています。極めてバランスが悪い。

 杉田 官僚の文書廃棄については専門家から、違法ではないかとの指摘
 さえあります。保存期間を定めた公文書管理法の欠陥もありそうですが、
 仮に違法とまでは言えないとしても、そうした無責任な行政のあり方が
 許されるものなのか。

 長谷部 違法でなければ何をやってもいいのか。私人であればOKです。
 人のひんしゅくを買うような行為でも、それは個人の判断です。しかし、
 公人や公務員は違う。中長期的な社会公共のために行動する、そのために
 様々な権限や便宜を与えられているのだから、私人と同じように法に触れ
 なければいいということには、なりません。>

教育勅語について__

長谷部 [略]学校は、街頭やネット上のような一般的な表現の自由が
 成り立つ場所ではありません。教育の出発点は憲法26条の子どもが
 学習する権利です。将来、子どもが自分自身で物事を判断できるように
 なるための材料を提供しないといけないのだから、教えていい話とそう
 でない話の線引きがあるのは当たり前です。>





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by byogakudo | 2017-04-12 21:23 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 04月 11日

人形町界隈(2017/04/10)

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 今週は用事が続いて散歩日が少なくなる予定なので、と
理由付けする必要があるかしら、昨日は人形町界隈を歩いた。

 大通りを外れると、まるで吸い寄せられるように、"一見
3階建てのモルタル造看板建築"
2016年11月18日付けにも)
に逢う。Sが写真を撮っていたら、2012年9月24日の彼女
(だと思う)が出て来られて、お話しする。
 彼女からも、
 「ここね、以前、芸能人のお家だったのですよ」
 「三木鶏郎・事務所だったって、他の方からも言われました」

 お家を指差しながら恥ずかしそうに、
 「もう、ぼろぼろになっちゃって」
 「いや、きれいです、とてもうつくしいです」とお答えしたら、建物・
左側、横開きのガラス戸を指して、
 「エッグアートってあるでしょう? こっちは、わたしが作ったものが
置いてあるの。ご覧になりたい?」
 「いいんですか、ぜひ!」

 鍵を取りにわざわざ戻られ、開けてくださる。
 こちら側はむかし、京都出身の方がやっているカーテン屋さんだった、
とのこと。カーテン屋さんというのも、ハイカラだった。

 半間の三和土から先は板張りの床。四畳半くらいだろうか? なつかしい
安楽椅子(布張りで腕は直線気味の曲げ木)や低い卓、使われなくなった
家具が、みっしり置かれている。
 天井もなつかしい。白いパンチングボードで全面覆われている。

 卓上にも壁に寄せた棚にも、河原の小石、磨いた流木、松ぼっくりなどが
置かれている。彼女の作品であるレース編のドイリーも、何点も。
 「展覧会に出したりされないんですか?」と、S。
 「教えてくださった先生が亡くなられて教室がなくなったし、病院に通う
ようになって、もう作れなくなったんですよ」

 左奥のガラスの飾り棚にエッグアートが並ぶ。手に取ってごらんなさい、と
言ってくださるので、そうっと取り出す。
 西洋風の花柄を表面に描いたもの。殻を縦に切って内部に小さな兜を置き、
脇に菖蒲を描いた卵の隣は、お雛様のいる卵。クリスマス向けの作品だった
かしら、卵の背面に細い曲線がカットされているのもあった。
 「作ってはお友だちに上げたりして、今はこれだけなの」

 右側の棚には手製のワンピースを着ている、二十歳の彼女のモノクローム写真。
お友だちのお家が写真館で__写真館も、ハイカラでなつかしいお店だ__、
そこで撮られたものだ。丸襟に黒いリボンが結ばれ、愛らしい。
 写真立ての右側には、やはり彼女が作った藤工芸のお人形(今日の写真、下)。

 ここは中原淳一の世界だ。写真館では着物姿も撮ってもらったが、もう一度
撮ってあげようかと言われたら、シンプルなお洋服姿を選ぶ。
 彼女の作った手工芸品のどれにも、西洋への憧れがイメージの始まりにある
と、感じる。

 「私の思い出は虫入りの琥珀の虫」である時空間を見せてくださった、
東京の妖精に深謝。





呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-04-11 19:08 | 雑録 | Comments(2)
2017年 04月 10日

D・M・ディヴァイン/中村有希 訳『ウォリス家の殺人』読了

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 2015年9月10日に読んだ『災厄の紳士』以来のD・M・ディヴァインだ。
ブログを読み直すと(読んでもストーリーは思い出せない)気に入ってる
ようだが、2冊目を読むまで1年半がかり。あんまりミステリ・ファンじゃ
ないな。

 wikiで見ると、D・M・ディヴァインは1920年-1980年。
 『災厄の紳士』は原作1971年刊、最新作『ウォリス家の殺人』が1981年
の原作刊行。わたしが知らなかっただけで、1994年から少しずつ翻訳されて
いた。長篇の未訳は2点のみ。本格ミステリが見直されてきたので、未紹介
だったディヴァインも注目されたのだろうか。

 これも地味でいいなあ。
 描かれる世界は1960年代のイギリス。語り手は歴史学者、モーリス・スレイター。
控えめな観察者タイプ。離婚して息子があるが、息子は母親から父の悪口を吹き込ま
れて育った。
 父と息子の物語は、タイトルのウォリス家にも"跡継ぎの息子が欲しかった"形で
共通する。ジョフリー・ウォリスは親を亡くし、スレイターの父に息子同様に(!)
育てられた。人気作家であり、今はTVの人気者でもある、派手なタイプだ。

 そうか、エディプスの物語でもあるんだと、いまさら確認。ジョフリー・ウォリス
には別々に遠く離れて育った兄、ライオネルがいる。彼が弟・ジョフリーの家に
顔を出し、近くに住むようになってから、ジョフリーの様子が変わってくる。暗く
なった。 
 カインとアベルの話でもある。ふたりのカイン(モーリスは義兄に近い)とひとり
のアベルだ。

 モーリスとジョフリーの妻(ジョフリーは元妻)は、どちらも家庭的ではない。
 モーリス元妻は美人だが無教育だ。結婚していたころ彼が彼女に気を遣わず、
学者の世界に閉じこもっていたのを今でも恨む。だから息子に彼の悪口を言い
続けたのだ。
 ジョフリーの妻は男を支配したがる。男といわず、ふたりの娘に対しても支配力を
行使したがる。長女がモーリスの息子、クリスと結婚したいというが、もっとお金持ち
の相手が好もしいので、モーリスを呼び寄せて阻止に協力させようとする。

 モーリスが語り手なので、世界は彼の視点によって記述される。女たちの側から
描けば、女の自立意志の萌芽期の物語でもあるだろう。元妻は振り向いてくれない男
への(へたくそな)反抗の形を取り、ジョフリーの妻は、夫(の権力)には女の権力
意志で対抗しようとする。

 こんなことばかりノートしてるから、どんな話だったかを忘れるのだろう。60年代の
カインとアベル物語でも、アベル=ジョフリーが殺され、イギリス田園地帯は不穏な
空気につつまれる。ストレート・ノヴェル風の語り口だが、観察者・モーリスがいつしか
調査に乗出す、ちゃんとした本格ミステリだ。


     (D・M・ディヴァイン/中村有希 訳『ウォリス家の殺人』
     創元推理文庫 2008初 帯J)





呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-04-10 21:31 | 読書ノート | Comments(0)